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87式35mm擲弾発射機(QLZ-87)

▼左側が三脚に装着した重タイプ、右側が歩兵携行時の軽タイプ。いずれの状態でも二脚はついたまま。
外部リンク サイト:中国武器大全「QLZ87式35毫米自动榴弹发射器」

性能緒元
全長970mm(発射機)/1060mm(軽タイプ)/1300m(重タイプ)
重量12kg(発射機+照準器)/20kg(三脚装着時重量)
弾倉6発/15発
口径35mm
弾種35×32mm弾
>榴弾、HEAT弾、焼夷弾、焼夷榴弾、煙幕弾など
最大発射速度480〜500発/分(理論値)
実用発射速度15〜20発/分(単発モード時)/30〜40発/分(連射時)
砲口初速190m/秒
俯仰角-10〜+75度(三脚装着時)
有効射程600m(直射)/1750m(曲射)

87式35mm自動擲弾発射機(QLZ-87)は、1995年に制式化された中国第一世代の自動擲弾発射機。中国名は「87式35毫米自動榴弾発射器」で、型式名のQLZはQ=軽武器、L=榴弾、Z=自動武器の中国語発音の頭文字を取ったもの[1]。QLZ-87は、輸出用兵器として1987年に実用化されたW-87式35mm自動擲弾発射機をベースにして開発が行われた[2]。

中国軍は1979年にヴェトナムとの間で発生した中越紛争において、ヴェトナム軍歩兵小隊が装備するアメリカ製M79/M203擲弾発射機に強い印象を受けた[3]。当時の中国軍の歩兵小隊では、分隊支援火器である7.62mm軽機関銃と手榴弾が主であり、必要に応じて歩兵中隊以上で装備する迫撃砲の支援を受けていた。それに対して、ヴェトナム軍歩兵小隊は、小隊固有の「小型砲」ともいうべきM79/M203擲弾発射機を保有していたことで火力において中国軍を上回っていた。

歩兵小隊火力でヴェトナム軍の後塵を拝したことは中国軍にとって大きな教訓となり、まず81式7.62mm自動小銃(QBZ-81)に装着するアタッチメント式擲弾発射機を開発すると共に、アメリカやソ連での自動擲弾発射機配備の動きを踏まえて、本格的な自動擲弾発射機の開発に踏み切った[3]。開発は南京に拠点を置く民間企業の華東工業院機器研究院が担当し、輸出用として開発されていたW-87自動擲弾発射機をベースとして1987年に開発作業に着手[4][8]。1995年には実用化に漕ぎつけ、「87式35毫米自動榴弾発射器(QLZ-87)」の制式名が与えられ、部隊配備が開始された[4]。

【性能】
QLZ-87の特徴はその軽量さにある。二脚装備の軽タイプは6発入りの弾倉を含めた全備重量が12kg、三脚と15発入りの大型弾倉を装備した重タイプでも全備重量20kgに抑えられている[3]。これは同クラスの自動擲弾発射機である米Mk19 Mod3よりも70%も軽量であり、ソ連/ロシアのAGS-17よりも35%軽い重量である[3]。この差は、米ソに比べて陸軍部隊の機械化で立ち遅れていた当時の中国軍にとっては、歩兵自身により携行搬送可能な重量に抑えることが要求されたことによるもの[4]。米Mk19やソAGS-17が車両運搬を基本として三脚銃架に据え付けて運用されたのに対して、軽量化を優先したQLZ-87は二脚装備の軽タイプであれば歩兵一名での携行搬送が携行可能となった。

ただし、軽量化を優先したことは、擲弾発射機の性能にとってはマイナスに働いたことは否めない。
【米Mk19-mod3とQLZ-87の性能比較】
砲口初速実用発射速度有効射程最大射程
米Mk19 mod3244m/秒50発/分1.6km2.2km
中QLZ-87200m/秒45発/分1.2km1.75km
砲口初速、発射速度、射程のいずれにおいても米Mk19 mod3が優位に立っていることが見て取れる。初速の低さは、同じ距離でも飛翔時間が多くかかることになり、それだけ命中精度に悪影響が及ぶ[1]。また、車載運用を前提に32発もしくは48発の弾倉を使用するMk19に対して、QLZ-87は6発/15発のドラム式弾倉しかなく持続的に支援射撃を行うには頻繁な弾倉交換が必要で火力の持続性でかなりの不利になる[4][5]。さらに、軽量化のため連射時の反動抑制機能は十分ではなく、銃身の振動が大きいことで命中精度の低下を招いていた[4]。上記の性能差は求められた要求の相違によって生じたもので、QLZ-87自体の欠点というのは公平さを欠くと思われるが、21世紀に入り中国軍の機械化が進んだことを受けて、車載運用を前提として砲性能を追求した04式35mm自動擲弾銃(QLZ-04)が開発されることになる[4]。

【構造】
QLZ-87は、銃身、機関部、携行用ハンドル、光学照準器、銃床、発射機(引き金+グリップ)、弾倉、脚部(二脚もしくは三脚)で構成されている[6]。QLZ-87の作動方式はブローバック式を採用しており、銃身先端には反動軽減のためマズルブレーキを装着している[6]。各部分の分解・組み立ては特別な工具は必要とせず、ロックを解除するだけでよく、整備性の向上に資している[6]。弾薬は機関部下部に装着された弾倉から給弾されるが、激しい振動に見舞われると弾倉が落下する危険性が指摘されている[4]

QLZ-87は歩兵分隊の支援火器として用いられる際には、二脚装備の軽タイプが用いられる。この際には、匍匐状態での射撃時に地面と接触しにくい小型サイズの6発入り弾倉を装着して運用される[6]。分隊支援火器として運用される場合は、射程600mまでの目標に対する直射を主とする[1]。

QLZ-87を三脚銃架と組み合わせた重タイプとして用いる時は、直接地面に設置もしくは車輛に搭載して運用される。重タイプは、安定した三脚銃架上に装備されているので、発射時の安定性が増しており命中精度が向上している。また、軽タイプよりも高い仰角での発射が可能となるので、曲射射撃により射程を延伸して1750mの最大有効射程の発揮が可能となる[1]。また、曲射射撃により、掩体に隠れた目標への打撃も出来るようになる。重タイプでは、匍匐時の射撃を考慮する必要がないので、大型の15発入り弾倉を使用する[1]。

【弾種】
QLZ-87は、中国が開発した35×32mm口径の擲弾を使用する。DFS87式榴弾、DFJ87式HEAT弾、DFR87式焼夷弾、DFN87式焼夷榴弾、DFD87式煙幕弹など各種弾薬が開発されているが、部隊で主に使われているのはDFS87式榴弾とDFJ87式HEAT弾の二種類[1]。両者は外観、寸法、重量(244g)とも全く同じで、同一の諸元で発射することが可能[1]。識別のため、DFS87は弾頭が白色に、DFJ87はオレンジ色に塗装されている。弾薬は一発ごとに独立して真空パックに収納されているが、これは過酷な環境での弾薬の性能維持を目的としたもの[1]。

DFS87式榴弾は有効殺傷半径11m。爆発時に300個程度の弾片を発生させることで殺傷効果を高めている[1]。DFJ87式HEAT弾は命中角60度で最大35mmの装甲貫徹能力を有している[1]。

【評価】
QLZ-87は、中国第一世代の自動擲弾発射機であり、中国軍における擲弾発射機の欠如という問題を解決することに成功した。歩兵による携行搬送が要求されたため、射程や命中精度、連続発射能力においては妥協を余儀なくされたが、歩兵一名での搬送が可能なサイズの自動擲弾発射機としての実用化には成功した。この特徴は、軍隊の機械化がまだあまり進んでいない国々で評価され、それらの国への輸出に成功しているとのこと[7]。これまでに、ボリビア、エチオピア、ナミビア、パキスタン、ソマリア、スーダン、タンザニア、ウガンダなどの国々へ輸出され、さらにシリア、スーダン、南スーダン、ソマリアなどの武装勢力でもQLZ-87が装備されているのが確認されている[8]。

【派生型】
“W-87式35mm自動擲弾発射機”
QLZ-87のベースとなった自動擲弾発射機。基本構造はQLZ-87と共通するところが多いが相違点も少なくない。弾薬は35×63mmRL弾を使用しており、弾倉も6発、9発、12発の三種類となっている点が異なる[2]。弾薬の供弾が機関部上部から行われる点もQLZ-87とは異なっている[7]。

輸出向けに開発され1987年に開発作業を終えている[2]。しかし、中国軍を含めて各国で採用されていないタイプの弾薬を用いていることもあってか、採用国は得られていない模様で、実際に量産されたか否かも不明[2]。

【参考資料】
[1]中国武器大全「QLZ87式35毫米自动榴弹发射器」http://www.zgjunshi.com/Article/Class38/Class88/Cl...(2019年11月10日閲覧)
[2]中国武器大全「W87式35毫米自动榴弹发射器」http://www.zgjunshi.com/Article/Class38/Class88/Cl...(2019年11月10日閲覧)
[3]腾讯网「国产特色武器:单兵装备迷你大炮 指哪打哪」(虹摄库尔斯克/2019年9月25日)https://new.qq.com/omn/20190920/20190920A0DMPY00.h...(2019年11月10日閲覧)
[4]刘达伦 吴海岸 邓振军「国产新QLZ04式自动榴掸发射器」所載『兵器知识』2016年4期 (閲覧)https://web.archive.org/web/20160916235745/http://...(閲覧2019年11月10日)
[5]槍炮世界「Mk19自动榴弹发射器」https://web.archive.org/web/20130806112934/http://...(閲覧2019年11月10日)
[6]何邓海「再创中国第一:QLZ-87式35mm自动榴弹发射器」《轻武器系列丛书》编委会『解密中国榴弾武器』(航空工惟业出版社、2015年)186〜189ページ
[7]网易号「国步兵大炮在多国参战,单兵用它能击穿装甲车」(空军世界/2016年12月21日)http://dy.163.com/v2/article/detail/C8OQ69TV051593...(閲覧2019年11月10日)
[8]Yan, Timothy (August 2014)「The Chinese QLZ87 Automatic Grenade Launcher」(Arms & Munitions Brief 1. Armament Research Services Pty. Ltd.)http://www.armamentresearch.com/wp-content/uploads...(閲覧2019年11月10日)

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