日本の周辺国が装備する兵器のデータベース


▼動画:Chinese Forces「China H-6N bomber carrying air launch anti-ship ballistic missile ! Threat to US aircraft carrier」(2022年4月19日)。YJ-21の紹介動画。


性能緒元(公式情報ではないので注意が必要)
全長13m
直径1m
重量10t
推進装置二段式固体燃料ロケットモーター
最大射程3,000km
誘導システム中間:データリン修正/終末アクティブ・レーダー誘導+赤外線誘導システム?
速度 
弾頭重量

YJ-21空対艦弾道ミサイルは、2017年頃からその存在が語られるようになった空中発射式の対艦弾道ミサイル[1]。同ミサイルは米軍ではCH-AS-X-13と呼称されており、すでに実戦配備されているDF-21D対艦弾道ミサイル(東風21D/CSS-5 MOD 5)の派生型であると考えられている[2]。YJ-21は航空機搭載用ミサイルとしては異例の大きさであり、同ミサイルの運用を前提とした設計変更が施されたH-6N爆撃機の胴体直下に一発を搭載する[2][3]。

中国では戦略軍であるロケット軍がDF-21DやDF-26といったASBM(anti-ship ballistic missile:対艦弾道ミサイル)を既に運用しているが、これらは自走式のTLE(transporter erector launcher:輸送起立発射機)に搭載され、中国領内から発射されるため、その射程範囲には一定の制限が存在した。しかし、YJ-21はH-6N爆撃機を母機とすることでその制約を取り去ることに成功し、中国の対艦弾道ミサイルの到達距離を大きく前進させることに成功したと見なし得る。なお、航空機から発射されるASBMについてはALBM(air-launched ballistic missile: 空中発射型弾道ミサイル)と呼称される[4]。

なお、YJ-21の名称については公式には明らかになっておらず、海軍で運用されている YJ-21艦対艦弾道ミサイル(鷹撃21)と合わせて、本当の制式名が明らかになるのが待たれる所である。

【性能】
YJ-12は二段式のロケットで、そのサイズとしては全長13m、直径1m、重量10tと推測されている[3]。ミサイルは二段構造となっており、一段目は大型ブースターで、二段目が目標に命中する。二段目の形状は、先端部の絞りの角度が段階的に変化する二段円錐構造のノーズコーンを採用した極超音速ミサイルで、この形状は極超音速で滑空することを想定した設計であると見なされている[5][6]。YJ-21の照準システムは、発射段階で目標設定を行い、飛翔中の情報更新については外部センサーからデータリンクを介してアップデートされ、終末段階においてミサイルに搭載されたセンサー(レーダーや赤外線探知装置が想定されている。)によって外部センサーからの情報提供により既に当たりを付けている目標に対して最終段階での突入を可能とすると見られている[1]。

YJ-21の射程は3,000kmに達すると見られているが、そのような遠距離においてはYJ-21単独では目標艦艇の発見は不可能であり、対艦弾道ミサイルを運用するには、高いターゲッティング能力が不可欠となる。ターゲッティングとは目標の捜索探知、位置局限、目標割当と攻撃指示、攻撃効果判定の統合された機能であり、スタンド・オフ兵器の運用に欠かせない能力である[7]。中国ではASBMの実用化に不可欠なターゲッティング能力の構築に長期に渡ってリソースを割いており、現在では戦略支援部隊が管轄する人工衛星群による広域・遠距離探知システムが中心となってその任務を担っていると考えられている[2]。

対艦弾道ミサイルは、地上の固定目標を攻撃するのとは異なり、広大な海洋を移動する空母艦隊が目標となるため、その攻撃には空母の概略の位置情報を入手して、目標が確実に空母であるかを識別・追尾することが必要である[4]。そもそも空母の位置が分からなければ、発射方向を定めることもできない[4]。つまり、ASBMのセンサーが空母を捕捉できるように発射する必要があり、そのためには、ミサイル本体とは別に ISR(Intelligence, Surveillance and Reconnaissance:情報、監視、偵察)センサーを必要とする[4]。空母の電波を探知して概略位置を提供するエリント衛星、全天候性能を有する合成開口レーダー(SAR)衛星、SAR衛星より鮮明な画像を撮影可能な光学画像衛星などが活用される。地上配置レーダーとしては覆域1,000〜4,000kmのOTH-Bが活用されるとみられるが、こちらは空母と他の艦艇の識別や情報の補正が難しいという特性があり、衛星など他のISRセンサーとの連携が必須となる[4]。

戦略支援部隊のISRセンサーに加えて、中国に近い海域であれば空軍が保有するWZ-8無人偵察機も詳細な目標情報の収集に活用され、探知情報の確定に生かされる[4][6][8]。WZ-8はロケット推進による高速飛行が可能な無人偵察機であり、H-6N爆撃機に搭載されて、一定の海域にまで進出後に母機と切り離されて偵察任務に従事する[6]。海軍が保有する艦艇や艦載ヘリコプターの目標探知距離は、艦載ヘリで200〜300kmまで、一部の艦艇が搭載するOHTレーダーを用いても理論上は300〜400km、実際には200km程度に留まっており、YJ-21の3,000kmの射程を生かすには他の行為機探知能力の活用が不可欠となる[8]。それを担うのが、戦略支援部隊が管轄する人工衛星群や地上配置のOHTレーダー網、空軍の無人偵察機の存在となる[8]。これらのISRセンサー群の存在により、YJ-21の射撃と目標への命中が保証され、その長射程と高い打撃能力を最大限に発揮することが可能となる[8]。このほかに、自己位置の測定に用いる「北斗」衛星位置測定システム、通信衛星による広域データリンクシステムなどもYJ-21の能力発揮において重要な役割を果たす。

YJ-21の弾頭については通常弾頭と核弾頭の両方の可能性がある[9]。2017年には米国防情報局(DIA)のビンセント・スチュワート長官が、2018年にはアメリカ陸軍のロバート・アシュリー少将が、中国が二種類のALBMを開発しており、そのうち一種類は核弾頭搭載の可能性があると発言した[9]。ただし、ここで指摘されているALBMがCH-AS-X-13=YJ-21を指しているか否かは不明[9]。

【H-6N爆撃機】
H-6N爆撃機はH-6爆撃機(轟炸6/B-6/Tu-16)の派生型の一つでALBMやUAVといった兵器を搭載するプラットフォームとしての性能を重視して開発された。

機体設計はH-6の新世代版であるH-6Kに基づいており、同機の爆弾庫を廃止して、その部分を凹ませて兵器搭載用パイロンを設けることで、大型兵器を外部搭載することが可能となった[1]。H-6Nは、YJ-21 ALBMのみならず、DF-17極超音速ミサイルの空中発射型YJ-20、目標探知用の空中発射式無人偵察機WZ-8の母機としても運用され、空中発射母機として存分に活用されると見られている[2][3]。

H-6Nの戦闘行動半径は6,000kmで、機首に装着された空中給油用プローブを用いることで航続距離をさらに延伸できる[10][11]。空中給油プローブの装着はH-6シリーズを通じて初となるが、これは単なる航続距離の延伸のみならず、空気抵抗の大きな外部兵装搭載に伴う航続距離減衰を補うための措置と見られている[3]。

H-6Nは胴体下部以外に、主翼にはH-6Kと同様に6箇所のパイロンが装備されており、KD-63B空対地ミサイルやKD-20巡航ミサイル、AKD-21 ALBMなどを搭載してH-6Kと同様の任務を遂行することもできる[3]。

【存在意義】
H-6NとYJ-21の組み合わせは、中国のA2/AD(Anti-Access/Area Denial接近阻止・領域拒否)領域を大きく拡張させることを可能とする。中国軍は2010年代に配備を開始したロケット軍のDF-21Dを皮切りにASBMの戦力化に着手した[1]。当初は、多種多様なISRセンサーや遠距離までカバーし得るデータリンク網の構築に時間を要したが、長年にわたる努力の結果、その目標探知範囲はDF-21Dの射程を超える水準にまで延伸されることとなった[1]。

中国では第二世代のASBMとして米軍基地のあるグァムまでを射程圏内に収めるDF-26(射程3,000〜4,000km)の配備を開始するとともに、H-6NとYJ-21 ALBMを用いて弾道ミサイルによる対艦攻撃エリアを広げる手法が採られることとなった。YJ-21を搭載したH-6Nは空中給油無しでも最大6,000km近い範囲を射程圏内に収めることが可能と推測されている[2]。空中給油を実施することで、射程圏内をさらに延伸することが可能となり、戦略的柔軟性を大きく増すことに繋がる。その精密打撃能力は艦艇のみならず、地上目標に対しても脅威となると考えられる.

The Diplomatの報道によると、YJ-21は2016年12月に最初のテストが実施され、2018年1月にも試験を行ったとの事[11]。H-6N爆撃機からの空中発射試験も実施済みとされている[11]。アメリカではYJ-21/CH-AS-X-13について2025年までの実戦配備を予測している[10]。

【参考資料】
[1] The War Zone「Is This China’s DF-21D Air Launched Anti-Ship Ballistic Missile Toting Bomber?―A anti-ship ballistic missile carrying H-6N could extend China’s anti-access bubble even farther and put US naval strike groups at greater risk.」(THOMAS NEWDICK/2017年8月15日)https://www.thedrive.com/the-war-zone/13511/is-thi...
[2]The War Zone「This Is Our Best Look Yet At China’s Air-Launched ‘Carrier Killer’ Missile―China’s mysterious air-launched anti-ship ballistic missile just made its latest appearance.」(THOMAS NEWDICK/2022年4月19日)https://www.thedrive.com/the-war-zone/this-is-our-...
[3]Chnese Military Aviation「H-6N God of Thunder」https://chinese-military-aviation.blogspot.com/p/a...
[4]山下奈々「【研究ノート】中国の ASBM の開発動向― DF-21D を中心に ―」『海幹校戦略研究特別号』(通巻第 19 号) (海上自衛隊幹部学校 [編] /2020年4月)116〜135頁 https://www.mod.go.jp/msdf/navcol/assets/pdf/ssg20...
[5]凤凰网「解放军罕见曝光“鹰击-21”高超反舰导弹性能参数!还透露一个重要消息」(李岩/2023年2月3日)
[6]MDC軍武狂人夢「中國反艦彈道導彈/鄰近空間高超聲速反艦導彈」http://www.mdc.idv.tw/mdc/navy/china/china-asbm.ht...
[7]武居智久「どうなる!?十年後の海上自衛隊」『世界の艦船』2024年3月号(海人社/2024年1月25日)69〜76頁
[8]捜狐「全程6倍音速、末段10倍!中国YJ-21型高超音速反舰导弹首次公开」(军武次位面/2023年2月1日)https://www.sohu.com/a/636126438_120542825
[9]Global Security「CH-AS-X-13 / H-6N Bomber」https://www.globalsecurity.org/wmd/world/china/ch-...
[10]山形大介「実戦配備進む中国の極超音速兵器」『軍事研究2022年月号別冊−現代の戦略攻撃兵器』(Japan Military Review)44〜51頁
[11]The Diplomat「Revealed: China’s Nuclear-Capable Air-Launched Ballistic Missile」(Ankit Panda/2018年4月10日)https://thediplomat.com/2018/04/revealed-chinas-nu...

【関連項目】
H-6N爆撃機
DF-21準中距離弾道ミサイル(東風21/CSS-5)

中国空軍

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