[354] なのはなりの復讐 1 ◆6BmcNJgox2 sage 2008/02/12(火) 16:29:59 ID:6MG5wQ2x
[355] なのはなりの復讐 2 ◆6BmcNJgox2 sage 2008/02/12(火) 16:30:36 ID:6MG5wQ2x
[356] なのはなりの復讐 3 ◆6BmcNJgox2 sage 2008/02/12(火) 16:31:16 ID:6MG5wQ2x
[357] なのはなりの復讐 4 ◆6BmcNJgox2 sage 2008/02/12(火) 16:31:51 ID:6MG5wQ2x
[358] なのはなりの復讐 5 ◆6BmcNJgox2 sage 2008/02/12(火) 16:32:47 ID:6MG5wQ2x
[359] なのはなりの復讐 6 ◆6BmcNJgox2 sage 2008/02/12(火) 16:33:33 ID:6MG5wQ2x
[360] なのはなりの復讐 7 ◆6BmcNJgox2 sage 2008/02/12(火) 16:34:16 ID:6MG5wQ2x
[361] なのはなりの復讐 8 ◆6BmcNJgox2 sage 2008/02/12(火) 16:38:58 ID:6MG5wQ2x
[362] なのはなりの復讐 9 ◆6BmcNJgox2 sage 2008/02/12(火) 16:39:41 ID:6MG5wQ2x
[363] なのはなりの復讐 10 ◆6BmcNJgox2 sage 2008/02/12(火) 16:40:39 ID:6MG5wQ2x
[364] なのはなりの復讐 11 ◆6BmcNJgox2 sage 2008/02/12(火) 16:41:24 ID:6MG5wQ2x

「え…嘘でしょ…。」
その事を本人達の口から聞かされたなのはは苦笑いするしか無かった。
「冗談でしょ? ねぇ…悪い冗談なんでしょ?」
なのはは苦笑いしながら正面に立っていたユーノとフェイトへ問い掛ける。
しかし…二人の顔は真剣だった。
「ごめんなのは…これは事実なんだ。」
「ごめん…本当にごめん…。」
ユーノとフェイトはなのはに対して申し訳無いと言わんばかりの顔で何度も謝る。
今は謝る以外の事が思い浮かばなかったのだ。

事の発端は、ある日突然ユーノとフェイトが結婚すると言う事をなのはが
二人から告白された事にあった。実はなのはの知らない所で二人は長い間
付き合っていたのだと言う。二人としてもそれが申し訳無くて何度も
謝っていたのだが…なのはには信じられなかった。

なのははユーノの事が好きだった。しかし…表沙汰にユーノの事が好きだと
言うのが恥かしくて…今までずっと『友達』と言う事にしていた。
それがいけなかったのかもしれない。ずっと『友達』と言う事にしていた為に…
ユーノにその気持ちが伝わる事は無く…フェイトに先を越されてしまった。
そしてユーノ自身もまた…なのはより…フェイトを選んだのだ。
これでもしもミッドチルダで重婚が認められているならば…なのはも加えて…
と言う事もアリだったかもしれないが…実際そんな事は有り得ない。
「そんな…そんな…ユーノ君……フェイトちゃん…。」
「ごめんなのは…。」
「ごめん…本当にごめん…。」

「う…うあぁぁ…う…う…ユーノ君…フェイトちゃんと…そんな…ぁぁぁ…。」
ユーノとフェイトが去った後…なのはは自分の部屋で泣き崩れる事しか出来なかった。
「私もユーノ君の事…好きだったのに…好きだったのに…うああぁぁ…。」
なのはは悔しかった。フェイトにユーノを取られた事以上に……
表立ってユーノの事を好きだと言う事が出来なかった自分自身が……。
自分に勇気があれば…表立ってユーノの事を好きだと言える勇気があれば…
この様な事にはならず…ユーノと結婚していたのはなのは自身だったのかもしれない。
しかしもう遅い。ユーノはフェイトと結婚し…共に生きる道を選んだ。
これからもユーノはなのはと接してはくれそうだが…それはあくまでも『友達』として。
なのはの求める様な事は絶対に有り得ない…。それがなのはには悔しくて悔しくて仕方が無かった。

翌日からなのはは仕事を何日も無断欠勤する様になった。
当然ユーノとフェイトの結婚式にも…なのはの姿は無い。
「なのはがいない事…やっぱり心配?」
「え…あ…その…。」
普段来ている黒めの服とは正反対に真っ白なウェディングドレスに身を包む
フェイトに訪ねられ、ユーノは慌てたがフェイトは笑いながらさらに言った。
「気にしないで、私もなのはの事心配してるから。」
「フェイト…。」
そしてフェイトは少し寂しげな顔になる。
「なのはは周囲の新しい変化に戸惑っているだけ…だから私は信じている。
なのはが自分の力でそれを克服して…新たな幸せを見付けてくれる事を…。」
「うん…。」
一度悲しい境遇から幸せを見付ける事が出来たフェイトだから言える言葉。
「それに…なのはなら他にも良い相手は絶対に見付かるよ。」
なのはには申し訳無いが…あえて厳しくする事によって自発的な
問題解決の道への模索を促す為にユーノとフェイトはなのはの事を考えるのはやめた。
逆に今二人がなのはへ何かしてしまえば…かえってなのはの心を傷付けてしまうかもしれないから…

その後、ユーノとフェイトは互いの思い出を振り返りながら初夜を過ごしたり…
新婚旅行を楽しんだりと甘い日々を過ごした。

ユーノとフェイトが結婚して数週間の時が流れた。そうなってもなお
なのはは管理局に姿を見せてはいないらしい。こうなると流石に心配したくなるが…
だからと言ってユーノとフェイトに何が出来よう。何かすれば逆になのはの
心の傷に塩を塗り込むだけなのかもしれない。だからこそ…心配しながらも
なのはの自発的な回復を祈って…二人は何もする事は無かった。

その日の晩…ユーノは一人自室のベッドにいた。妻であるフェイトは執務官の仕事として
遠くに出張し、数日は帰って来ない。結婚したとは言え…この調子だと
子供はまだ先かな? とユーノは内心思いながらゆっくりと眠りに付いた…が…

「ん…ん…。」
ユーノは夜中に突然目を覚ました。とても寝苦しい。まるで何かが
自分の上に乗っているかの様な重みを感じていたのだが…そこでユーノは気付いた。
「あ!」
「こんばんわぁ…ユーノ君…。」
「な…なのは…。」
何と言う事であろうか、なんとユーノの上になのはが乗りかかっているのだ。
しかも予めバインドがされており、ユーノは身動きが取れない。
当然ユーノは戸惑うが…なのはは嬉しそうな優しい笑みを浮かべていた。
「な…なのは…こんな夜中に忍び込んで…一体何をするんだ…?」
「さぁ何でしょう?」
ユーノが焦り顔で訪ねるが…なのはは優しい微笑を向けるのみ。
しかし…その優しい微笑が…逆に恐ろしい何かを感じさせるのだ。
こうしてユーノに夜這いをかけ…しかも動けなくしているのは絶対に何かある。
なのはの目的は一体何だと言うのか…
「なのは…何故こんな事をするんだ…。一体何が目的なんだ…。」
「目的? それはね…。」
なのははまたもニッコリと優しい微笑を見せた。だが…それが逆にユーノを青ざめさせる。
「復讐…かな…。」
「復讐!?」
ユーノに悪寒が走った。その上なのははなおもにこやかな微笑みで…かつ
明るい口調なのだ。それが逆に恐ろしさを倍増させているのである。
そして…なのははユーノの首にゆっくりと手をかけた。
「私もね…ユーノ君の事…好きだったんだ。愛してたんだよ。最初は友達としか
思ってなかったけど…何時の頃か…ユーノ君の事…好きになってたんだ。なのに…
よくも私を捨てて…あの女と一緒になってくれたね…許せないよ…。
私はね…ユーノ君が考えている程良い子じゃないんだよ……。私だって怒る時は
怒るんだよ……。私を捨てた報いは………受けてもらうよ……ユーノ君………。」
「う! やめ! なのは! 落ちつ…。」
ユーノは焦った。なのはがやろうとしている事は分かる。ユーノがフェイトと
結婚した事を逆恨みして…こうしてユーノを殺しに来たのだろう。
フェイトの事を『あの女』呼ばわりした点がまさにその証拠であるし…
今だってユーノの首に手をかけている。とするならばこの後やる事は間違い無く
その手でユーノの首を締め上げる。それ以外に有り得ない。しかし…なのはは
そうせずに…逆に手を離してしまった。
「な〜んてね! 自分で言うのもなんだけど…心優しい私はユーノ君の
首を絞めるなんて…そんな酷い事するワケ無いじゃない。
もっとも…あの女が今の私の立場なら絶対にやってたと思うけどね〜!」
「な…のは…。」
その時のなのはの表情…一見すると先程同様に微笑んでいる様に見えるが…
奥底には冷たさを感じる。そしてまたもフェイトの事を『あの女』呼ばわりした事。
間違い無い。一見なのはは優しく、明るく振舞って見せてはいるが…
心の奥底では凄まじい程にまでの憎悪を隠し持っているに違いない。
「だから安心して、ユーノ君が思う存分あの女と愛し合っても私は構わないよ。
子供だって…沢山…沢山産ませてあげてよ。」
なのははなおも微笑み…明るく言う。しかしその奥に隠された憎悪は変わらない。
一体何が狙いなのか…ユーノは額から汗を垂らしながら…黙り込むしか無かったが…
「でもねでもね、私の目的が復讐って言うのは本当だよ。ただ…そのやり方が違うってだけで…。」
「え? ああ!」
なのはは突然ユーノのズボンを脱がし始め、ついにはパンツにまで
手を伸ばし…股間のモノを露としていた。そしてモノに手を添えて…優しく持ち上げる。
「うわぁ〜…大きくて立派なオチンチン! 凄いねユーノ君!
これじゃああの女もユーノ君にゾッコンになっちゃうのも仕方ないよね!」
なのははユーノのモノを見て喜ぶ。やはり明るく振舞っているが…ユーノには…
『本当ならこれは私の物になるはずだったのに…許せない…。』
その様な声が聞こえて来る様で………恐ろしかった……
「もうあの女とはエッチした? でもまあそれは当然だよね。ユーノ君が
あの女の旦那様になってもう何週間にもなるんだものね。ユーノ君のオチンチン凄いし、
あの女もビッチだからもうエッチな声で喘いでたりしたんだろうねぇ。」
ユーノにはなのはの言葉が嫌味にしか聞こえない。フェイトの事をなおも『あの女』呼ばわりで
あるし…今度は『ビッチ』とまで言い張った。明るい口調でこの様な事を言う位なら
素直に怒って欲しい。怒って…どうして私じゃないの!? とでも叫んで欲しい。
その方がまだいくらか気が楽だ………ユーノはそう思った。
しかし、その間にもなのははユーノのモノを興味深く撫でたり揉んだりしており…
ユーノ自身もバインドによって身動きが取れない。ついにはなのはの手が睾丸に
優しく添えられ…揉み解され………ユーノも勃起してしまうしか無かった……
「うわぁ! 勃起したらますます大きくなっちゃった! それにカチコチに硬いし…
やっぱりユーノ君のオチンチンは凄いや! 何かもうこんなオチンチン挿入されたら
危険日安全日とか関係無く一発で妊娠させられちゃいそうだよね!」
なのはは嬉しそうにユーノの勃起して硬くなったモノを指でつんつんと突付く。
「あの女はこんな凄いオチンチンを何度もオマ○コに挿れられたんだよね。
あ、別に答えなくても良いよ。私は分かってるから。今のユーノ君は
あの女の旦那様だもんね。二人は結婚したんだもんね。私みたいな負け犬が
何を言った所で…それは覆らないもんね。だから気にしないで。
負け犬は負け犬らしく退くから。ユーノ君も思う存分…その大きくて立派なオチンチンで
あの女を…愛して愛して…子供も沢山…沢山産ませてあげてよ。」
その時のなのはの発言…一見ユーノとフェイトの仲を認めて祝福している様にも聞こえるが…
同時に嫌味も見え隠れし…半ば自虐のようでさえもあった。
「でも………ユーノ君には私を捨てたリスクって言うのを背負ってもらうよ。」
「リスク? ってああ!」
なのはは勃起したユーノのモノを摘み上げ…何と己の股間へ押し込んだ。
「あ! あああぁぁぁ…す…凄いよぉ…。ユーノ君のオチンチン凄いよぉ〜…。」
「うわ! やめろ! やめるんだなのはぁぁ!」
ユーノのモノを己の股間へ押し込んだ瞬間、なのははまるで天にも昇る気分になった
かの様に頬を赤くし…顔を天井へ上げていた。そしてユーノは必死に抵抗するが…
やはりバインドによって身動きが取れない。
「ユーノ君…私も…産むよ…。ユーノ君の子供…産むよ…。」
「え? ええ!?」
なのはの発言にユーノはまたも青ざめた。そして彼の脳裏にはある光景が浮かぶ。
それはなのはが自分もユーノの子を身篭っていると世間に公表し……
『無限書庫司書長が不倫。相手は時空管理局教導官』
と、スキャンダルとなり世間に叩かれた挙句…合法的に破滅させられてしまうと言う光景。
そんな事になれば………ユーノは間違い無く終わりだ………しかし……
「大丈夫だよユーノ君。多分ユーノ君が考えている様な事にはならないから。」
「え…。」
笑いながら言うなのはにユーノも首を傾げるが…なのははなおも明るく振舞い言う。
「さっきも言ったよね。ユーノ君は安心してあの女と愛し合って良いって……
子供も沢山沢山産んであげてって………。」
「……………。」
ユーノは黙ったままなのはの顔を見つめ、なのははこう続けた。
「むしろユーノ君にはそうしてもらわなきゃ困るんだよ。何故私もユーノ君の
子供を産む気になったかって分かる? 少なくともユーノ君が考えてる事とは違うよ。」
なのはは腰を動かし始めながらなおも続ける。
「勿論私個人がユーノ君を愛していると言うのもあるよ。例えシングルマザーになっても…
ユーノ君の子供を産んであげたい。そう言う感情もあるよ。でも…もう一つ目的があるんだ。
それが最初に言った復讐に掛かってくるんだよ。」
「い…一体…ど…どうやって復讐をするって言うんだ……。」
ユーノは恐る恐るそう質問する。どっちにしてもなのはは何かしらの手を使って
復習をする事に変わり無い。ならば…せめてどの様な手段で来るのか位知っておきたかった。
「ユーノ君と…あの女に思い知らせてやろうかな…って思ってね………。
同じユーノ君の子供でも………あの女が産み落としたクソガキなんかより………
この私…高町なのはが愛するユーノ君の為にお腹を痛めて…身を削って産んだ子供の方が…
ずっと…ずぅ〜っと素晴らしくて…優秀だって事をねぇ…。」
「!!」
ユーノはやっと理解した。なのはが言っていた復讐の意味を………。
正式にユーノと結婚したフェイト同様になのはもユーノの子を産み…
その子の方がフェイトの産んだ子より優秀だと言う所を見せ付け…
真にユーノの妻となるべき女性なのはなのはなのだと思い知らさせる事なのだろう。
「例え子供を産む機械って呼ばれたって構わないよ。子供を産む機械らしく…
私の子宮でユーノ君の子供を育てて……産んであげる。でもその為には
ユーノ君のお精子が必要だよね? だから頂戴? ユーノ君のお精子…沢山頂戴?」
なのはは笑みを浮かべながらさらに腰を激しく動かし始めた。
ユーノのモノと、それを包み込むなのはの膣が激しくこすれ合い…抜いては挿される。
それが何度も繰り返されるのだ。
「うわぁ! やめろ! やめてくれなのはぁぁぁ!」
「や〜だ! 私もユーノ君の子供産むんだも〜ん!」
ユーノが止めるように言っても…なのはは止めない。むしろ笑っている。
なのはは狂っていた。ユーノを愛し…フェイトを憎む余り………
この様な行動に走ってしまったのだろう。もはや狂っているとしか思えない。
「アハ! アハハハ! アハハハハハハハハ!! ユーノ君のお精子! ユーノ君のおせいしぃ!
ユーノ君のお精子沢山搾り取ってあげる! そして産むんだ! この世の誰にも負けない…
世界一素晴らしい……子供を…私が産んであげるんだぁ〜!」
「うわぁぁぁぁ!! やめろ! やめろ! やめてくれぇぇぇぇ!!」
「アハハハハハハ! やぁ〜だ!」
ユーノの悲痛の叫びと哀願も空しく…なのはは笑いながら腰を激しく動かして行った。
そしてユーノは精を徹底的にまで搾り取られた…………。

なのはに精を搾り取られる内に途中で気を失ってしまったのだろう…目を覚ますと
窓から朝日が差し込んでいた。しかしなのはの姿はいない。目的を果たして帰ったのだろう。
だが…疲れを残しながらも何とか無限書庫に出勤した後でユーノはある事実を聞かされる。
それはなのはが朝一番で管理局に辞表を提出し…何処へと立ち去ったと言う事だ。
無論その事実は忽ち皆で騒ぎとなった。管理局の誇るエース・オブ・エースの突然の退職。
なまじ名が広く通っているだけに…皆のショックは大きかった。しかも97管理外世界にある
海鳴の実家にも帰っていないと言うのである。ではなのはは何処へ行ってしまったのか…。
「まさか…これも………。」
ユーノは恐れた。なのはが管理局を辞めて…何処へ失踪した事も、彼女が言った復讐の為なのではと…
あえてユーノとフェイトの目の届かない遠くへ行き、二人に安心して子供を作らせ…育てさせる。
その後でなのは自身もまた何処かでユーノの子供を産み…育て…その子を持って復讐を成す。
それがなのはの目的なのではないかと……ユーノはそう考えるしか無かった。
「そんな…そんな…なのは…復讐なんて…寂しい事…やめて欲しい………。」
自分は取り返しの付かない事をしてしまったのだとユーノは自覚し…頭を抱えた。
しかし何をやっても全てはもう遅い。今やユーノはフェイトの夫なのだ。
願わくは……時の流れがなのはの心の傷を癒し……新たな幸せを掴んで欲しい……
今のユーノにはそう願うしか無かった。
が…時の流れとは残酷なのか…日に日になのはの事を思い出す事が少なくなって行った。
皆もまた最初の頃はなのはの行方不明にショックを受けていたのだが…
次第に最初の様な元の生活へと戻って行った。人とはそういう物なのかもしれない。

そしてあっという間に十数年の時が流れた…
桜咲く春真っ盛り。今日は時空管理局士官学校の入学式だ。
故に次代を担う若者達が続々と集まっていたのだが…その中に一人の少女の姿があった。
彼女の名は『ユイト=スクライア』その名の通りユーノとフェイトの間に生まれた娘だ。
母親の少女時代を思わせる長い金髪に、父親のそれを思わせる緑色の瞳を持った可愛らしい娘。
彼女もまた父と母の影響か…管理局へ入る道を選んでいたのである。
「私も父さんと母さんみたいに立派になれるか分からないけど…頑張る…。」
ユイトは静かに…しかし内には情熱を秘めて管理局士官学校へ臨んだ。

入学式も終わり、各新入生達は士官学校にいる際の宿泊に使われる寮へと入る。
そこでユイトは運命の出会いを果たす事になるのである。
それは相部屋である寮の部屋にユイトと共に生活する事になった一人の少女。
茶色い髪と緑の瞳を持ち…首には紐にかけられた赤い宝石を下げたユイトとは
また違った意味での可愛らしさを持った娘…。
「私はユイト=スクライア。これから一緒に頑張ろう?」
ユイトは軽く自己紹介し、相手の少女に握手をするべく手を差し出すが…
「スクライア…そっか…貴女が…。」
「どうしたの?」
「い…いや…何でもないよ。私の名前はゆのは…高町ゆのは。よろしくねユイトちゃん。」
「こちらこそ…ゆのは。」
ゆのはと名乗った少女は笑顔でユイトの握手に応じる。しかし…その内には何処か冷たさが秘められていた。

翌日から士官学校の厳しい訓練が始まり…一週間後のささやかな休日。
ユイトは久し振りに父親が勤務している無限書庫へとやって来た。
その時は彼女の父親であるユーノもまた丁度休み時間を取っている最終であった。
「お父さ…いやユーノ=スクライア無限書庫司書長…。」
「ハハハ…今は休み時間だからそんな堅苦しくしなくて普通に父さんで構わないよ。」
今は管理局士官学校生なのだからとユイトも緊張した面持ちで敬礼をし、階級で父を
呼んでいたのであるが…肝心のユーノはその堅苦しさに苦笑いしていた。
「それより…士官学校の方はどうかな?」
「やっぱり毎日の訓練はキツイよ。でも…とてもやりがいもあって楽しい。」
「そっか…。」
ユイトが管理局士官学校に入ると言い出した時はユーノも心配したが…とりあえずは
大丈夫そうでユーノも安心した。
「それに仲の良い友達も出来たんだ。」
「へぇ…どんな子なのかな?」
そこでユイトが携帯電話に保存したと思われるその友達の写真を見せた。
それは紛れも無く彼女が共に寮で生活する事になったゆのはの物である。
「高町ゆのはって言う名前でね…。」
「あ…この子は…。」
ゆのはの写真を見た瞬間…ユーノは凍り付いた。そして一度は失われていたかつての記憶が蘇る。
「(間違い無い…このゆのはと言う子はなのはの子だ…。なのはは復讐を諦めなかったんだ…。)」
ユイトが紹介した高町ゆのはと言う少女。瞳の色は違うが…紛れも無く昔の…
まだ子供だった頃のなのはそっくりだ。間違い無い。この子はあの時なのはが
ユーノに夜這いを掛けた後で逆レイプして産んだ子供。なのはは十数年の時の流れを
経てもなお心の傷を癒す事無く…ユーノの血を引く我が娘を復讐の為に送り込んで来たのだ。
今のユーノはそう悟るしか無かった…。
「どうしたの? 父さん。」
「いや…何でもないよ。」
ユイトに問われてユーノも少々慌てながらも平静を装うが…彼は考えていた。
「(もし彼女の目的が復讐だとするならば………。)」
そして直後に…ある光景が浮かぶ。それはゆのはがユイトを血祭りに上げる光景…。しかし…
「ゆのはってね、凄く良い人なんだ。」
「え?」
「実はこの間の休み時間の時にも……。」

数日前の昼休み中、ユイトは他の生徒に絡まれた事があった。
「お前の親って両方とも凄いんだって? 羨ましいよなぁ。おかげで苦労なんて無いだろう。」
両親が立派であるが故に…ユイトがこうして他の者から羨ましがられ…憎まれる事も
決して少なくは無かった。今までもこの様な理由で他の者から批判され…悩みの種だったのだが……
「そういう他人を馬鹿にする暇があったら自分の腕磨いた方が良いんじゃないかな?」
「あ…ゆのは…。」
ゆのははユイトを庇った。それどころか…まるで自分の事のように怒ってさえもいたのだ。
それには先程までユイトに絡んでいた者もコソコソと逃げ出してしまう。
「あ…ありがとう…ゆのは…。」
「気にしないでユイトちゃん。私はああ言う自分の努力もしないで他人を馬鹿にしさえすれば
良いって考えてる様な人が嫌いなだけだから…。」
「…………。」
ユイトはゆのはが頼もしく…同時に申し訳無く感じていた。

「そ…そんな事が…。」
ユーノには一体ゆのはの行った行為の意味が理解出来なかった。
そもそも復讐が目的でユイトに接近したと言うのならば…
態々助ける必要は無いはず。だと言うのに何故ユイトを庇うのか…ユーノも
内心驚いていたが……それでもやはり表面的には平静を装いつつユイトへ微笑みを向ける。
「そっか…良い友達なんだね。」
「うん。だから…私もますます頑張れそうだよ。」
そうして近況報告を終えたユイトは一度帰って行った。

その日の深夜、ユーノは一人無限書庫に残って書類の整理に勤しんでいた。
「ふぅ…やっと終わった。」
書類整理もやっと終わり、左手で右肩をきつそうに揉んでいたのであるが…
そこで突然背後から人の気配を感じたのである。
「誰かな? こんな時間に…。」
「こんばんわ…。ユーノ…お父さん。」
「!!」
ユーノは一瞬震えた。そして背後にいたのは紛れも無く…あの高町ゆのはだったのである。
「その反応…やっぱりお父さんも分かってるんだ。私が貴方の子供だって事…。」
「そ…それは………。」
その場から凍り付いた様に動けず…かすかに震えてさえいるユーノに対し
ゆのははにこやかな笑みをユーノへ向けていた。しかし…その奥には冷たい感情を秘めながら…
そしてゆのははゆっくりとユーノの背後から両肩に手を当てて言う。
「ユイトちゃんって…とっても良い子だね。魔法の方はまだまだだけど…。」
「そ…そうかな……。」
ユーノは苦笑いしながら答えるしかない。だがゆのははユーノの肩を優しく揉みながら続ける。
「お互いの誕生日を確認しあった後で初めて知ったんだけど…私の方が微妙にお姉さんなんだね。
つまりユイトのお母さんがユイトを産むよりも…私のお母さんが私を産んだ方が先だから…
と言う事はお父さんは私のお母さんの方と先にちぎってるって事になるよね……
なのに………どうして私のお母さんを捨てたの?」
「………。」
ユーノは答える事は出来なかった。正確にはゆのはが言っている事は間違い。
恐らくゆのはの母であるなのはは逆レイプの事を教えなかったのだろう。
本当にユーノの妻になるべきなのは自分だと心から信じていた彼女ならあり得る。
そして何よりも…今の彼女には何を言っても無駄だとユーノは分かっていた。
「………………。」
「ねぇ…どうして黙ってるのお父さん? 黙ってたら分からないよ。」
「………………。」
なおもユーノは黙り込んだまま。しかしそうすればゆのはも不機嫌そうに顔を近付けてくる。
これは非情に気まずい。何故か怖い。『実力』と言う点ならばユーノの方が遥かに
勝っているであろうが…何故か勝てる気がしない。そう言う恐ろしさをゆのはから
感じ取っていたのだ。故に…この気まずい空気を払拭する為に…ユーノは話題を変えて見た。
「そ…そう言えば…なのはは…君のお母さんは元気かな?」
「お母さんなら…もういないよ…。」
「え…。」
ゆのはの顔は急に暗くなり…ユーノも地雷を踏んだと悟った。そしてゆのはは言う。
「お母さんは女手一人で私を育てる為に色々無理もしたからね…。私にはそこを
悟らせまいと明るく…強気に振舞ってはいたけど…………………。」
「そんな…………。」
なのはが既にこの世にいなかった事はユーノにとってもショックだった。
つまり…なのはが亡くなった後…ゆのははずっと一人で生きて来た事になる。
そして彼女の首に下げられたレイジングハートは…なのはの遺品と言う事だ。
「お母さんはとっても厳しい人だったけど…今思うと感謝してるよ。
だって厳しく仕付けられたおかげで天涯孤独になってもこうして生きて来れたもの。
もしかしたら…お母さんはいずれこうなる事が分かってて私を厳しく育てたのかもね。」
ゆのはは明るくそう言い放つ。しかし…その内には何処か悲しさも秘められていた…。
「じゃあ…ゆのは…君はお母さんが天国に行った後も…僕達に復讐する考えは
改めてはいないと言う事かい?」
ユーノが恐る恐るそう質問すると…ゆのはは軽く頷く。
「うん…。だってお母さんにそう教え込まれて育ったし…何よりそれが私の存在意義だもん。
と言ってもお父さんが考えている様な卑怯な真似をするつもりは無いよ。お母さんは違っても…
一応姉妹だもんね。それにユイトちゃんとっても良い子だし…むしろ大好き。
だからユイトちゃんが困ってる時は是非助けてあげたい。けどその代わり…
私は常にユイトちゃんの一歩二歩先を行かせてもらうよ。それが私なりの復讐だから…。」
「…………。」
かつてなのはも似た事を言っていた。彼女の考えた復讐とは………
決して相手を傷付けると言う行為では無い。同じユーノの子供でも……
自分の産んだ子供の方が優秀である事を思い知らさせる。そう言った物だった。
そして今…ゆのはがやろうとしている事もまさにそれ。卑怯な事などせず…正々堂々と
常にユイトの一歩二歩先へ行く事によって…自分自身と母親であるなのはの
優秀さをユーノとフェイトに思い知らせる。それが彼女流の復讐なのだろう。
「もっとも…お父さんが私の事…お父さんの子供って認めてくれたら…
また話は違ってくるけどね…。それじゃあ私はそろそろ帰るよ。
もう夜も遅いし…明日からまた訓練もあるしね。だから…
次の休みの日にまた会いましょう? ユーノ…パパ…。」
最後だけ何故かユーノの事を『お父さん』では無く『パパ』と呼んだゆのはは
無限書庫を後にし…自らの寮へと帰って行った。

「……………。」
ゆのはが帰った後も…ユーノは暫しその場で黙ったままだった。
彼はその間ずっと考えていた。なのはの事を………
「なのは…君はそうまでして僕を……もはや目的と手段が入れ替わっているじゃないか……。」
なのはが考えた復讐はあくまでもユーノを手に入れる為の手段に過ぎなかったはずだ。
であるにも関わらず……その手段の為に………ゆのはを育てる為に……なのはは自身の命を捨てた…
これが目的と手段が入れ替わっていないとして何としようか………。なのはは…自分の死さえ
辞さない程にまで…ユーノを愛していたのか…ユーノにはそこが…心苦しくて……仕方が無かった。
「おねがいだ……復讐なんてやめて……自分の為に……自分の幸せの為に……生きて欲しい……。」
いくらユイトを直接傷付けないとは言え…復讐は復讐。ゆのはにはそんな復讐の為だけの
生き方なんてして欲しく無い…。事の発端であるユーノが言う立場では無いとは
分かっていても…そう願いたい。そう願いたかった…。

                  おしまい……



著者:◆6BmcNJgox2

このページへのコメント

ブラックな内容というか、ダークさがいいな。少数派の意見かもしれないけど。

0
Posted by なのはの演出やりたい 2013年05月18日(土) 01:10:47 返信

是非とも続きが見たい

0
Posted by a 2013年02月24日(日) 15:14:46 返信

なにこれ!?めちゃくちゃ怖いですけど。

0
Posted by 名無し 2012年07月17日(火) 09:03:34 返信

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