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▼動画:Hidden China documentary in English「China Hong-jian 12,Red Arrow 12, HJ-12 man-portable shoulder-launched anti-tank missile powerful」HJ-12の解説動画


性能緒元
ランチャー全長1,250mm
ランチャー直径152mm
ミサイル直径140mm
全備重量21.5kg
ミサイル重量165kg
最大速度200m/秒
射程2,000m(赤外線画像誘導)/4,000m(TV画像誘導)/8km(レーザー誘導・空対地)
誘導方法赤外線画像誘導/TV画像誘導(地上)、レーザー誘導(空対地)
装甲貫通能力RHA1,100mm

HJ-12対戦車ミサイル(紅箭12/AFT-12)は、中国兵器工業集団で開発された歩兵用の対戦車ミサイルで2014年の珠海航空ショーで公開された[1][2]。中国軍への配備が明らかになったのは2021年からであった。輸出市場での売込みは中国北方工業集団公司(NORINCO)が担当しており、輸出用の型式名はHJ-12Eで「紅箭」を英訳した「Red Arrow 12」の輸出名が付与されている[3]。

HJ-12の最大の特徴は赤外線画像誘導方式を採用し、「発射前照準」により射手は発射後に誘導を行う必要がない「撃ちっ放し」能力を実装したことにある[1]。これは先行するアメリカのFGM-148 ジャベリン、日本の01式軽対戦車誘導弾、イスラエルのスパイクLR2などで用いられている能力であり、中国でも同様の能力を有する対戦車ミサイルの開発と配備に踏み切った形になる[1]。

中国では2000年頃から、軍用装備に用いる情報装置の国内生産の基盤を整えるための研究開発を進めており、国内での核心となるハードウェアとソフトウェアの開発と画像情報の急速処理技術のボトルネックを約10年の歳月をかけて解決したとされ、HJ-12の実用化はこの成果が反映されたものと言えるだろう[4]

HJ-12は2021年から中国軍への配備が開始され[4]、歩兵部隊の営(大隊)レベルの対戦車兵器として配備が進められている。

【性能】
HJ-12は、ミサイル本体、ミサイルを収納するランチャー、ミサイルの照準などを行う指揮発射ユニットなどで構成される[1][5]。照準器などを装着した全備重量は21.5kgと歩兵携行兵器としてはかなりの重量となる[6]。ランチャーの全長は1,250mm[6]。ミサイルはランチャーに収納され、ランチャーの前後にはランチャーを守る保護具が装着されている。

ミサイル本体は太い円筒形をしており直径は140mm[6]。先端部に赤外線シーカーを配置し、その後方にタンデム式に成形炸薬弾を配置、胴体中央部と尾部にそれぞれX字型に配置された安定翼と制御翼が内蔵されており、ミサイル本体が射出されたのちに展開する[1]。

ロケットモーターは発射用と飛翔用の二種類を搭載する[1]。射出時に尾部の発射用モーターが作動するとミサイルは30m/秒の低速で打ち出されるので噴煙とバックブラストは最低限に抑えられており、これによりHJ-12は室内や陣地から発射することが可能となった[1][6]。十数メートルほど進んだところで胴体側面の飛翔用メインモーターが作動を開始し、急角度で上昇飛行に移る[6]。加速時の最高速度は200m/秒で、高度200mまで達すると巡航飛行に移り、ミサイル先端部のシーカーが作動して目標を捉える[6]。

ミサイルの飛翔は、敵車両の天井部を狙うトップアタックモードと、目標に直撃させるダイレクトアタックモードから選択することが出来る[1]。

HJ-12の成形炸薬弾頭は、メタルジェットを前方に収束させる弾頭と、下方向に収束させる弾頭で構成されている[1]。ダイレクトアタックの際には前者の弾頭が用いられ、トップアタックの際には後者を使う。HJ-12がトップアタックを行う場合、ミサイルは一定の高速を保ちながら緩降下して目標直上を通過、目標との距離を検知するセンサーが作動してその瞬間に弾頭を起爆。メタルジェットが目標の天井を貫通するという方法を採っている[1]。これは、目標に対して急降下して突入するジャベリンのトップアタックとは異なるアプローチが採用されたことを表している[1]。

HJ-12の装甲貫徹力は爆発反応装甲を装着した均質圧延鋼板装甲(RHA)に対して1,000〜1,100mm、もしくは傾斜68度のRHAに対して300mmの貫徹力を有する[4][7][6]。戦車攻撃のみならず、陣地、小艇、低空飛行中のヘリコプターに対して攻撃を行うことも出来る[5]。

【誘導システム】
HJ-12の誘導システムは非冷却型赤外線画像誘導システムと、TV画像誘導システムを併用している[1][5]。非冷却型赤外線画像誘導システムの採用は、中国の対戦車ミサイルとしては初となる[1]。これは赤外線シーカーで捕らえられた目標とその背景の赤外線イメージ画像をもとに目標を補足・追尾して、それに従ってミサイルを誘導する仕組みである。赤外線画像誘導システムは、2,000mまでの目標に対する識別能力と誘導精度に優れ、悪天候や夜間においても運用可能な全天候性能を有している[1]。それに対してTV画像誘導システムは昼間運用を想定したもので全天候性能は備わっていない。代わりにより遠方の目標に対する視認性が向上しており、4,000mまでの目標に対する攻撃が可能であり、戦場での状況に応じて誘導システムの使い分けが行われる[4]。

ランチャー側面には光学/赤外線照準器を内蔵した指揮発射ユニットを搭載[1][5]。これは目標の照準に用いるほか、これを使って索敵にも活用される[1]。照準器の光学/赤外線センサーはかなり大型であり、その視認可能距離は3,000〜4,000mにも登り、現場の歩兵部隊から高く評価されたとのこと[1]。

なお、HJ-12をヘリコプターやドローンに搭載して空対地兵装として用いる場合には、レーザー誘導システムを活用するとの事。この場合、使用可能高度は500m以上に限定されるが、最大射程は8kmにまで伸びる[6]。

【運用と派生型】
近年ますます防御力を強化し、高い行進間射撃能力を備えた各国の主力戦車に対して、98式120mm対戦車ロケットランチャー(PF-98)の様な非誘導式対戦車ロケットでは対抗し得ないと考えられている[8]。これにより、歩兵一名で搬送可能な対戦車ミサイルが重要視されるようになったが、高い精度や攻撃力は必然的に重量増を招き、歩兵による搬送性を悪化させる[8]。その妥協点として現在の歩兵用対戦車ミサイルは、発射の時は一名で運用できるが、携行搬送の際には二名かそれ以上で行うというところに落ち着いた。上記の通り、HJ-12も行軍の際には二名の兵員が分担して搬送し、射撃の際には射手と補助手に分かれて作業を行う[8]。

HJ-12は、歩兵が肩に背負って立った状態、胡坐をかいた状態、そして伏せた状態での発射が可能であり、陣地や車両に搭載する場合に備えて、三脚に載せた上での操作も想定されている[1][3][5]。

射撃の際には、まずランチャーと照準器の蓋を開けて、電池を起動する[6+12]。起動後30秒で照準器が使用可能となり、ミサイルの照準と発射に移行する[6]。HJ-12は、赤外線画像による目標認識・追尾機能を活用することで、射手は発射後の誘導は必要なく、即座に退避、もしくは次のランチャーを装填して攻撃を続行することが出来る[1]。次弾装填の場合は、空になったランチャーを外して、15秒で次のランチャーを積み終えることが出来る[5]。

HJ-12を装備する歩兵分隊は、その射程を生かして戦車部隊に接近することなく攻撃を行い得る。軽装備の歩兵連(中隊に相当)が敵の一個戦車中隊の進行に遭遇した場合は、待ち伏せを行い射程1〜2kmから攻撃を行う[6]。地形や植生を生かして十分に擬装を施したHJ-12を装備した歩兵部隊は、敵の戦車部隊に大きな被害を与える能力を有している。このような部隊と交戦する際には、偵察部隊やドローンなどによる十分な事前偵察、戦車と歩兵による連携、狙撃手や支援火器による制圧、おとり車輛の利用など複数の手段を組み合わせて対抗する必要があるのは、ロシア・ウクライナ戦争におけるウクライナ軍のジャベリン対戦車ミサイルの運用から明らかになっている[9][10][11]。

【派生型】
HJ-12は基本となる携行搬送型と、それを三脚に搭載した車両搭載型がある[6]。この両者は発射機・照準器は共通で、三脚の有無によって区別される。車載型としては、輸出向けに開発されたVN-17歩兵戦闘車もHJ-12を搭載しており、同車は砲塔の両側面に各一基ずつHJ-12を収納したランチャーを積んでいる[12]。

これとは別に、ドローンやヘリコプターといった航空機に搭載するタイプも存在する[6]。こちらは誘導システムをレーザー誘導システムに変更しており、それに合わせて先端部のシーカーも原型とは変えられている[6]。

前述の通り、HJ-12の輸出版にはHJ-12E「Red Arrow 12」の名称が付与されており、HJ-12Eは2020年に初輸出(具体的な国名は不明)が確認されている[3][13]。さらに、2023年1月にはサウジアラビアとNORINCOの間でHJ-12の現地生産に必要な技術移転とライセンス契約についての交渉を行っているとの報道も成されている[14]。

【評価】
HJ-12は、アメリカのFGM-148 ジャベリンや日本の01式軽対戦車誘導弾などに相当する「撃ちっ放し」能力やトップアタックッ攻撃能力を備えた強力な歩兵用対戦車ミサイルとして実用化することに成功した。

歩兵一名で携行可能で、高い打撃力を備えたHJ-12の弱点としては、高性能であるがゆえの高価格が存在する。HJ-12の中国軍向け価格は約5万ドル(30万人民元)で、輸出用の改良型HJ-11Eに至っては14万ドル(100万人民元)に達しているとされる[15]。

これは調達数に影響するだけでなく、近年の戦争では、対戦車ミサイルが戦車以外の陣地、野砲、軽装甲車などの目標に対して用いられる事例が多発しているため、従来よりもはるかに多くの対戦車ミサイルが使用されるようになっていることから、高コストなHJ-12をそれらの目標に投射すると、費用対効果の面でも無視できない経費を要する可能性が生じることになる[16][17]。

HJ-12の高価格は、数多く存在する陣地や軽車両、兵員といった目標に多用するには財政的負担が大きすぎることに繋がる。そのため、更新対象となるAFT-07(HJ-73D)を一対一で更新することは困難であり、HJ-12と並行して、ロシアのコンクールス対戦車ミサイルの影響を受けて開発されたセミアクティブレーザー誘導方式のHJ-11、小型・短射程化してコスト低減を追求したHJ-18が開発され、HJ-12と共に歩兵部隊の対戦車/支援兵器として調達が進められている[2][17][18]。

今後の中国歩兵部隊の対戦車ミサイルは、このようなハイ・ローミックス運用が成されるものと考えられている。

[1]孙瑞祥「“红箭”-12新型反坦克导弹」『兵工科技』2014年増刊—2014珠海航展专辑(兵工科技杂志社/2014)113-115頁
[2]手机搜狐网「无坚不摧——中国反坦克导弹新发展(图集)
」(来源:吕西群的微/2015年9月7日)https://m.sohu.com/n/420584983/
[3]Army Recognition「China delivered HJ-12E Red Arrow 12 antitank missile weapons to foreign customer」(2020年3月29日/)https://www.armyrecognition.com/march_2020_news_de...
[4]Global Security「Hongjian-12 / HJ-12 anti-tank missile」https://www.globalsecurity.org/military/world/chin...
[5]MilitaryToday.com「HJ-12 Anti-tank guided missile」https://www.militarytoday.com/missiles/hj_12.htm
[6]捜狐「中国灵巧武器,专给坦克“开瓢”,俄军:必须全套引进,填补空白」(科罗廖夫/2023年1月7日)https://www.sohu.com/a/626174454_121462986
[7]云南网「西藏军区红箭-12反坦克导弹首次曝光 中国版“标枪”可摧毁任何现役坦克」(来源:东方网/2021年7月23日)https://m.yunnan.cn/system/2021/07/23/031571025.sh...
[8]手机新浪网「中国新型红箭11与红箭12导弹定位类似 两者有何差别」(2017年8月18日)https://mil.sina.cn/2017-08-18/detail-ifykcirz2898...
[9]「ロシア・ウクライナ戦争でゆらぐ戦車の立場―露宇戦争での戦訓を読み解く―」『月刊PANZER』2022年8月号/751号(株式会社アルゴノーツ/2022年6月27日)29-35頁
[10]A.カリストラフ「対戦車ミサイルジャベリン」『月刊PANZER』2022年8月号/751号(株式会社アルゴノーツ/2022年6月27日)36-44頁
[11]K.ザブガ「ジャベリンを熟知し、それに対抗する方法」『月刊PANZER』2022年8月号/751号(株式会社アルゴノーツ/2022年6月27日)45-48頁
[12]MilitaryToday.com「VN17 Infantry fighting vehicle」https://www.militarytoday.com/apc/vn17.htm
[13]Janes「China's Norinco announces first export of HJ-12E ATGW system」(Juan Ju/2020年3月31日)https://www.janes.com/defence-news/news-detail/chi...
[14]Tactical Report「Saudi SAMI, China, and Red Arrow TOT」(2023年1月6日)https://www.tacticalreport.com/daily/61230-saudi-s...
[15]手机网易网「中国版短号反坦克导弹红箭11:将同红箭12成为高低搭配的导弹」(故事奇谈录/2023年11月18日)https://m.163.com/dy/article/IJQF9JVL0552Y5O7.html
[16]China-Arms「HJ-18: Providing Missiles to Every Foot Soldier – The PLA’s Answer to ‘Firepower Deficiency Anxiety」(2023年11月3日)https://www.china-arms.com/2023/11/hj18-missiles-f...
[17]China-Arms「HJ-18: Providing Missiles to Every Foot Soldier – The PLA’s Answer to ‘Firepower Deficiency Anxiety」(2023年11月3日)https://www.china-arms.com/2023/11/hj18-missiles-f...
[18]捜狐「挑战坦克地位,国产反坦克导弹进入快车道,目前已发展到第4代」(利刃观察眼/2019年7月8日)https://www.sohu.com/a/325469387_100185094

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