「小波君、まだかな…」
紅葉が散る秋の中、桜空は大木の近くで小波が来るのを待ってる。
小波が甲子園を優勝して野球部を引退した後、二人は一緒にいる時間が多くなった。
そして外出する約束をして、現在に至る。
「小波君の事だから、きっと寝坊してるのだろうけど…クスクス」
大急ぎで支度をしている姿を想像すると、つい笑顔が溢れてしまう。
そんな風に考えていると、いきなり突風が吹いた。
「きゃっ!」
桜空は浮かび上がったスカートを慌てて手で押さえる。
「全く…意地悪な風です。そういえば、今日は風が強いんだった…」
桜空は昨晩見たニュースを思い出した。
今日は大神グループが作った人工の台風が接近しているのだ。
早ければ、今日の夜にはこの近くを通るとの事。
「夕方には帰らなくちゃ…一応、小波君には言っておこう」
そう考えた途端、強風が吹き、一面に落ちている紅葉が宙へと浮かび上がった。
それと同時に桜空のスカートも浮かびあがり、淡い桃色のショーツが全方向から丸見えになる。


「っ!」
桜空は強風によって舞い上がった紅葉に視界を奪われながらも、必死にスカートの前部分を押さえる。
しかし、ガードしてるのは前部分だけ。
後ろの部分はノーガードになっていて、ショーツが丸見えになっている。
「(目の前が見えない…でも、なんとか後ろも押さえなくちゃ…)」
桜空は片手で後ろの部分も押さえようとしたが、前部分を押さえているもう片方の手が押さえきれずに宙へと投げ飛ばされてしまい、再びショーツが丸見えになる。
「…っ、もう…ダメ…」
強風で体制が保てずに、桜空は後ろへと転倒してしまった。
そして紅葉が荒れ舞う中、ショーツが丸見えになっている。
桜空は立ち上がろうとするが、強風と叩き付けてくる紅葉により立ち上がれずにいた。

強風が吹いて数分後、ようやく風は弱まり、桜空はゆっくりと立ち上がった。
「(…びっくりしました…しかし、あんなに風が強かったなんて…)」
スカートをぽんぽん、と叩いていると、やっと小波が手を振りながらやってきた。
「お〜い!桜空!遅れてゴメン!それと、大丈夫か?今、凄い風が吹いたんだけど!」
小波が桜空の近くまで来ると、様子が変に見えた小波が問う。


「…桜空、どうしたんだ?頭が少しボサボサだし、紅葉が体のあちこちに付いてるし…」
「………」
「桜空?」
「な、なんでもありません!さ、早く行きましょう!」
「え?」
そう言うと、桜空は小波の腕を引っ張って走り出した。
「あ、桜空!」
「なんですか?」
途中で小波が呼び止める。
「ん…」
「………!」
「出会いのキス」
「もう…行きますよ!」
「あ、ちょ…」
桜空は耳まで真っ赤に染めながら再び走り出した。

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