[235]ある日の模擬戦の話<sage>2007/06/16(土) 19:15:44 ID:H5uOKKuP
[236]ある日の模擬戦の話<sage>2007/06/16(土) 19:16:47 ID:H5uOKKuP
[237]ある日の模擬戦の話<sage>2007/06/16(土) 19:17:54 ID:H5uOKKuP
[238]ある日の模擬戦の話<sage>2007/06/16(土) 19:19:11 ID:H5uOKKuP
[240]ある日の模擬戦の話<sage>2007/06/16(土) 19:20:56 ID:H5uOKKuP
[241]ある日の模擬戦の話<sage>2007/06/16(土) 19:21:58 ID:H5uOKKuP
[242]ある日の模擬戦の話<sage>2007/06/16(土) 19:22:49 ID:H5uOKKuP

「模擬戦?私たち4人でですか?」
「そう、今日はスターズFとライトニングFで
 模擬戦をしてもらおうと思うんだ」
朝の訓練。軽く体を動かした後でなのははこう告げた。
「それはつまり…私とスバルが
 エリオとキャロと戦うって事ですか?」
「うん。第三段階に進んだ事だし、そんな訓練も面白いかなって」
「でもそれじゃバランスが…」
スバルはフロントアタッカー、ティアナはセンターガードである。
この二人は充分な単独戦闘能力を持つ。
それに比べてフルバックのキャロは確かに集団戦では脅威となる
援護の魔法を多く持つが、
単独での戦闘能力という点では大きく見劣りする。
となるとガードウイングであるエリオだが
防御の魔法はあまり得意ではなく
キャロが狙われた時に対処する術を持たない。
また、キャロを狙えばエリオは防御に回らざるを得なくなり、
その最大の武器である機動力が生かせない。
つまりスターズFの方が圧倒的に優位なのだ。
「うん、だから少しエリオとキャロに有利な場所で
 戦ってもらおうと思うんだ。
 それと、ハンデとしてエリオとキャロには後でヒント教えてあげるね?
 他に何か質問とかあるかな?」
挙手は無かった。
「じゃ、訓練場の準備があるから
 一度解散して20分後から模擬戦を始めるね?解散!」


「ティア、どう思う?」
「どう思うって何が?」
ティアナとスバルの作戦会議。
「エリオ達に有利な場所って何なのかなぁ?」
「まぁ…他にも色々候補はあるけど…森の中とかそんなトコでしょ」
森の中なら射線が思うようにとれず、ティアの能力に制限がかけられる。
またスバルはその突破力が発揮出来ない。
「身を隠したキャロに援護させてエリオの機動力を生かしたゲリラ戦…
 でも、コレはアンタがいるから大丈夫でしょ」
「?  何で?」
首を傾げるスバルを見てティアナは頭を抱えた。
「あのねぇ…ウイングロードがあるでしょうが!」
スバルが使える魔法のひとつ、ウイングロード。
空中に足場を作る魔法だ。
「エリオも接近戦しか出来ないんだからウイングロードの上に
 私たちがいたらそこまで来るしかないのよ。
 そうしたら後は平地での戦闘と変わらないわ。
 ウイングロードはそんなに広くないし、
 正面から戦ったらエリオにアンタが負けるわけないでしょ?」

一瞬止まるスバル。そしてその表情が崩れていく。
「……えへへ〜」
「照れてんじゃないわよっ!」
そういうティアナの顔も真っ赤だ。
エリオとスバルなら打撃力、防御力共にスバルに軍配が上がる。
スバルの防御を抜ける攻撃となると
エリオでは十分な加速かキャロの援護が必要になる。
「エリオが距離を開けるようなら私の距離になるし、
 キャロが援護したらそれでキャロの場所が解るしね」
「へ〜…あ、でもフリードは?」
キャロの守護竜フリードリヒ。
通常のチビ竜状態では脅威ではないが
竜魂召喚で真の姿を開放すると話は変わってくる。
「確かにブラストレイはヤバいけど…
 儀式に時間がかかりすぎだからね。
 儀式途中に撃つか、儀式が終わった瞬間に撃つか…
 まぁどちらにせよアタシの仕事だわ」
先程からスバルはティアナの言葉に頷くだけだ。
その様子にティアナは腹が立ったのでスバルの頭をはたいた。
「アンタも考えなさいよ!
 逆に言えばフリードがあの姿になったら
 一方的に砲撃魔法うちこまれるんだからね?」
真の姿のフリードとなると機動力が段違いに上昇する。
スバルでは追いつけないしティアナの誘導弾ではキャロの防御を貫けるかわからない。
またブラストレイは攻撃力、射程共に脅威だ。
だがスバルはニヤニヤと笑みを崩さない。
「でもティアが何とかしてくれるんだよね?」
「なっ…」
照れ隠しにもう一度はたいた。


フィールドはティアナの予想した通りに森林だった。
「すごい!ティアの予想通りだよ〜」
「スバルうっさい!もうすぐ開始なんだから集中しなさい!」
二人は既にバリアジャケットを装着済みだ。
なのはからの通信が入る。
『じゃ、模擬戦開始するね?ready――――』
身構える。
『Go!』
「ウイングロード!」

横で記録をとっているシャーリーが尋ねてきた。
「なのはさん、どっちが勝つと思います?」
「まぁ、順当に行けばスバルとティアの方なんだけどね」
画面内ではスバルがウイングロードを発動させ、
ティアと一緒に上空へと上っていく所だ。
「その方法だと確かにディスアドバンテージは消せるけど…
 身を隠せるってアドバンテージも丸々捨てちゃうんだよ」


地上15メートルを維持して周囲を警戒するティアとスバル。
「なかなか見つからないね〜」
「そうね。上から探せば簡単に見つかると思ってたんだけど…」
いきなり来た。
周囲に魔力の反応。
「ティア!」
「範囲が広すぎる…キャロの召喚魔法?」

「連結…召喚!アルケミックチェーン!」

スバル達を囲むように八本の鎖が現れた。
それはぐんぐんと天へ伸びていく。
ティアナは考える。
(何でここでこの魔法?コレだけじゃ決め手にならな――――)
『―――speer angrif』
瞬間の判断だった。
スバルの尻を思い切り蹴飛ばした。
「痛っ!」
スバルが一瞬前までいた場所をエリオが下から突き抜ける!
エリオは止まらない。
空中で体勢を立て直し、無防備なスバルを狙う。
「スバル!」
エリオの大上段からの振り下ろしを
「解ってる!」
スバルがアッパーで受け止めた。
鎖が音を立てて落ちていく。
(鎖で上に目を向かせてから、真下からの奇襲?
 えげつない事やってくれるじゃない!)
だが凌いだ。
ここからは自分達が望んだ展開だ。
エリオとスバルが離れる。
「クロスファイ」
『sonic move』
エリオの姿がかき消える。
「ア」
怖気が走る。
ティアの斜め後ろにエリオが現れた。
すでに槍は腰だめに構えられている。
「ティア!」
スバルが割って入った。
二度目の激突。
が、今度はエリオが押し勝つ。
バックステップで距離をとるティアナに――
「逃がさない!」
追いすがるエリオ。
「させない!」
スバル。
三度目の激突。
今度はスバルが押し勝つ。
エリオが大きく引いた。
(アタシを狙ってスバルに思うようにさせないつもり?)
自分達が本来行う筈の事を逆にやられている。
その事実にティアナは奥歯を噛み締めた。

戦闘は止まらない。
エリオが突っ込んでくる。
スバルが迎え撃とうと前に出る。
ティアナの頭で警鐘が鳴り響く。
(キャロは―――?)
プロテクションを展開するスバル。
と、振り上げられたストラーダに桃色の光が宿った。
「―――!避けなさい!」
振り下ろされるストラーダ。
巨大化した魔力の刃はスバルのプロテクションを簡単に切り裂く
―――が、スバルは身を横にする事で何とかかわしていた。
(エリオに注意をとられて今の補助魔法が
 どこから飛んできたのか見てなかった!)
後悔する時間もまた時間である。
時間が進めば行動も進む。
エリオがストラーダを腰だめにかまえ、
「―――!」
振り回す。
スバルが伏せる事で、ティアナが距離をとる事で何とか回避。
「クロスファイヤーシュート!」
四発の誘導弾がエリオに迫るが
「ストラーダ!」
『Stahl messer』
伸びた刃に一閃された。
四連続の爆音。
煙を突き抜けてスバルが迫る!

二人のタイミングは全くの同時であった。
カートリッジをロード。
リボルバーナックルが回転し、ストラーダが点火する。
「ディバイン」
「一閃」
左足で体を前に送る。
右足で震脚。
伝わる力。
「バス」
「必」
回転する上半身。
そして右腕が―――
「タアアァァァッ!」
「中ぅぅっ!」
発射される!

槍と砲撃が衝突。
拮抗が数瞬。
破裂は一瞬。
ストラーダの魔力刃が砕け散る。

「くっ!」
エリオが引いた。
今ので決めたかったがしょうがない。
「もう一度!」
『sonic move』
周囲が遅くなる感覚。
スバルの背後でスフィアを展開するティアナへ迫る。
「これでっ!」
胴を狙い、水平に一閃する
―――が、手ごたえが全く無かった。
突然の浮遊感。
足元のウイングロードが消えていた。
「え?」
目の前にはエリオと同様に落下していくティアナ。
(さっきのは幻影?なら)
エリオを見てティアナはにんまりと笑った。
「スフィアは本物よ?」
クロスミラージュをエリオに向ける。
「避けられるモンなら避けてみなさい!」
『Cross Fire Shoot』
空中のエリオに12発の光弾が降り注いだ。



「…アレ、避けるかしら普通」
地面に降り立ったティアナは先程の光景を思い出した。
エリオの選択はあくまで回避だった。
ストラーダを噴射させて地面へ向かって加速、
ティアナの誘導弾を振り切ったのだ。
「避けてみなさいって言ったのはアタシだけど…」
「ティア!大丈夫!?」
スバルが降りてきた。
「馬鹿ッ!?あんたまで降りてきたら―――」
遥か遠方に桃色の光が広がるのが見て取れた。
「…来るわよ!」
白竜の雄たけびが聞こえる。

「フリード!」
空を駆け、三人がいる戦場へと一気に距離を詰める。
エリオに迷惑をかけないようにと
随分離れた位置から魔法を行使し続けたせいで
魔力の残量にはもうあまり余裕は無い。
(…でも、これで!)
ようやく得た召喚の機会。
これでようやく自分も戦いの場へと上がる事が出来る。
(待ってて!エリオ君!)

「キャロ、上手くいったんだ」
竜の雄たけびを聞き、エリオは作戦の成功を知った。
『ティアナをウイングロードから落として
 竜魂召喚中の狙撃を防ぐ』
途中、色々とアクシデントはあったが
これでこっちが一気に優勢になった。
「あとは…これをどうするか…」
そう呟くエリオは
バリアジャケットを枝にひっかけ宙吊りになっていた。



「見つけた!」
スバルとティアナの二人を発見した。
もうやる事はひとつである。
砲撃魔法でひたすら撃ち続ける。
「フリード!」
白銀の守護竜フリードリヒが応えて吼える。
「ブラストォッ!」
フリードの前に巨大なスフィアが形成されていく。
「レエェェイッ!」

迫り来る砲撃。スバルは思う。
(あたしに出来る事…それは!)
「マッハキャリバー!」
『Wing Road』
回避行動をとろうとしたティアナは驚いて叫んだ。
「スバル!アンタ何やってんの!」
ウイングロードをひた走りながらスバルも応えて叫ぶ。
「あたしに出来るのは!ブン殴る事だけだから!」
竜の炎が迫る。その赤さに心が竦んだ。
(だけどっ!)
自分がずっと信じてきた事、やってきた事。
経験と努力が、時間と思いがこの腕には篭っている。
「カートリッジロード!」
リボルバーナックルが回転し始める。
「ディバイィン!」
自身のありったけの魔力を込めてスフィアをつくる。
踏み込む。
拳を突き出す。
後は叫ぶだけだ。
だから叫んだ。
「ばすたああああぁぁぁぁっっ!」

眩い光の中で確かにキャロは
己の砲撃が弾かれるのを見た。
何故とは思わない。ただこう思う。
(もう一度!)
「フリード!」
そこに16の光弾が突き刺さった。

スバルが振り返ったそこには憮然とした表情のティアナがいた。
「…ティア!」
「まぁ、アンタがやられたらどうせあたし達の負けだからね」
スバルがブラストレイに突っ込んでいった瞬間、
ティアナはその場でクロスファイヤーシュートの展開を始めた。
それはスバルが押し切られればティアナも同様にやられるという危険な賭け。
「…ってスバル!キャロが!」
「へ?」
落下していくキャロ。どうやら意識は失っているらしい。
「キャロっ!」
『speer angrif!』
と、天へ駆け昇る一本の矢。エリオだ。
エリオはしっかりとその両手でキャロを受け止めた。
だがそれだけだ。
二人そろって落下していく。
「スバル!ウイングロード!」
「え?へ?」
『wing road』
己の主よりも早くティアナの意図を理解したマッハキャリバーが
ウィングロードで滑り台を作り、二人を受け止めた。

「エリオはそのままキャロを医務室まで運んであげて?」
エリオとキャロを見送り、なのはとスバルとティアナだけになる。
「なのはさん!ひとつ聞きたいんですけどいいですか?」
「何かな?ティア」
「今回の模擬戦、あたしの為だったんですね?」
なのはは嬉しそうに笑った。
指揮官としてはメンバーの実力を正しく把握しなければいけない。
その為に、模擬戦を行わせたのだ。
実際、キャロとエリオはその偏った能力にも関わらず、
スバルとティアナを後一歩の所まで追い詰めた。
これはキャロとエリオの能力の可能性をティアナに実感させた。
「うん、それもあるよ?
 ティアナだけじゃないんだ。皆が皆の力を知ってれば
 どこで助けが必要か、どう動けばいいかとか
 もっと解る。もっとしっかりと力を合わせられる
 わかって…くれたかな?」
『ハイ!』
そう応える二人を見て、なのはは嬉しくなった。



著者:一階の名無し

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

メンバーのみ編集できます