ある宿の一室に、錬金術師と魔術師の格好をした二人の男女が向かい合って座っていた。
「……アマルダさん、どうしたんです? こんな場所に呼び出して」
 呼び出された男、錬金術師のコナミが、呼び出した女性、魔術士のアマルダに問う。
「魔法でこの部屋は封印しました。誰にもここで話すことを聞かれたくないからです」
 彼女のこの言葉を聞き、彼は表情を一瞬で変え、真剣な表情を浮かべる。
「どうやら、大事な話のようだな」
 封印が確かであることを確認した彼女は話し出す。自らの生い立ち、自らの置かれた状況、全てを彼に打ち明け、語り続ける。彼は彼女の話を驚きながらも聞き続け、彼女の話を一つ一つ受け止めていく。
 暫くの間その会話は続いていたが、話が一区切りついたように見え、彼は少し姿勢を崩して一息つこうとした。その時に、彼女は覚悟を決めたような表情を浮かべ、次の話を始める。
「……実は、ここからが本題です」
 彼女の覚悟を決めた表情に彼は姿勢を元に戻し、いっそう真剣な表情になり話を再び聞き始める。
 その彼に向けて彼女は告げる。自らの魔力がピークに達したこと、自らの魔力を次世代に伝える必要があることを。
「次の世代?」
 彼女の言葉に対して、彼は疑問の声を向ける。その疑問を聞いた彼女は、逡巡するかのような表情を見せる。
「え、ええと、そのですね……」
 一瞬口ごもる彼女であったが、一度深呼吸をして自らを落ち着かせた後に、続きを告げる。
「あなたとの、子供です」
 その言葉が彼女の口から放たれた瞬間、部屋にはまるで氷魔法が放たれ、辺りが凍りついたかのような静寂が訪れる。話を聞いた彼は驚愕の表情のまま押し黙り、彼女は少し顔を赤く染めて下を向いて黙り込んでしまう。
 少し経ってから、ようやく混乱を落ち着かせた彼が搾り出すように言葉を発する。
「……とりあえず、どうして俺なのか聞いてもいいか?」
 彼の言葉に対して、彼女は顔を少し赤らめたまま前を向き、彼の目を見据えるようにして答える。
「だって、あなたのことが好きですから。それ以上の理由は、必要ないでしょう?」
 これ以上無い理由を正面から聞かされ、彼は動揺を隠しきれず、顔色もまた赤みががる。その彼に向かって、不安そうな表情を浮かべた彼女は問う。
「……それで、ご返事は、どうなんでしょうか」
 彼女の問いを聞いて何とか平静を取り戻した彼は少しの時間腕を組んで思案を巡らせた後に、彼女に向け答えを告げる。
「わかった、協力しよう」
 不安から思考が鈍っていた彼女は、一瞬彼の言葉を理解できなかったようで、ただ呆然と彼のことを見つめていた。だが、すぐに言葉の意味を理解し、目に涙を浮かべながら微笑み、精一杯の返事をした。
「……ありがとうございます!」
 その返答の後、彼女の目からは幾筋もの涙が流れ、彼女の頬を濡らす。そして、彼女の口からは嗚咽が漏れる。彼女はその泣き声を必死に抑えながら、言葉を紡ぐ。
「どんな魔物と戦うよりも、勇気が必要でした……言うのが、本当に怖くて……」
 弱弱しい声でその言葉を搾り出すと、彼女の涙は更に流れる量を増やしていく。それを見た彼は席を立って彼女の前に立ち、そっと抱きしめ、唇を重ね合わせる。
 彼の動きに最初は驚いていた彼女であったが、すぐに彼の身体に腕を回して強く抱きついた。
 彼は口付けを交わしたまま、彼女の背中に回した手で、泣く子供をあやすかのようにゆっくりと撫で始め、その行為を彼女の涙が落ち着くまで続けていた。


 時が過ぎて、彼女の涙が落ち着くと彼は唇を離し腕を解き一度彼女を離す。いつもの笑顔に戻った彼女は彼に向けて言う。
「……本当に、あなたは優しい人ですね」
「いや、ああするぐらいしか思いつかなかったんだ。あれでよかったなら幸いだ」
 彼は苦笑しながらその言葉に答える。
「あれで良かったんです、本当にありがとうございました」
 彼女は満面の笑みで心からの礼を彼に伝え、続けて自らの覚悟を口にする。
「あなたと一緒なら、怖いものなんてありません。だから、子供のこと、今からお願いしてもいいですか?」
「うん、でも一つだけ、先に言っておかないといけないことがあるから聞いて欲しい」
 その言葉に少し疑問を持ちながら彼女は彼の言葉に耳を傾ける。彼は真っ直ぐ彼女の目を見据えて言う。
「俺も、アマルダさんが好きだ。愛してる」
 彼からの不意の告白に彼女は驚くが、すぐに心からの笑みを浮かべて答える。
「はい、私も愛してます」
 彼女がそう言い終わると、どちらからともかく顔を近づけていき、二人は先程のキスとは違う、深い口付けを交わす。
 彼の舌が彼女の口内に差し込まれると、彼女は自らの舌を絡めていく。互いに相手に唾液を送り込み、代わりに送り込まれる相手の唾液を飲み込み、その甘美な味に酔いしれる。この官能は二人の情欲を燃え上がらせるには十分すぎるものであった。
 長い口付けを終える頃には、二人の顔は互いの口内に収まりきらなかった唾液に濡れ、その表情は上気しきった艶かしいものへと変わっていた。そして、互いの唇にはなお銀糸の橋がかけられて二人を繋げていた。
 その後二人はそのまま何も言わずに、隣においてあったベッドの上へ身体を移す。


 ベッドの上の二人は、互いに相手の服を脱がせあって、あっという間に両者一糸纏わぬ姿となる。その時、彼女が少し不安の混じった表情を浮かべる。
 彼女の身体には、彼女の持つ魔力の証である、刺青の如き呪印が刻まれており、彼女はそれを引け目に感じる部分があったのである。
 しかし彼はその印を全く気にする素振りも見せずに、彼女の身体を見た感想を漏らす。
「本当に綺麗で、美しい身体だ」
 彼はそう言うと彼女の身体に自らの肢体を絡ませ、再び濃厚なベーゼを交わす。そして、上で深く繋がったまま、彼の腕は彼女の胸に伸びていく。
 彼の手が彼女の胸に到達した瞬間、彼女の身体は震え、重ね合った唇の隙間から僅かな嬌声が漏れる。彼の身体の感触と熱が、彼女から引け目を感じるほどの余裕を奪い去り、ただ目の前の官能に溺れていく。

 彼が唇を離すと、今まで彼の口によって抑えられていた彼女の甘い声が部屋に響き渡る。
「ふぁっ、ぁん、うあっ」
 彼の指が彼女の膨らみに沈み込む度に彼女は嬌声を上げる。さらに、彼の手は胸だけに留まらず身体の色々な部位を撫で回し、指を這い回らせ始める。
 愛する男が自分を愛してくれているという悦びが彼女を鋭敏にさせ、彼の動き一つ一つに反応を示し、艶やかな声を上げる。
 乱れる彼女の姿を見た彼は、少し満足げな表情を浮かべ、彼女の膨らみのうち片方の先端を口に含み、転がすように責め始める。
 さらに、彼は余った片方の腕を、腹へと身体をなぞるように動かし、彼女の秘部へと伸ばしていく。
「ひあっ! うぁ、やあっ!」
 彼の指が秘部に到達すると、彼女の口からは一際大きな嬌声が発せられ、秘部からは水音が響く。そのまま指を這い回らせ続けると、彼女の声からは急速に余裕が失われていき、絶頂に上り詰めていく。
「ああっ、いっ、ぅあああああああっ!」
 絶頂に達した彼女は叫び声にも似た嬌声を張り上げ、身体を仰け反らせた後、身体から力が抜けていく。

「ちょっとやりすぎたかな……大丈夫?」
 彼は少し申し訳なさそうな表情をして、肩で息をする彼女に話しかける。
「い、いえ……私は、大丈夫です。だから、このまま続けてください」
 彼女は心配させまいと息を整え、精一杯の笑顔を浮かべて答える。
「……わかった。じゃあ、このまま続けるよ」
 彼は彼女の意志を汲み、身体を起こすと彼女の脚を開かせ、その間に入り込む。そして、彼女の秘部に自らのモノを添えて、ゆっくりと腰を前に突き出していく。
 中に入った途端強い抵抗を受けるが、その抵抗を押し退けて中に分け入っていく。少し進んだところで、今までよりも強い抵抗に行き当たる。それは、まだ彼女が男を知らないことを意味するものであった。
 彼が彼女の顔を見やると、彼女は黙って首を縦に振る。その動きを見た彼は、一気に最奥部に向けて突き進む。
「うあああっ! あ、つぅ……」
 初めて男を迎え入れた痛みに、彼女の顔は少し歪み、目から涙が流れ落ちる。その様子を見た彼は心配そうに彼女に問う。
「本当に、大丈夫?」
 彼女は痛みを堪えながら、笑顔で答える。
「大丈夫です。痛くて泣いたんじゃないんです、痛みは普段の戦いに比べたら、たいしたことありませんから。ただ、あなたと一緒になれて、嬉しくて……だから、続けてください」
 彼はその言葉を聞き、安堵の表情を浮かべる。そして、彼女の頬に優しくキスをして、ゆっくりと動き始める。

「っ、ぅあ、ああっ!」
 彼女の喘ぎ声は、最初は痛みから来る苦痛交じりの短い声だったが、彼が動き続けているうちに苦痛の色は消え、艶やかで甘い声を発するようになる。
 表情からも苦悶の色はすっかり消え、彼から与えられる快楽によって完全に蕩けきった目と、緩んだ表情が快楽の虜であることを雄弁に物語っていた。
 彼はその嬌声と艶かしい表情に煽られるように動きを激しくしていく。彼の動きは彼女を絶頂へと導き、彼女が絶頂に近づくたびに蠢く秘部が彼を絶頂へと上り詰めさせ、互いが互いに相手を絶頂へと導いていく。
「もうそろそろ、限界かな……本当に、いいんだね?」
 絶頂が近づきつつあった彼が、最後の確認を彼女に取る。
「あっ、はい、このまま中に、お願いします……!」
 彼女はすぐに答え、脚を彼の腰に絡めて彼を最奥へと誘う。彼はその動きを見て、彼女の最奥に向けて自らのモノを叩き込むように、腰を押し付ける。
 そして二人はほぼ同時に絶頂へと達する。
「いくよ、アマルダっ!」
「はぁ、ぁあああああああっ!」
 彼は彼女の中で全てを吐き出し、彼女はそれを全て受け止め、奥へと飲み込んでいった。そして、全てを吐き出し終わった彼は、彼女の隣に倒れこむように寝転がる。
 その寝転がった彼の元に彼女が近づき、暫く見つめあった後に、彼女のほうから彼に唇を重ねる。そのまま二人は暫くの間、優しい口付けを愉しんでいた。

「お疲れ様、アマルダさん」
「はい。あなたも、お疲れ様でした」
 先程までの激しさから一転、二人は何も纏わぬまま一枚の布団の中で、抱き合いながらゆっくりと時を過ごしている。その時、彼女はある一つの疑問を口にする。 
「ところで、さっきアマルダって呼び捨てにしてましたよね?」
「え、あっ。……ごめん、つい」
 言われて気付いた彼は、ばつの悪そうな表情を浮かべながら謝る。
「ふふっ、いえ、二人の時なら呼び捨てで構いませんよ。寧ろ、呼び捨てのほうが仲良くなれた感じがするので嬉しいです」
 彼女は少し笑いながら彼にそう告げる。
「わかった。それじゃあ、これからもよろしくね、アマルダ」
「こちらこそ、これからもよろしくお願いしますね」
 彼の言葉に、演技ではない心からの笑顔を浮かべて彼女は応えた。

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