激しい落雷の音で、エリは目を覚ました。
カーテン越しに閃光が走る。
恐る恐る、窓を覗こうとした途端、またガラスを震わせて雷が落ちる。
「きゃあっ」
慌てて頭まで布団を被るが、胸のどきどきがおさまらない。
「フッキー・・・フッキぃぃ」
彼女は、布団を被ったまま、白瀬を呼んだ。
けれど、すぐ隣のベッドで寝ているはずの白瀬は、起きないのか返事がない。
「フッキぃ・・・起きてよ、フッキー・・・!」
最後の声は、とうとう涙声になる。
それでも白瀬は起きてくれない。
「ふぇっ・・・ぇぇっんっ・・・・フッキぃぃーー」
エリは、布団に包まってずるずるとベッドから降りた。
白瀬が寝ているはずのベッドに、そっと手を伸ばす。
「フッキー・・・・フッキー・・・・??」
けど、そこにあるはずの手応えが何もなかった。
「フッキー・・・どこにいったのぉっ?」
きょろきよろとあたりを見回すけど、旅館の小さい部屋のどこにも、白瀬の姿はなかった。
「やぁっ・・・やだよーっ・・・フッキぃぃ・・・きゃあっ!」
また落雷。
今度は、とても近い。
雨がバチバチと窓を鳴らし、風が旅館を揺さぶっているようだ。
ここには二人部屋しかなくて、小波君たちは他の部屋に泊まっている。
・・・この部屋には今わたし一人しかいない。
急に、狭かった部屋が広く感じて 、エリはベッドにしがみついた。
ぎゅっと握った布団の端を胸の前で掻き合わせ、ぐっと涙をこらえる。
祈るような気持ちで雷が止むのを待ったけど、どんどん激しさは増す。
フッキーも、帰って来ない。
その時、一層激しい光りが部屋を明るく照らした。
そして、バリバリと何かを引き裂くような破裂音。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁっっっ!」
たまらず、エリは部屋を飛び出した。

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