俺はふと目を覚ました。
どうやら、急に目が覚めてしまったようだ。
時計の針は、既に夜中の2時を回っていた。

「スゥ、スゥ」
隣では瞳が吐息を立てて、すやすやと眠っていた。
俺はそんな彼女の寝顔を愛おしげに見つめ、彼女の髪をそっと撫でた。

もう、あれから2年になるのか――――。

俺があの島―――「しあわせ島」から帰還して、そろそろ2年が経とうとしていた。


俺は瞳に『ずっと傍にいる』と約束した。
だが、大帝国キラーズに敗れ去り、俺はしあわせ島に流されることになった。
試合に負けたからとはいえ、これは瞳との約束を破ったことに他ならなかった。
俺はそんな自分を断罪し、悔やむことしかできなかった。

だが、瞳はそんな俺を許してくれた。
そして、俺が帰るのを待ってくれると約束してくれたのである。
俺は聖母のような彼女の優しさに、ただ涙した。
彼女は、そんな俺を、優しく抱きしめてくれた。


それから数ヵ月後、俺はしあわせ島から帰還するに至った。

日本に帰国した俺は、真っ先に彼女のもとに向かった。
アパートの扉を開けて現れた俺の姿を認めた彼女は、
一瞬の驚きの表情の後、目いっぱいに涙を浮かべ、
以前と同じように慈母のような微笑を湛え、あの日のように俺を優しく抱きしめてくれた。

「お帰りなさい。」
「…ただいま」
気が付くと、俺も涙を流していた。
俺は一生忘れないだろう。この瞬間。この時間を。


それからしばらくは和桐の再建などで多忙だった。
幸い、俺の努力によって歴史の修復には成功した。
俺の任務は、達成された。

だが、俺は未来に還る気は無かった。
俺が還るべき場所、それは、愛しい彼女のもと、瞳のもと以外には無かった。
俺は彼女に、己の心に誓った。
もう二度と、瞳のもとを離れないと。
一生を、瞳と共に添い遂げることを。


「・・・ん・・・小波・・・さ・・ん・・」
気が付くと、瞳は目を覚ましていた。
「ごめん、起こしてしまったかな?」
「いえ、いいんです。・・・・・・なにか、考え事でも?」
「ああ、昔のことをね・・・。」
瞳は上半身を布団から起こすと、俺に顔を近づけて、まじまじと俺の顔を見つめてきた。
相変わらず、慈母のような微笑を湛えて。
思わず俺は、彼女の笑顔に見入った。
彼女の美しい笑顔は毎日のように見ているので、別段珍しいものではなかった。
だが、改めてこんな近くまで来られると、やはり見惚れてしまうものがあった。

甘いシャンプーの香りが、俺の鼻をくすぐった。
不意に、唇に柔らかく、甘い感触がした。
目の前の瞳の目と、目が合った。

瞳に唇を奪われたということを理解するのには、少し時間がかかった。

「・・・・・・ん、・・はぁ・・」
しばらくすると、俺達はどちらからともなく、ゆっくりと離れた。
俺は放心状態で瞳の顔を見つめていた。
瞳はというと、当初は顔を真っ赤にして照れていたが、しばらくすると、いたずらっ子のように微笑んだ。
「ウフフッ、油断しましたね?」
「・・・ふふっ、一本取られたな。」
俺も彼女につられて、くすりと笑った。
「小波さん、私、幸せです。」
「ああ、俺も幸せだよ。」
嘘、偽りのない、心の奥底からの本音。

「えい。」
どうやら、また油断したようだ。
俺の身体は、瞳さんの身体に押し倒されていた。
胸に瞳の豊満な胸の感触が押し当てられ、思わず下半身に血が昇ってしまう。
「私・・・不安なんです・・・。」
紅潮している俺の耳元で、瞳が囁いた。
「今こんなに幸せなのに、この幸せが、いつか壊れてしまうかもしれないと思うと・・・。
 あの人みたいに、小波さんがまた突然いなくなってしまったらと思うと、私・・・。」
徐々に涙声になっていく瞳の声。
「もう、二度と、あんな哀しい思いは・・・。」
彼女がそこまで言ったところで、俺は彼女の唇を奪った。
そして、彼女を強く抱きしめた。

しばらくして、俺は唇を離して、彼女の瞳をはっきりと見つめて、言った。
「前にも言っただろ。俺はもう、どこにも行かないよ。ずっと、君の傍にいるよ。永遠に。」
俺は、もう絶対にこの誓いを破るつもりなどない。永遠に。
やがて瞳は俺の胸に顔を埋めた。胸に熱い涙の感触が伝わる。
そしてひとしきり俺の胸の中で泣いた後、今度は自分から唇を合わせてきた。
「んっ・・・・ん・・・・ふぁ・・・・・ぁ・・・・」
先ほどまでとはまた違った。更に情熱的なキス。
俺達は時間が経つのも忘れ、しばらくの間、唇を合わせていた。

気が付くと、今度は俺が瞳を押し倒していた。
俺も彼女も、すっかり興奮しきっていた。
もう、互いに限界のようだ。
瞳は熱を帯びた声で、それでも慈母のような微笑を湛えて、言った。
「これからも、ずっと、私を愛してください・・・。」
「ああ・・・。」
俺は微笑み、頷くと、彼女のパジャマのボタンに手をかけた。




「スゥ、スゥ」
俺の隣では、瞳が先のように、吐息を立てて、すやすやと眠っていた。幸せそうな笑顔を浮かべながら。
そして俺は、そんな彼女の寝顔を、やはり先のように、愛おしく見つめていた。


結局、あれから俺達は何度も互いを求め合った。
瞳は疲れ果てて眠ってしまったが、どうも俺はすぐには眠れなかった。
もっとも、俺も彼女の膣内に何度も射精し、精根尽き果てたので、疲れ果てているのは同じなのだが。


「・・・ん・・・小波さん・・・」
瞳が寝言を漏らした。
夢でも俺のことを想ってくれているのか―――。
あまりの彼女の愛おしさに、俺は彼女の頬に口付けた。
もう、俺は君を一人にはしないよ。傍にいるよ。永久に―――。
俺は胸のうちで誓いを想い、もう一度彼女の頬に口付け、眠りに落ちていった。

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