『打った打球は・・・伸びる伸びる!入ったー!ホームラーン!』
『日の出高校、4番小山の満塁ホームランで超最強<グレイテスト>学園をさらに突き放します』
『あっとタイムです。ここでタイム、マウンドのキャプテン皇に仲間がかけよります・・・』

蝉時雨が心地良いやかましさの夏の午後。小波は自宅のリビングで、催眠術をかけられたような眼でテレビを見つめていた。
映し出されているテレビ番組は甲子園の決勝戦。どこぞの無名校が、甲子園常連校をボロクソに打ち崩している。
俗に言う公開レイプ。先の7回に続き、8回もまだまだ終わる気配がない。
中盤までは常連校が勝っていたのだが、終盤――7回裏になった途端、強力な何かに操られているかのように、無名校側の打線が爆発した。
所謂マモノ出現だろうか。ただでさえ熱気渦巻く甲子園球場が全体的に炎上している。

「うわ・・・すっげえ・・・。あぁ、決勝はやっぱり決勝でしか味わえないドラマがあるんだよなぁ」
「はぁ、もし、あの時、決勝戦に出場していれば・・・、いやもう考えるのはよそう・・・。でも、もし・・・」
「・・・どうしたの小波?また・・・甲子園のこと?・・・もう7年も前のことじゃない。・・・はい、麦茶」

彼の妻、明日香がテーブルにほどよく冷えたグラスを置く。カランという氷の音が涼しい。
明日香自身も真っ白いワンピースを纏い、空間に柔らかい清涼さを与えている。
だが、そんな風情も気に留めず、小波は小さくため息を吐きながらテレビ中継を見ている。
大き目のソファにのべ〜っと寝そべるように腰掛け、精気が抜けたような顔。まるで陸揚げされた蛸である。
明日香の大好きな蛸であるが、そんな様子の彼を困り顔で見つめる。

『またも捕らえた!ライト線は統道・・・前に落ちます、ヒットです!さぁ、黒野が兄弟3人とも塁に出ました!』
『ど、どれがだれなのかわからないですね・・・まるで分身の術だ・・・』
『ここで先程2ランを放った、今大会注目の2年ピッチャー、大神が打席に入ります・・・』

大きな歓声がテレビから鳴り、小波もおおーっと口から小さな歓声を漏らす。


【Re:heating】


「もう、シーズンも終盤に入るのに怪我なんてして・・・。またチームのみなさんに迷惑かかっちゃうじゃない」
「・・・足の指の骨折なんかで自宅療養なんて、なんというか」

テーピングでミイラのごとくぐるぐる巻きにされた、小波の足の指を見つめため息。

「むう、仕方ないだろ、走れないんだから。立派な大怪我だよ。それにチームも今期は完全に独走してるから大丈夫だよ・・・」
「まぁ開き直って。極亜久高校の熱血クンはもう過去の産物なのね」
「別に開き直ってるわけじゃ・・・」

口を尖らせて拗ねる小波。そのなんとも女々しい様子に、明日香は腰に手を当てさらに呆れ気味にため息。

小波は、この甲子園が熱い時期になるといつもこうなのである。

7年前――高校3年のあの夏、ついに掴んだ甲子園決勝の切符。幾千の野球少年達の夢の天辺、日本一を決める、神聖なる舞台。
あの徹底的なまでのマイナススタートから、その高みにたどり着けたことは正しく奇跡としかいいようがない。
最初で最後の、一世一代のチャンスだった。

だが、決勝戦の前日、彼は究極の選択を強いられる。入院中の明日香の容態が悪化し、危篤状態となってしまったのだ。
決勝に出場するか、それとも危篤の恋人に駆けつけるか。
結局、小波は試合よりも入院中の明日香を取ってしまい、夢の決勝戦は辞退することになる。
この事件は明日香にとってある意味嬉しい思い出であり、また同時に重く辛い思い出でもあった。
これのおかげで小波と結ばれることが出来たのかも知れないが、同時に彼の夢は潰えてしまうことになったのだ。

・・・出来ることならば、もうこの思い出は心の奥底に隠して鍵をかけてしまいたい。
いつか小波に言った、“時間は戻せない”という言葉が、彼女自身の胸の奥で重たい冷気を放っていた。

小波も、普通ならばこの時期はシーズン真っ只中で、甲子園のこともある程度は忘れられているようなのだが、
今年はちょうど運悪くケガで戦線離脱。そこからの自宅療養という形で、甲子園の呪縛に絡め取られてしまっている。

明日香としては、小波はもう一流のプロ選手なのだから、せめて彼だけでも過去に囚われず
今を見据えて進んで欲しいものなのだが、なかなかそうもいかない。
小波にとって、高校の3年間は野球に賭けた3年間。その最終目標を逃してしまったのは未だに心のヒビとなって精神を蝕んでいる。
実際問題、毎年夏のこの時期になると、精神がセンチになるのか、個人成績にもブレーキがかかり気味になっていた。

「はぁ・・・いいよなあ、甲子園・・・」
「もう何年もプロの一線でやってる選手が言うセリフじゃない思う・・・」
「ああ・・・いいなあ・・・」

妻の一言も右から左。眉毛を下げて、画面内で熱い汗を流す高校球児たちを羨望する小波。

(大事な大事な決勝を蹴ってまで、私に駆けつけてくれたのは確かに嬉しかったけど・・・これじゃあやっぱり辛いな・・・)

競りに出された蛸のように腑抜けた小波を見て、明日香も眉毛を下げる。
妻として、なんとか夫を元気付けたいのだが・・・さて何か手はないだろうかと考えてみる。

口では今まで何度も言ったのだが、それは先程のとおり。あんまり言い過ぎるのも、双方重い気持ちになるだけだろうし。
ふと、前に友人のユキちゃんと会ったとき、男を元気付けるにはやっぱりアレですねといっていたのを思い出す。
少しお酒の入った女同士の下らない猥談だったが、なかなか心に留まるハナシであった。

『うちのダンナさんも、気が滅入ってそうなときにがっつりさせてあげたら、次の日はもうそりゃ生まれ変わったような顔してますよ』

セックスは心にとっていい運動になるという彼女の論は、今の夫に対して意外と打ってつけなのではないか?
明日香は、変わらずぬぼーっとテレビを視聴している小波を見ながら思う。


ふいにリモコンをとり電源をオフにする。フルカウントの場面でピッチャーが投げた瞬間、プツンと音を立てて真っ暗になる液晶画面。

「おあっ、いいとこだったのに・・・。なにするんだよぅ」

当然抗議する小波。普段は仲秋の日差しのように穏やかで和やかな妻が、このような強引な行動に出たことに不審そうな顔をする。

「はい、テレビばっかり見るのはおしまい。ダラダラするのはもう終りにしないと」
「な、別に・・・ダラダラなんてしてないよ。コーチやドクターに言われてる分のトレーニングはちゃんとこなしてるし」
「いーえ。してます。・・・きっと、ほんとは力が有り余ってるから、悶々してしまうのよ」
「悶々なんて・・・してるかもしれないけど・・・こんなのどうしようもないよ」

目線を下にそらし、いじけたような目。

「冴えないのね・・・。・・・その、そんなの、気持ちいいことに体力使って、ぐっすり寝たらきっと良くなるわ」
「気持ちいいこと?」
「うん。たとえば・・・こういうこと」

大きめのソファに座っていた彼の前にすっと寄り、舌なめずりをしながらそのままの流れで口を寄せ、キスをする。
つるつるとした彼女の唇が小波の唇にぴったりとくっつく。
炎天下の気候でも体調管理のため、あまり冷房を効かせていない部屋だったが、明日香の花のような爽やかな香りが小波の嗅覚を刺激する。


「ふぅ、ん、はぁ」

数秒間口をつけて離す。口元を手首で拭い、うっすら湿った唇を小波に誇示する。
口紅など、特に化粧をしてなくても地で美しい彼女。元祖薄幸美少女の称号は伊達ではない。

「・・・元気、でた?」
「・・・明日香さん、まだ昼間ですけど」
「お嫁さんがだんなさんを“元気付ける”のに時間帯なんて関係ないかな」

ちょっと首を傾げ、少し拗ねた表情で言ってみる。

「・・・病弱な薄幸少女は過去の産物だね」
「あー、そんなこと言うお口はこうよ」

ワンピースを少したくし上げ、よいしょとソファに座っている彼の膝にまたがるようにして陣取り、再び唇を合わせる。
機械的な蝉の声に対抗するように、生々しい唇と唇の音が響き始める。鼻がぶつからないように、首をかしげて
目を閉じる明日香を目の当たりにして、小波も目を閉じ彼女のキスを感じてみる。

「んちゅう、ん、ちゅ、ちゅる、んんん、ちゅぅ」

柔らかい唇の感触、舌の艶やかなぬめりが小波の身体の熱をさらに引き上げる。その感触は・・・そう、まるで取れたての蛸のような・・・。

(・・・なにか、ちょっと女性に対して失礼なこと考えてないかしら)

繋がった口を通してか、女性賛美としてはいささか疑問の残る思考を感じ取る明日香。
それを打ち消すかのように、彼女は舌をさらに強く彼の口内に突っ込み、うねらせる。
くにゅくにゅと彼女の柔らかい舌が小波の口の中を暴れる。いやらしくうねるソレは、まさしく蛸の触手のような動き・・・。

「ふぁ、はぁ、ふぅ、ふぅー・・・。さ、き、キスはもう終りにしましょうか」
「ふぇ、なんで?明日香のキス、気持ちよかったのに・・・」
「そ、そうでしょうそうでしょう。・・・もうこんなに大きくなっちゃってるものね?」

艶やか・・・というかどこかひくついた半笑いをしながら、自分の股下の彼のズボンを突き破らんと主張しているモノを撫でる。
若く美しい妻の、情熱的なキスを受けて、彼の分身は元気になっていた。布越しに、苦しそうにしているのがわかる。

「ねぇ、明日香。その、いきなりどうしたの?」
「・・・・・・だって。・・・小波、元気がないから」
「・・・・・・やっぱり・・・この時期はさ、甲子園のこと、思い出すんだ・・・」
「・・・ごめんなさい、私があの時、病気で・・・」

目線を落とした小波を見て、明日香も大きく表情をトーンダウンし、7年前のあの夏のことを謝罪する。
今でこそ病院知らずの健康体となっているのだが、当時の自分が小波の夢をつぶしてしまったのは変えようのない過去だった。
小波とは幼馴染で、高校で再会してからも気の置けない関係を育んできた明日香にとっての、唯一にして最大の負い目。

「・・・ご、ごめんよ。明日香を責めるなんて気は・・・」

あの時の事が、妻の心にもしこりを残していることは知っている。知っているのにしつこくずるずると引きずってしまっている自分。
それが、彼女にとって心無い態度となっていることにハッとする。

「お、俺、あの時明日香を選んだこと、後悔したことなんてないよ。それだけは・・・」

謝罪か弁明か、それとも愛の告白か。自分の目前でうつむく明日香に伝える。冷えた水分が、背中を流れるのがわかる。

「・・・・・・」
「明日香?」
「小波選手!」

小波の肩に手を置き、ぐっと掴む。そしてビッとした視線で彼を見つめる明日香。
いかにも女性らしい、可愛く垂れた目尻や眉毛を、無理にきゅっと引き締めた表情にあっけに取られる小波。
むむっと結んだ口もなかなか新鮮でよろしい・・・、が、へらへらしてたらガブリと噛み付かれそうな気迫だった。

「返事!」
「は、はい!」
「元気出しなさい!過去を振り払って前を向くのもプロの技術よ!」
「う、それは、わかってるつもりだけど・・・」
「返事!」
「はい!」

妻の凛々しい顔にたじろぐ。

(なんか、よう子先生みたいだ・・・)

ふと高校時代の恩師の面影を彼女に見る。可憐な顔立ちに秘める熱情、自分に多大な影響を与える女性は性質が似通うようだ。
そして、あの儚い命に翻弄されていたた女の子が、ここまで活力のある女性に回復したことに少し感動を覚える。
だがそう思った途端、その凛々しく繕った顔がゆるると戻っていく。
そして彼女は目線を少しおろした後、小波の肩に顔を預けるようにしてもたれかかり、つぶやきだす。

「・・・あのね」
「・・・小波がね、あの時駆けつけてくれて、私、本当に嬉しかった。貴方の為に、貴方と共に生きたいって気持ちがぐっと強くなったわ」
「身体も元気になって、貴方と結ばれて・・・、でも、でもね、貴方はずっとあの時夢を逃してしまったことを引きずってるの・・・それが辛い」

「私ばっかり、元気になって、辛い」

「私が貴方に出来ることなんて、こんなことくらいしかないけれど、せめて」

「せめて、貴方の元気くらいは、取り戻させてあげたいの」

顔を上げ、瞳に涙をうっすら浮かべ、その眼差しでまっすぐに小波を見つめる明日香。
思えば、彼女の涙を見たのは結婚式以来だった。

「明日香・・・。・・・ごめんね、ありがとう。なんか、元気でたよ」
「・・・本当?」

涙ぐんだ瞳を拭う。幼い頃を思い出させる仕草だった。

「うん。こんな可愛い奥さんに、活入れられたら、なんか、スッキリしてきた」
「・・・今までに何度か入れたつもりだったのに」
「ひ、ヒットを重ねてついに点に繋がりました」
「ふーん・・・」

なかなか貴重な彼女のジト目。快復し結婚してから、より様々な表情を見せるようになった明日香。
幼少の頃を思い出させるあどけない表情も、大人の女性としての表情も、あの時病院に駆けつけたからこそ守れたのだと小波は思う。
眼に浮かんでいた涙も、いつの間にか引っ込んだようで、いつもの笑顔に戻っていく。

「それで・・・えーと、その、だ、抱いていい・・・のかな?」
「・・・くすっ。さっそくなのね」
「明日香から誘ってきたのに」
「うふふ、そうだったわね。うん。じゃあ、これもトレーニングの一環。しっかり抱いて、スッキリして・・・元気になってね」
「あ、でもケガはまだまだ完治していないから・・・」
「う、うん。気をつけるよ。終盤戦、できるだけ出たいしね」

とりあえず脚の先は気をつけとこうと心に置いて、小波は彼女をぎゅうっと抱きしめる。
彼女の胸に顔をうずめるようにし、すりすりと首を動かし彼女の柔らかさを楽しむ。薄手のワンピース越しに感じる乳房の弾力。
大きすぎず小さすぎずの品の良い形が感触でわかる。小波はもう布越しでは辛抱たまらんと彼女の衣類の裾に手を突っ込む。
そのままスカート部を大きくたくし上げ、まずは白いショーツが、続いて彼女の白い腹部が露になる。
その腹部に首を下げて顔をうずめ、ちゅっちゅと軽いキスをする。
そして彼の唇は少しずつ腹部の上、先程顔をうずめた乳房に接触していく。白いブラジャーに包まれた丸い乳房が、少し震える。

「んふぅ、小波ったら、子どもみたい。もう、さっきまではあんなにセンチだったのに」
「んんー、明日香のおっぱいは気持ちいいなぁ」

いいながらワンピースをたくし上げたかと思うと、するりと脱がしてしまう。完全に下着だけの姿。モデルのような美しい肢体が露になる。
それを楽しむ間もなく、小波の手はそのまま彼女の後ろに回り、ブラジャーのホックを器用に外す。
途端、乳房が枷を外されたようにふわりと落ち込んでくる。肩に掛けられただけのブラをその乳房の上に乗せ置き、
お待ちかね、といわんばかりに乳首にしゃぶりつく。

「ん、ふぅ、んふ、ふ、おっぱい、そんなに好き?」

胸に顔をうずめる小波の頭を撫でながら、まるで幼子に尋ねるように聞く。

「ちゅ、ん、んー。好きだよ。明日香のおっぱい」
「んっ、もう、そこは赤ちゃんの、ためのものなのよ?」
「まだまだ、若い奴にはやるきはないよ、ちゅうっ」

唇でついばんだり、舌で転がしてみる。そして軽く歯で噛んでみる。次第にグミのような歯ごたえを得ていく乳首。
両方の乳首をとっかえひっかえ、満遍なく刺激して左右二つともしっかりと勃起させる。

「明日香のおっぱいはえっちだね。もうコリコリしてるよ」
「んん・・・小波が、ちゅくちゅくしたからでしょう。もう、身体、あ、熱くなってきちゃった」

少し荒い息をしながら、ワンピースの下で乳をまさぐる小波に訴える。
もじ、っと下半身をよがらせ、彼の勃起しているモノに押し当てる。

「うは、俺も熱くなってきたよ。・・・そういえば、あぁ、喉が渇いたなあ」
「・・・麦茶、さっき置いたけど・・・?」
「冷たいのを飲みすぎるのは良くないからね。こういう日だからこそ、あったかいのがいいな」

小波は明日香をしっかりと抱きかかえながら身体をよじり、彼女をゆっくりと滑らせるように、ソファに横たわらせる。
乳房を半分さらけ出して色っぽく寝そべる妻に、思わずつばを飲み込む。官能グラビアそのまんまである。
いやそれ以上か。半開きにしている股下、白いショーツにうっすらと染みが浮かんでいる。

「俺、こっちの飲みたいな」

ショーツに描かれた陰門の写しをそっと指で撫ぜる。

「あん・・・。せっかくついであげたのに」
「エッチし終わった後の水分補給にもらうよ」

舌なめずりしながら、彼女の太ももに腕をくぐらせ、ぐいと持ち上げる。所謂まんぐり返しの体勢を整える。

「むー。こんな格好恥ずかしいわ」
「なにおう、こんなにおまんこじゅんじゅんさせてるくせに」

再びつぅっと彼女の湿原に指を沿わせる。指に湿り気が纏わりつく。再び沿わせ、指の腹でくりくりとなじってみる。
心なしか水分がじわりじわりと増してきている気がする。

「はぁぁ、ん、んふ、もう、触るならちゃんと触って欲しいわ・・・」
「はいはい、じゃ、下着脱がすね」

ショーツに手をかけ、するすると脚を滑らせて行く。片足を抜かし、もう片方の足に引っ掛けたままで放置する。
紫色の茂みの下、ちらちらと光る陰部。健康的な朱色の肉がゆっくりと呼吸している。
相当恥辱なポーズをしている明日香だが、意外と殊勝な目線で小波を見つめる。

「へへ、明日香、すっごくエッチなポーズになっちゃったね」
「あら、すっかり元気になって。・・・あの幼馴染の小波くんにこんなことさせられるなんて」

元気にがっついてくる小波を見て嬉しそうに苦笑する。

「・・・元気になったのは明日香のほうだよ。こんなことも出来るようになって、本当、すごくよくなったなって思うよ」
「高校のとき、明日香と付き合うようになってさ、俺、その時から本当に、ずっと一緒にいられたらいいなって思ってたんだ」
「・・・倒れたときは気が気じゃなかった。でも、その時、何があっても、絶対に明日香と最後の最後まで付き合おうと決めたんだよ」

明日香の眼を見ながら云う。今度こそ言い訳の無い、完全なる愛の告白。

「・・・。うん、嬉しい。やっぱり私、小波と再会出来てよかった。今、私が生きていられるのもきっと貴方のおかげね。・・・でも」
「でも?」
「こんな格好させて言うことじゃないと思う・・・」

下着をひっぺかされて、しかも相手に思いっきり陰部を突き出している格好である。しかも時間はまだまだ日の高い日中。
陰部も肛門も、余すところなく丸見え状態だ。しわの一本までくっきりと確認できてしまう。
恥辱的なポーズによってか、まるで小波に合図を送るように、ぴくぴくと彼女の性器がひくつき、火がついている彼の興奮に油を注ぐ。

「・・・じゃあそんな格好の明日香さんをこれからどうしようか」
「どうされてしまうのかしら?」
「まずは、健康的になったおまんこをもっとエロエロにしてやろう」

ずいっと彼女の陰部に顔をうずめ、舌を突き刺すようにねじ込む。少し酸っぱいような味が小波の舌を刺激する。
そのままぐりぐり、彼女の膣口を舐り荒らす。唾液のようにじわじわあふれ出てくる愛液にむせそうになるも、
舌の運動は一切止めず、彼女の最も大切な場所を味わいつくす。

「んんっ、んはっ、はげしっ、あん、うふふ、おっぱいと、どっちがすき?」
「ぷふぅ、ふぅ、俺は、こっちが好きだよ。明日香の味がすごくするから」

膣口ではなくクリトリスに舌を伸ばす。チュっとキスをして彼女の敏感な部分を責めてみる。ちろちろとできるだけ優しく
突き、彼女を突発的な快感で震わせる。陰毛が鼻についてくすぐったいが、それでも執拗に弄り、彼女の泉から愛液をさらに湧かせる。

「ひゃぅ、あぁん、んん、気持ちいい、小波、いっぱいでてる?私の」
「んあ、うん、くちゅくちゅでてるよ。世の中水不足なのに、大洪水だね。ほら、舐めてみる?」

彼女の水浸しの膣に指を入れ込み、掻きとるように彼女の愛液を手に絡める。そして自分を自身の股を通して見上げる彼女の口へ持って行く。
明日香はそうされるがまま、彼の指に塗りたくられた自分の蜜を、舌を突き出して舐めとる。

「ん、ちゅる、ん・・・。んー、変な味だわ・・・。こんなの飲みたいの?」
「うん。コレ、飲んだらすごく元気になるんだよ」

再びじゅくじゅくになっている膣口に口をつけ、愛液を勢いよく吸い出す。くぅんと甲高い声をあげてよがる明日香。

「はぁ、はぁ、はぁ、もう、吸い過ぎよ・・・。あそこが、ジンジンして、切ない・・・」
「ふぅ、ふぅ、あそこって、・・・どこ?」
「・・・どこって・・・ふふ、おまんこ」

アダルトビデオのような淫猥な言葉も、意外とあっさり言ってくれる明日香。
清楚なイメージの彼女も、気分が高まってくるとなかなかいいノリを見せる。
さすがに言った後は目線を横に逸らし、恥ずかしさからの赤面はしているが、どこか雰囲気に悦んでいるような余裕がある。

病弱だった彼女がここまで“健康的”になったことに、どうしても笑みがこぼれてしまう。

「ね、明日香。そろそろ、挿れていい?」
「ダメ」
「えぇー」
「ふふ、嘘よ。挿れて。挿れて、いっぱいいっぱい気持ちよくなって。元気な小波を感じさせて」
「・・・うん。じゃあ・・・」
「あ、その前に・・・この体勢、ちょっともう苦しいから・・・」

背中で身体を支え、下半身を大きく持ち上げているその性体位の息苦しさを訴える。
ごめんごめんと彼女の脚を支えながら正常位の体位へと移行させる。股を開き、少し微笑みながら寝そべる明日香。
据え膳を目の当たりにして、我慢の限界といわんばかりに小波はあわただしくズボンとパンツを下ろす。
やっと息継ぎが出来たかのようにペニスが勢いよく飛び出す。そしてそれを、前戯でとろとろにとろけていそうな彼女の膣にあてがう。
亀頭が濡れた門に軽く触れるだけで、ぴくんとはねてしまいそうになる快感。
少し離してみるとすでに分泌されていたカウパーが、互いの性器を白糸で緩くつなでいく。

「もう、挿れたいって言っておいて。焦らさないで・・・早く・・・」
「あらら、明日香が、こんなにエッチな子だったとはね」
「エッチのとき、いつもそれ言ってるわね・・・。・・・ふふ、エッチでごめんね」

こんな昼間に陰部を曝け出す痴態でいても、いつもと変わらぬ母性に満ちた柔らかい笑顔をする明日香。

「・・・あ、明日香、か、かわいいぃぃっ」
「きゃんっ」

思わず、明日香にのしかかるように抱きつく。そして咥えつくようにキス。むーむーっと少し息苦しそうな嬌声をあげる明日香。
小波はキスをしながら手を下半身へ潜り込ませ、ペニスを掴んで彼女の膣にねじ込む。そしてキスの呼吸に合わせて腰を振りはじめる。
舌と舌が格闘する音と、性器がこすれあう音。その二つのみずみずしい性音は涼しさを提供するのではなく、二人の体感温度の上昇に
作用する。

「んはぁ、むぅ、ふぅ、んっ、んっ、小波っ、小波っ、つよいっ、んんんっ」
「明日香も、すごい締め付けてくるよっ、きゅうって、吸い付くみたいっ」

ぐっちゅぐっちゅと大きな音を立てる二人の下半身。蝉の鳴き声がより一層強くなる時間帯だが、二人の耳にはもう外の音は届かない。
荒い息と喘ぎ声と行為の音だけが、彼らの聴覚を刺激できる。

「ふぁあ、小波、アツい、頭が、ぽっとして」
「俺もっ、アツいね、今日はっ、はぁ、はぁ、ふぅっ」

蒸し暑さもなんのその、汗ばむ身体をぴったりとくっつけてぐいぐい揺さぶり続ける。
ギシギシとソファのスプリングが軋み、断続的につづくセックスの音。それが次第に速く激しくなっていく。
互いの陰毛が絡まってしまうような、深くしつこくうねる腰の動き。動くたび、互いの呼吸が腹の底から圧迫される快感。
くぅぅ、と唸る明日香。口元から飲み込めなかったよだれが泡を作って流れ出す。それを顔を近づけて舐め取る小波。
それを良しと感じたのか、明日香はわざと唾を出して口元から流す。小波はそれをまたキスで吸い取る。
双方、いろんな意味でパブロフの犬状態だ。

「はぁぁん、あ、あ、あん、あん、んあ、はぁん、ふ、ふぅぅ、ふ、も、もう、出そ?」

一瞬眉を強く顰めた小波を見て、明日香は問う。

「あぁぁ、うぉ、うん、もう、もう出るよ。どうしよっか、中がいい?外?どっち!?」
「ぅん、んん、うふ、まだまだ、“若いの”に、やらないんでしょ?外、で、いいわ」

耳元でささやかれ、小波は一層強く腰を突きつける。明日香の最奥まで突きこんだら一気に腰を引き、ペニスを抜き取る。
と、同時にうおっと声を漏らし、尿道口から精液が放たれる。ぴゅぴゅっと白濁液が明日香の腹部に向かって飛び散る。
熱い感覚を肌で感じ、なんともいえない悦が彼女の表情に浮かび上がっていく。

「はぁ、は、はぁ、おぉー、へへ、へ、いっぱい出てら」
「はぁー、はぁー、はぁー、ふー、・・・うん、いつもより、なんか、多い感じがする・・・うふふ、それっ、ぬりぬり」

膣外射精のため浮かした小波の腰を引き寄せ、腹部や陰毛にかかった精液を彼の下半身に擦り付けてみる。
未だ熱を帯びている自身の液体を感じ、なんとなく自慰の処理に失敗したような居た堪れない気分になる小波。

「・・・やっぱ、中で、出したほうが良かったな」
「? あら、自分で出したものなのに・・・嫌だった?・・・私は自分のも舐めたのに」

少し悪戯っぽく眼を細め笑う明日香。

「いや、(ソレモアルケド)・・・元気、直接わかるだろ?」
「・・・くす、ふふ、じゃあ、もう一回・・・しましょ?今から、もう一回・・・」
「えぇ、今から?」

激しい運動で息も絶え絶えの小波。一方の彼女はまだまだ元気いっぱいのご様子。

彼女の太ももに当たる、射精を終え腫れの痛みを鈍い痙攣で訴えるペニス。
せめて、ちょっとだけでも休ませて欲しいなあと明日香の顔をのぞきこむ小波だが。

「へんじ」
「・・・はい」

にこりと微笑む妻に、また活を入れられる。・・・今頃甲子園も優勝が決まったころだろう。
若き優勝者達の様子が気にならないわけではないのだけれど。

今は7年前と同様、脇見も振らず、何よりも愛しい人を選んでしまえ。そう思いながら小波は明日香に口付けをする。  

その日は昼も夜も、その年で最も気温の高い日だったのだが、そんなこと気にも留めない。

いつかの夢も、引きずる想いも、黒くて重たいのならばいっそのこと火を点けて、前に進むための燃料にでもしてやればいい。

7年目の夏の日、二人は二人を縛る苦い過去が燃え尽きるまで、抱き合い、舐め合い、注ぎあい、愛し合った。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「もう少し腰を落として、そうそう、そんで来たボールを自分の身体の周りにぐっとひきつけるように・・・」
「こう?」
「んー、インパクトが弱いでやんすね。こう、振り始めで、“ボク”から言ったらお父さん方向にぐっと体重を傾けるでやんす」
「うーん・・・?」
「三人ともー、おやつのたこ焼きできたわよー」
「よっしゃ休憩だ、食べ終わったら川原行ってキャッチボールしよっか」
「えぇー、まだするの?」
「・・・野球選手の息子は苦労するでやんすね・・・。・・・いや、小波君のは、でやんすかねぇ・・・」

目指せ甲子園優勝。父の冷めやまぬ熱き想いは、その息子に受け継がれていく・・・

「はぁ、ぼく、サッカーがしたいのになぁ」

・・・のかなぁ。            

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