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VN-50重歩兵戦闘車(中国語ではVN-50重型步兵战车)は、北方工業集団公司(NORINCO)が輸出向けに開発・構想中の重歩兵戦闘車。2019年にアブダビで開催された国際軍事見本市「IDEX 2019」で模型が展示されて、その存在が公にされた[1]。VN-50は、同じく国際兵器市場向けに開発されたVT-4主力戦車のファミリー車輛として開発され、重量も主力戦車並みの50tという歩兵戦闘車としては異例の大重量となっている[1]。IDEX 2019で同車の模型に付けられた名称が「VT4 Heavy Infantry Fighting Vehicle(VT-4 重歩兵戦闘車)」であった事が、同車がVT-4のファミリー車両であることを明確に表していると言える[16]。VN-50は、NORINCOとアラブ首長国連邦の投資ファンドのゴールデングループのジョイントベンチャーで開発が構想されていると報じられている[16]。

VN-50は、近年の非対称戦争でAFVの防御力が重視される傾向を反映して、強力な防御能力の確保、高火力、良好な機動性、優れた情報システムを備え、現在の複雑な戦場で多種多様な任務に従事可能な歩兵戦闘車として開発されたと考えられる。特に本車の特徴である主力戦車と同等の防御力は、非対称戦争における装甲戦闘車量の防御力がクローズアップされた中東諸国へのアピールを狙ったものと見られる。

【性能】
VN-50の車体は前述の通り、VT-4主力戦車のシャーシを使用している。歩兵戦闘車に転用するため、車体の前後を逆にしてパワーパックを車体前部に配置したフロントエンジン式となり、これに伴って機動輪も前方駆動に変更された。主力戦車であるVT-4のシャーシを転用したことで、VN-50は戦車並みの機動力と防御力を兼ね備えた重歩兵戦闘車となった。

VN-50の定員は乗員3名(車長、砲手、操縦手)と搭乗歩兵7名で構成されている。車内配置は、車体左前に操縦手、車体中央部に車長と砲手用の並列座席、その後方に搭乗歩兵が乗車[5]。車体中央には二人用砲塔が配置されている。これは04式/04A式式歩兵戦闘車のターレットをベースとしたものであり、100mm低圧砲と30mm機関砲と7.62mm機関銃を同軸で装備している。車体後部にはハッチが配置されており歩兵の乗降に用いる。本車の特徴として、ハッチの両側に12.7mm重機関銃を搭載したRWS(Remote Weapon System)二基を装備して、車両後方からの攻撃に備えている点を挙げることができる。

VN-12のパワーパックは車体前方右部に配置されており、1200馬力のターボチャージド・ディーゼルエンジンと自動変速装置の組み合わせ[3][5]。路上最高速度65〜70km/hを発揮し、不整地でも40km/hの速度で走行可能[3][12]。出力重量比は24hp/tで、変速機やサスペンションの機能も相まって高い野外機動性を確保している。VT-4譲りの自動変速装置を活用して超信地旋回能力を備えている[12]

VN-50の設計では、防御力の向上と乗員の生存性改善が重視された。特に車体全周の防御能力を向上する設計思想は、イラク戦争やシリア内戦などの非対称戦争での戦訓を反映したものとみられる。車体正面と上面には爆発反応装甲を、車体側面には大型付加装甲の上に爆発反応装甲を装着している。これらの爆発反応装甲は、運動エネルギー弾と化学エネルギー弾の双方に対して防御効果を備えているとされる[3]。特に車体正面については正面装甲を複合装甲として、その上にFY-4重爆発反応装甲を装着することで主力戦車並みの防御力を確保しているとみられている[2][12]。ラジエーターなど爆発反応装甲の装着が困難なところには隙間を開けて装甲板を配置して防御力の改善を図っている

装甲以外の防御システムとしては、各部にレーザー波警戒装置が搭載されており、敵からのレーザー波照射を確認すると、発煙弾発射器から発煙弾を発射して車輛を隠蔽する。VN-50では、砲塔に10基、車体後部に12基の発射機を配置しており、どの方向からの攻撃に対しても発煙弾を発射して対抗することができる。発射機には発煙弾のほか、歩兵の肉薄攻撃を撃退するための対人榴弾を装填することもできる[2]。NORINCOは、AFVの防御力強化のためにGL-5などのアクティブ防御システムを開発しており、ユーザーの要望に応じてVN-50への搭載も可能であると思われる。

車体については上記のように強力な防御力を有しているVN-50であるが、砲塔は04/04A式歩兵戦闘車のものを流用しており、防御力についても砲塔正面でRHA換算26mm程度とされ、付加装甲やスラットアーマーが装着されているとはいえ、車体の充実した防御とのアンバランスさは否めないものとなっている[4][5]。ただし、これは輸出向け戦略の一環である可能性があり、それについては【中東地域向けの対策について】で後述する。


【武装】
VN-50が搭載する砲塔は、04式/04A式式歩兵戦闘車(輸出名称はVN-11/VN-11A)に搭載された二人用砲塔を転用したもの。これはロシアから技術導入したもので、同国の歩兵戦闘車BMP-3(正確には改良型のBMP-3M)に搭載されたモジュール砲塔「БАХЧА(ローマ字表記だとBakhcha)」[4][6])に100mm低圧砲と30mm機関砲と7.62mm機関銃を同軸で装備している。バフーチャ砲塔システムは、同軸装備された100mm低初速砲2A70、30mm機関砲2A72、7.62mm機関銃6P7と射撃統制システム、砲安定装置、自動装填装置を含む給弾機構等を搭載した砲塔で構成される[4]。システムの総重量は3.6〜3.98トンで、AFV(13トン以上の重量が必要)、水上艦艇、固定式陣地など多用なプラットフォームへの搭載を想定している[6]。砲塔の基本構造はアルミニウム合金製だが、前面部には防弾鋼板がスペースド・アーマー式に装着[4]、砲塔側面はスラットアーマーを兼ねたと見られる装具ラックを配置している。砲塔正面のRHA換算装甲厚は26mm程度とされる[4]。付加装甲上部には発煙弾発射装置が合計10基装着されている。

なお、VN-50は開発時期が新しいことから、その射撃統制システムはさらなる能力向上が成されているとみられる。同車の射撃統制システムは、弾道計算機、横風検知器、レーザー測遠機、赤外線暗視装置、二軸安定式スタビライザーなどで構成され、行進間射撃能力を備えている[12]。詳細は不明であるが、21世紀に開発されたAFVの標準装備である、ネットワーク化を重視した設計も当然施されていると思われる。

100mm低初速砲は、発射装薬の少ない小型カードリッジを持つ低初速砲弾、もしくは一体型の砲発射式誘導ミサイルを発射する[4]。同砲は自動装填装置により毎分10発の発射速度を維持する[7]。100mm砲弾の破片効果榴弾(HE-FRAG)は有効射程7,000mで、直接/間接照準射撃により兵員、各種機材、陣地などの攻撃に使用する[8][9]。砲発射式対戦車ミサイルはロシアから技術導入した9K116バスチオン対戦車ミサイル・システムをベースに開発された。RHA値で660mmの装甲貫通力を有しており、最小射程は100m、最大射程は4,000〜5,000m[8][10]。戦車や装甲車両だけでなく、トーチカなどの防御拠点や低空飛行を行うヘリコプターへの攻撃が可能[8]。誘導方式はレーザー・セミアクティブ誘導で、砲塔上の照準器から発せられるレーザービームに誘導されて目標に向かって飛行する。ミサイルの命中精度は80%以上[7]。

100mm砲の右側に同軸装備されている30mm機関砲2A72は徹甲弾(AP)と破片効果榴弾(HE-FRAG)を毎分300発の速度で射撃可能[7]。機関砲の有効射程は15,00〜2,000m[7]。徹甲弾については中国で開発が行われたものが搭載されているとの事[8]。7.62mm機関銃は100mm砲の左側に同軸装備されている[7]。

上記の三種類の火砲は-5〜+60度の俯仰角度で指向させることが出来、30mm機関砲での対空射撃に十分対応できるものとなっている[8]。各種火砲の能力を万全に発揮するために、主力戦車なみの高度な射撃統制システムを搭載しているのもバフーチャの特徴。弾道計算コンピュータ、電子制御式スタビライザー、レーザーレンジファインダー、ミサイル誘導装置等から構成され高度に自動化されている[4][7][10]。射程1,000mの目標に対して3秒以内に90%以上の命中精度をもって火器を発射、射程2,000mの目標に対しても14秒以内に火器発射が可能[8]。

VN-50は、車体後部両サイドに張り出しを設けて、そこに2基のRWSを配置しているのが特徴。RWSには12.7mm重機関銃が装備されており、車体後方の目標に対する攻撃や、建物など高所に位置する目標に対する制圧射撃に用いることが想定されている[5]。後方にRWSを配置してテレビカメラを用いて監視することで、車体後方の死角を無くし、迅速な目標の発見と打撃が可能となる。これは、瓦礫や建物に隠れて待ち伏せ攻撃を行う歩兵や、車両に爆薬を搭載して死角から急接近して自爆を図る車両自殺攻撃など様々な脅威が存在し、全周からの攻撃に備える必要のある市街地戦闘において特に有効な機能であると見なされており、輸出を想定した中東諸国へのアピールポイントとなる点と言えよう[5]。

【中東地域向けの対策について】
VN-50は中東の高所得国家への売り込みを想定して開発された重防御歩兵戦闘車である。そのため、中東の気象環境を想定して強力な空調設備を装備しているのも本車の特徴の一つ。VN-50は出力12kWの空調装置を搭載しており、降車用ハッチに空調の排熱機が装着されている。

非対称戦闘において、長時間車内に留まったままでの作戦に対応するため、VN-50の車内にはトイレ、手洗い、冷蔵庫などの乗員の戦闘力維持に有効な各種装備を設えることができる[2]。

VN-50の砲塔がBMP-3のものに由来することも、アラブ首長国連邦などでBMP-3やその砲塔システムが活用されていることを考慮すると、導入にあたって装備の共有化や訓練課程を省略できる点でメリットとなることも考えられている[11]。

【改良型】
VN-50は現時点では採用国は確認されておらず、中東諸国向けに売り込みが行われている段階。商品価値を高めるための改良が続けられており、2021年には砲塔設計を変更した改良型の存在が明らかにされている[12]。この砲塔は、もともとの二人用砲塔の周囲に付加装甲を装着してひと回りサイズが大きくなっている。これは防御力の強化および、砲塔両側面に内蔵式のHJ-12(紅箭12)対戦車ミサイル連装発射機を収納するためのスペースを確保するための設計変更とみられる。

HJ-12は歩兵の携行が可能な小型対戦車ミサイルで、誘導方式は赤外線画像誘導を採用し、発射後の誘導の必要はない「打ちっ放し」タイプの対戦車ミサイル[13][14]。爆発反応装甲に対抗するためタンデム弾頭を採用しており、RHA換算での貫通力は1100mmに達するとされる[13][15]。射程は4,000mで、AFV以外に低空を飛行する航空目標に対する攻撃能力も備えている[14]。

HJ-12を100mm低圧砲から発射されるGP-2砲発射式対戦車ミサイルと比べると、最大射程ではGP-2の方が1000m長いが、撃ちっぱなしが可能で、貫通力がRHA換算で700mmから1100mmへと強化されていることから、その対戦車戦闘能力は大幅に向上していると言えよう。

砲塔上面には新たにRWSが追加装備され、車体前方に対してもRWSによる火制が可能となった。市街戦にとって重要な周囲の状況把握に必要なテレビカメラが車体各部に配置され、乗員がハッチを開けることなく車内の情報端末で外の映像や目標の諸元を確認する事が出来る。

【今後の展望】
NORINCOでは、同車の輸出向け歩兵戦闘車シリーズとして、重量20tクラスのVN-12歩兵戦闘車 、VN-50と同じく戦車ベースの重歩兵戦闘車として重量30tクラスのVN-17歩兵戦闘車を開発しているが、VN-50はそれらの上位に位置する50tクラスの重歩兵戦闘車であり、主力戦車に匹敵する射撃統制装置、防御力、機動力を兼ね備えたラインナップの最高峰車両であると位置づけることができる。

無論、主力戦車並みの射撃統制装置、防御力、機動力を有する重歩兵戦闘車となれば、その調達コストはベース車体となったVT-4主力戦車を上回るものになるのは予想に難くない。NORINCOでもこの点は考慮していると思われ、VN-50の開発に当たっては、シャーシ、パワーパック、装甲、RWSなどはVT-4、砲塔システムは04A/04A式歩兵戦闘車のものを活用するという風に、できる限り既存のコンポーネントを活用する方針が採用されていることが見て取れる。これは開発コストと期間の短縮に効果があるのみならず、VT-4や04/04A式のコンポーネントとの高い共通性が得られるため、整備や補給、訓練面で大きなメリットがあり、VT-4とVN-50を合わせて売り込みを図る際にも有効であると考えられる。

VN-50は、戦車並みの防御力を備えた重歩兵戦闘車として国際市場への売り込みを目的として開発された。このような車両は、たしかに高い防御力を備えているのは魅力であるが、主力戦車並みの価格と重量は、調達費用や運用コストの引き上げに直結するものであり、このような高価値・高コストのAFVを導入できる国は限られている。NORINCOでは、中東産油国への売り込みを図っているが、これが実を結ぶかどうかは現時点では分からない。

ただし、VT-5軽戦車ベースのVN-17歩兵戦闘車にも言えることだが、中国軍への採用を前提としていない分、最新流行を貪欲に盛り込んだAFVを開発することで、国際市場での競争力を高めると共にNORINCOの技術力の高さをアピールすることも意図されていると考えられる。NORINCOの歩兵戦闘車のジャンルに、VN-11/11A(04/04A式)、VN-12、VN-17、VN-50とそれぞれ特性を有するラインナップをそろえることで、顧客の様々なニーズに応じる姿勢を見せるとともに、多様な歩兵戦闘車を開発するNORINCOの能力を示すことにも繋がると言えよう。

性能緒元
重量50t
全長
全幅
全高
エンジンターボチャージド水冷ディーゼル 1,200hp
最高速度路上:65〜70km/h
航続距離  
装甲車体:均質圧延鋼板+複合装甲+付加装甲(セラミック/爆発反応装甲/スラットアーマーなど)。砲塔:アルミニウム合金装甲+付加装甲
乗員3+歩兵7名

【武装】
武装100mm低初速砲×1
 30mm機関砲×1
 7.62mm機関砲×1
 砲発射式対戦車ミサイル
 RWS(12.7mm重機関砲一門搭載)×2
 発煙弾発射機×22(砲塔10基、車体後部12基)
注:2021年に公開された改良型では、HJ-12対戦車ミサイル連装発射機×2、RWS一基を追加。

【参考資料】
[1]MAIGOO百科「VN-50重型步兵战车简介 VN-50重型步兵战车价格 VN-50重型步兵战车特点」https://m.maigoo.com/citiao/227561.html
[2]每日头条「中国VN-50重型步兵战车性能全球顶级 但可能叫好不叫座」(2019年2月18日/中华网军事)原文網址:https://kknews.cc/military/agrjm4x.html 
[3]腾讯网「我国研制装备之VN-50步兵战车」(2021年4月16日)https://new.qq.com/omn/20210416/20210416A02WDS00.h...
[4]古是三春「ソ連が生んだニューカテゴリーAFV 歩兵戦闘車BMP(2)」(『月刊グランドパワー』2006年11月号/No.150/ガリレオ出版)42〜97ページ
[5]搜狐「从中东实战角度看VN-50重型步兵战车」(2019年2月25日/观察者网专栏作者 尤金少将)https://www.sohu.com/a/297418500_115479
[6]KPB精密機械工業設計局公式サイト「"BAKHCHA" FIGHTING COMPARTMENT」
[7]Militart-Today「Type 97 Infantry fighting vehicle」http://www.military-today.com/apc/type_97_ifv.htm
[8]「精忠報国逢其時、訪ZBD-4式歩兵戦車総設計師」(『坦克装甲車輌』2010年3月号/《坦克装甲車輌》雑誌社)http://qkzz.net/Magazine/1001-8778/2010/03/
[9]网易新闻中心「战场生存力不足—中国陆军ZBD97式履带步兵战车」http://war.163.com/09/0807/16/5G4JNHBA00011232.htm...
[10]軍武狂人夢「04式/WZ-502改裝甲步兵戰鬥車」http://www.mdc.idv.tw/mdc/army/type97.htm
[11]手机新浪网「中国新款重型战车变奢侈品 装备世界最大功率战车空调」(2019年2月19日/军迷圈)
https://jmqmil.sina.cn/dgby/doc-ihqfskcp6620280.d....
[12]哔哩哔哩「能打能跑的铁王八——VN-50重型步兵战车」(2021年3月25日/无涯之夜) https://www.bilibili.com/read/cv10463737
[13]宗赫「”红箭”展示沙场雄风-亮相“装甲首与反装甲日”活动的“红箭”系列反坦克导弹」『兵工科技』2017.18(兵工科技杂志社)51-57ページ
[14]王笑梦「一脉相承两兄弟-VT5轻型主战坦克和VN17重型步兵战车解析」『兵工科技』2017.18(兵工科技杂志社)46-50ページ
[15]张勇「中国VN17新型履带式步兵战车」『兵器知识』2017年11期(兵器知识杂志社)14-15ページ
[16] 東京防衛航空宇宙時評「UAEと中国、新型歩兵戦闘車「HIFV」をIDEXで発表」(2019年3月31日/編集部) http://www.tokyo-dar.com/news/5681/

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