「う〜っ、さむっ。」

12月も下旬とあってか、今日はとても肌寒い。
吐く息は白く、目に見える蒸気となり、真冬の空へと消えていく。

「まだきてないみたいだな。ちょっと早かったかな。」

ここは駅前でも、もっとも人で賑わうミルキー通り。

「10分前か…。思ったより早くはないな。」

制服のポケットから携帯を取り出し、時間を確認する。
今日、学校が終わった放課後、俺は彼女と会う約束をしていた。
辺りを見回す。繁華街の大通りは、若い年頃のカップルで溢れかえり
店々は赤と白、そして緑のクリスマスカラーで色鮮やかに装飾されていた。
そう、今日12月の24日はなんといってもクリスマスイブ。
最近、なにかと暗いニュースが多く、悲壮感漂う我が国において、一年で唯一、恋人がいる誰もが、
そんな事を忘れて幸せな気分になれる日。それがクリスマスだ。
まあ、もっとも、既にドラ1で地元のチームに入団が決まっている俺にとっては、景気がどうの、経済がどうのと言われたところで、
あまり現実感はないのだが。

「それにしても…。」

見渡す限り、カップルだらけだ。まあ、ここは駅前でも際立って、若い男女向けのオシャレな店が立ち並ぶミルキー通り。
ましてや今日はクリスマスイブ。当然と言えば当然か。


「クリスマスかあ…。」

俺は一年前のことを思い出す。あの日も、今日の様に寒い日だった。
俺達は遊園地に行ったんだった。こんな所に来たのは初めてだ、と言うアイツは妙にはしゃいでいた。
「ぉぃ、こ…み」
そしてそんな彼女を見るのが、とても楽しくて、愛しかった。
それで、最後の締めにと、乗った観覧車の中で、まさかあんな事になろうとは…。
あれ以来、俺達はそういう事とは全く無縁。しかし今日はなんといってもクリスマスイブ。特別な夜だ。あの日以来の…なんてこともあり得るかもしれないな…。

「おい、小波!!」
「うわあっ!」

耳元で自分の名前を呼ばれて、ふと我に返った。

「あっ…、真琴。」

見惚れてしまうような端正な顔立ち。腰までのびた綺麗な髪。
混黒高校の制服を身に纏った黒髪の美少女、二階堂真琴がそこにいた。

「ありがとうございましたー。またお越しくださいませー。」

若いアルバイト店員の、全く気持ちが込もっていない、機械的な挨拶を背に、俺達は外に出る。
真琴と合流して、どこに行くか、との問いに、のどが乾いたとの事だったので、俺達は行きつけの喫茶店に行った。
この広い繁華街。探せばあるもので、
その店はいつぞやに真琴が所望していた玄米茶がメニューにおいてある店だった。
俺達の中では喫茶店といったらソコしかない、というデートにおける一つの既定事項になっていた。
俺はいつも通りのダージリンの紅茶。そして真琴もいつも通りの玄米茶を飲み干し、店を後にした。



「小波、この後はどうするんだ?」

今後の予定を聞いてくる真琴。そういえば、デートに誘ったはいいが、それからのプランを何も考えていなかった。

「う〜ん。そうだなあ。真琴、どこか行きたい所とかある?」
「特にないな。小波と行くならどこでもいい。」

即答する。本当に欲がないなコイツは。
ふむ、どうしようか。適当にそこら辺のファミレスにでも入ってしまってもいいのだが、それでは少し味気ないな。
かといって、今から遊園地やらに行くには時間が遅すぎるしなあ…。

「小波、電話が鳴っているぞ。」

思案していた矢先、真琴が俺の制服のポケットを指差した。

「おっと、気がつかなかったな。えーと…メールだ。」

受信ボックスを開いて差出人を確認する。母さんからだった。え〜と、なになに。

【小波へ。今日はお友達との飲み会があるので、遅くなります。お父さんも仕事があるみたいで、帰りは夜中になるそうです。
夕飯は適当に済ませておいて下さい。】

だ、そうだ。言われなくても、夕食は真琴と共にする予定だったのだが。

「小波、誰からだったんだ?」
「ん?、ああ、母さんからだよ。帰りが遅くなるんだってさ。まあ、俺達には関係な…。」

言いかけたところで言葉が止まる。まてよ。父さんも、母さんもいないのか。
今日は日が日だけに、どこもかしこも人でごった返しだ。窮屈なことこの上ない。
できれば人混みは避けたいところなんだが、そういう意味ではうってつけだな。
つまり、俺の家でまったりと過ごすというのも悪くないということだ。

「小波、どうかしたのか?」
「あのさ、今日は俺の家で過ごさない?。どこも人でいっぱいだし、うちでゆっくりしようよ。」
俺は真琴に言った。

「小波の家か。わかった、お邪魔するとしよう。前々から一度行ってみたいと思っていたんだ。」
あっさり決定。

「決まりだね。よし、それじゃあ、何か食べ物を買ってから行こう。」
よっしゃ、と意気込み、人混みをズンズンと進む俺。

「あっ、待って小波。」
慌てたように俺の服を掴んで真琴が立ち止まった。

「ん、どうしたの?」
「そ、その、私達、恋人同士だよな。だから…」

もじもじと恥ずかしがる真琴。いったい、なんだというのだ。

「だから、手…繋いで欲しい…な。」

俺としたことが。そうだ、俺達は互いに好き合ってる、れっきとした男女の仲だ。
手を繋ぐ、など必須中の必須事項ではないか。どうして今日に限って忘れていたのか。

「ああ、もちろん。」

俺は照れ笑いを浮かべながら、差し出しくる彼女の左手を、指を絡めてしっかりと握りしめた。

「それじゃあ、行こうか、真琴。」
「うん!」

俺達は互いに寄り添い合って、夕刻の繁華街の中へと消えていった。

「ごちそうさまでしたー。」
「お粗末さまでした。」

場所は変わって俺の家のリビング。繁華街で、ケーキやら鳥やらを買った俺達は、家に帰って、だんらんとしながらの食事を終えた。

「お皿は私が洗おう。小波、台所を借りるぞ。」
真琴はそう言って立ち上がる。

「えっ、いいよ、わざわざ真琴がやらなくても。後で俺がやっておくからさ。」

お客様にそんな雑用はさせられない。俺は真琴を静止した。
「いや、やらせてほしい。今日はたくさん美味しい物をご馳走になったし、自宅にもお邪魔させてもらったからな。
そのお返しだ。それに…」
「それに?」

言いかけた所で真琴が躊躇する。

「その…近い将来、毎日私と小波の使った食器を洗うことになるかもしれないからな。」
「なっ…!」

思わぬ不意打ちに、俺は思わず照れてしまった。ちくしょう。
恥じらいながら、そんなことを言うなんて。可愛すぎるだろお前。こっちまで恥ずかしくなってしまう。

「あ、ああ。それじゃ、お願いしようかな。」

間の抜けた返答をする。ここで男らしく、カッコいい愛のこもったメッセージでも
言えればいいのだが、どうも俺は色恋に関しては不器用になってしまう。

「りょ、了解した。」
照れ隠しなのか、真琴は食器をオボンにのせると、そそくさと台所へと駆けていった。

秤の上に茶葉をのせる。慎重にティースプーンを動かす。
俺は、野球をやっている最中、もしくはそれ以上の集中力で、腕に全神経を集める。

紅茶の味というものは茶葉、シュガーの量が少し違うだけで大きく変わってしまう。
今日はアールグレイとアッサム。目盛を見る。よし、いつもどおりだ。
二種類の茶葉と少量の砂糖を、あらかじめお湯が入ってるティーポットに放りんで、軽く振った。
ほのかな香りが鼻先をかすめる。

テレビ脇の巨大オーディオプレーヤーに目を向ける。
三年前、高校の入学祝いにとせがんで、親父に購入させた代物だ。
最高の音楽を楽しむには、最高の環境が必要なのだ。

俺は再度、ティーポットを確認する。茶葉は底に沈み落ち着いた。
よし、そろそろだろう。お気に入りのカップにゆっくりと紅茶を注ぐ。
カップに口をつけた。いつも通りの甘い香り。分量は上手くいったみたいだ。
俺は野球と出会っていなかったら、間違いなく紅茶のブレンダーを目指していただろう。


「小波、食器は全て洗い終わったぞ。…これは。」

真琴が皿洗いを行っている間、俺はソファーに座り、紅茶と音楽を堪能していた。
作業を終えて戻ってきた真琴は、オーディオから流れてくる曲に耳を傾けた。

「クラシックか。」
「うん、まあね。好きなんだ、俺。」
「聞いたことがあるぞ、この曲。たしか…そう、カノンだ。」
おや、正解。これは意外だな。

「まさか、真琴が知っているとは。」

俺と付き合うまで、喫茶店にも映画館にも行ったことがないような娘だったのに。

「バカ者、あなどるな。」
軽く、俺の頭を小突いてきた。

「いくら私が、洋風な事柄に疎いといっても、このくらいはわかる。音楽の授業でも習ったしな。」
エヘン、と胸をはる。いや、それくらいで威張られても…。

「作曲者はたしか…、ベートーベンだったか?」

全然違う。というか、ただ単に知ってる作曲家の名前を言ってみただけなんじゃないか、それ。
それとベートーベンじゃなくて、ベートーヴェンだからな。ヴェン!。

「パッヘルベルだよ。」
「パッヘ…なんだって?」
「ヨハン・パッヘルベル。バロック中期の音楽家だ。」

カノンに関しては、どうも曲そのものと、作曲者の知名度が伴っていないような気がする。嘆かわしい事だ。

「な、なるほどな。パッヘルベルだな。パッヘルベル。」
ぶつぶつとその名を復唱する真琴。はたして一週間後、覚えているだろうか。


「小波と接していくうちに気づいた。」
「何を?」
「これからは和洋折衷の時代だということに。」

終戦直後の人間かお前は。50年以上前から日本は和洋折衷だ。

「そうか、それなら勿論コーヒーも大丈夫だよな。それもとびきり苦いブラックで。」
俺はニヤニヤと意地悪く笑い、紅茶様式の脇に置いてある、親父がよく飲む安物のインスタンスコーヒーに手をかける。
コーヒーは俺の専門外だ。

「い、いい!。結構だ。それだけは勘弁してくれ〜。」

へなへなと、腑抜けたように懇願してくる。
普段は凛々しい真琴でも、こういう時は可愛いもんだ。

「ハハハ、うそうそ、冗談。」

俺は笑い飛ばして、コーヒーの袋を放り投げると、緑茶の入ったポットを湯呑み茶碗に注いだ。茶碗を真琴に差し出す。

「あ、ありがとう。まったく、人が悪いぞ小波。」
ズズズーっと旨そうに飲む真琴。幸せそうな顔だ。

さて、そろそろ頃合もいいだろう。

「真琴、渡したいものがあるんだ。」
俺は鞄の中から、綺麗に包装された袋を取り出した。

「えっ、渡したいもの?」
「メリークリスマス。俺からのプレゼントだよ。」
俺は笑顔で袋を真琴に手渡す。

「あっ…。そうか、クリスマスといえばプレゼントか。」

真琴は失念の色を浮かべて、気まずそうに俯いた。
どうやら何も用意していなかったらしい。

「すまない、小波。私はそういうのに疎くて…。」

大丈夫だ。問題ない。真琴の事だから、忘れる可能性も考慮した。全ては想定済みだ。

「いいって、いいって。別にプレゼントなんか。義務でもないし。」
俺は慰めるように言った。

実際、真琴が側にいてくれるだけで充分だし、俺にとってはそれが一番のプレゼントだよ。
なんて事を、思ってはいるのだが、恥ずかしくて口には出せない。まったく。情けない。

「いや、そういうわけにはいかない。必ず後日、私もプレゼントを渡す。」
いいって、言ってるのに。律儀だなあ、真琴は。

「小波、何か欲しい物はあるか?」
「えっ、欲しい物?」

ウィーン劇団のコンサートチケット、と、言いたいところだが、まあ真琴が用意するのはまず無理だな。
それ以外だと、う〜ん。特にないなあ。

「つっ!!」

どうしたことだろう。突然、去年のクリスマスの、観覧車での光景が、脳内をフラッシュバックした。
重なった肌。乱れた衣服。あげる淫声。感じた体温。
どれもこれも、生々しく、俺の脳裏にこびり付く。

そういえば、今日、学校で詰井が

(「今日は聖夜だけに、性夜ってか。うらやましいじゃねぇか。」)

などと言っていたのを思い出す。

(「おいおい、俺達は清い付き合いなんだ。そういう事はしないんだよ馬鹿。」
「チッチッ。わかってないなあ。今日はクリスマスイブ。特別な夜だぜ。そういうつもりがなかったとしても、幻想的で神聖な夜の雰囲気が、自然とそういうムードにさせちまうんだよ。」)

なにを、童貞が知った風な事を言いやがって。
と馬鹿にしたが、この頭からこびりついて離れない、エロチックな情景も、
ヤツが言うクリスマスイブ独特の魔力か何かから生じるものなのか。
そんな事を考えているうちに、だんだん体が火照ってきた。

そうか、そういうことか。不意の淫らな回想も、妙なムラムラも、性をつかさどる神様かなんかの仕業に違いない。
これはお告げだ。若いんだからガンバレ、っていう。

「小波、どうかしたのか?」

いきなり無言になった俺を不思議そうに見つめる真琴。


「真琴、あのさ…、俺、真琴が欲しいんだ。」
意を決して言った。
「えっ、…こ、小波!?」

色白の真琴の顔が、徐々に赤く染まっていく。その反応を見るに、どうやら意味を理解したようだ。
もう我慢できない。俺は若さ故の劣情に身を任せて、真琴を強く抱き締めた。
引き締まったカラダ。上品な香り。一年ぶりに感じる真琴の肉体。

「ひゃあっ!、小波。ちょ、ちょっと待って。」

慌てて、抱き寄せた体を離そうと、する真琴。

「どうしたの、嫌?」
「ち、違う。そうじゃない。ここは、居間だろう。」

うん。少なくとも、玄関には見えないな。

「こういうのは、その…ベ、ベッドのある所でしたいな…って。」

たしかにな。真琴の言う通りだ。まったく、早まるな、俺。

「そうだね。じゃ、じゃあ…俺の部屋で。」
「うん…。」

顔が赤くなっている真琴の手を引いて、リビングから自室へと向かう。
毎日、十数回と、往復しているはずのその道が、なんだかとても儚いもののような気がした。
それは、ユートピアへと繋がる天の道か。

「小波…、なんだかドキドキするな。」

部屋に入り、ベッドに座って向かい合う俺たち。

「んんっ、…ふあっ。」

俺は真琴の肩を抱き寄せると、唇にキスをした。
彼女の心臓の鼓動が、柔らかい胸を通して伝わってくる。体が熱い。
真琴の唇は柔らかく、甘い味がする。
さっき食べたクリスマスケーキの余韻だろうか。

「ふっ…、ちゅっ。」

唇が重なる程度の軽い接吻。舌を入れてみよう。
「ふあっ!、んんっ…ちゅるっ…じゅるっ……んぱぁ。」

俺の舌が真琴の口内に進入した一瞬、驚きの声を挙げたが、すぐに受け入れ、自分の方からも積極的に舌を絡めてくる。
情熱的なキス。俺は、水を飲む犬のように、舌をひたすら動かし、真琴の口を舐め回す。

「じゅぷっ…んんっ、ちゅるっ………ぷはっ!。」

充分に真琴の、口内を堪能した俺は、舌を離した。
「はあっ…はあっ…。」
唾液が、糸を引いて、ポタ、ポタ、とシーツの上に滴り落ちる。

「小波…は、はげしいぞ。」
「ごめん、ごめん。真琴があまりにも可愛いからさ。」

普段は到底口にできないような甘い言葉も、不思議とすんなり言えてしまう。

「なっ…、可愛いって…もう、バカ…。」

俺達はあまり、こういう会話に慣れていない。照れ隠しなのだろう。恥ずかしそうに悪態をつく。
さて、お次は、その形の整った、綺麗な胸を愛でるとしよう。
俺は制服越しに、真琴のおっぱいに手をかける。

「えっ!、ちょっと、待て。」

本日三回目の待ったが入った。七並べならもう後はない。

「今度は何?」
「以前、観覧車でした時は野外だから仕方なかったが、こういうのは本来、裸になってするべきなんじゃないか。」
ああ、なるほどね。
「いや、たしかにそりゃ、そうなんだけど、まあ、着たままでもいいじゃん。」

せっかく可愛い制服姿なのに、全裸になるのは勿体ないじゃないか。
いわゆる半脱ぎプレイってヤツ?。

「そうか、小波がそうしたいのなら…。」
わかった、と答える真琴。本当に素直だなこの子は。


コクンと頷いた彼女の、ブレザーのボタンに手をかける。
そして一つ一つ、丁寧に外していく。

「うわっ…、恥ずかしい…。」

ワイシャツのボタンを外すと、彼女の可愛らしい乳房があらわになる。
色白のふたつの双璧は、大きすぎず、小さすぎず、程よいサイズで、プルンプルンと震えている。
俺は優しく、撫でるように触れた。

「んんっ…。」

柔らかい。少し掴んだだけでも、ムニュっとした弾力が、感じ取れる。
今度はもう少し強く、掴んでみよう。

「ふあっ!、ああっ。」

左右の手で、軽く円を描くように両胸をこねる。

「んんっ、…あんっ、やんっ。」

だんだんと薄ピンクの乳房が、ぷっくり、と固くなるのがわかった。どうやら感じているようだ。

「気持ちいい?」
「う、うん。気持ちいいぞ、小波。…ふあっ!?」

突然、驚きの声をあげる真琴。俺が乳首を口に含んだからだ。
綺麗な桜色の乳頭を、舌を使って舐め回す。

「そんなっ、犬みたいに、んんっ、ふあっ、な、なめたら、…ああんっ!。」

かまわずに俺は舌を動かす。ちゅぱちゅぱと、淫らな音をたてながら、夢中で突起を吸い上げる。
ふと、下を見た。彼女のスカートの中から垣間見える清純そうな水色の下着は、秘部の部分だけが失禁したかのように濡れていた。

よし、次のステップに移るとしよう。
俺は真琴の胸から口を離した。
はあっ、はあっと荒い息使いの真琴の表情は、普段見せる凛々しい武道家のソレではなく、発情した年頃の女の顔だ。

「真琴…。寝よっか。」

俺は真琴の肩を掴むと、唇にまた軽くキスをする。
「ちゅっ……ひゃあ!」

そしてそのまま、真琴に体重をかけて、ベッドに押し倒した。
「も、もういれるのか?」

焦ったように聞いてくる。

「違うよ。これは前戯っていってね、本番の前の準備さ。足を上げてくれ。」
「う、うん。…やっ!?」
俺はスカートをまくし上げると、彼女のパンツをスルっと下げた。

「あっ…、だめ…。」

これが真琴の…。見るのは昨年と今日とで、二回目になるが、こんなに近くで観賞するのは初めてだ。
真琴の、赤く、淫液で濡れる性器を、俺はまじまじと見つめてしまう。

「ちょ…、そんなに見るなぁ。恥ずかしいったら。」
恥じらう彼女が可愛い。俺は秘部のワレメを指でなぞる。

「ふあっ、んんっ。」

そして今度は指ではなく、舌でなぞる。
「ああんっ、また、そんなに舐めたら、やんっ。」

びちゃびちゃ、と音をたてて、赤いワレメを上下に舐める。

「ひゃあ、ああんっ…、ふあっ、だめぇ。」

真琴の喘ぎ声が段々と大きくなる。それに、合わせて、俺も舌の動きを加速させる。

「ああんっ、ふあっ、だめっ…私、イク、イっちゃう!」

どうやら限界が近いようだ。俺はスパートをかけるべく、さらに舌を素早く動かした。

「ふあっ、ああっ、ああああんっ!!。」

彼女の体かビクッ、ビクッ、と脈打った。どうやらイッたらしい。

「どう、気持ちよかった?」
「う、…うん。」

頬を赤く染め、頷く真琴。ああもう、ホントに可愛いなお前。
俺は自分のペニスをズボンのファスナーから取り出した。

「それじゃあ、そろそろ挿れ」

ようとした俺を、真琴が待ってと制止した。これで待っては四回目。

「どうしたの?」
「いや、その、小波は今、私のを口でしてくれただろ?」
うん。いわゆるクンニリングスってやつだ。

「だから、私もその…、ふぇ、ふぇらちお、というものをしてあげたい。」
「フェ!?」

一瞬、耳を疑った。まさか真琴がそんな言葉を知っているとは。
純真無垢な顔して、いったいどこで覚えてきたのか。

「それはな…、この本に書いてあったんだ。」
そう言ってゴソゴソと自分の鞄から、何かを取り出す真琴。これは…、

「童貞君も大安心!猿でもわかる男と女のSEXマニュアルぅ!?」
思わずタイトルを読み上げてしまった。
それにしても、これまたチープそうなものを。
表紙裏の値段を確認する。2500円!?、ちょ、高けぇ。


「去年のクリスマスに初めてを経験してから、二回目に備えてこういう知識も入れておかなきゃいけないと思ってな。」

どうやら初体験を終えてから、次を意識していたのは俺だけではなかったようだ。

「えっと、それじゃあ、お願いしようかな。」
「わかった。見よう見まねだが、がんばってみる。」

そう言って真琴は、俺のペニスを握ってきた。

「あ、熱い。それに、大きいな。」
俺の陰茎は興奮と快感で熱を帯びて、最大にまで膨れあがっている。

それを手でゆっくり上下にしごいていく真琴。
「あんっ…小波の、だんだん硬くなってきた。」
徐々に真琴の目が、とろーん、としてきたのは気のせいだろうか。興奮しているのかな。

「真琴、そろそろ。」
俺は真琴に、口をつけるように促す。

うん、と答えた真琴は、亀頭を舌でチロっと舐めてきた。

「ちゅるっ…、ちゅっ。」
「くっ、こ、これは。」

ぎこちなく、むず痒いが、逆にそれが何とも言えない快感となって、俺の下半身をぞくぞく、と震わせる。

「んぱぁ…ちゅるっ、ふあっ。」

真琴は、レロレロと円を描くように、亀頭の周りを舐め回す。

「小波、気持ちいいか?」
上目遣いで聞いてくる。今までに見たことがないような、妖艶な表情が、なんともイヤらしい。

「あ、ああ。気持ちいい。」
俺は素直に答える。

「ふふっ。小波の今の顔、すごく可愛いぞ。」

感じて、悶えている俺は、なんとも情けない面構えになっていることだろう。

「あっ、何か出てきたぞ、小波。」

真琴は俺の尿道から出てきた、透明の粘液を舐めあげた。

「ああ、それは先走り汁ってやつだよ。射精しそうな時に、出てくるモノなんだ。」
「そうなのか。感じてくれているんだな。それじゃ…そろそろ。」

そう言って、今までは舌だけで俺のモノを責めてきた真琴だったが、口をぱっくり開けて、陰茎をくわえこんだ。


「じゅる…、じゅぷっ、ちゅぱっ。」
「うわっ、これ、気持ちいいよ。」

真琴のトロトロした、舌と唇が俺のペニスを包み込む。

「ほんひょ?。ふあっ…じゅるっ。じゃあ、もっとひもひよくなって。」

口にくわえたまま答える真琴。そのまま首を勢いよく振って、俺の陰茎を刺激していく。
ぐっ、これは…。

「ま、真琴、俺そろそろ。」

だんだんと射精感が強くなってきた。

「じゅるっ、じゅぷっ…ちゅるっ、ちゅぱっ。」

今までに以上に、舌と首の運動を加速させてくる。

「くっ、もう俺、ヤバっ、出っ!!」
「ふあっ、んぐっ、……んんんっー!?」

射精の瞬間、思わず真琴の頭を掴んだ俺は、彼女の口の中に、ありったけの精をとき放った。

「ふあっ…、小波のがいっぱい、口の中でぇ…熱い…。」

真琴は俺の精液を口の中にためて、うっとりしていたかと思うと、コクン、と全て飲み干してしまった。

「お、おい。大丈夫かよ。」
「エヘヘ、これが小波の味か。ちょっと苦いな。」

お転婆娘のような笑みを浮かべて、真琴は言った。


「こ、小波のは、まだまだ元気だな。」
「ま、まあね。」

真琴の淫れる様を見た俺のペニスは、
たった今、射精をしたばかりだというのに、瞬く間に、再生していた。

「真琴、それじゃあ、今度こそ挿れるぞ。」
俺は真琴を優しく寝かせる。

「うん、いいよ。」
頷く真琴。陰茎を彼女の秘部にあてがう。 俺はゆっくりと、腰を前に出し、ペニスを性器へと沈めていく。

「んんっ!…小波の、はいってきたあ。」
「大丈夫か、真琴?」
初めてではないとはいえ、二回目、それも一年ぶりだ。多少なり痛みがあるのではないだろうか。

「うん、大丈夫だ。いいよ、いっぱい動いて。」

真琴は俺に腰を振るように促す。感じきった恍惚の表情を見るに、心配はないようだ。

「わかった。いくぞ、真琴。」

俺は、ゆっくりと、愛でるように腰を動かす。

「んはぁっ、あんっ、はあっ……ああんっ!」

ぬるぬるとした柔らかく熱い感触が、ペニスを包む。

「ふあっ、小波、好き、好きぃ。」

真琴から、そんな甘い言葉を聞いたのは、初めてかもしれない。

「俺もだよ。大好きだ真琴。」

そう言って唇にキスをする。
俺は夢中になって腰を動かし、真琴を感じていった。

「ああんっ、小波、すごい、いいっ、気持ちいいよお!」

腰を前後に動かすたびに、膣肉が陰茎に絡み付く。温かくて、気持ちいい。

「ひゃあっ…ああんっ、小波ぃ、小波ぃ!」

突かれながら、何度も俺の名前を連呼する。
彼女の甘えるように、快楽を伝える様が、とても愛らしい。

「ふああっ、んあっ、ああんっ…、ちょ、激しい!」
興奮した俺は、夢中になって腰を振った。

「こ、小波の、おちんちん、いっぱい感じてっ、……やっ、イクっ、私、またイッちゃうよお!」
「真琴、俺も、もうそろそろ。」

ラストスパート。ピストン運動を最高速に。

「ひゃあっ、ああんっ、やんっ……イク、イク、イクううううう!!」
「ぐっ、真琴、出すよ!」
「ふああっ、ああああああんっ!」

瞬間、目の前が真っ白になり、俺は自分でも驚くほどの、大量の精液を彼女の中に、流し込んだ。

「うわあっ、雪が降ってる。」

情事を終えた俺達は、後始末をし、再びリビングに戻った。窓の外ではいつの間にか、粉雪がチラチラと舞っていた。
どうりで、今日は寒いハズだ。

「小波、そろそろ夜も遅い。この辺で、おいとまさせてもらう。」

そう言い、真琴は玄関へ向かおうとする。

「あっ、ちょっと待って真琴。」
「ん?、どうしたん…ふあっ!?」

俺は真琴を引き寄せ、今日一番の強さで、抱き締める。
先程の余韻か、真琴の体は温かい。

「もう一度、ちゃんと言うよ真琴。俺は、お前の事が好きだ。愛している。」
「うん。私も…、あ、愛してる。」

凍てつくような寒い夜だったが、俺達ふたりは、春が訪れたかのような、暖かく、優しい温もりに包まれていた。



おじゃましました、と言って、立ち去る、真琴の背中を眺めながら、俺は思案していた。


プロポーズの言葉は何にしようかな。

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