日本の周辺国が装備する兵器のデータベース


▼2018年の珠海航空ショーで展示されたSH-11自走砲(同年11月11日に執筆者撮影)



性能緒元
重量最大36トン以上
車体長8m
全幅3m
全高3.5m
エンジン液冷ディーゼル(480馬力)
最高速度90km/h
浮航速度浮航能力なし
航続距離800km
武装39口径155mm榴弾砲×1
 12.7mm重機関銃×1
 四連装発煙弾発射器×2
装甲 
乗員4名(車長、照準手、装備オペレーター、操縦手)

SH-11装輪式155mm自走榴弾砲(中国語だとSH11外贸型轮式155毫米自行加榴炮)は、中国北方工業集団公司(NORINCO)の輸出向け自走砲で、2018年の珠海航空ショーで展示公開が行われた[1]。


【シャーシ】
SH-11は、8輪装輪装甲車のシャーシに155mm榴弾砲を搭載した砲塔を取り付けて製作された装輪式自走榴弾砲である。近年、各国で開発が進められているトラックの荷台に榴弾砲を搭載したガン・ポーディ式自走砲とは異なり、装甲シャーシ上に密閉式砲塔を搭載していることから、装輪車両の迅速な展開性能と、密閉砲塔の防御力を兼ね備えた自走砲という性格を備えている。

シャーシの8輪装甲車は、NORINCO傘下の鉄馬集団公司/兵器256廠が設計した新式装輪装甲プラットフォームである[2][3]。鉄馬集団公司は、中国軍で最初に大量配備された装輪装甲車であるWZ-551装輪装甲車の設計上の基礎となった鉄馬XC-2030野戦トラックの開発元であり、それ以来、各種装輪装甲車の豊富な開発経験を有する企業である[3]。次期8輪歩兵戦闘車の競争試作では内蒙古第一汽車の08式装輪歩兵戦闘車「雪豹」に敗れたが、その後も輸出向けにVN-2C、VN-3VN-4、VN-21、VN-22、VP-10など多種多様な装輪AFVを世に送り出してきた経験を有している[3]。SH-11のシャーシは、同社が開発した八輪式のVP-10装輪装甲車をベースとして車幅を広げ、車高を低減させるなど自走砲車体として最適化させたものである[3]。SH-11のシャーシは、最大36t以上の搭載能力を備えており、155mm榴弾砲の発射の衝撃を想定した設計が施されている[3]。車体中央部と車体後部に合計4基の駐鍬が用意されており、射撃時に地面に接地して発射の反動を吸収して、命中精度の改善を図る[3]。なお、緊急の際には、駐鍬を用いずに砲撃を実施することも可能[3]。

SH-11の車体構造は、車体前部右側に機関室、左側に操縦席を配置。車体後方は砲塔搭載区画であり、最後尾に右開き式のドアを設けており、乗員の乗車や弾薬の搬入に用いる[3]。乗員は、車長、照準手、装備オペレーター、操縦手の四名で、自動装填装置の採用により装填手は廃止されている[3]。

動力部は、480馬力の液冷ディーゼルで自動変速装置の組み合わせであり、輸出を視野に入れている中東諸国を想定して、高温の沙漠地帯での良好な機動性を発揮できるとされている[2][3]。足回りは油気圧サスペンションを採用[1]。タイヤ空気圧の中央調整システムが採用されており、路面の状態に合わせた最適な空気圧を調整し、走行性能と快適な乗り心地を保証する[3]。

シャーシの四隅にはテレビカメラが配置されており、その映像は昼夜を問わず車内の液晶パネルで確認することが出来る[3]。NBC防護システムと、誘爆防止用の自動消火システムを標準装備しており、これも中東諸国のユーザーが重視する項目であるとしている[3]。

【砲塔】
SH-11の砲システムは、斉斉哈爾北方機器有限責任公司/127廠が開発を担当した[2][4]。

SH-11の砲塔は車体後部に搭載されている。前述の通り、各国で開発が進められているトラックの荷台に榴弾砲を搭載したガン・ポーディ式自走砲とは異なり、密閉式砲塔を採用したことで、対砲兵射撃時の弾片被害に対する抗耐性の点で優位に立っていると言える。

砲塔は垂直面で構成されており、特に砲塔正面上部や砲塔側面上部は顕著な傾斜が付いている。砲塔両側面には乗員用ドアを備え、各種機材を取り付けるためのフックも各部に装着されている[3]。車長席は砲塔前方左側にあり、直上には全周視認可能な車長用サイトを配置している[3]。その反対側の砲塔前方左部には砲手用の光学/電子ターレットが配置されており、これはレーザー測遠装置、昼間用サイト、赤外線暗視装置などを組み合わせたもので、周辺状況の観測や、直射照準/間接照準に用いられる[3]。砲塔中央部は装具箱を配置しており、必要に応じてこの中に空調用の冷却ファンを収納することが出来る[3]。その後ろには各種装備を載せるラックを設けている[3]。

砲塔内には、車長、照準手、装備オペレーターの三名が乗車し、それぞれ指揮、目標照準、補助操作を担当する[3]。高度に自動化されたSH-11では装填手が不要だが三人目の装備オペレーターを配置した理由については、各種操作補助に加えて、車内での弾薬の搬送や自動装填装置にトラブルが発生した際の臨時装填手としての役割が期待されているのではないかと推測される。この点については【総評】でも検討する。車長席は砲塔左前部にあり、その後方に操作オペレーター席が、砲塔右前部に照準手席が配置されている[1][3]。

SH-11の砲塔システムは高度な自動化が施されており、人間の操作は最低限に抑えられている[1]。SH-11と似たコンセプトの装輪装甲車ベースの自走砲である、KMW+ネクスター・システムズのRCH155自走砲やイタリアのチェンタウロ 155/39LW自走砲では砲塔の完全無人化を実現しているが[5]、SH-11の設計主任である丁樹奎技師によると、すでに大口径砲の完全無人砲塔技術は確立しているが、実際の作戦における需要や部隊編成の状況を考慮して、有人砲塔を選択したとのこと[1]。

【砲システム】
近年、長砲身化が進む各国の155mm榴弾砲であるが、SH-11の155mm砲は39口径と、比較的短いものを採用している。これは、とあるユーザーからの要望に沿ったものとされる[1]。SH-11は設計にモジュール概念を導入しており装備の更新が容易であり、榴弾砲についても将来的には52口径砲への変更も想定されており、実際に2022年の珠海航空ショーでは、砲身長を52口径としたPLL-155/52装輪自走砲が登場している[3][5]。

39口径155mm榴弾砲は、砲口部に八つの開口部を有する多口式マズルブレーキを備えている[3]。これは装軌式シャーシに比べて反動吸収性で劣る装輪シャーシにおいてできるだけ射撃時の反動を抑制するための措置の一つである[3]。砲基部の駐退機はカバーで覆われており、そこに砲口初速算定用のミリ波レーダーを配置している[3]。

砲弾の装填には自動装填システムを採用しており、任意の仰角での装填が可能[3]。装薬にはモジュール式装薬を採用され、中国で初めてモジュール装薬と自動装填装置の組み合わせを実現したことで、これまでの中国軍の自走砲と比較しても大幅な省力化に成功している[1][3]。SH-11は、緊急時には15秒で3発のバースト射撃を実施し、同時弾着させる能力を備えている[3]。発射速度は、最高8〜10発/分で、持続射撃の場合は5発/分[3]。砲弾/装薬の選択も自動化されており、NATO規格の155mm砲弾と互換性があり、NORINCOが取り揃えている誘導砲弾を含む多種多様な155mm砲弾の射撃が可能[1][3][5]。射程は通常弾で25km、射程延伸弾であるFRFB-BB-RAP弾を用いた場合は40kmとなっている[6]。俯仰角は-3〜+72度、射界は全周射撃が可能[3]。

SH-11は、射撃統制システム、衛星位置測定システム、車両位置測定システム、砲口初速測定システム、戦場情報管理システム、データリンクシステムといった高度な車載デジタルシステムを搭載[3]。同システムは、容易により上級の砲兵指揮システムとの統合が可能[5]。これらのシステムを活用することで、データリンクを活用して迅速に目標情報を得て、諸元算出から砲撃準備までを自動で実施して、自動装填装置を用いて迅速に目標に対する砲撃を行い、速やかに撤収することで、対砲兵射撃に対する生存性を高めている[3]。自動装填装置による高い発射速度と、複数の外部視認装置や全周警戒用テレビカメラは、都市の市街戦への想定も考えられており、多数の移動目標が突然出現する状況への対処能力が備わっているとされる[1]。これもおもな輸出先と想定されている中東諸国での運用を考えた能力付与であると考えられる。

SH-11は副武装として、車長席後方に12.7mm重機関銃×1を搭載する[3]。そのほかに、主砲防盾両側に4連装発煙弾発射器×2を装着している[3]。

【支援車両】
自走砲は単体ではその能力を発揮することは出来ず、それを支援するための各種車両の存在が不可欠である。NORINCOは、SH-11の支援車両をパッケージ化してユーザーに提供する体制を整えている。そのパッケージには、砲兵連隊/大隊コマンドポスト車、偵察車、弾薬輸送車、偵察用レーダー車、気象レーダー車、装甲回収車などで構成されており、SH-11を導入したユーザーはパッケージ化された車両の提供を受けて、迅速にSH-11部隊を戦力化することが出来るとされている[3]。

【総評】
SH-11は、装輪車両の迅速な展開性能と、密閉砲塔の防御力を兼ね備えた自走砲として、主に中東諸国への売り込みを念頭に開発が行われた。

似たようなコンセプトの自走砲には、RCH155自走砲やチェンタウロ 155/39LW自走砲が存在する。両自走砲は完全自動化された無人砲塔を採用し、乗員を乗員と車長のみの二名に集約することに成功しているが、SH-11では乗員4名と省人化という点では両自走砲に対して遜色がある[5]。

ただし、この点について軍事サイトGlobal Securityの分析では、システムの冗長性という点では乗員4名のSH-11に理があると評している[5]。仮に自動装填装置にトラブルが生じた場合でも、SH-11であれば人力装填に切り替える選択肢が存在しており、乗員一名が戦闘不能になった場合でも抗戦を続けることが出来るとしている。無人砲塔ではない点についても、メリットも存在するとしており、RCH155やチェンタウロ 155/39LWでは砲弾搭載数は自動装填装置の搭載数に制約されるのに対して、有人砲塔であるSH-11の場合は、自動装填装置だけでなく車内のほかの場所にも砲弾を搭載して、乗員が給弾装置に補充することで、RCH155やチェンタウロ 155/39LWよりも多くの砲弾を積んで持続的な砲撃が可能になると見ている。

SH-11の中国軍での採用は確認されておらず、2023年4月時点では輸出の報も得られていない。しかし、NORINCOでは車載式自走砲から装輪自走砲、装軌式自走砲とユーザーの多様な要望に応えられる多種多様な155mm自走砲を取り揃える方針を採用しており、その点でSH-11もNORINCOの輸出市場向け戦略の一環として登場した装備品の一つであると見なすことが出来る。

ユーザーの要望に迅速にこたえることに徹した開発コンセプト、継続的アップグレードを可能とするモジュール設計概念の導入を強く打ち出しているのも注目すべき点であり、実際にSH-11に52口径155mm砲を搭載したPLL-155/52を速やかに登場させることでその設計思想の有効性を証明したと評すことが出来よう[3]。

【参考資料】
[1]搜狐「中国最强轮式155毫米自行炮诞生 离无人炮塔设计仅有一步之遥」(2018年9月28日)https://www.sohu.com/a/256692751_100078044
[2]林儒生,曹励云「大小靶场见闻录」『现代兵器』2021.01/总第501期(中国兵器工业集团有限公司)24-27ページ
[3]蒋红磊「大口径榴弹炮装上大八轮−PLL155/52新型轮式自行榴弹炮」『兵工科技-2022珠海航展(下)』2022/24(兵工科技杂志社)24-28ページ
[4]搜狐「军工企业代号大全,有你熟悉的泵阀厂家吗?」(2018年7月7日)https://www.sohu.com/a/239732503_330240
[5]Global Security「SH-11 155-mm 8-wheeled SPH」https://www.globalsecurity.org/military/world/chin...
[6]Military-Today.com「SH-11 155 mm self-propelled howitzer」http://www.military-today.com/artillery/sh_11.htm

【関連項目】
PLL-155/52 155mm装輪自走榴弾砲(SH-11)
中国陸軍

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