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▼動画:military news「China Hong-jian 12,Red Arrow 12, HJ-12 man-portable shoulder-launched anti-tank missile powerful」HJ-12の解説動画

▼2018年の珠海航空ショーで展示されたHJ-11(著者撮影)


性能緒元(推測)[1][2]
全長800mm前後
ミサイル直径130mm以下
ミサイル重量15kg以下
最大速度300m/秒
射程2,500m〜5,000m程度
誘導方法ビームライディング式SACLOS
装甲貫通能力RHA1,000mm程度
★上記数値は推測値で参考までに紹介。

HJ-11対戦車ミサイル(紅箭11/AFT-11)は、中国第三世代対戦車ミサイルとしてHJ-10やHJ-12と共に配備が進められている対戦車ミサイル[3][4]。HJ-11は2011年に制式化され、2014年にその存在が知られるようになり、2018年には中国軍への部隊配備が確認された [5][1]。

【開発経緯】
近年ますます防御力を強化し、高い行進間射撃能力を備えた各国の主力戦車に対して、98式120mm対戦車ロケットランチャー(PF-98)の様な非誘導式対戦車ロケットでは対抗し得ないと考えられている[6]。これにより、歩兵一名で搬送可能な対戦車ミサイルが重要視されるようになったが、高い精度や攻撃力は必然的に重量増を招き、歩兵による搬送性を悪化させる。その妥協点として現在の歩兵用対戦車ミサイルは、発射の時は一名で運用できるが、携行搬送の際には二名かそれ以上で行うというところに落ち着いた[6]。

中国では上記の歩兵携行用対戦車ミサイルとして、HJ-11とHJ-12という二種類の対戦車ミサイルを並行して開発するという選択を行った[6]。

HJ-11の開発では、9M133「コルネット」と9K115-2「メチス-M」という二種類のロシア製対戦車ミサイルを念頭において開発が進められた。両者の誘導システムであるビームライディング式SACLOS(Semi-Automatic Command to Line of Sight:半自動指令照準線一致誘導方式)を誘導システムに採用[3][4]。この方法は、照準器から目標に複数のレーザーが照射され、ミサイル尾部の検出器が照射される複数のレーザービームを受信し、それを目安にして誤差が生じれば軌道を修正しつつ常にミサイルがビームの中心に来るように制御して飛翔するというものである[6]。レーザーによる対戦車ミサイルの誘導は中国軍でもHJ-9で採用していたが、9M133と9K115-2の複数のレーザーを用いた誘導方式の方が理論上も実際の運用においても効果が高く、後にはHJ-9自体もこの方式を採用したタイプが登場したとの事[1]。

同時期に開発されたHJ-12はアメリカのジャベリンなど採用していた赤外線画像誘導方式の導入を図ったが、HJ-11はロシアの対戦車ミサイルのビームライディング式SACLOSを取り入れた[4][6]。この方法のメリットは、構造が簡単で、操作の容易さ、調達コストの抑制という点にあった[4]。また、ミサイルの速度を比較的高速にすることが出来るのも利点と言えた。逆にデメリットは、命中までレーザー照射が必要で「撃ちっ放し」が不可能なこと、敵がレーザー照射を察知して対抗策を取る暇を与えてしまうことなどが存在する[4]。

HJ-11とは対照的な存在がHJ-12である。HJ-12は赤外線画像誘導方式を採用し、「撃ちっ放し」射撃が可能で、誘導にレーザー照射は不要なので事前に敵に悟られる可能性が低く、直撃コースのみならずポップアップ飛行を行ってトップアタック攻撃を行う複数の飛翔コースを選択可能[4]。しかし、高性能の反面でそのコストは高く、HJ-12の中国軍向け価格は約5万ドル(30万人民元)で、輸出用の改良型HJ-11Eに至っては14万ドル(100万人民元)に達しているとされる[3]

中国では、HJ-11とHJ-12はその特性から相互に補完し合える装備だとして、並行して調達配備を進めており、ハイ・ローミックス的運用を行うことが想定されている[3]。

【性能】
兵器システムとしてのHJ-11は、ミサイル本体、ミサイルを格納するランチャー、照準器、ランチャーや照準器を装着する三脚などで構成されている[6]。

HJ-11の照準器は、大直系の赤外線暗視装置やレーザー照射装置、潜望鏡式サイトなどで構成されている。運用の際には、ランチャーと照準器のみを露出させ、射手は潜望鏡式サイトを用いて伏せた状態で全ての操作を行うことで戦闘時の安全性を高めている[6]。ランチャー、照準器、三脚は分解して搬送される。HJ-11一式の搬送は通常は二名で行うが、緊急時・短距離移動の場合には一名のみでも可能[6][2]。火力の持続性を考慮して、作戦中は三名からなる対戦車チームが発射機とミサイルランチャー5発、自衛火器などを装備して作戦に従事すると見られている[2]。

ミサイル本体は先端部にプローブが設けられ内蔵された成形炸薬弾で爆発反応装甲を無力化する。その後方は弾頭部分で主装甲を貫通する成形炸薬弾を配している。胴体中央部にはロケットモーターを配置し、尾部には制御系統を搭載していると見られている[7]。胴体中央部には4枚の安定翼が、胴体尾部には同じく4枚の制御翼が内蔵されており、射出後に展開される。安定翼と制御翼は各45度傾いて配置されており、飛翔時は安定翼は十字型、制御翼はX字型になるとみられる。

HJ-11のミサイルのサイズは推測値となるが、全長130mm以下、射程約2,500〜5,000m、装甲貫徹能力は均質圧延鋼板装甲(RHA)に対して1,000m程度と見積もられている[1][2]。

【誘導システム】
前述の通り、HJ-11はロシアの対戦車ミサイルに範を取ってビームライディング式SACLOSが採用されている。ただし、開発時期の違いからロシアの対戦車ミサイルが固体Nd:YAGレーザーを用いていたのに対して、HJ-11ではCO2レーザーを採用して、装置の小型化や照射レーザーの各種性能向上を図っている[6]。

中国では1990年代にロシアから調達した9K116「バスチオン」砲発射式対戦車ミサイルによりビームライディング式SACLOS技術を入手。その後、105mm戦車砲、125mm戦車砲用の砲発射式対戦車ミサイル開発にもこの技術が用いられて、ノウハウの蓄積が行われてきた[1]。1990年代に導入されたこのビームライディング式SACLOSでは照準器から目標にレーザーを照射すると、ミサイル尾部の検出器が照射される複数のレーザービームを受信し、レーザーの位置と現在の位置とのずれ確認して常にミサイルがビームの中心に来るように制御して飛翔する[6]。この方法は、レーザー受信機がミサイル尾部にあり、暗号化された信号を受信するので、敵側がこのレーザー指令リンクに干渉することは困難[6]。

この方式の問題点としては以下のような点が挙げられる。まず、HJ-11はミサイルが命中するまで照準器で目標を捉えておく必要がある。その間、射手は退避することが出来ず反撃を受ける危険がある。それに対処するためHJ-11は飛翔速度を高めて命中までの時間短縮を狙っている。また命中までレーザー照射を行う必要性から、HJ-12のように飛行中に軌道を大きく変えるのは困難であり、見越し外目標への攻撃やトップアタック攻撃などを実施することは出来ないことも指摘されている[6]。そして、目標へのレーザー照射は相手方に攻撃の意図を伝えることに直結する。近年では標準装備となっているレーザー警告装置などを活用してレーザー照射とその方向などを探知すると、退避活動や煙幕などによる欺瞞を行い、誘導中の射手が発見できれば砲撃により無力化ないしレーザー照射を止めさせようとすることに繋がる[7]。

HJ-12に対する優位としては、ビームライディング式SACLOSであれば、ミサイル本体に高度なシーカーを組み込む必要はなく、そのコストを大きく引き下げることが出来る点にある。誘導システムの装置についても、指令を伝えるのはレーザー照射装置でありHJ-8対戦車ミサイル(紅箭8)の様な指令送信用の有線は必要ないので、装置をコンパクト化できる[6]。また、レーザー照射は遠距離の目標に対する指示においてHJ-12の赤外線画像誘導式よりも有利である[6]

【派生型】
HJ-11は、三脚に載せて運用される歩兵用と、四連装発射機に搭載して四輪装甲車に搭載する車載型が開発されている。

車載型HJ-11は、コンパクトにまとめられた四連装発射機を各種車両に搭載することが出来、「猛士」装輪装甲車(軽型装甲車/軽型突撃車)やYJ2080装甲車(ロシアのSPM-2/GAZ-2330-36のライセンス生産版)などに搭載された試作車が確認されているが、中国軍での採用については未確認[1][7]。

【今後の配備の見通し】
21世紀初頭の中国軍では、HJ-9HJ-8AFT-07(HJ-73)の三種類の対戦車ミサイルを配備していた[8]。

最も大型で射程・威力に優れたHJ-9は、WZ-551装輪装甲車に搭載して自走化した上で、集団軍砲兵旅(旅団に相当)の対戦車営(大隊に相当)に配備され、集団軍の戦対戦車兵器としての役割が与えられていた[9]。1980年代から配備が始まったHJ-8は、BJ-2020四輪駆動車に搭載されて、師(師団に相当)砲兵団(連隊に相当)の対戦車営の対戦車ミサイル連に装備されて、師団の予備的な対戦車兵器として投入される想定であった[3]。最も初期に配備されたAFT-07(HJ-73)は、歩兵による携行が可能で、歩兵団所属の砲兵営の対戦車連(中隊に相当)に配備されて歩兵部隊の対戦車兵器として運用されていた[9]。

中国陸軍では2010年代になると、上記の対戦車ミサイルの更新用に、AFT-10(HJ-10)、HJ-11、HJ-12と三種類の対戦車ミサイルを開発した。

大型のAFT-10は装軌車両に搭載されて集団軍のHJ-9を更新し、HJ-11とHJ-12は既存のAFT-07(HJ-73)HJ-8を更新すると見られている[8]。

HJ-11とHJ-12はそれぞれの強みを生かしてハイ・ローミックス運用が成されると見られている。高性能かつ高価なHJ-12は重要装備として、主力戦車といった高価値目標への攻撃を担当[1]。安価なHJ-11は数的主力として調達され、主力戦車に加えて、軽戦車、歩兵戦闘車、装甲車、陣地、低空を飛ぶヘリコプターなど多種多様な目標への打撃を担当すると見られている[1][7]。

将来的には、05式水陸両用歩兵戦闘車08式装輪歩兵戦闘車03式空挺歩兵戦闘車などに広く搭載されているAFT-07/HJ-73Dを更新する車載式対戦車ミサイルとしての活用も想像されており、今後の動向が注目される[7]。

【参考資料】
[1]易有料「中国版短号反坦克导弹红箭11:将同红箭12成为高低搭配的导弹」(萨沙讲史堂) https://pc.yiyouliao.com/microsoft/article/rivers/...
[2]澎湃新闻「讲武谈兵|红箭11反坦克导弹首次公开,并非山寨俄“短号”」 https://m.thepaper.cn/wifiKey_detail.jsp?contid=17...
[3]手机网易网「中国版短号反坦克导弹红箭11:将同红箭12成为高低搭配的导弹」(故事奇谈录/2023年11月18日)https://m.163.com/dy/article/IJQF9JVL0552Y5O7.html
[4]捜狐「挑战坦克地位,国产反坦克导弹进入快车道,目前已发展到第4代」(利刃观察眼/2019年7月8日)https://www.sohu.com/a/325469387_100185094
[5]Global Security「Hongjian-11 / HJ-11 anti-tank missile」https://www.globalsecurity.org/military/world/chin...
[6]手机新浪网「中国新型红箭11与红箭12导弹定位类似 两者有何差别」(2017年8月18日)https://mil.sina.cn/2017-08-18/detail-ifykcirz2898...
[7]捜狐「浅谈红箭11导弹对我军的重要意义」(特色双子座/2019年12月10日)https://www.sohu.com/a/359375898_120336888
[8]China-Arms「HJ-18: Providing Missiles to Every Foot Soldier – The PLA’s Answer to ‘Firepower Deficiency Anxiety」(2023年11月3日)https://www.china-arms.com/2023/11/hj18-missiles-f...
[9]知乎「首次亮相!中国卡车版红箭-10亮剑高原,双面打印快乐多」(
军武次位面/2020年8月21日)https://zhuanlan.zhihu.com/p/192505856

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