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rglc85tj8h 2026年04月19日(日) 11:14:58履歴

■性能緒元[1][2]
| 空虚重量 | 35.49t以上 |
| 最大離陸重量 | 61t |
| 全長 | 34.02m |
| 全幅 | 38m |
| 全高 | 11.6m(レ―ダーアンテナ含まず) |
| エンジン | 渦軸6A(WJ-6A)ターボプロップエンジン(4,500ehp)4基 |
| 巡航速度 | 550km/h |
| 航続距離 | 4,000km |
| 乗員 | 航空乗務員4名(機長、副操縦士、航法兼通信士、航空整備士)+指揮管制チーム5名 |
KJ-200(空警200)はY-8輸送機をベースにした早期警戒機。Y-8をベースとした特殊任務機に与えられる「高進(GaoXin)」に由来して「高新5号(GX5)」の名称で呼ばれることもある。NATOコード名は「Moth」[3]。
【開発前史】
中国では、長らく対空警戒は地上配置型のレーダーサイトがその任を担っていたが、ステルス機や巡航ミサイルといった新たな脅威の登場、海軍の活動範囲の拡大に伴って、沿岸のレーダーサイトではカバーできない海域への展開が増えたこと、台湾空軍がE-2T早期警戒機を導入するなどの状況に対応するため、KJ-2000早期警戒管制機の開発を進めた、KJ-2000は、2006年から07年にかけて空軍に配備され、長年の懸案であった早期警戒管制機の実用化にこぎつけた。KJ-2000の配備は、中国空軍は本土防空を主任務とする「国土防空」空軍から、国境を越えた遠距離任務を可能とする「攻防兼備」空軍に進化するうえで不可欠な用途となった[4]。
しかし、KJ-2000は高価な機体であり、改造母機をロシアから輸入したIL-76としていたこともあって生産機は四機のみであり、広大な中国の領域をカバーするにはあまりに少ない機数に留まっていた。これは中国空軍も当初から織り込み済みであり、KJ-2000の開発と並行して、それを補完するため調達容易な中型の空中早期警戒管制機を開発することを決めていた[5]。外国機に頼れない以上、国産機をベースにするしかないのだが、21世紀初頭の中国には選択肢は一つしかなかった。それは、旧ソ連のAn-12の中国生産版であるY-8中型輸送機しか存在しなかった[1]。しかし、IL-76と比較すると、約50トンの貨物輸送能力を有するIL-76に対してY-8は15トンの輸送力しかなく、機内容積に至っては、IL-76の40%しかない状態であり、搭載可能なアビオニクスの量やオペレーターの人数で、大きく見劣りするのは否めなかった[1]。航続距離や飛行速度、飛行高度という長時間の哨戒活動を行う空中早期警戒管制機にとって重要な性能においても、ジェット機であるIL-76とターボプロップ機であるY-8では大きな差があった。
しかし、ほかに選択肢のない中国空軍は、その前提を許容したうえで、KJ-2000を補完する存在として、フルスペックではないもののある程度の性能を有する機体を一定数揃えることで、全体としての防空網の強靭化を図る選択をしたのだった。中国空軍では、高性能な大型早期警戒管制機であるKJ-2000を「戦略任務」に用いて、早期警戒管制任務の中核とするのと並行して、前線の戦術任務に用いるKJ-2000よりも小型・低コストで調達可能な早期警戒機を量産して、4機しか存在しないKJ-2000を補う「ハイ・ローミックス」的な早期警戒管制機の運用構想を立案するようになった[1]。後者は、戦術任務や、数の少ないKJ-2000が配備されていない空白地域に展開して早期警戒ネットワークの欠を埋める存在と目されていた。この戦術早期警戒管制機は、「空警-200(KJ-200)」の名称が付与された[1]。
【開発史】
KJ-200の開発は、機体を陝西飛機工業集団公司が、レーダーをはじめとするアビオニクスは南京電子技術研究所(第14研究所)が中心となって進められた[6]。レーダーシステムのテストベッドとなる技術実証機は2001年11月8日に初飛行に成功した[7]。これはY-8F200輸送機に早期警戒レーダーシステムを搭載したもので、新方式のバランスビーム式レーダーの技術実証が行われた。
KJ-200の設計案は2003年5月に、装備調達を司る総装備部の批准を受けて、正式にKJ-200試作機の製造作業が開始された[7]。KJ-200試作機ではベース機を新型のY-8F600に変更して、機体性能の改善を図っている。開発陣は主翼の構造や燃料系統の設計作業、エンジンの改良などを進め、これらの改良点を盛り込んだKJ-200試作1号機は、2004年もしくは2005年1月に初飛行に成功した[1][7]。開発ペースは順調で、2006年1月には試作1号機が試験運用のために空軍に引き渡された[1][7]。
しかし、KJ-200は中国空軍による運用試験で様々な問題が発生したとされる[8]。まずベースとなったY-8輸送機が人員輸送を前提として製作された機体では無いため、キャビン内部の振動や騒音防止が十分でなく、機内での騒音レベルは作業に支障を来たす水準に達していた。また機体の上部に搭載されたバランスビーム式アンテナ・フェアリングによって機体の空力的特性が変わり、飛行時の安定性劣化を招くこととなった。
そして2006年6月3日、KJ-200試作機が安徽省で墜落事故を起こすという重大インシデントが発生した[6][7]。搭乗していた40名のうち35名が電子技術者で、全員が死亡した。事故の様子を見ていた付近の住人は「空中で姿勢を崩して落ち、大爆発を起こした」と証言しており、機体になんらかのトラブルがあったものと思われた。事故当時空は曇っていたが雨は止んでおり、悪天候による墜落とは考え難かった。JDW誌によれば墜落の直接的原因は防氷装置の不具合によるもので、機体の揺れた際に定員を大幅に超えて乗り込んでいた技術者達(座る席が無かった為シートベルトも締めていなかった)が一斉に機体前方に飛ばされたため、機体が大きくバランスを崩して墜落したという話を伝えていた。
20006年9月には新華社の報道として、調査の結果事故機が何度も過冷却の水滴を含む雲のある空域を飛行して、機体表面に着氷を生じた事が墜落原因であったと報じられた[7]。Y-8には電気加熱式融氷装置が装備されていたが、これは、結氷を防ぐため事前に作動させておくことはできず、凍結後に搭乗員が手動で起動するしかないという問題があった。加えて、この装置では主翼の60%しかカバーしておらず、翼端部分の凍結には対処できなかった[1]。翼端部の結氷が進むと失速を起こしやすくなり、機体全体の重量増にもつながるので、特に低速飛行時の危険性が高まった[1]。さらに、KJ-200試作機は搭載アビオニクスの量が多く、機体重量の余裕に乏しかったこと、バランスビーム式アンテナの搭載で空力特性が変わり、安定性が劣化していたこともなども相まって、結氷による影響を大きなものとした[1][8]。
この事故によりKJ-200の開発に携わっていた技術者多数が殉職し、試作機が失われたことと合わせてKJ-200の開発にとって深刻な影響を与えることとなった[6]。この事件で、Y-8輸送機を特殊任務機として運用する上での性能不足が明確になったので、性能を向上させた改良発展型であるY-9輸送機(運輸9)が開発されるきっかけの一つとなった[1]。
事故原因の調査と対策に時間を要したため、諸対策を施した試作2号機の製造は2007年にずれ込み、2007年11月になって3機目の試作機製造が報じられ、2007年中に完成している。試作2号機では、安定性改善のため水平尾翼に垂直安定板が追加された[3]。これが以後のKJ-200に受け継がれることとなり、Y-9輸送機にも同様の水平尾翼垂直安定板が採用されている。
試作機の墜落事故と多数の殉職者という困難を経てKJ-200は実用化に漕ぎ着け、2007年末に量産に着手された[1]。2009年10月1日に行われた中華人民共和国建国60周年記念軍事パレードでは中国空軍のKJ-200 2機が天安門広場上空を飛行して、KJ-200の存在を公式に内外にアピールした[7]。ただし、この時点では部隊配備の直前という段階でありパレード参加はそれに先立つもので、正式な空軍と海軍航空隊への配備は翌2010年からとなる[1]。
運用開始後のKJ-200の配備は順調に進むこととなった。それは同機の調達コストと運用コストの安さによるところが大きかった。Y-8をベース機とするKJ-200の調達費用はKJ-2000の四分の一であり、運用コストは五分の一に過ぎなかった[1]。これは限られた予算の中で、空軍と海軍航空隊が空中早期警戒機を調達して、空中監視システムを構築するうえで大いに寄与したとされる[1]。
それまで地上配置のレーダーサイトに依拠していた対空警戒網に、KJ-2000とKJ-200という二種類の空中早期警戒管制機を投入することで、それまで探知が困難だった第一列島線までの警戒網を構築することが出来るようになった。それが形となったのが2013年に策定された東シナ海における防空識別圏の設立であり、中国がアメリカの介入を抑止するいわゆる「A2/AD (接近阻止/領域拒否)戦略」の実効性を確保するユニットの一つとして機能したのがKJ-2000とKJ-200のコンビであった[1]。
【機体特徴】
KJ-200は基本的にはY-8F600をベースとして、早期警戒レーダーシステムを搭載した機体である。ている。前述の通り部隊配備されたKJ-200には装着されているが、これは試作1号機には無かった装備で、機体の改修に伴い安定性改善の必要性が生じたための措置であった[1][3]。これにより、エンジンが一基停止した状態でも機体の安定性を維持できるようになったとされる[3]。
Y-8F600は1999年に運用が始まったY-8の大規模近代化型であり、開発にはウクライナのアントノフ設計局、カナダのプラット・アンド・ホイットニー・カナダ社が協力しており、ほかにもイギリスのダウティ・グループ、アメリカのハネウェルといった外国企業も参加する国際共同開発機であった[9]。
Y-8F600はボディプランを見直し、近代的な輸送機として大幅な設計変更が施された。もともとガラス張りだった機首はソリッド式になりコクピットは窓枠の少ないスマートな外観になっている[10]。主翼燃料タンクはインテグラルタンクに変更することで燃料搭載量の増加が図られており、最大燃料搭載量は19tに達している[10][9]。Y-8F600のペイロードは原型の15tから20tに増やされており、機体後部に貨物搬入用のランプドアを有している[9]。しかし、KJ-200では任務の変更に伴いランプドアは廃止され、後部胴体はそれに伴い楕円形の断面になった[10]。Y-8は部分与圧でであったが、Y-8F600では機内は完全与圧化されており、これは貨物室をオペレーター室に改造したKJ-200で有効に活用されている[3][10]。垂直尾翼はより高く面積を増やしたものに変更された。前述の通り、KJ-200試作1号機の事故後、安定性不足の対策として水平尾翼翼端に垂直安定板が追加された[1][3]。
Y-8F600は性能向上を図って、エンジンに民間取引で調達したP&Wカナダ製PW-150Bターボプロップエンジン(5,070ehp)として、プロペラもダウティR-408型6枚ブレード低騒音プロペラを採用する計画であった[10]。しかし、KJ-200は軍用機であることから、軍では外国製コンポーネントに依存するリスクを考慮して国産エンジンへの変更を指示。これによりKJ-200では既存の渦軸6(WJ-6)ターボプロップエンジンの改良型WJ-6A(4,500ehp)に国産のJL-4型6枚ブレードプロペラの組み合わせに変更[1][3][10]。エンジン出力が下がったことで当初想定していたほどの性能向上は見込めなくなったが、これはリスク軽減のためのやむを得ない措置とみなし得るだろう。
アビオニクスも全面的な近代化が図られており、先進的な電子飛行計器システム(EFIS)、エンジン計器および乗員警報システム(EICAS)、先進的な通信システム、レーダーシステム、航法システム、双方向データリンク通信システム、空中衝突防止装置(TCAS)、強化型対地接近警報装置(EGPWS)、飛行制御システム、先進的な空調システム、補助動力装置(APU)を装備し、環境適応能力を向上させている[9]。コクピットは8×10インチの液晶多機能画面6枚で構成され、アビオニクス、エンジン、油気圧系統、操縦装置、環境制御、燃料、飛行制御システムの各種パラメーターを表示する[5]。これにより、パイロットの作業負担が大幅に軽減され、操縦士と副操縦士の二名での操縦が可能となった[5][10]。コクピットにはほかに、整備士と航法/通信士の二名が着座している[5]。
長時間の任務に備えて乗員の戦闘力の維持を図るため、休憩室やトイレといった設備も用意されている。休憩室はコクピット直後に配置されており、オペレーターが交代で休憩を取る際に用いられる[5]。休憩室には、食糧庫、給湯器、電気オーブン、洗面台、そして二段ベッドが備えられており、長時間にわたる緊張が連続する業務において、休息とリラックスの機会を与えて、乗員のリフレッシュを図る施設として機能する[5]。休憩室と隣あった区画が、オペレーターが配置された指揮・管制室である[5]。その後方の後部機器区画には、環境制御、冷蔵、酸素供給システムが配置され、航空機の乗員の生存に必要な機材が搭載されている[5]。
KJ-200の機内の各コンパートメントは機能別に分かれて配置されている。第一の目的は、各種機能の区画を分けることで電力配分の集中管理とシステム間の電磁両立性が向上するためである[5]。航空機の電力配分は複雑なネットワークを構成しており、機材によって電圧が異なる場合も少なくない、KJ-200の場合は、休憩室と作業室の主電源は標準的な28V直流電源と115V直流電源が用いられているが、一部の居住システムや操作システムには220Vの民生用電源が用いられている[5]。一方で、機器区画ではレーダーの電磁パルスを作動させるためはるかに高い電圧と電力が必要となるので、それぞれの区画を分離することで、電力配分が容易になり、レーダーシステムを他のシステムからの電磁干渉から分離できるため、双方にとってメリットが多くなる[5]。もう一つの目的は、ジェット機に比べて騒音が大きいターボプロップ機故の措置である。騒音と振動は乗員の疲労に直結するため、その影響を抑えるため配置を工夫したうえで、各区画を分離することで、振動と騒音の影響を抑えるための措置が取られている[5]。
機体サイズの問題からKJ-2000が17名のシステムオペレーターを要しているのに対して、KJ-200は5名と三分の一以下の人数しか搭乗できなかった[1][4]。そのため、空中早期警戒管制機としての機能性やデータ処理能力の面で差が生じるのは否めなかった。機上処理能力の限界を考慮して、KJ-200では必要に応じて探知情報を自機で処理するのではなく、指揮系統の上位にあるKJ-2000や地上・艦上の指揮管制センターにデータリンクを介して送信して、KJ-2000や指揮管制センターが情報処理と指揮管制を実施するモードが備わっている[1]。この場合、KJ-200は空中レーダーとして機能して、指揮管制は他者にゆだねる形となる。
これらの改良により、Y-8F600の最大離陸重量は65tにまで増加している[10]。しかし、KJ-200ではエンジンをアンダーパワーな国産WJ-8Aに換装しており、これを考慮にいれると各種性能に影響が及んでいるものと思われる。
Y-8はもともと複合材の使用範囲が少なく、Y-8Cでは空虚重量が35tと西側の同クラスの輸送機であるC-130の32tと比べても重く、それだけペイロードが少なくなる問題があった[1]。Y-8F600でも複合材の使用範囲を増やす対策が取られていたが、最大積載量20tで飛行すると搭載燃料は10tと、満載の半分近くにまで減じてしまっていた[9]。早期警戒機として航続距離は重要な要素であるが、搭載する早期完成用アビオニクスの重量もかなりのもので、どのようなバランスにするかは設計陣の課題であったと考えられる。Y-8F600の最大航続距離は4,800km(フェリー飛行)に達するが、KJ-200の最大航続距離は4,000kmと、800kmの低下を余儀なくされていることを考慮すると、KJ-200の満載燃料はY-8F600の19tよりも少ないものに留まっているものとみられる[1][9]。これは、電子装備の重量とのトレードオフ、そしてエンジンをWJ-6Aに変更したことによるアンダーパワー化、バランスビーム式アンテナの搭載による空気抵抗の増大などが合いまった結果なのだろう。
中国が本格的にこの問題に対処できるようになったのは、21世紀に入って中国の複合材技術が急速に進歩してからのこととなる。それ以降に開発されたY-9輸送機では全面的な複合材導入がなされたことによりY-8と比較して構造重量が3t近く減量され、ペイロードは15tから25t(標準。最高30tまでの搭載が可能)にまで増大した上に、機体寿命が2.5倍に伸びるという成果を得ることが出来た[1][11]。
KJ-200は4,000kmの最大航続距離を有しており、300km先の空域に進出して4.5時間の連続滞空を行って早期警戒任務に従事する能力を備えている[1]。1,000km先の空域に進出した場合は、連続滞空時間は2時間未満となる。これを、大型機であるKJ-2000と比較すると、KJ-2000は6,500kmの航続距離を有しており、300km先の空域に進出した場合、連続8時間の、500km先の空域では6.7時間の、1000km先の空域では5.5時間の滞空が可能であり、長時間にわたる領空警戒・管制任務に従事する能力が確保されている[4]。KJ-200の巡航速度は500km./hに留まり、KJ-2000の600〜700km/hには及ばなかった[1][4]。これは前線に展開するまでにより多くの時間を要することになり、航続距離の短さも相まって、空中早期警戒機としての有効性において遜色があった[1]。
さらに、KJ-2000とKJ-200は空中早期警戒機として重要な到達高度においても差があった。KJ-2000の場合、警戒・管制任務では高度9,500〜10,000mで監視任務に就いていたが、KJ-200では高度8,000mでの監視を行っていた[1][4]。この高度差は、同じレーダーを用いた場合、探知距離で20%の差がついてしまうので、KJ-200は、KJ-2000と比較して、レーダーの探知距離、特に低空目標に対する遠距離探知能力の面で相応の差がつくのは否めなかった[1]。
それを補うのが、KJ-200の調達・運用コストの安さであり、質の差を数で補うことが求められ、空中早期警戒網を早期に構築するためには、単機の性能に劣ったとしても数をそろえることを優先したのが中国空軍の方針であった[1]。また、大型機であるKJ-2000は高性能ではあるが、それゆえ調達・維持費用も高く、離陸重量が200tに迫る大型機であることにより運用可能な飛行場の条件も厳しく、野戦飛行場や、島嶼部、高地といった条件の悪い飛行場での運用は困難であった。特に中国西部の海抜4000mを超える高原地帯では、IL-76のエンジン推力が40%も低くなってしまうので、離陸距離は通常より80%近く増加してしまうため、多くの空港ではKJ-2000を用いることは叶わなかった[1]。中型輸送機ベースのKJ-200であれば、KJ-2000よりも空港に求められる条件が緩和される点も評価の対象であった。
実際の運用においては、KJ-2000×1機とKJ-200×2〜3機を組み合わせて、前者が高高度から広域警戒を担当し、KJ-200は中〜低高度、特に低空域からの巡航ミサイルなどの侵入を警戒する役割分担を行うことが構想された[12]。無論、KJ-200単独で早期警戒任務に従事することもあり、その際には戦闘機が随伴飛行を行い、貴重な存在であるKJ-200を護衛する[12]。
【アビオニクス】
KJ-200は胴体上部にスウェーデンのエリクソン社製PS-890エリアイ(Erieye)早期警戒レーダーに似たJY-06型バランスビーム式アンテナを装備している[3]。PS-890は1994年に実用化したSバンドの側方監視機上レーダー(Side-Looking Airborne Radar:SLAR)で、100個の放射素子を持つフェイズド・アレイ・レーダーだが合成開口式(Synthetic Aperture Radar:SAR)ではないリアル・ビーム方式である。戦闘機大の目標を350kmで探知できるが、味方機の管制はデータリンクを通じて地上で行われるので厳密には早期警戒管制機(Airborne Warning And Control System:AWACS)とは言えない。
PS-890は、フェイズド・アレイ・レーダーを左右両面に配置した長方形のアンテナを航空機の支持架の上に背負い式に搭載したもので、従来型の円盤型ロートドームと比較するとサイズをコンパクトにできるので、空気抵抗が30%減少し、機体の安定性は60%向上する効果があった[1]。ロートドームでは必要なレドームの回転機構は有しておらず、サイズと重量を抑えることが出来るので、PS-890のレーダー重量は700kg前後と軽量で、コミューター機やビジネスジェット機といった小型双発機をAEW&C(airborne early warning and control:AWACSよりも広い概念)機に転用できるうえで画期的であった。レーダーの価格も1990年代中期の価格で3,000万ドルと、米E-3AのAN/APY-2の価格が1億ドル近いものと比較してかなり安価に抑えることが出来た[1]。
中国では、IL-76に比べて小型プラットフォームであるY-8をベースとした早期警戒管制機を開発するにあたり、諸外国の先行事例を調査検討した結果、PS-890エリアイ早期警戒レーダーのバランスビーム式アンテナが最適であるとの結論に達した[1]。中国がスウェーデンから技術的支援を受けたのかどうかは不明だが1990年代以降の状況では西側からからの兵器技術導入は極めてハードルが高く、調達はなされなかったとみるのが妥当だろう。
KJ-200のJY-06型バランスビーム式レーダーは、アクティブ電子走査アレイ(Active Electronically Steered Array:AESA)レーダーで、そのサイズは全長9m以上、全高60cm前後でレーダーアレイの面積は約5.4平方メートルを確保している[1]。これはPS-890より10%近く大きくなっているが、重量は大差ない700kg以下に抑えており、レーダー関連設備全ての重量を合わせても2.5tに抑えている[1]。レーダーサイズが大きくなっているのは、Y-8F600という60t級輸送機に搭載するので、小型機への搭載を前提としたPS-890ほどサイズの小型化に留意しなくてよいことによる[1]。レーダーアンテナの先端には開口部があり、これは空気を取り入れてシステムの冷却に用いられ、地上での整備の際にはここから空調ダクトを入れてシステムの冷却を行う[5]。
JY-06型レーダーは、KJ-2000がLバンドレーダーであったのに対してSバンドレーダーに変更されている。Lバンドレーダーはステルス機の探知には有利である者の、レーダーを構成する送受信モジュールが大型で重量も重くなってしまう傾向があった。そのため、レーダーが小型化すると送受信モジュールの搭載数が減じてしまい、性能低下が著しくなってしまう問題があった[1]。
KJ-200のSバンドレーダーは、5,4平方メートルのレーダーアレイに合計2,500個以上の送受信モジュール(半導体はガリウム砒素を利用)を並べているとみられている[1]。2000年頃の中国の電子技術の水準では、送受信モジュール一個あたりの送信電力は10〜15W、レーダー送信電力は35kWに達する[1]。KJ-2000の三面アレイレーダーと比較すると、アレイの面積と送受信モジュールの数の差から、その探知距離は前者の80%の性能に留まった[1]。
JY-06型レーダーは、300kmを超える探知能力を備えており[5]、300以上の空中及び水上目標を同時に探知し、そのうち100を追尾することが出来、迎撃任務においては5〜10機の戦闘機を同時に管制する能力がある[1]。レーダーの能力ではKJ-2000に劣るものの、レーダーのコンパクトさ、調達コストの安さ、様々なプラットフォームに統合可能な点で、トータルでは許容範囲内であると評価されている[1]。開発陣では、KJ-200のレーダーの効率と空中状況把握能力を強化するため、レーダーの冷却、放熱、電源供給、マルチタスクデータ処理能力の能力向上が図られている[1]。左右のレーダーアレイは独立捜査と連動捜査の二モードが用意されており、これにより戦場適合性と空域探知能力を向上させている。通常は左右が独立して捜査するモードを用いるとのこと[1]。
PS-890と共通するバランスビーム式レーダーの問題として、レーダーの前後に60度ずつの死角が生じることが挙げられる[1]。KJ-200はこの問題に対処するため尾部に捜索レーダーを装備して後方視界の欠を補ったが、このレーダーはバランスビーム式レーダーに比べて探知距離と精度において遜色があった[1]。
KJ-200のレーダーの性能を十全に発揮するには、先進的な機上電子機器と十分な数のオペレーターの存在が不可欠となる。KJ-200の機内スペースの50%が各種アビオニクスの搭載スペースとされており、機内中央部には5基のコンソールが配置されており、航空監視、通信・航法、指揮誘導、電子偵察、電子対抗戦などの任務を担っている[1]。これらの統合デジタルアビオニクスシステムの設計は、ARINC429およびRS422データバスに基づいている[3]。
その他のアビオニクスについて以下で説明する。KJ-200は機首をソリッド化して、もともと航法士席があった機首下部には新たに気象レーダーを搭載している[5]。機体上部と下部には複数のブレードアンテナが配置されているが、これは無線通信アンテナ、データリンク、「北斗」衛星位置測定システム、指揮統制アンテナ、敵見方識別装置を含むさまざまな内部システム用のアンテナとして機能する[5]。バランスビーム式レーダーアンテナほど派手ではないが、KJ-200が早期警戒管制機として機能するうえで不可欠の装置である。Y-8に比べて高さを増した垂直尾翼の頂部には、電子情報収集用のESMアンテナが配置されている[3]。
【実用化後の状況】
KJ-200には上記のような性能的限界はあるが、戦術・作戦レベルの空中警戒任務に対応するに十分な能力を有しており、同機のバランスビーム式レーダーの広域探知能力は空軍の求める要求を満たすものであると評価された[1]。高性能ではあるが外国機をベースとして四機のみのKJ-2000を補完する存在として、国産プラットフォームを利用できるKJ-200は当時の中国の領域警戒態勢を構築するうえで不可欠であったと言えるだろう。
KJ-200は中国空軍向けに少なくとも5機、中国海軍航空隊向けに6機が引き渡された[3]。空軍のKJ-200の内、4機は南京軍区所属の空軍第26師に配備されている[3][13]。第26師にはKJ-200より能力の高い早期警戒管制機であるKJ-2000も配備されており、KJ-200はKJ-2000を補完して早期警戒任務や電子偵察任務に当たるハイ・ローミックス的な運用が行われている。
中国空軍ではKJ-2000早期警戒管制機(空警2000) の開発成功により、長年の課題であった空中早期警戒管制機の欠如を解消することが出来た。中国空軍ではKJ-2000の性能に満足し、台湾方面で台湾空軍のE-2T早期警戒機に対して性能的に優位に立てたことで、緊急の需要は満たし得たと判断した[1]。
しかし、2010年代以降になると、中国海軍と空軍の作戦範囲は、中国沿岸部から次第に拡大し、第一列島線を超えて第二列島線に至るまでの遠洋にまで及ぶようになってきた[1]。従来の地上配置レーダーの探知距離を超えるこれらの空域では、早期警戒管制機は、洋上の広域監視能力、電子偵察能力、統合作戦能力、指揮管制など、外洋での作戦を支える中核的存在としての重要性をさらに増すことになったのである[1]。そうなると、早期警戒管制機には、監視・追尾可能距離の延伸、高精度な目標捜索追尾能力、効率の高いシステム性能、ステルス機に対する高い探知能力、電子戦に対する高い抗堪性、高度な指揮管制能力と、さらなる能力向上が求められるようになった[1]。
もっとも確実な対策は高性能な大型空中早期警戒管制機であるKJ-2000の増産である。しかし、KJ-2000はソ連で開発されたイリューシンIL-76輸送機をベースとしたことで、母機の供給に難があった。実際に2005年に中国とロシアは、34機のIL-76輸送機と4機のIL-78空中給油機を輸出する契約を結んだものの、後に価格面で折り合いがつかず供給時期が遅延するなどのトラブルが相次ぎ、最終的に契約は破棄される結末となっている[1]。もし、この段階で無事にIL-76/78の調達が実現していれば、KJ-2000の第二次発注が行われ、中国の南北に合計二部隊のKJ-2000が配備される計画が実現し、2010年前後にはKJ-2000の機数は8〜10機に達していたと考えられている[1]。
KJ-2000の増勢が見込めない以上、空軍としては次善の策を検討せざるを得なかった。上記のさらなる能力向上については大型機をベースとした高性能機であるKJ-2000ならこれらの要求に対応できたが、開発当初から性能面で遜色があるのを前提としていたKJ-200では性能向上にも限界があった[1]。それゆえ、軍ではKJ-200の配備と改良を進めつつ、Y-9輸送機を利用した新しいKJ-500早期警戒管制機(空警500)の開発を決定。KJ-500はKJ-200に代わって、2014年から空軍へ、2015年には海軍航空隊への配備が開始されることになった[14]。
KJ-500の配備が進む中でも、それと並行して既存のKJ-200については段階的なアップグレードが図られており、レーダーの性能向上を含む様々な改良が施されることで早期警戒管制機としての戦力の維持・改善が図られている[1]
以下にKJ-200の近代化改修型について紹介する。
| KJ-200A | 2016年12月にその存在が確認されたKJ-200の近代化改修型。空軍のKJ-200は全機がKJ-200A仕様にアップグレードされたことが確認されている[3][15]。KJ-200Aでは、機首の気象レーダーを撤去し、新たに空中警戒用レーダーを搭載したレドームを装備。これにより、KJ-200のバランスビーム式レーダーアンテナの問題であった前方方向の死角を解消することが出来たと考えられている[15]。 |
| KJ-200AG/KJ-200G | 2022年2月に写真が公開されたKJ-200Aの改良型で、非公式にKJ-200AGもしくはKJ-200G(Gは改Gaiの略語)と呼ばれている。コクピット上部に空中給油用のプローブを設けて航続距離の延伸を図った機体。ほかに胴体後部にECMアンテナを追加している。KJ-200Aの一機がKJ-200AG仕様に改装されたのが確認されている[15]。 |
| ZDK-06 | KJ-200の輸出版。2016年珠海航空ショーで模型が展示されてその存在が明らかにされた[16]。JY-06型バランスビーム式レーダーのみを提供してY-8と異なる機体に搭載することも可能。2025年段階で輸出は確認されていない。 |
▼空軍のKJ-200

▼海軍航空第2師団のKJ-200

▼海軍航空隊にはKJ-200が6機以上配備されている模様。右端の機体はY-8J哨戒機

【参考資料】
[1]银河「王者归来—从“新大预”的出现看中国预警机的发展与技术选代(中部)」『舰载武器』2025.12/No.471(中国船舶集团有限公司)16〜31ページ
[2]荒木雅也「中国人民解放軍空軍主要装備カタログ」 『現代中国人民解放軍総覧』(アルゴノーツ社/2023年9月28日)276ページ
[3]Chinese Military Aviation「KJ-200/200H Moth/High New 5」http://chinese-military-aviation.blogspot.com/p/su...
[4]银河「王者归来—从“新大预”的出现看中国预警机的发展与技术选代(上部)」『舰载武器』2025.11/No.469(中国船舶集团有限公司)17〜31ページ
[5]观海「空警-200预警机性能详解」『兵工科技 中国预警机』2017.13(兵工科技杂志社)49〜53ページ
[6]Chinese Defence Today「KongJing-200 Airborne Early Warning & Control Aircraft」
[7]空军世界「空警200(运-8“平衡木”)预警机」
[8]漢和防務評論 2008年7月号「空警200預警機出現問題」(Jeff Chen/漢和防務中心)
[9]Global Security「Y8F600」https://www.globalsecurity.org/military/world/chin...
[10]Yefim Gordon、Dmitriy Komissarov著『Chinese Air Power:Current Organisation and Aircraft of All Chinese Air Forces』(Midland Pub Ltd、2010年8月)125〜131ページ
[11]Global Security「Shaanxi Y-9 (Yun-9)」https://www.globalsecurity.org/military/world/chin... [12]「空警-2000预警机性能详解」『兵工科技 中国预警机』2017.13(兵工科技杂志社)45〜48ページ
[13]Yefim Gordon、Dmitriy Komissarov『Chinese Air Power:Current Organisation and Aircraft of All Chinese Air Forces』(Midland Pub Ltd、2010年8月)158、160ページ
[14]Chinese Military Aviation「Surveillance Aircraft I/KJ-500」http://chinese-military-aviation.blogspot.com/p/su...(2018年10月7日閲覧)
[15]The WarZone「China's Massive Fleet Of Radar Planes And The Strategy Behind It」(ANDREAS RUPPRECHT, THOMAS NEWDICK/2023年4月5日)https://www.twz.com/chinas-massive-fleet-of-radar-...
[16]童跃「外贸预警机再出新品」『兵工科技 中国预警机』2017.13(兵工科技杂志社)63〜67ページ
【関連事項】
KJ-2000早期警戒管制機(空警2000)
KJ-500早期警戒管制機(空警500)
Y-8輸送機(運輸8/An-12)
Y-8早期警戒機(Y-8AEW)
Y-8電子情報収集機(Y-8EW)
Y-8空中指揮機(Y-8ACP)
Y-8電子戦機(Y-8EW/ECM )
Y-8哨戒機(Y-8MPA)
Y-8洋上偵察機(Y-8ASA)
Y-8Q対潜哨戒機(運輸8Q)
中国空軍
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