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920型は広州造船所で建造された中国初の大形病院船。903型補給艦(フーチー型/福池型)をタイプシップとして設計されたと見られている。1番艦の艦名は「岱山島」(浙江省舟山列島の島の1つ)[5]。病院船任務に従事する事から艦名とは別に「和平方舟(Peace Ark)」の称号が与えられており[9]、報道ではこちらの名前で呼ばれることも多い(艦名自体が「和平方舟」に改名されたとの説もある)。NATOコードはANWEI class(安衛?)[7]。2008年10月23日に就役し、東海艦隊に配備された[2][4]。

920型の就役以前に中国海軍が保有していた病院船は、1991年にネームシップが就役した南康級病院船(チォンシャ型/瓊沙型)(排水量2,150t)2隻であったが、南康級は元々負傷者への初期救命救急治療を行う事を前提として建造された病院船のため、その医療施設は救急救命治療に関する物が中心で、船上で大掛かりな手術を行う能力は有していなかった[10]。また船体が小型のため搭載可能な医療施設や収容人数にも限界がある点、ヘリコプター発着甲板や格納庫を有しておらず傷病者の緊急搬送に有効なヘリコプターを運用出来ないのも問題であった。

920型は排水量1万トン超と南康級より格段に大型化され、病院船としての能力は大幅に向上している。同船の船体は船橋や煙突の位置関係から903型補給艦をタイプシップとしていると思われるが、バルバス・バウを装備している点はタイプシップとは異なる[1]。船橋後部付近までを船首楼とし、上構は2層の甲板を下げて船尾までを上甲板として格納庫までを長い甲板室(2層)としている[1]。船体中央部には上甲板から4層の上部構造物が形成されており、船橋後部からこの構造まで中央に甲板室を設け、その両舷には救命艇6隻が搭載されている[1]。船尾には大型ヘリコプターの発着艦が可能なヘリコプター甲板と格納庫が配置されており、Z-8JHヘリコプター1機を搭載している。Z-8JHは患者の搬送や物資のヴァートレップ輸送に用いられる。920型は動揺軽減対策が施されているため、シーステイト4級の状況でもZ-8JHの発着艦は問題なく可能とされている[10]。

船内は生活区画と医療用区画に区分されており、約500〜600床のベッドを備える[10]。医療用区画では通常の医療用ベッドのほか、重症者用ベッド、火傷者専用ベッド、集中治療室、隔離病室など様々なニーズに応じた設備が用意されており、300名の負傷兵を収容し、同時に8人の手術を並行して行う能力を有している[10][11]。CTスキャン、レントゲン、心電図モニター、人口呼吸器、人工透析器、歯科医療機材、手術用顕微鏡など217種2400台に上る医療用設備が整えられており、脳外科、胸部、腹部、骨折、火傷、水中での負傷など多様な負傷者の緊急手術に対応可能[10]。遠隔手術システムにより各種専門医の指導の元で手術を実施する能力も備えている[10]。傷病者は乗船後、医療スタッフが持っている携帯情報端末により負傷・病気の情報や血液型などの個人データを艦内データベースに登録して各個人の電子カルテを作成、それにより効率的な管理・治療を行う[10]。船内には傷病者搬送用エレベーターが多数設置されているのも病院船としての本船の特徴である[10]。船内には海水淡水化装置が搭載されており、手術などに必要な淡水を24時間供給する(中国海軍の通常の艦艇では淡水は「石油のように貴重」とされており、920型のようにふんだんに淡水を自給できるのは例外的[10])。船体の大型化と振動低減技術の導入に伴い、荒天下での動揺が抑えられており、シーステイト4〜5級の状況下においても傷病者は船酔いを起こすことがないとされる[10]。

920型は米海軍マーシー級病院船(満載約7万トン)の半分以下の規模でしかないが、中国海軍が保有していた南康級を上回る能力の病院船で1980年代以来進めてきた病院船のノウハウの集大成とも言える存在であり、同時に中国海軍の後方支援体制の充実を目指す志向の表れでもある[11]。920型は戦時には大量に発生する負傷者の救命救急や手術・治療活動を、平時には充実した医療能力を生かして島嶼部を巡回し住民や駐屯部隊に医療サービスを提供する巡回医療任務、外洋航行中の艦隊に随伴して補給や医療支援を実施する事などが想定されている。また大規模災害により多数の傷病者が発生した際の緊急医療活動に出動したり、医療体制が十分整っていない国々に派遣されて医療サービスを提供する事により中国影響力を拡大する事にも使用される[11]。

「岱山島」は2010年8月31日から11月26日にかけて初の外国での医療支援活動「和諧使命2010」に従事しており、中国海軍アデン湾派遣艦隊に対して医療支援活動を行った後、インド洋に面したジブチ、ケニア、タンザニア、セイシェル、バングラデシュの5ヶ国を訪問して国際貢献活動として医療サービスの提供を実施[11]。同任務において2,127名に対して検診を実施、12,806名の外来患者、1,858名の患者が同船を訪れており、97回の手術に成功している[11]。

性能緒元(建造元の情報)
満載排水量14,219.8t
全長178.00m
全幅24m
主機
速力
乗員

性能緒元(ジェーン軍艦年鑑2009-2010年度版の情報)
満載排水量23,000t
全長180m
全幅24.6m
喫水9m
主機ディーゼル 2基 2軸
速力19kts
航続距離10,000nm/14kts
乗員130名
搭載機Z-8汎用ヘリコプター1機

同型艦
1番艦岱山島Daishandao866広州造船廠で建造。2006年起工、2007年8月29日進水、2008年10月23日就役東海艦隊所属


▼ヘリコプター甲板にZ-8ヘリコプターを着艦させた「岱山島」

▼920型病院船に6隻搭載されている救命艇

▼920型病院船の医療設備


【参考資料】
[1]世界の艦船 2008年2月号(海人社)102〜103頁
[2]世界の艦船 2009年1月号「海外艦艇ニュース-中国海軍の新型病院船竣工」(海人社)
[3]Defense News「China's Navy Takes Delivery of Hospital Ship」(wendell minnick /2008年11月5日)
[4]大公網「國產萬噸級醫院船866號投役」(2008年11月3日)
[5]世紀先鋒軍事論壇「授与中国人民解放軍海軍”岱山島船”(舷号866)全体官兵”岱山県栄誉市民”称号」(2008年11月15日)
[6]Chinese Defence Today「Type 920 Hospital Ship」
[7]世界の艦船 2009年6月号「米国防総省報告「中国の軍事力2009」を読んで」(竹田純一/海人社)
[8]Jane's Fighting Ships 2009-2010(Stephen Saunders (編) /2009年6月23日 /Janes Information Group)162頁。
[9]「中国首艘万吨级医院船进行首次海上训练」(方立華/2010年6月14日)
[10]陳光文「浮動的生命之舟--中国海軍的医院船」(『艦載兵器』2010年4月号/No.128)31〜40頁
[11]中国国防部公式サイト「Chinese navy hospital ship concludes 88-day overseas humanitarian mission」(2010年11月27日)

903型補給艦(フーチー型/福池型)
中国海軍

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