[10]さばかん つかいまなのなのは1<sage> 2006/09/18(月) 22:18:58 ID:TzKLSqYz
[11]さばかん つかいまなのなのは2<sage> 2006/09/18(月) 22:22:32 ID:TzKLSqYz
[12]さばかん つかいまなのなのは3<sage> 2006/09/18(月) 22:24:04 ID:TzKLSqYz

電車で片道1時間程度の距離。
 そこから2時間歩けば、そこは別世界だった。
 広大なお花畑。花に興味の無いユーノも、そのだだっぴろさに少し感動していた。
「ふぅ・・・何が自然を楽しめ、だ。疲れるばかりで良いことなんて
ひとつもない・・・」
 口先で悪態を付くも、その忠告に少しばかり感謝していた。
 もやしっこのユーノは流石に疲れたのか、そこでいったん休み、
渡された千円で適当に買ったおにぎりをビニールから取り出した。
 持ち物はそれだけ。そんな軽い持ち物で山に登った事を少し後悔した。
 せめて、水でも買っておくべきだった。
 そう思いつつ、何を先に食べようか少し迷っていた。
 買ってきたおにぎり3つ、こんぶ、基本。おにぎりには欠かせない。後の
二つは適当。少し高めの180円位のおにぎりとバターおにぎりとかいうミステリ
アスなおにぎりだ。
 このバターおにぎりはレンジでチンして召し上がらないと上手くないらしく、それを
途中で気付き、またもや後悔。自分の無計画さに飽きれる。
 腕を組み考えた結論が、バターおにぎりを先に食べるだ。
 そう思い、隣に置いたビニールを手探りでとろうとする。
 しかし、ビニールが取れない。たしかに透明だったが、本当に消えてしまうとは。
 ・・・いやいや、そんな事ある訳が無い。確認しようと振り向く。
 案の定。ビニールは無くなっていた。
「・・・・・・・・・?」
 おい。どこにあるんだ。足でも生えたか。
「はははははははは・・・真坂な」
 当然だ、とそう思った瞬間。ユーノは有得ない光景を見る。
 ビニールがあった!しかし、結構遠い。
 いや、それならまだいい。なんと足が生えて、
「いや、違う」
 いるのでは無く、単に誰かが持っているのだ。しかも、もっている奴が
とてつもなく可愛い女の子だった。
 金髪でツインテールでワンピースの女の子。はぁはぁ。
 そいつがあっかんぺーをして森の奥へ逃げていく。
 その瞬間をぼーっとながめて刹那。
「ま、待ちやがれ!!」
 疲弊しきった体にムチを打ち、追いかけた。
 森の奥の奥。追いかけっこ。
 女の子は足が速く、追いつくのに時間がかかった。
 だが、それは男の子。見事追い詰める。
「おい、なんのつもりだ。さっさとそれを返すんだな。返さないなら・・・」
 言いながら、手首を掴もうとして、かわされ、あっけなく後ろを取られた。
 そう思うと、彼女は何を思ったのか木の影に隠れた。
 ユーノは鼻で笑い、その大木ににじり寄る。
 追い詰めた後、どんな事をしてやろうかと想像した時、有得ない方向から
彼女が出てきた。
 ・・・信じられない。どんなに速くても、あんな距離を移動できる訳が無い。
 まるでナゾカケ。狼狽するユーノは彼女の方へ駆け寄る。しかし、またもや
彼女は木の影に、そしてまた、高速移動でもしたのか別の所から。
 以下ループ。
 ユーノは夕方までそのナゾカケが解けなかった。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 完全に遊ばれた。彼女は笑いながらいなくなっていた。
 そして、虚しく残ったユーノとおにぎり。
 腹が減ったユーノはとりあえずおにぎりを食った。
 中身は無事。ほっとする。
 ・・・チンしなくても美味いじゃないか、バターおにぎり。
 
「武家屋敷?」
 間違いなく武家屋敷。ただし、住んでいるのは外国人。
 このでけぇスーパー屋敷の玄関のチャイムを鳴らす。
 ピンポンと言うマヌケ音の少し後、人が出てきた。
 ・・・いや、人が出てくるのは普通だ。犬が出てきても普通だ。
 だが・・・何故貴様がいる。
「えへへ・・・」
 にっこり笑顔の住人はさっきの女の子だった。
「うが〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
「ご、ごめんなさ〜〜〜〜い!!!!!」
 得意の、肩のつぼをギュ〜の刑。
 その叫びと共に、またもや女の子が。
「うが〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
「ご、ごめんなさ〜〜〜〜い!!!!!」
 さっきのナゾカケの回答が問答無用で放出だ!
 つまり、こいつら双子!ふたごふたご〜♪
「ははははははは。随分仲がいいじゃないか」
 なんて笑ってるじいさんがここの主、グレアムさんだ。
「あ・・・こんにちは、じゃなくて、こんばんはグレアムさん」
 金髪双子の肩をはなし、グレアムさんにお辞儀をする。
「も〜〜〜〜ぅ、おじいちゃん(はぁと)でいいのに〜〜。随分遅かったね。
てっきり迷子になったと思ったよ」
「はははは・・・色々ありまして」
「腹へったろ?積もる話は後にして、食事にしようじゃないか」
 そう言われ、縁側を歩き、暫くして、居間に着く。そこには既に人がいて、
ユーノと同じくらいの年齢の男の子が座って待っていた。
 男の子は立ち上がり、自己紹介をした。
「はじめまして、ユーノ。僕の名前はクロノ。よろしく」
 会って早々呼び捨てとも思ったが、早く親しむようにとの彼の礼儀だろう。
 ・・・と、思っておく。
 握手をかわし、飯を食う。どれも和食で、しかも美味い。だが、それ以上に
食事の光景は明るかった。
「あの、さっきはごめんね。つい・・・出来心で」
「わ、私もごめんなさい」
 二人の名前はフェイトとアリシア。アリシアがお姉さんだそうだが、僕にはどっちがどっち
だか分かんない。
 その後色々会話をして、明日、一緒に森を探検する事になった。
 聞いた話では、ここのばかデカイ山は全てじいさん・・・グレアムの土地なんだそうだ。
詰まり、彼女らの庭で、僕に庭を案内してくれるんだってさ。

 食事を終え、僕はグレアムさんの部屋に案内された。
「ささっ、どうぞ」
 襖を開けると所狭しと並ぶ、漫画、ゲーム、D・V・D−!!
 この人の趣味が日本の文化を学ぶ事だそうだが、僕が思うにこいつは単に
ヲタクだ。
 ちなみに、さっきの和食は全部このじいさんがつくった。美味かった。
 座布団に座る老人と僕。
「やぁ、ようこそユーノ君。歓迎するよ・・・だが、ここに来たと言う事は
条件を飲んでくれたんだね」
「はい」
「・・・そんなにあっさり答えられると、言う事が無くなっちゃうなぁ。部屋も適当に
用意したし、君に不便な思いはさせないと思う」
「はい」
「孤児院は・・・辛かったかい?」
「少しも」
 グレアムさんは最後の質問だけ、すまなかったと言う顔をしながら、話を切った。
 話はそれで終わり、グレアムの部屋を立ち去った。
 
 僕は孤児だ。両親が事故で死んだそうだが、知らん。物心ついたときからそうだった
から、僕はそんなことは知らない。
 日常だったから辛くも無い。と言うよりは、人は個人々々辛い思いをしているのだ、
こんなのは日常で辛いの例に入りもしない。
 ただ、貧しかった。だから金持ちを恨んでいた。
 恨みには時に憧れが混入しているものだ。僕はこの状況を変えられるなら変えてみた
かった。だから、今回の養子縁組に乗ったのだ。
 部屋に入る。・・・ああ、悪くない。部屋も派手でなく落ち着いていた。
 テレビもあるし・・・おっ、ゲームもあるじゃん!漫画も、D・V・Dーもある。
 机の上に、メモが置いてある。
『グレアムじいちゃんのオススメゲーム☆寝る前にやってみてね(はぁと)』
 キモッ。
 いや、メモはビリビリに破いてソッコー捨てたが、ゲームとは有難い。
 しかし、じいさんあの年でギャルゲー。オススメゲームの10分の9がそれだ。
 ギャルゲーをやるやらないは別として、とりあえず僕はRPGモンをやってみることにする。
 タイトルが長い。魔界なんたらなんたら2。ご丁寧に攻略本まで置いてある。
 細いクノイチハァハァ。
 しかし、家でゲームとは夢みたいだ。だからといってゲームをした事が無い訳では無い。
 こんな僕でも友達はいて、そいつの家でゲームをやった事がある。
 数時間ゲームをして、味方を寝ぼけて殺してしまった頃にもう止めようと思った。
 布団をしき、眠りに付く。
 あ、風呂に入るの忘れてた。ぐー。

 今日はキネンビだ。キネンビ だ。         わあいわあい        。
                 悲劇の、始まりだった。
つづく

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目次:つかいまなのなのは
著者:さばかん

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