糖鎖生物学
■生物学と糖
分子生物学の世界は「遺伝子(核酸)」「タンパク質(アミノ酸)」「糖鎖(多糖類)」の3つの物質を基本として成り立っています。その中でも糖鎖は「タンパク質の服飾品」くらいのイメージしかないと思うので、読んだこと聞いたことをここにメモしていきたいと思います。<目次>
- オススメの本
- 糖鎖とは
■オススメの本、WebSite
先ずこんなWikiを見るより有用な書籍等を紹介したいと思います。→「GlycoForum(グリコフォーラム)」
初心者にはこのサイトがオススメです。新論文の詳説やキーワード解説などが盛り沢山です。ここを見ておけば糖鎖生物学の基礎が網羅できると思います。
→「糖鎖生物学」
糖鎖生物学の研究者に聞いてみたところ、この書籍が「一番糖鎖生物学を網羅的に記述している教科書的な書籍」だそうです。確かによくまとめてあると思いますが、分量が大きく値段も高いので中級者向けだと思います。原著が「Essentials of Glycobiology」という表題のものでこの本は翻訳版です、この本は誤訳があると言われているため読めるなら原著の方が良いと思いますが、網羅するのみならば日本語版で構わないと思います。
→「波及・深化する糖鎖研究」
最新の生物・医学の研究が掲載されている雑誌「実験医学」の1つです。内容は一部に特化している
ので上級者向けだと思います。医学系の糖鎖応用研究の話が載っているので医学書的なものを読んで悦に浸りたい場合は初心者でも購入して構わないと思います。
■糖鎖とは
生物学でいう糖鎖とは主に結合したタンパク質に能力を付加する役割を持つ物質と捉えて良いのではないかと思います。糖、といえば砂糖(グルコース)が思い浮かぶと思います。砂糖が沢山繋がって鎖みたいになっている状態を思い浮かべましょう!!図1:糖鎖が結合したタンパク質
また、覚えておいて欲しいのは糖はグルコース1種類だけではない!アミノ酸に種類があるように、糖鎖になる糖にも種類がある!!ということです。要するに「世の中には甘くない糖もある」ということです。このエントリでは糖とは何かについてはあまり触れませんが、手始めに糖鎖を構成する糖の種類について書いていきたいと思います。糖鎖になれる糖は9種類あります。以下の9つが主役です。それぞれ個性的な能力があります。
<9種の基本糖鎖>
・グルコース
→機能無し?ノーマルタイプの糖でむしろ邪魔者、カサを増すだけ甘いだけ。
→逆に「キャップ」の役割?破壊される事で機能がONになるらしい。
・ガラクトース
→ヒトではABO血液型のB型抗原として存在
→硫酸化されることで様々な機能をタンパクに与える重要な奴。
→特にタンパク同士の結合や水和など、潤滑剤の効果。
→ガラクトース欠乏病になると関節がおかしくなる。
・マンノース
→N型糖鎖によく利用される、枝分かれ能力を持つ
→枝分かれすると構造が複雑になるのでタンパクの能力に多様性が出る。
・フコース
→ヒトではABO血液型のH抗原(O型)として存在
→高等動物の糖鎖にしか存在しない
→特にO型糖鎖に結合してなんかやらかしてるらしい。
→意外と進化的に重要な役割!?糖エリート。
・キシロース
→アルコール化したものがおなじみの「キシリトール」。
→リン酸化を受けることで糖鎖が機能する「スイッチ」の役割を果たす。
→ガラクトースはキシロースリン酸化の影響で硫酸化を受けたりする。
・Nアセチルグルコサミン
→N型糖鎖のタンパク結合基盤となっている
・Nアセチルガラクトサミン
→ヒトではABO血液型のA型抗原として存在
・Nアセチルノイラミン酸(シアル酸とも言う)
・グルクロン酸
→親水性が高く、体内で薬物に結合して排出させることが出来る
2007年10月22日(月) 23:35:19 Modified by psyberformula
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Uploaded by psyberformula 2007年10月22日(月) 23:32:10
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