[190]Lyrical igLoo<> 2006/05/14(日) 17:51:59 ID:RGOH8I0W

 見渡す限り砂ばかりの大地を、複数の人影が歩いていた。
灼熱した陽光で、世界は白い。視界に納まるものは、澄み切った青空と大地のみ。
こんなところに、ほったてとはいえ支局を作る必要が本当にあったのか。この仮住まいにいる人間はみなそう思っていた。
確かに次元犯罪の阻止は自分たち時空管理局員の存在意義だ。
なるべく無人の世界に補給や観測の施設を造るという考えは理解できる。
でも、その当事者として、こんな背景が固定化されたような場所で勤務しなければならないのは、やはり苦痛だ。
本局から今朝届いた補給品のリストとの格闘に脳を疲れさせた彼は、建物と呼ぶのもおこがましい施設から出て、風に当たっていた。
 「んぁ?」
視界に片隅に黒い点を見つけて、彼は、奇異に感じた。
この異世界は、確か「人間」はいないと聞いていた。いるのは自分のように、管理局から派遣されてきた要員だけのはず。
だが、少しずつ近づいてくる姿は、間違いなく人間だ。少なくとも外観は。それも、うち少なくとも1,2人は、女らしい。
荒涼とした場所に不釣合いなボディラインが、視力の良い彼にはわかった。
向こうも、こちらの姿に気がついたらしい。少し歩を早めてやってきた彼女らは、やはり魔導師らしかった。
「よぅ」
施設の前にたどり着いた人影が、デバイスを振り上げて、話しかけてきた。集団のうち、一番背の低い奴。声の質から見て、こいつも女らしかった。いや、少女か。そのわりには、男のような話し方をしやがる。
「こいつのカートリッジ、あるか?」
少女は、デバイスをかざして、そう言った。
彼は聞いたことがあった。最近、本局でベルカ式のデバイスを使う奴がいたとか聞いたが、この連中か。
だから、補給品のなかにも、カートリッジがカートン単位で含まれるようになったのか。
「弾だけなら、うなるほどあるぜ。しっかしえらく珍しいデバイスだな」
ベルカ式なんてな、彼は続くその言葉を口にできなかった。陽光に加えて顔をうつむかせている少女は、明らかな嘲りを含んだ声で、答えたのだ。
「そうかい。いろいろと、訳ありでね」
そして、構えた。その特徴的な、デバイスを。

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目次:Lyrical igLoo
著者:9スレ190
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