(うーん…。なんか苦しい…)
とある平日の夜。
御影は明日の野球部の早朝練習のために早寝をしたが、寝ている最中に突如違和感を感じ、目を覚ませようとする。
体に纏わり付くような謎の感触、微かに鼻に付く甘い香り、涼しい季節のはずなのに息苦しさと暑苦しさを感じる。
意識が徐々に戻り、謎の違和感の正体を掴もうとし動くと…。
(ふにゅ…)
何か柔らかい感触が当たった。
しかも随分心地好く、何故か反射的に身を固くしてしまう。
(なんだこれ…)
気を取り直し、意識を覚醒させた。目は開いたが瞳孔は閉じているためまだ真っ暗だ。
その時、謎の物体が動いたようだ。
(!!!)
首筋に生暖かい風が流れた。この大気の流れは湿感を含み肌を僅かに濡らす。
薄々正体に気がついてしまった。
瞳孔が開き、暗闇の中で正体を掴んだ。
そこには見慣れた姿があった。
「透…」
幼なじみであり、野球部のマネージャーでもある八坂透である。
彼女は同じ布団の中で、気持ち良さそうに寝ていた。
まさかとは思ったが、昔から彼女は眠れないと御影と一緒に寝る癖がある。彼女曰く「京ちゃんがいるとぐっすり寝むれるんだよっ」とか。
しかしそれをしていたのは小学校低学年のまでで、今になって再発するとは思わなかった。
というか今の年齢で男女がこうするのはマズイ。それにも関わらず八坂はかなり密着している。
「透っ!起きろっ!」
肩を揺さぶりつつ声を上げ、起こそうとするが反応しない。
透は一度熟睡するとなかなか起きない。
付き合いの長い御影でも起こすのに最悪30分近くかかる時があり、放っておくと昼になってしまう。
意識が完全に埋没したであろうこの時間帯で、彼女を起こすのは不可能だと判断した。
「ま、仕方ねーか」
自分が部屋から出て行き、朝に起こせば済む話だ。
気を取り直し、再び八坂の寝顔を見る。
本当に気持ち良く寝むっている。八坂がなかなか起きないのは、他の人よりも心地好い夢を見ているからだと御影は思っている。
普段は陽性の笑顔で明るくさせてくれるが、この安らかな寝顔は見る人を穏やかにさせてくれる。
「やっぱ透の寝顔はいい…な…」
彼女の寝顔は本当に天使のようだ。
本人には絶対言わないが。


「京ちゃん」
突然の声にドキリとする。無論寝言だ。
「えへへ…。野球やってる京ちゃんがまた見れるね…」
この言葉に御影は驚いた。八坂がそれ程まで御影に野球することを望んでいたとは。
「透…」
御影は真剣に言った。
「お前にはもっといい夢を見せてやるからな」
目指すは甲子園。そう心に誓った。
その時突然、八坂は寝返りをうち御影を襲う。
「お、おいっ」
さらに密着した八坂は御影を枕を見つけたかのように抱きついた。一気に胸の感触を押し付けて来る。見かけによらず純朴な高校生である御影には堪ったものではない。
「!!!!!」
無言の絶叫が続く。
割りと激しく動いたためか着衣が乱れてしまっている。僅かにピンク色の下着と谷間が見えてしまう。
「ぶっ」
鼻血が出そうになった。目のやり場がなくなり行動を封じられた御影に八坂の容赦ない攻撃が続いた。

この絡みは体感的にかなり長く続いた。

その後の御影は「不眠症」かつ「煩悩」になり練習の調子が悪くなったとか…

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