「小波君!次はあれに乗ろうよ!」
「おいおい…そんなに急ぐと転ぶぞ。」

今、俺はあさみとナマーズパークに来ている。
どうやらまた川田さんが運よく持っていたらしく、
チケットには「非売品」と書いてあった。

「おーい!早くしないとおいて…きゃっ!」
あ。転んだ。
本当にコイツはドジだ。
2年前はスケボーを真っ二つにしたし、この前はフライパンとフランスパンを間違えていた。
両親にも諦められているようで、俺がしっかりしないとといつも思う。


その後も俺はあさみのドジに振り回された。
最後の観覧車では、なぜか乗っているもののみが1回転した。
ここまで行くともう超能力とかそういう類のものではないかとも思う。

1回転した時の気持ち悪さがなんとかおさまり、今は大体4分の1くらいのところであさみが、
「ごめん」とつぶやいた。
「今度からは気をつけるから…えっと…」
そこまで言ったところで、言葉が見つからないらしく、あさみは口を閉じた。
「いや」俺は最近気づいたことを言うことにした。
「これはおそらく、お前が気をつけても無駄だと思う。
 いや、世界中の全員が気をつけても無駄なんだ!」
「ど、どういうこと!?」
「お前のドジは超常現象なんだーーー!」
「なんだってーーー!!」
いつか見た気がするやり取り。
なんとなく、俺とあさみは吹き出してしまった。
しばらく笑ってから、俺はあさみに声をかける。
「まあ、安心しろよ。今ならサポートくらいできるし、
 俺と少しずつ治していけばいいんだからな。」
「うんっ!」
いい返事だ。

2分の1くらい行ったところだろうか。あさみが突然、顔を真っ赤に染めて呼んできた。
「ねぇ…小波君。」
「うん?」
「男女がここまで来たら…解るよね?」
…ああ。つまりはアレか。うんうん。アレだな。
そりゃあ俺も男だし、アッチ系の本も何冊かは持っている。
だからあさみが行っていることもわかるんだが、あえて俺はとぼけてみた。
「…さあ?なにをするんだ?」
多分この時の俺はイヤーなにやけ笑いをしていたと思う。
「もう…解ってるくせに…」あさみがほっぺたを膨らませながら言う。
うん。この顔も可愛い。
「いやあ。本当にわからないんだ。なんだったかな?」
「キ…キスだよ!キス!もう…!」あさみが涙目で言う。
その瞬間、ガシャーン!と窓を割って、川田さんが入ってきた。
「うわっ!」「きゃっ!」同じようなリアクションをする俺とあさみ。
そのまま川田さんは、じりじりとこちらに近寄り、
「また泣かせましたね?」と無表情できいてきた。
正直、オーラをまとっている気がして泣きそうである。
「かっ、川田さん!どこから…」話をなんとかそらそうとすると、
「いまそれは問題ですか?」といわれた。怖い怖い。
「いっ、いえ!」そうとしか言えない。
「そうですか。さあ、あさみちゃんを泣き止ませてください。
 するまでここにいますから。」
「ええっ!?」これはあさみだ。
「そ…そんなのいくらなんでも…恥ずかしいよ…」
かなり恥ずかしいみたいだ。
でも俺は見られているほうが興奮する体質なんだ。
麻美の背中に腕をまわし、もう片方は後頭部へ。
「あさみ…」
「へっ!?あ…ん…」
そのままキスへ持ち込んだ。
あさみも最初は拒んでいたが、しだいに受け入れる体制になった。
「ん…ふぅ…」
しばらくあさみの唇を楽しんだ後、口を離す。
あさみの目はトロンとしていて、少しもの足りなさそうにしていた。
そのまま抱きしめた。むこうも拒むようなことはなく、腕を俺の背中にまわして、キスの余韻に浸っていた。
いつのまにか川田さんはいなくなり、窓も元通りになっていた。

遊園地から出て、帰り道をしばらく一緒に帰る。
分かれ道に差し掛かった時に、突然あさみは、
「続きはしないの…?」と聞いてきた。
まずい。このままだとまたさっきのように…
俺は答える。
「今日はもう遅いしな。」
「そっか…そうだよね…」
「でも、また来週もあるだろ?
 まあ、その時に時間があれば…まあ…その…」
あさみは少し不機嫌そうな顔をしていたが、
「うん、わかった。
 でも、来週は絶対だよ?」と言って、自分の家のほうに歩いていった。
なんとなく、来週が楽しみだった。

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