日本の周辺国が装備する兵器のデータベース




MiG-21をJ-7として生産に漕ぎ付けた中国であったが、それ以降の戦闘機についてはソ連との関係悪化により自国で独自開発しなければならない状況になった。こうして作られたのが、単座双発で対地攻撃能力も持つ大型戦闘機のJ-8(殲撃8)である。1964年5月、中国空軍はJ-7をベースとした高高度高速戦闘機の研究が提示された。中国軍では、J-8に対してアメリカ軍のB-58爆撃機やF-4、F-104戦闘機、F-105戦闘爆撃機に対抗しうる性能を達成することを要求した。その要目は最大速度M2.2、最大高度2万m以上、最大上昇率200m/s、標準航続距離1500km、増倉装備で2000km以上というもので、長距離捜索レーダーを装備して全天候性能を実現する事が必須とされた。瀋陽が本拠の第601航空機設計研究所はこれを受けて1965年9月から設計を開始し、1969年7月には試作機が初飛行している。

当初J-8は新型のアフターバーナー付ターボファン・エンジンを搭載する予定だった。しかしこのエンジンの開発は遅れ、J-7のエンジンの改良型の渦噴7Aターボジェット・エンジンを搭載する事になってしまった。最初に2機作られた試作機でのテスト飛行では音速飛行時のエンジン温度の異常上昇や振動、機体外板の加熱、果てはエンジンの空中停止など様々な問題点が明らかになり、これ等を解決するのに多くの時間を要した。また当時の中国エレクトロニクス業界は中国軍が要求した性能を発揮できるレーダーを開発できず、仕方なく極めて原始的な捜索レーダーが搭載され、全天候/昼夜間の戦闘能力を持つことが出来なかった。更に搭載が予定された30II型30mm連装機関砲とPL-4セミアクティブ・レーダー誘導AAMの開発が大幅に遅れ、そのため低性能の30I型30mm単装機関砲×2門とPL-2赤外線誘導AAMを搭載する事になってしまったのである。このような技術的障害と、文化大革命による国家的混乱によりJ-8のテストは遅れに遅れ、設計が完了したのは初飛行から10年経った1979年12月になってしまった。その後1980年1月により実戦的なテストのために中国空軍に引渡され、ようやく1981年から部隊に配備が開始された。

瀋陽航空機工業(現SAC)はJ-8の配備後、当初予定されていた全天候運用能力を持つ改良型の開発に着手した。これはJ-8Iと呼ばれるタイプでSL-7A火器管制レーダー(捜索範囲40km)を搭載し、各種アビオニクスを新型に換えたものである。また新しい0-0射出座席と23III型23mm連装機関砲を装備し、4発のPL-5B AAMを運用できるようになった。アビオニクスの増加により燃料タンクの容積が減少したので、航続距離はJ-8よりも短くなっている。J-8Iの試作1号機は1980年5月に完成したが、翌1981年6月25日の地上走行テスト中にエンジンが発火し完全に失われてしまった。試作2号機は1981年4月に初飛行を行い、1985年7月に設計が完了した。この後J-8Iは量産に移されたが、J-8もJ-8Iもほとんど生産されず1987年に生産は終了した。1990年代後半、J-8Iの一部はレーダーの換装や新型アビオニクスの搭載を含む近代化改修が施され、この改修を受けた機体はJ-8Eと命名された。また一部の機体は、J-8R偵察機に改修された。

J-8はJ-7を双発機にスケールアップしたような機体で、水平尾翼付きのデルタ翼構成を採っている。双発エンジンになったため余剰推力は原型のJ-7を上回っており、運動性能を考慮して主翼を大型化したため、上昇性能や旋回性ではJ-7を上回ることに成功した。

機首のエア・インテイクにはノーズコーンを装備しており、その内部にはSR-4火器管制レーダーを装備している。固定武装は30mm連装機関砲で、J-8Iでは23mm連装機関砲に換えられた。主翼下面には4箇所のハードポイントが設けられ、PL-2空対空ミサイル、50〜500kg普通爆弾、ロケット弾ポッド等が装備できる。また胴体下面のハードポイントには720L増槽が装備可能だ。

J-8は200機程度が中国空軍・海軍により運用されているが、改良型のJ-8IIの開発やより高性能なJ-11の配備などにより今後は徐々に退役していくものと思われる。

J-81969年7月初飛行最初の生産型。昼間戦闘機
J-8I1981年4月初飛行J-8の改良型。SL-7A火器管制レーダーを搭載し、全天候性能を持つ
J-8E J-8Iの改修型。JL-7AGレーダー新型アビオニクス、レーダー波警告装置を搭載。機体寿命の延長工事も行われる。
J-8R J-8の偵察型
J-8ACT1990年6月初飛行フライ・バイ・ワイヤ試験機
J-8II1984年6月初飛行J-8の発展改良型。エア・インテイクを機体側面に移し機首に大型レドームを備える
J-8轟炸機 海軍航空隊の次期攻撃機コンペに瀋飛が提示した案。J-8を原型として、エア・インテイクを機体側面に移す。最高速度(M2.20→M1.75)と上昇性能(20,000m→17,000m)を抑える代わりに、最大搭載量を2.2トンから4.5トンに、航続距離を3,000kmに延伸する計画であった。国防科学工業委員会のJ-8IIの開発を優先すべしとの決定により開発は中止された。
J-8航続距離延伸型1988年11月初飛行J-8に1400L大型増槽×3を搭載した航続距離延伸型。南沙諸島まで作戦行動半径を伸ばすために改造が行われた。武装は30mm機関砲とPL-2 AAM×2。

性能緒元
重量13,850kg
全長21.52m
全幅9.34m
全高5.41m
エンジン渦噴7A(WP7A) A/B 59.82kN ×2
最大速度M2.2
航続距離423nm
上昇限度20,500m
武装23III型連装23mm機関砲×1(J-8I)
 30I型30mm単装機関砲×2(J-8)
 PL-2空対空ミサイル(霹靂2)
 PL-5空対空ミサイル(霹靂5)
 各種爆弾/ロケット弾
乗員1名

▼最初の量産型J-8。キャノピーが前に開くのが特徴の1つ。

▼全天候性能を有するJ-8I。

▼J-8Iのアップグレード型 J-8E。垂直尾翼に2つの黒点があるのがJ-8Iとの識別点。



【参考資料】
Jウイング特別編集 戦闘機年鑑2005-2006(青木謙知/イカロス出版)
Chinese Defence Today

【関連項目】
J-8II戦闘機(殲撃8B/F-8II/フィンバックB)
J-8R偵察機(殲撃8R/JZ-8)

中国空軍

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