日本の周辺国が装備する兵器のデータベース


性能緒元(シャーシ)
重量28t
車体長 
全幅 
車体高 
エンジン 
最高速度80km/h
航続距離450km
センサー光学/電子ターレット×1(技術実証車/改良型どちらも搭載)
センサーFW-2型捜索/追尾用レーダー×1(改良型のみ搭載)
装甲無装甲(技術実証型)/圧延鋼板装甲(改良型)
乗員  

性能緒元(兵装)
武装76.2mm対空砲×1(搭載弾数49発)
旋回範囲360度
俯仰角度-10〜+75度[1]、もしくは-2〜85度[4]
砲口初速980m/s
発射速度110発/m
有効射程10km(航空機)/6km(UAV/巡航ミサイル)/3km(地上/水上目標)
有効射高8km

SA-2型76.2mm装輪自走高射砲は輸出市場向けに開発されたトラック車載式の自走高射砲で、艦艇に搭載されている76.2mm単装砲を車載化して開発された[1]。

その存在が知られるようになったのは2015年9月にネットにアップされた写真であり、外国の訪問団による兵器視察の写真の中にトラックの荷台に高射砲を装備した砲塔が積まれているのが確認された[2]。一般向けに初公開されたのは2016年11月に開催された珠海航空ショーであり、中国の兵器輸出を担当する企業である中国北方工業集団公司(NORINCO)によって公開された[1]。

その後、SA-2は各種試験を経て、2018年には輸出用装備としての認証を得た[3]。2019年には同じく輸出向けに開発されたFW-2型車載射撃統制レーダーとの組み合わせにより、外国の軍隊から派遣された代表団の前で標的機の撃墜に成功[3]。2019年の珠海航空ショーでは、捜索・追尾レーダーを追加して単独での作戦能力を獲得した発展型「SA-2改進型」が展示された[3]。

【性能】
まず、2016年に公開された最初の試作車について性能紹介を行う。

SA-2は、6輪式の野戦トラックの荷台に、高射砲、射撃統制システム、発電装置、各種センサーといったシステム一式を搭載している。

このトラックの詳細については不明であるが、SA-2と同じく輸出用防空兵器である「天龍30」地対空ミサイルシステムのシャーシである北方ベンツ製6輪野戦トラックと似かよった点が見受けられるので、同じ対空車両としてシャーシの共通化を図った可能性も考えられる。SA-2の全備重量は28tで、最高速度は80km/h、航続距離は450kmとされる[4]。

車体配置は、前方から乗員が搭乗するキャビン、車体中心部は射撃統制システムや発電機、車体後方に高射砲を配置するというものになっている。高射砲は全周旋回が可能で、車体には四箇所のアウトリガーが装着され、射撃時にはアウトリガーを展開して装着された油気圧ジャッキで車体を浮かせて射撃プラットフォームとしての安定を図る。

SA-2という兵器を特徴付ける76.2mm高射砲は、中国海軍で広く用いられているH/PJ-26型76.2mm単装砲を基にして開発された[1][4]。H/PJ-26はロシアのAK-176M 60口径76.2mm単装砲の技術を基にして中国で国産化を図ったもので、054A型フリゲイトや056型コルベットなどの艦砲として、近年の中国海軍の艦載砲としては最も多く生産されている。

H/PJ-26は艦載砲としては小口径の部類に入るが、それでも総重量は11tを超えており車載化にあたって重量軽減は不可避であった[1]。そのため、車載化にあたってその構造に大きく手を加えられており、SA-2では高射砲本体と自動装填装置を収納した砲郭部のみが上下に稼動するクレフト砲塔方式が採用された。この方法は、砲尾と装填装置が一体化しているので自動装填装置の搭載に適しており、砲尾の位置を高くすることで後座する砲尾とターレット部が干渉し難くなるのはターレット基部の容積を採れない車載化には有効で、ターレットリング径自体も小さく出来るなどの点が評価されたと思われる。

艦艇であれば砲塔直下に給弾系統を配置できるが、当然トラックではそのようなスペースを確保することは出来ないため、砲郭部を載せている下部砲塔内に収納する方式に変更された。これにより搭載弾数は49発と艦載時よりも減少したが、砲自体の性能は艦載砲と変わらない水準を保つことに成功した[1][4]。砲塔は360度の全周旋回が可能で、砲の付仰角は-10度〜+75度であり、車体を安定化させた状態での水平射撃能力も有している[1]。砲の付仰角の駆動には電動式が採用されている[1]。砲塔は無人化されており、操砲は全てキャビンの操砲要員により遠隔で実施される[1]。

76.2mm砲は、車載化に当たって材質の見直して新たな加工技術を用いて砲身寿命の延伸と性能向上が図られており、砲身長も延ばされたことでその初速は原型の900m/sから980m/sにまで上がっている[5]。火砲としてのSA-2の性能は、口径76.2mmの砲弾を最大で10km先にまで投射でき、有効射撃高度は8km、発射速度は原型が60〜120発/分に達していたが車載化に当たって重量軽減のため110発/分にまでスペックダウンしている[10]。この射程は、機関砲としては大口径の07式35mm自走機関砲(PGZ-07)の最大有効射程4kmの倍以上であり、機関砲の射程外から攻撃してくるヘリコプターやUAVに対しても脅威となる能力を備えている[1]。有効射程は目標によって異なっており、航空機やヘリコプターに対しては10km、UAVや巡航ミサイルについては6km、地上目標や水上艦艇については3kmとされる[4]。

SA-2は、一目標当り3発の砲弾を投射することが可能で撃墜確率を高めている。かつては、高射砲により目標を撃墜するには大量の砲弾が必要であったが、砲弾の改良や射撃統制システムの高度化によりその必要数は大きく減少することが出来るようになった。特に飛行中の弾道を制御できる技術の登場や、砲弾自体の撃墜確率を高める機能を付与することで、現代の経空脅威に対抗できる能力を付与し得る見通しが現れてきた。SA-2は通常の砲弾に加えて、レーザー誘導砲弾やAHEAD砲弾などのスマート砲弾を用いて弾幕によらない単発での撃墜能力を高めているとみられる[4][5]。給弾システムは砲塔両側の弾倉から各一系統ずつ用意されている[10]。

AHEAD(Advanced Hit Efficiency And Destruction)弾とは、調整破片型ABM(Air Burst Munition)弾の一種であり、ABM弾とは従来の近接信管とは異なり、各弾丸の正確な空中での起爆位置を調整する事により目標付近に濃密な弾幕を形成する。これにより、目標打撃力を増すと共に付帯的被害を軽減する事を狙った先進砲弾の一種[6]

SA-2は対空目標のみならず、地上目標や水上艦艇に対する攻撃も可能とされる。大仰角を採ることが出来る76mm砲は、軽装甲車両や陣地に対する直接照準射撃、榴弾砲の様な曲射射撃に加えて、市街地戦闘において高層ビルなどの目標を打撃するのにも有効とされ、最大120発に及ぶ76mm砲の投射能力は高い制圧能力を備えていることが伺える[1]。

ただし、ソフトスキン車両に搭載される上に、安定した射撃のためにはアウトリガーを用いるSA-2を地上戦闘に投入するには運用面での制約が多いことが推測され、高価な対空兵器をチープキルの可能性のある戦場に投入するかどうかの慎重な判断が求められるのは想像に難くない。この問題は開発陣も認識しており、その後登場するSA-2改進型においてシャーシの装甲化が図られることになる[3]。

【射撃統制システム】
SA-2の射撃統制システムは、弾道計算機、砲口初速検知レーダー、信管調整装置、光学/電子ターレットなどで構成されている[4]。

別プラットフォームからの目標情報、もしくは自車の光学/電子ターレットで目標を補足して、光学/電子ターレットで追尾・照準を行い、砲撃を実施。発射された砲弾の速度は砲口初速検知レーダーで計測されて弾道計算機に送信される[4]。信管調整機能は、AHEAD弾の運用において用いられ、それぞれの目標に対応した最適な起爆位置の調整を行って撃墜確率を高める狙いがある[4][6]。

【発展型―SA-2改進型】
SA-2改良型である「SA-2改進型」は、2019年の珠海航空ショーでは実車展示されてその存在が公にされた。

2016年に珠海航空ショーに登場した試作車とかなりの相違があり、前者が概念実証車だとすると「改進型」は技術実証車の成果を踏まえて輸出承認を得るために改良を加えた実用型とするべき存在だと言える。

技術実証車ではソフトスキン車両であったシャーシは、キャビン、エンジン、燃料タンクなど各部に装甲が施され、NBC防護装置を装備するなどして、戦場での生残性の改善が図られている[3]。操縦性を改善するため、変速装置は自動変速機に換装されて、操作性と敏捷性の向上を図っている[3]。

近年、驚異の度合いを増している低空域を飛行するドローンなどの「低空・低速」目標に対する探知能力の強化が図られており、新たに砲塔最上部にFW-2型捜索兼追尾レーダーが搭載され、単独での周辺警戒、目標探知・追尾を備えた独立戦闘能力を大幅に向上させた[3]。光学/電子ターレットについても高温地帯での運用性能を改善するとともに、センサーのドローン探知能力の改善が成されている[3]。これは輸出先として高温地帯である中東地域を念頭に置いた改良であると推測される。低空域で活動する「低空・低速」ドローンに最適化した対ドローン用砲弾も新たに開発された[3]。

近年の兵器にとっては絶対必要な能力と言えるC4I機能についてもさらなる能力向上が施されており、各ユーザーの用いるC4Iシステムとのシームレスな接続を可能とし、その持続的作戦能力を高めているとされる[3]。

SA-2技術実証車では弾倉からの給弾系統は各一つであったが、改進型では給弾系統に改良を加えそれぞれ各二つに増やした[3]。これにより、搭載できる砲弾の種類を増やし、通常の対空砲弾、対地攻撃用の砲弾、レーザー誘導砲弾やAHEAD砲弾など任務に応じて各種砲弾を搭載して、状況に応じて使い分けを行うことが容易になったてとされる[3]。

SA-2を装備する自走高射砲連(中隊に相当)は、火器管制レーダー車両×1、SA-2自走高射砲×4、弾薬輸送車×2、整備車両×1、シミュレーター×一セットから構成される[10]。

【構想】
76.2mm艦載砲を自走対空砲化するという構想はすでにイタリアにおいてOTOメララ社製76.2mm艦載砲を用いて、1980年代には戦車をシャーシとしてオトマティック(Otomatic)自走対空砲が、2000年代には八輪装輪装甲車をシャーシとしたドラコ(Draco)自走対空砲がそれぞれ開発され試作車が完成しているが、いずれも採用を得るには至らなかった[7][8]。

中国でも2018年の珠海航空ショーでは中国船舶重工が装輪装甲車のシャーシを用いて76.2mm単装砲を搭載したJRVG-1型自走対空砲の試作車両を展示している[9]。こちらは10輪という大型装輪装甲車のシャーシに、通常の砲塔形式で76mm砲を積んだもので、シャーシにトラックを用いたSA-2よりも大型で高コストな車両に仕上がっている。

SA-2の開発責任者である程広偉主任設計士は、JRVG-1とSA-2は国際市場では同じジャンルの対空兵器としてユーザーの採用を競う事にはなるが、両者は製品としての立ち位置、火砲の構造の相違、弾薬の違いなどで、競合関係にはならないとの見解を示している[3]。程技師は具体的な相違についての言及は控えているが、これはハイスペックで高コストのJRVG-1型に対して、野外機動性を大きく妥協することでシャーシを低コストな6輪トラックにして、運用においても艦載砲とインフラを兼用するなどの節約策を示すなど、必要とされる性能は確保しつつコスト低減に努めて、自走高射砲というどうしても高騰しやすい兵器をユーザーに購入しやすくするための工夫が垣間見える[3][10]。

SA-2は、従来の対空機関砲よりも大口径・高威力の76mm砲を用いることで、機関砲が届かない高高度の目標から、機関砲と同じエリアの中低高度から至近距離に至る広範囲の経空脅威に対して、強力な砲弾威力をもって高い阻止能力を発揮することが期待されている[1][3]。

SA-2の迎撃対象としては、各種ドローン・UAV、攻撃ヘリコプター、巡航ミサイルなどが想定されている[3]。特に改進型では、近年脅威の度合いを増している低空域でのドローンに対する対応能力の強化を意図しているのは注目される[3]。

開発主任である程広偉氏は、SA-2はその能力を生かして、「一帯一路」諸国の国情に応じて、特に低コストで防空力を改善できる選択肢となり得ることを宣伝している。その多用途性能、既存の対空機関砲と対空ミサイルの中間の領域をカバーできる能力、特に強化された低空を低速で飛行するドローンへの対応能力といったセールスポイントがその売りになるのだろう。SA-2は単独でも高い対空能力を有するが、他の対空兵器と連携することで縦深的な防空網を構築することでその阻止能力をさらに高めることが出来るとしている[3]。

ただし、76.2mm艦載砲の車載化が1980年代以来、登場しては採用を得られず消えていったことを考えると、SA-2のアプローチがどこまで市場に受け入れられるかは未知数な所が多いと思われる。

【参考資料】
[1]Global Security.org「SA2 76mm SPAAG」https://www.globalsecurity.org/military/world/chin...
[2]China Arms「SA2 76mm self propelled antiaircraft gun of China unveiled」(2015 年 9 月 15 日)https://www.china-arms.com/2015/09/china-sa2-76mm-...
[3]黄国志「中口径高炮回归—访SA2型76毫米车载高炮项目总师程广伟」『现代兵器』2021.11(中国兵器工业集团公司)72-75頁
[4] DEFENSE STUDIES「NORINCO Develops 76.2 mm Mobile Air-Defence System」(2017年3月5日)http://defense-studies.blogspot.com/2017/03/norinc...
[5]手机新浪网「中国SA2型76毫米高射炮,野战防空的利器,可进行快速部署」(当代打工人现状/2020年2月18日)https://k.sina.cn/article_1618913705_607ea9a900100...
[6]山下一郎「技術者解説 対地・対空機関砲/基本弾薬/先進砲弾/自衛火器 装甲車の火力技術」(『軍事研究2008年11月号別冊 新兵器最前線シリーズ7 陸戦の新主役ハイパー装輪装甲車』/ジャパン・ミリタリー・レビュー)32〜51ページ
[7]Military Today.com「Otomatic 76-mm self-propelled anti-aircraft gun」https://www.militarytoday.com/artillery/otomatic.h...
[8]Military Today.com「Draco 76 mm self-propelled anti-aircraft gun」https://www.militarytoday.com/artillery/draco.htm
[9]吴钩「中船重工新型JRVG-1型76毫米自行防空火炮简析」『兵工科技-甦2018珠海航展专辑 』(兵工科技杂志社)156-159頁
[10]哔哩哔哩「(长文)舰炮上岸——浅谈两型国产76mm自行高炮」(不瘦下来不改名9527/2021年1月25日)https://www.bilibili.com/read/cv9454670/

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