379 名前:ガリューの気苦労な夜[sage] 投稿日:2008/10/18(土) 23:15:43 ID:se3cHjZ4
380 名前:ガリューの気苦労な夜[sage] 投稿日:2008/10/18(土) 23:16:27 ID:se3cHjZ4
381 名前:ガリューの気苦労な夜[sage] 投稿日:2008/10/18(土) 23:17:14 ID:se3cHjZ4
382 名前:ガリューの気苦労な夜[sage] 投稿日:2008/10/18(土) 23:17:49 ID:se3cHjZ4
383 名前:ガリューの気苦労な夜[sage] 投稿日:2008/10/18(土) 23:18:36 ID:se3cHjZ4
384 名前:ガリューの気苦労な夜[sage] 投稿日:2008/10/18(土) 23:19:08 ID:se3cHjZ4
385 名前:ガリューの気苦労な夜[sage] 投稿日:2008/10/18(土) 23:19:52 ID:se3cHjZ4
386 名前:ガリューの気苦労な夜[sage] 投稿日:2008/10/18(土) 23:21:16 ID:se3cHjZ4
387 名前:ガリューの気苦労な夜[sage] 投稿日:2008/10/18(土) 23:22:24 ID:se3cHjZ4
388 名前:ガリューの気苦労な夜[sage] 投稿日:2008/10/18(土) 23:23:26 ID:se3cHjZ4
389 名前:ガリューの気苦労な夜[sage] 投稿日:2008/10/18(土) 23:23:58 ID:se3cHjZ4
390 名前:ガリューの気苦労な夜[sage] 投稿日:2008/10/18(土) 23:25:06 ID:se3cHjZ4

八月十日

今日からキャロはいない。絶好の機会。
まずは庭からエリオの部屋に侵入を計画。
でも窓の下に落とし穴が掘ってあった。抜け出る前にガリューに見つかって強制連行される。


八月十二日

前回と同じルートをあえて使ってみる。
同じ場所に落とし穴があったので飛び越えたところを、屋根の上に隠れていたキリューの攻撃を食らって
失敗。


八月十八日

天井にこっそり作っていた屋根裏への抜け道が完成。
さっそく使ったけど、エリオの部屋の屋根裏でシリューが待機していた。
ご飯三回で通して、と言ったら少ないと断られた。言い争っている間にエリオが起きてしまったので撤退。


八月十九日

仕事に行ってる間に抜け道を鉄板で塞がれる。
天井がすごく変になった。ガリューに文句を言ったけど無視された。


八月二十日

今日からエリオと長期出張。
絶好の機会だけど、難しい任務なのでエリオは真剣な顔。邪魔しちゃいけないのでじっと我慢。


九月二十日

任務終了してミッドチルダに帰還。
出張先で手に入れた強力催淫剤をエリオの晩御飯に盛る。
でも毒見してたヒリューに大当たり。色々大変だった。

          ※




 ばたり、とルーテシアは「既成事実作成計画帳」と書かれたノートを閉じた。手をそのまま、机の片隅
に置いた写真立へと伸ばす。
 写っているのは数年前に撮影したエリオと自分のツーショット。エリオは成人後もやや童顔な面立ちで
あるが、歴戦を潜り抜けた男が身につけた凛々しさも備えている。
 端的に言えばたいそう格好よく、かつ女性好みの甘さを持つ容貌だった。
 隣にいる自分の顔も、めったに浮かべた覚えが無い幸せな満面の笑みである。
 見知らぬ人に見せたら夫婦か恋人同士の写真だと間違いなく思うであろう写真。これを撮った時の自分
も、いつか友人から恋人へとステップアップしてみせるのだと堅く誓っていた。
 しかし現実はルーテシアの想いに反する結果をもたらした。エリオの一番大事な人の席に座ったのはルー
テシアではなく、長年の親友にしてライバルのキャロであった。すでに彼女の姓はモンディアルに変わっ
て、エリオとの間に一粒種であるエリーも設けている。

「……どうして私を、選んでくれなかったの?」

 写真のエリオに訊ねても、彼は何も言わずに笑ったまま。この笑顔も、キャロや娘に向けられる時には、
さらに一段深く優しいものとなることを、ルーテシアは知っている。
 一度は諦めようかと思ったルーテシアだったが、くすぶり続ける心は負けを認めたがらなかった。人生
棺桶に入るまでが勝負である。今の伴侶がキャロであれ、最終的にエリオの隣にいるのが自分であればい
いのだ。
 そう決心したルーテシアはエリオとキャロに頼み込み、やや強引ながらもモンディアル家の同居するこ
とに成功。後はエリオの好感度を上げながら、キャロの隙を見てエリオと既成事実を作ってしまうだけ、
のはずだった。
 しかしここで大きな誤算が起きる。召喚蟲であるガリューとその家族がルーテシアの敵に回ったのだ。
夜中になると家中のあちこちにガリュー達は潜んで、ルーテシアがエリオの部屋へ向かおうとすると阻止
してくる。
 総合的な戦闘力には大きな差はあるが、接近戦となるとからっきしなルーテシアは派手に魔法が使えな
いこともあって、たいていの場合とっ捕まって簀巻きにされてベッドに放り込まれてしまう。
 かくして、ルーテシアの寝取り計画は数年経っても全く成功の気配が見えなかった。

(でも今晩こそ、絶対に成功させてみせる……!)

 キャロは古巣の自然保護隊に頼まれ、一時的なヘルプで呼び出されていない。しかし一ヵ月半に渡る仕
事も終わり、明日は帰ってくる。そうなればフリードまでが阻止部隊に参加するため、機はさらに遠のい
てしまう。
 それに前に一度、夜這いしようとエリオの部屋の前まで忍んで行ったら、ちょうどエリオとキャロが抱
き合っているのを見てしまい、ひどく落ち込んだことがある。あれ以来、キャロが家にいる夜は大人しく
することにルーテシアは決めていた。
 決心を新たにしたルーテシアは、本棚から一冊の本を取り出した。

『犬でもできる転送魔法   著者 プレシア・テスタロッサ』

 題名そのままな内容の本である。
 ふざけたタイトルに反して中身は不必要なまでに詳しく書かれており、全くその方面の魔法を知らない
ルーテシアでもすぐに習得できた。
 ただあくまで初歩についての教本であり、本格的な長距離転送は無理である。それでも、自分の部屋か
らエリオの部屋へ飛ぶぐらいは楽々出来る。
 この本の存在はガリュー達に知られていない。間違いなく裏をかけるはずだ。
 最終確認で本にざっと目を通し、術式を構成。小声で呪文を唱えると足元に魔方陣が発動する。眼を閉
じて再度明けると、もうそこはエリオの部屋だった。
 ベッドの上の布団の塊は、もぞりとも動かない。転移に気づかれることなく、エリオは熟睡しているよ
うだ。
 夜中エリオの部屋に入るのは初めて。暗がりの中、愛しい人と同じ空間にいるというだけで、ルーテシ
アの心臓はどくどくと高鳴る。

(落ち着いて。練習どおりにすればいいんだから)

 等身大エリオ人形相手の予行練習を思い出す。
 まずはベッドの上に乗ってある程度エリオの自由を奪い、自分の想いを打ち明けるところから始める。
 エリオが混乱している間に何もかも告白した方が、心の隙間を突けていいだろう。服装も誘惑しやすい
ように、ワイシャツ一枚きりである。胸元は第三ボタンまで留めておらず谷間をはきり見えるようにして
おり、下着もつけていない。

(…………そして最後にはエリオがちゃんと受け入れてくれてキスしてもらって、朝までずっと抱き合っ
て…………そんなに吸われても何も出ないよエリオぉ。でも、エリオが喜んでくれるなら私は……)

 段取り確認のはずが途中から妄想に変わり、微妙にトリップしかけたルーテシアだったが、ベッドの近
くまで寄ってシーツに目を落とした途端、一気に頭が冷えた。
 布団の形がやけにごつごつしている。エリオの身体は鍛え上げられているが、いくらなんでもこんなに
筋肉が盛り上がってはいない。というか、明らかに人間の身体ではありえない形だ。

「…………」

 足音を消すのをやめたルーテシアは、つかつかと歩み寄って布団を乱暴にひっぺがす。
 シーツの下から出てきたのは案の定、自分の召喚蟲だった。




          ガリューの気苦労な夜




「…………ガリュー、そこに正座」

 床を指差さされ、ガリューは素直に従ってベッドを降りた。代わってルーテシアがベッドに腰掛け、や
やきつい眼差しでにらんでくる。

「どうしていつもいつも私の邪魔するの?」

 何十回も聞いた言葉が、一字一句違わず頭上に降ってくる。
 そのままルーテシアの説教だか難詰だか分からない長話が始まるのも、いつものことである。話の内容
も、あまり代わり映えはしない。
 ガリューは畏まって聞いているふりをしているが、言葉は全て頭の中を素通りさせている。今ガリュー
が考えているのは、転送魔法防止セキュリティーシステムの導入にかかる見積もりと、明日自分の部隊で
やる訓練の段取り、そして家で留守番する息子達への昼食メニューであった。
 とりあえず最大の難関は、セキュリティーシステムを導入するたことに家主であるエリオが納得するだ
けの理由だろう。

(私も人間臭くなったものだな……)

 以前はもっと機械的に、召喚主が命じたことならばどんな不条理な命であろうと従うのが役目だと頑な
に思い込んでいた。だからJS事件では、ルーテシアが操られていると知っていながらも命令どおりエリ
オ達と戦った。
 しかし今では、主が間違っている時はきちんと諌めてやることこそ従者たる者の心得ではないかと思っ
ている。
 ルーテシアはくどくどと、愛は何よりも優先されるだの不倫は文化だのと書籍やテレビドラマに感化さ
れた言葉を並べているが、蟲の少々足りない頭でもそれらの理屈が正しくないことは分かる。

(いったいルーテシア様はモンディアルと関係を持ったとして、その後のことについて本気で考えている
のか?)

 エリオは隠し事などできる性格ではないので、きっと日ならずしてルーテシアと関係を持ったことがキャ
ロにばれるだろう。
 そうなった時に、エリオは嫌でも三つの道を選ばされなければならなくなる。キャロを選ぶか、ルーテ
シアを取るか、いっそのこと二人とも面倒見てしまうか。
 キャロを選べば、ルーテシアとキャロとの友情関係は壊れ、モンディアル家にいられなくなるだろう。キャ
ロは穏やかな性格だが、果たして夫を寝取りかけた相手とこれからも仲良くやっていけるぐらいかと言わ
れれば、疑問符がつく。
 しかしこれはまだマシな方だ。ルーテシアを選んだ場合、ルーテシアは満足だろうが後がひどいことに
なる。
 今度はキャロが出て行く番になるわけだが、そうすれば元保護者であるハラオウン家が関わってくるの
は間違いない。そしてあそこが動けば、半自動的にスクライア家・八神家あたりも介入してくる。そうな
ればもはやカオスで、エリオとルーテシアの運命がどっちに転がっていくのか知れたものではない。
 ただ一つ確実なのは、十数年ぶりに機動六課懲罰名物『頭冷やそうか』が炸裂するだろうことである。
おそらく、ガリュー達にも連帯責任で。
 最後の二人とも娶ってしまう手だが、これも二番目とさほど変わりはしない展開を迎えるだろう。ミッ
ドチルダの法律は重婚を認めていないので、世間様に後ろ指差される度合いは一番高いかもしれない。
 そもそも律儀なエリオの性格的に、こんなやけっぱちともいえる方策に走る可能性は極度に薄いものと
推察される。

(だから、今のままが一番いいのだ)

 ガリューの語るも涙聞くも涙な努力の甲斐あって、ルーテシアが物騒なことを考えていることをエリオ
もキャロも知らない。キャロの動向を知るために事情を明かして協力を仰いだフリードも「主の恥になる
から口外しないでくれ」という頼みを聞き入れ、硬く口を閉ざしている。
 やや不穏な空気をはらみながらも、モンディアル家では毎日が平穏に過ぎている。この生活は、断じて
壊すべきではない。

「…………ガリュー。話聞いてる?」

 ルーテシアの声で、ガリューは思索を破られた。
 知らず知らずのうちに下を向いていた顔を上げれば、主は不機嫌度が著しく増した表情でガリューを見
据えていた。

「真剣に聞いてなかったでしょ」

 底冷えする声と共に、ルーテシアの左手に魔力が固まっていくを目にしてガリューは慌てた。
 自分に当たるのはまだいいが、壁や調度品に当たって壊れたら隠蔽が難しい。
 息子達が駆けつけるまでは自分が身体を張って魔法を止め、乱心している主を取り押さえさせなければ
とガリューは腹をくくった。
 しかし、ルーテシアは不意に魔法の発動を止めると、ぷいっと横を向いた。

「……もういい。どうせお説教しても何しても、ガリューはずっと邪魔し続けるんでしょ。エリオをどこ
に隠したのか、訊いても答えないだろうし」

 ほっと安堵するガリュー。決心していようがなんだろうが、魔法を食らえばめちゃくちゃ痛いのだ。
 だが、後は不貞腐れたルーテシアを部屋に連れ戻せば今晩は終わりだと思ったのは早すぎた。
 いきなりルーテシアがワイシャツを脱ぎだす。虚をつかれたガリューが止める間もなく全裸になったか
と思えば、ベッドの上に身を投げ出した。

「代わりにいつもみたいに、して」

 声は若干小さい。それでも、有無を言わせぬ強さがあった。
 やれやれと頭を振りながら、ガリューもベッドに上がる。ルーテシアの身体を起こすと、ガリューは後
ろ抱きの体勢を取った。その方が、自分の姿が眼に入らずいいだろう。
 ルーテシアの身長は人間の女にしてはだいぶ高い。今は亡きゼストよりもほんの少し低いぐらいで、こ
うしてガリューの膝の上に乗ればうなじのあたりにガリューの顔が来る。
 それでも手足はすらりと伸びやかで、スタイルも身長に見合った立派なものなのでアンバランスさを感
じさせず、全て美しさに変換されて見る者の目を打つ。

(……どうしてモンディアルはルーテシア様ではなく、ルシエを選んだのだろうな)

 大人の女の魅力と言う点では、キャロには悪いがルーテシアが大きく勝っているはずだ。なのにエリオ
が結婚したのはキャロだったということは、エリオは外面ではなく内面に惹かれたのか。
 その辺りの恋心だのといった機微は、他種族のガリューにはよく理解できない。
 ぼんやりとガリューが考え事をしている間に、シーツを引き寄せたルーテシアが顔に押し当てる。

「はぁ……エリオの匂いだ……」

 鼻を鳴らして、ルーテシアは想い人の香りを嗅いでいる。あまり見目良い姿ではないが、ガリューは止
めもせず準備に取り掛かった。
 ガリューの手は指の先まで、固い甲殻で覆われている。加減を間違えれば、撫でただけでルーテシアの
きれいな肌に跡が付きかねない。
 細心の注意をこらしながら、ガリューはルーテシアの身体を愛撫していく。
 ガリューも雌である。性交の形は人間とは違うが、なんとなく人間の女の勘所というやつは分かるし、
ルーテシアとこういうことをするのも初めてではないので、弱い所は知っている。
 ルーテシアの場合、大きく張り出していかにも揉み甲斐がありそうな胸はあまり感じなくて、脇腹が弱
い。ゆっくりとこそばすように、指先で撫で上げていく。
 時々こうして、主の恋心と身体を多少なりとも慰めるようになって、どれぐらいになるのだろうか。

(確か最初は、モンディアルとルシエが結婚した日だったか)

 昼間は満面の笑みで友人達を祝福したルーテシアが、夜中一人で嗚咽を漏らしていたことを、昨日のよ
うにガリューは覚えていた。
 記憶に浸りながらも、ガリューの手は愛撫を止めない。片手は脇腹で動かしたまま胸の頂へも指を伸ば
すと、すっかり硬くなりきった突起が指に当たった。

「あんっ!」

 触っただけだというのに、ルーテシアが鼻がかった嬌声を上げた。
 高まるのがえらく早い。エリオの匂いが染みついたシーツの効果だろうか。
 ほんの数分、脇腹と乳首だけを弄っていただけで、ルーテシアの身体は焦れたようにくねりだした。

「エリオの指……気持ちいい。でも、もうそれぐらいでいいよ……。早く、挿入れて」

 見えないと分かっていても軽く頷いたガリューは、身体を少し離す。ルーテシアとの間にできた隙間に
尻尾を潜り込ませると、下半身にある穴に先端をあてがった。
 みちり、と音を立てて尻尾が女体に潜り込む。
 しかし入っていった穴は、本来性交で使う場所ではない。胸に負けない豊かな尻肉の間にある、排泄の
ための穴だった。
 だが肉棒より太いはずのガリューの尻尾は、あまり抵抗も無く奥へ奥へと進んでいく。節別れした二つ
目の部分までが、あっという間に入ってしまった。

「はぁー……ああっ、あああ、ふああ……」

 尻尾にもわずかながら触覚は通っており、ルーテシアの内部を感じる。性感神経は無いが、うねうねと
蠢く腸壁の動きを感じると、ほんのわずかだが体液が熱くなった。締めつける力も焼けるような熱さも、
きっと人間の男なら数秒立たずに射精してしまう名器なのだろう。
 絡みつく肉を引き剥がすように、ガリューは尻尾をずるりと引いた。完全に抜け切る前に、また突き入
れる。

「ああっ。私のお尻に、エリオのおちんちんが……ごりごりって……!!」

 ガリューの鋭敏な聴覚は、ルーテシアの悲鳴と腸液が溢れかえる音に混じって、別の水音がしているの
を聞き取っていた。
 いつの間にか、ルーテシアの指が股間に伸びている。肛門を抉られ感じることですっかり濡れきってい
る秘裂の上を、指がゆっくりと上下していた。時折淫核の上らしき場所で指が止まるが、弄る指は臆病な
までに拙い。
 ルーテシアは、絶対に前をガリューに触らせない。あくまで触れるのは、己の指のみ。それも、入り口
付近をさまよう様に軽くかき回すだけ。
 尻を攻め立てられこれだけ淫らに喘ぎながらも、ルーテシアの肉体は生娘のままだった。
 口にしたことはないが、処女の証を捧げる相手は自分の指でもガリューでもなく、赤毛の男一人だと心
に決めているのだろう。
 主の想いが通じる邪魔をする側に回っているガリューだが、健気さには憐憫の情を覚える。
 偽りとはいえ少しでも快楽を多く与えてルーテシアを楽にしてやろうと、ガリューは尻尾の速度を速め
た。

「あああっ!! ふ、深いよエリオ!! きちゃう! 私きちゃうからっ!!」

 ルーテシアが自分で腰を揺らして、いっそう奥まで尻尾を入れようとする。左手は手にしたシーツをさ
らに顔へと押し当て、右手は宝珠を集中して転がしている。

「イッちゃうっ!! エリオにお尻いじめられていっちゃうのぉぉぉ!!!!」

 がくがくと、ルーテシアの身体が痙攣して、やがて止まった。休憩のため一度ガリューは尻尾を抜こう
としたが、ルーテシアは意外な強さで腰で押さえて出て行くのを止めてしまう。

「ガリュー……手、出して」

 言われるがままにすると、手首を掴まれ顔の前まで持っていかれる。ルーテシアの手が指を二本握り直
し、口に咥えた。

「んっ……ちゅう……えりおの、しゅごくふとくておっひいよぉ……」

 再び妄想に浸りだしたルーテシアのために、ガリューは再度尻尾を軽く揺らし出す。

(完全に満足するまで、あと二時間前後といったところか)

 醒めた頭のままルーテシアの様子を測りながら、ガリューの手足は主への快楽のためだけに動き続けた。

          ※




 翌朝、主の相手で夜更かししてやや寝坊したガリューは眠い目を擦りながらリビングに出て、ちょっと
驚いた。
 台所にルーテシアと並んで、キャロがいたのだ。今日帰ってくるのは知っていたが、こんな早朝ではな
かったはずだ。
 束の間、寝ぼけて幻を見たかと思ったが、庭ではエリーと息子達が久しぶりに会ったフリードと楽しそ
うに遊んでいる。どう見ても本物のキャロだった。

「おはようガリュー。驚いた? エリオ君やルーちゃんに会いたかったから夜中の便で帰ってきて、さっ
き家に着いたんだ」

 雰囲気を察したキャロの説明に、ガリューは納得する。

(……夫も、これぐらい私に気を使ってくれたらな)

 ガリューの夫は『パリまで豆腐を買いに行ってくる』と謎の伝言を残して現在出奔中。二週間前にエッ
フェル塔とかいうタワーを背景に撮影した写真が送られてきた以外、音沙汰無しである。

「キャロ、この野菜はなに?」
「それはミラさんがくれたんだけど、油と塩で炒めたら簡単なおかずになるんだよ」
「他に調味料はいらないの?」
「野菜元々の味が強いから、これだけでいいんだって。私はこっちを作るから、ルーちゃん玉子焼きお願
いしていいかな?」
「うん。キャロが好きな甘めに作るね」

 十年以上の仲になる友人同士のルーテシアとキャロ。ルーテシアの中にはエリオへの愛情もあるが、同
時にキャロへの友情も確かにあるのか、二人の関係に険悪なものはなにもない。
 仲良くしゃべりながら料理する二人を、エリオが優しい眼差しで見つめている。
 おしどり夫婦と、仲の良い友人。
 ルーテシアには悪いが、三人の関係はこの形が一番いいだろう。
 深く頷いたガリューは、エリオが読み終わった新聞に手を出し、キャロが用意していてくれたコーヒー
を飲みながらページをめくる。

(株価がまた下がったか。……第二十三観測指定世界で大規模騒乱。八神とハラオウンがまた忙しくなり
そうだな。やれやれ、相変わらず世の中物騒なことだ)

 それでも、モンディアル家は今日も平和である。




          終わり




          おまけ



 キリュー、ヒリュー、シリュー三兄弟の夜は忙しい。
 夕方ごろから三匹で集まってご主人様が夜這いに使いそうなルートをあれこれ検討し、決定したらそれ
ぞれが持ち場で待機。廊下や天井裏ならまだしも、屋根の上は冬場はかなりきつい。寒空の下で震えてい
ると、穴掘って春まで冬眠したくなる衝動に駆られる。
 そうやって無い知恵絞って努力しても、裏をかかれてエリオの部屋に侵入寸前まで行かれることがしば
しばある。今のところは水際で阻止できているが。
 しかしルーテシアが幼い頃から召喚蟲をやっていた母親はさすがで、ルーテシアの通る道から時間まで
ほぼぴたりと当てる。
 おかげで今夜は早々に警戒態勢を解くことができ、長兄は友人と食事に、自分は久々に布団で夜を過ご
せるありがたいことになった。ジャンケンで負けた次兄だけは、アフターケアのためもう少々やらねばな
らないことが残っているが。

(そろそろ小遣いが無くなってきたから、ルーテシア様が来てくれても良かったんだがな)

 実は時々、シリューは警戒中にルーテシアと遭遇しても金あるいは食事を条件に素通りさせている。別
に主の不道徳な恋路を応援しようなどというものではなく、真面目にやる気が無いだけである。
 戦闘中なら命がけでルーテシアを守る心根は持っているが日常生活で、ましてや他人の恋愛話などとい
う首を突っ込むだけ馬鹿を見ることに労力を割くのはアホらしい。そんなことで主人の世話を焼いたり阻
止する側に回ったりする召喚蟲など、聞いたことが無い。

(主のため愚直に働くのは、母者とキリュー兄者あたりがやればいい。俺は本当に仕えたい相手が見つか
るまで、適当に楽させてもらうさ)

 毛布の暖かさにうつらうつらとしかけていると、もぞもぞと隣で起き上がる人がいた。

「……しりゅー、おしっこ」

 寝ぼけ眼と回らない舌で言うのは、エリオとキャロの娘であるエリー・モンディアル。元気いっぱいで
勉強も頑張る良い子だが、まだ夜中一人でトイレに行けない怖がりなところがあるのは、モンディアル家
トップシークレットの一つである。
 キリューは手を引いてやり、部屋を出た所で足を止め耳をすました。

「…………っと……お尻もっとつよく……はあっ!!」

 遠くから主人の喘ぎ声が聞こえてくる。その方角は、トイレの方角でもあった。
 きびすを返したシリューは階段へと向かう。かっくりかっくり舟をこいでいたエリーも、手を引かれて
歩くうちに目が覚めてきて自分がどっちに向かっているか把握したらしく、ぷぅっと頬を膨らました。

「またシリュー遠い二階のおトイレに連れて行く。私をちょっとでも怖がらせようとしてるんだ」
『…………』

 見当はずれな非難にもまさか真実を伝えるわけにもいかず、肩をすくめただけでシリューは黙ってエリー
をトイレまで導いてやるのだった。

          ※




「あのさ、ヒリュー。どうして急に一緒に寝て欲しいなんて言い出したんだ? それも君の部屋で」
『いろいろと事情があるのです』
「だからその事情を話してほしいんだけど」
『そこは蟲の情けと思って聞かないでください』
「…………まあ、誰にだって言えない理由はあるしね。今晩一晩、一緒の布団で寝ればいいんだね?」
『お願いを聞いていただきありがたうございました』
「あ、そこスペル間違っている。ありがとうっていうのはこう書くんだ。……そうそう。だいぶ字が上手
くなってきたね」

 ヒリューの手を取って、懇切丁寧に教えてくれるエリオ。その優しさが心に染みる。さらにルーテシア
のひどさと比べて思わず涙ぐみかけるヒリュー。
 ルーテシアは恋路の行く手に立ち塞がる者には容赦しない。今年の初めなど、新年早々に魔力弾数十発
食らったあげくにバインドで縛られ、庭の隅で冬の雨に打たれながら朝まで焦げているはめになった。

(あの不倫願望女、いつか召喚蟲に対するDVで管理局に訴えちゃる)

 家族にも誰にも言っていないが、ヒリューは心の中でとっくにルーテシアを主だとは思っていない。自
分の主は住居と食事を提供してくれているエリオであり、キャロであり、エリーである。
 自分の生命がある限り、絶対この人に奥さんを裏切らせるような真似をさせまいと決心するヒリューだっ
た。




          ※




 自分の美的感覚は同種族からすればきっと奇怪なものなのだろう、とキリューは思っている。
 生まれた時から周囲にいた蟲は父と母だけであり、比較対照がいない。図書館やネットで調べてみたこ
とはあるが、写真や画面に写っていた同種族の雌は全部一緒の顔に見えて、容姿の良し悪しなど見分けら
れるわけがなかった。
 代わりに、人間の美貌の基準なら多少は分かる。モンディアル家やその周囲にいる人が、世間の水準を
大幅に上回る美女揃いだという程度には。
 だから自分が目の前の少女を美しいと思い恋愛感情を抱くのもしごく当然のことなのだと、キリューは
自分に言い聞かせた。その少女が、不意に皿から顔を上げた。

『全然食べてないけど、調子悪いの?』

 我に返ったキリューが首を振ってそんなことはないと伝えると、相席の少女はフォークを動かす手を再
開させた。
 両親の躾が行き届いているので下品にがつがつ食うようなことはしていないが、料理を切り分け口に運
ぶ速度が尋常でなく素早い。あっという間に、十皿目のハンバーグステーキが口の中へ消えていった。相
変わらずの健啖ぶりである。

『良かったら俺のも食っていいぞ』
『ありがとう。けどもうデザートに移るからいい』

 口の周りをきれいに拭った少女、人狼の子であるロウは店員を呼んだ。

『すいません。パンケーキセット二つとストロベリー&チョコレートパフェ大盛り。それに角砂糖の補充
お願いします。…………いえ、コーヒーを頼むんじゃなくて、お茶に入れるので』

 店員にメニューを見せながら注文しているロウの横顔に、改めてキリューは見惚れる。
 年を経るに従って、少女の可憐さから大人の美しさに変わりつつある横顔。白く長く腰まで伸びたきれ
いな髪の毛。頭に伝えられる念話のややハスキーな声。頭の上で時折動く獣の耳。なにもかもがキリュー
の目を惹きつけて止まない。
 この少女のことを、キリューは本気で愛していた。

『今年もガリューおねえちゃんにお歳暮贈ろうと思うんだけど、何がいいと思う?』
『去年送った蜂蜜は止めた方がいいな。喜んでいたが、食いすぎて太ったと後でずいぶん悩んでいた』
『じゃあ、樹液ゼリーの詰め合わせも止めておこうかな』

 もっともその想いはキリューの内側に堅く秘められているので、現状ではこうして時々食事などに行く
だけ。二匹の間柄はどう贔屓目に見ても友人関係以上のものではない。
 せめて多少なりともデートらしく、もっと小洒落たレストランになど連れて行きたかったのだが、自分
の外見では間違いなく入店を拒否されるので近所のファミレスである。ここはモンディアル家の人達と時々
来るので、店員も黙って通してくれる。

『ところで明日の休みだが、何か予定はあるのか』
『うん、クロードが久しぶりに帰ってくるから、おかーさんとフェイトさんと四人で買い物とかする予定』
『そうか』

 筆談用のノートに書いた字は平然たるものだったが、キリューは心中にかすかな苦々しさを覚えた。ク
ロードの名前を出した時の、嬉しそうにほころんだ顔。そんな顔を、一度も自分に向けてくれたことはな
い。
 クロードだけではない。別の幼馴染が「男子寮で野郎に囲まれながらすごしている、俺の心の精神安定
に協力してくれ」などとぬかしながら、最近成長著しいロウの胸を揉みしだいているのを目撃した時など、
苦々しさどころか思わず本気で蹴り飛ばしかけた。
 もし同じことを自分が頼もうものなら絶対に拒絶されるであろう要求に、ロウが苦笑しながら気が済む
まで触らせていたのもひどく癇に障った。
 ロウとクロード達との間には、余人では容易に立ち入れない深い部分がある。それが男女の愛情的なも
のではないと分かっていても、自分ではその場所に行けないのかと思えば、寂しさは募った。
 しゃべりながらデザートもきれいに平らげたロウが、伝票を手に席を立つ。

『払いは俺が』
『無理しなくていいよ。キリューはまだエリオさんにお小遣いもらってるだけでしょ。私はお給料もらっ
てるし』
『それぐらいの額なら手持ちである。それに食事に誘ったのは俺なのだから、俺が払うのが筋だ』
『こういう場合、年上が払うのが筋だと思うけど』

 金銭や筋うんぬんよりも、子ども扱いされているのが嫌だった。生後数年だが、自分の種族としては立
派な大人だ。
 それでも結局は、自分が頼んだ分だけ自分で払うということで折れることになった。
 店の前でそれじゃあまたいつかと別れる。闇夜でも目立つ白髪が去っていくのを見送りながら、キリュー
は小さくため息をつく。

(諦めるべきなのだろうな……)

 自分と彼女では、年齢以前に種族が違いすぎる。人間が蛙と結婚するようなものだ。蛙を可愛いと言っ
てくれる物好きはいても、本気で愛する者はいない。
 もし万が一の奇跡が起きてロウと自分が相思相愛になれたとしても、その後がある。子も成せないし、
一緒に歩くだけで奇異の目で見られる。そんな肩身の狭い共同生活を、あの少女に送らせたくはない。
 それ以前に両親も兄弟もモンディアル、ハラオウンの両家の人も、いったい誰が二人が結ばれることを
祝福してくれるのだろうか。
 愛が通じればただそれだけでいいというものではないのだ。
 ああそうか、とキリューは悟る。

(ルーテシア様も、こういう気持ちを胸に抱いているのだな……)

 色々とばっちりを食らうのは迷惑だが、そう思えば少し同情する気持ちになった。
 夜空を見上げると、二つの月が黙って見下ろしていた。天に哀れまれているような気がして、キリュー
は地面に目を落としもう一度ため息をついた。



          今度こそ終わり


目次:あの日見上げた空へ
著者:サイヒ

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