311 名前:なのは最後の魔法 1 ◆6BmcNJgox2 [sage] 投稿日:2008/05/22(木) 21:14:15 ID:3z6aqCxX
312 名前:なのは最後の魔法 2 ◆6BmcNJgox2 [sage] 投稿日:2008/05/22(木) 21:15:20 ID:3z6aqCxX
313 名前:なのは最後の魔法 3 ◆6BmcNJgox2 [sage] 投稿日:2008/05/22(木) 21:16:49 ID:3z6aqCxX
314 名前:なのは最後の魔法 4 ◆6BmcNJgox2 [sage] 投稿日:2008/05/22(木) 21:18:14 ID:3z6aqCxX

「やっぱりまた魔力が落ちてる…。それもレリック事件の後みたいな80%に減少した時の
騒ぎじゃない…もう40%にまで減少してる。このままじゃいずれなのはちゃんは
完全に魔法が使えなくなるかも…。もうリハビリでもどうにもならない…。」
「そうですか…。」
管理局の医務室でなのははシャマルからそう診断され、静かに頷くだけだった。

時は数日前に遡る。ある日突然なのはの魔力が徐々に低下し始めていたのである。
急激にでは無いが、本当に少しずつ少しずつなのはは魔力レベルが低下して行った。
確かにレリック事件の際にブラスターを使った後遺症でそれ以前に比べて80%に
魔力が低下した事があったが、今はそれ所の騒ぎでは無かった。
「皆には無理してはいけないってさんざ言っておいて…それなのに無理し続けた
ツケが回って来たのかな…?」
「なのは…。」
最終的には魔力が完全に失われるかもしれない…。その診断結果に顔を暗くする
なのはにフェイトは心配の眼差しを向ける。確かになのはは昔から無理をし続けていた。
そのせいで11歳の時に瀕死の重傷を負ったし、レリック事件の際にもブラスターによって
強引に力を引き出すと言った事をやった。その後もシャマルからのリハビリの勧めも拒否し、
普通に教導隊での教導を行って来たのだ。そのツケが回って来てもおかしくない。
今のなのはにはフェイトもどう励ましてやれば良いか分からない。しかし、先程まで
暗かったはずのなのはが急に笑顔になってフェイトの方をに振り返った。
「気にしないでフェイトちゃん。私は元々魔力を持たないのが当たり前の世界の人間。
むしろここまで頑張れた方が凄いんだから。さ〜て、完全に魔力が消えた後の身の振り方考えなきゃ!」
「あ! なのは…。」
なのはは笑顔で部屋から立ち去って行ったが…フェイトはやはり心配そうに見送るしか出来なかった。
「なのは…また無理して…。」
フェイトは分かっていた。フェイトの前では笑顔を見せていたが、本当は何時泣き崩れても
可笑しくない位にショックを受けていた事を……

「う…う……何で……そんな………。」
フェイトの考えた通りだった。自室に帰って一人きりになった時…なのははベッドに
倒れ込む様に寝転び、泣き崩れていたのだった。
「本当に魔法が使えなくなったら…私…どうしたら…。」
魔力が完全に失われた場合、もう教導官と言う仕事は出来ない。それに何よりも…彼女は
中学卒業と共にミッドに移り住んだ身。即ち出身である97管理外世界的には中卒と言う事になる。
それ故に今後一体どうしたら良いか分からなかった。
「う…う…う…う…。」
なのはは泣いた。泣いて泣いて泣き続けた。誰にも見せた事の無い程弱々しい本当の自分。
そして彼女は思い出す。自分に魔法の力がある事を知って、それ以後魔法を使って様々な事を
やって来た過去を…。辛く苦しい事もあったし、死にそうになったりもしたが…今考えて見ると
それさえも楽しい思い出だった。しかしもうそれも出来なくなる。今こうして泣き続けている間にも
なのはの魔力は減少し続けているのだ。そして一通り泣いた後で…なのはは立ち上がった。
「何時までも泣いてられない…どんなに泣いたって魔力は無くなるんだから………
どうせ魔法が使えなくなる定めなら…………いっその事…派手に有終の美を飾ろう!」
その時のなのはに涙は無かった。むしろ…笑顔さえ感じられていたのだ。

なのははどうせ魔力が消滅すると言うのならば、いっその事残った魔力を全て使って
最後に一発ド派手な魔法を使って有終の美を飾ると決めた。そして…それを見せる相手も
既に決まっていた。それは教え子のスバル達でも、親友のフェイト達でも無い。
なのはの幼馴染であり…なのはの魔法の原点であり…また基本を教えてくれた魔法の先生でも
あったユーノ。自分の最後の魔法は是非ともユーノに見て欲しかった。

一時して、ミッドの外れの何も無い荒野になのはとユーノの二人が立っていた。
「なのは…突然こんな所に呼び出して…何だい?」
疑問そうに訪ねるユーノに対し、なのはは笑顔で答える。
「ユーノ君も聞いてるよね? 私がいずれ魔法が完全に使えなくなるって…。」
「う…うん…話には聞いた…。」
気まずそうに答えるユーノだが、なのははやはり笑顔。
「そう。だから私考えたの。どうせこのまま魔法が使えなくなるなら、いっその事
最後に一発おっきな花火でも上げて…有終の美を飾ろうって。そしてそれは…
是非ともユーノ君に見て欲しいの。」
「え? 僕に…? な…何で…? そう言うのはフェイトとかヴィヴィオとか…
もっと相応しい相手がいると思うのだけど…。」
ユーノは名指しで指名された事に戸惑うが、なのははユーノを見つめ言う。
「ダメだよ! ユーノ君じゃなきゃダメ! 私をこの魔法の世界に引き込んだのは
ユーノ君なんだよ! だからユーノ君には…私の最後の魔法を見る権利と義務があるの!」
「うっ!」
ユーノは気まずくなった。確かになのはの言った通り、魔法の無い97管理外世界で
平和に天寿を全うするはずだったなのはを魔法の世界に引き込んだのはユーノの責任。
特に11歳の時になのはが生死の境を彷徨った時等、ユーノは罪悪感で頭が一杯だった。
だからこそ…今のなのはにはとても逆らえるはずも無かった。
「ユーノ君には感謝してるよ。ユーノ君と出会って…魔法を教えてくれたおかげで
フェイトちゃんやはやてちゃん…沢山の人に出会えたんだから。だからこそユーノ君に…
私の一番大切な人に…私が一番愛してる人に…私の最後の魔法を見て欲しい!」
「え!? 今さらっと凄い事言わなかった!?」
思わず言い返していたユーノだが、なのはは次の瞬間レイジングハートを起動させ、
バリアジャケットを装着していた。だがそれだけに留まらない。
「エクシードモード! ブラスター!」
俗に言うエクシードモード及びブラスターさえ掛けていたのである。
無論、それにはなのはの身体に多大な負担がかかる。彼女の魔力が減少したのも
これが原因なのだが…今のなのはにはどうでも良い事だった。どうせ黙っていても
魔力はいずれ無くなるのだから…

「ブラスター1! 2! 3!」
「あ…あ…あ…。」
なのははなおもブラスターのレベルを上げていく。それにはユーノも呆然とするしか無い。そして…
「ブラスターMAX! これがブラスターのさ…最強形態だよ……ユーノ君……。」
「あ…あ…あ…。」
確かにユーノも話には聞いていた。レリック事件でなのはが見せたブラスターも
なのはの力の全てでは無く、さらに上位の形態があると。現に今のなのはのバリアジャケットは
エクシードモードのバリアジャケットをさらに肥大化させた様な…まるで97管理外世界
日本の大晦日恒例の紅白歌合戦で小林○子が着る様な凄まじいとしか言い様の無い姿。
その姿は女神のようでさえあり…また魔女王のようでもあった。まさに最強形態…
そう言う事しか出来なかった。しかし、それだけやればなのはの身体にかかる負担は凄まじい。
「はぁ…はぁ…はぁ…ユーノ君…どう…? 凄いでしょ…。」
「なのは! あ…あまり無理しないで!」
別に魔法を使っておらず、ただ立っているだけだと言うのになのはの全身から汗が噴出し、
息も絶え絶えで苦しそうだ。それにはユーノも心配するのだが…
「ダメだよ! 今だけは無理させて! どうせ何もしなくても私の魔法はいずれ
全部無くなるんだから………だから最後の最後に…大きな花火を上げたいのぉぉぉ!!」
なのはは本当に苦しそうに…目から涙を流しながら叫んだ。そうしてまでなのはは
自分の最後の魔法をユーノに見せたかったのである。そしてなのははバリアジャケット同様に
凄まじいまでに巨大化したレイジングハートの先端をユーノへ向けた。
「だからユーノ君…私の最後の魔法……見てね?」
「み…見てねって…レイジングハートを僕に向けて何をする気なんだい!?」
これにはユーノも慌てた。どう見てもなのはの行動はユーノに対して攻撃魔法を
全力全開で撃ち出そうとしている様にしか見えない。だが…その通りだった。
「大丈夫だよユーノ君! 死にはしないし…ユーノ君なら耐え切ってくれるって信じてる!」
「え!? えええ!? やっぱり僕の事撃つのぉぉぉぉぉぉ!?」
ユーノは真っ青になり肝が絶対零度まで凍結した。なのはは本気でユーノを撃とうとしているのである。
基本形態でも十分凄まじいと言うのに、ブラスター最強形態の全力全開なんて想像を
遥かに超越している。そんな物をユーノにぶっ放とうとしているのだからユーノも慌てる他無い。
「ブラスターMAX…これを使わないに越した事は無い…そう考えてた…。
けど今だけは違う…。私が魔法と出会うきっかけをくれたユーノ君…
私に魔法の使い方を教えてくれたユーノ君…私が一番愛してるユーノ君に…
私の最後の魔法…今まで培って来た最高の魔法を見せる事が出来るから!!」
「な…なのは…落ち着いて…ね…こんなの…やめようよ…死んじゃうよ…。」
もうユーノの顔は恐怖で歪んでいた。これで失禁しない方がむしろ凄いと思える程である。
しかし…なのはは一切構わずに魔力のチャージを続け…
「行くよ! ユーノ君! これが私の最後の全力全開! ファイナルスターライトブレイカァァァァァ!!」
地上に巨大な恒星が現れた。そう表現せざるを得ない程の巨大な光が周囲を包み込んだ。

それから一時後…巨大なクレーターのど真ん中になのはとユーノがそれぞれ寝そべっていた。
「は…はは…生きてる……夢…じゃないよね…ね…。」
「だから言ったでしょ? 死にはしないって…。」
ユーノもとっさに防御魔法を展開していたとは言え、こうして生きている事が不思議な程だった。
だがそれでもダメージは多大。故にユーノは全身ボロボロの状態で倒れているのみ。
なのはもまたブラスター最強形態の負担により、その場から動く事が出来ずにいた。
「ねぇユーノ君…。私…これで完全に魔法使えなくなっちゃった。今まで本当にありがとう…。」
「なのは…。」
なのはが有終の美を飾った事にユーノも嬉しくある反面…寂しくもあった。なのはの言葉の一言一言が
別れの挨拶の様にも聞こえていたからだ。しかし…
「これからもよろしくね…。」
「え…。」
ユーノは呆然とするが…なのははユーノの手に優しく手を添える。
「ね…ユーノ君…。」
「う…うん…。」
ユーノは状況が良く理解出来なかったが…少なくともこれで別れでは無い事に安心した。
あくまでも魔導師としてのなのはの別れと言う事であって…一人の人間としてのなのはは
ユーノのもとを去る気は無かったのである。いや、むしろ…あの最後の魔法こそが
なのはなりのユーノに対するプロポーズだったのかもしれない…。

数年後、クラナガン構内に一軒の喫茶店が出来ていた。その名も『翠屋ミッドチルダ支店』
魔力完全消滅を理由に、惜しまれながらも退職したなのはが始めた喫茶店だった。
ただ、管理局を辞めて直ぐ始めたワケでは無い。皮肉な事に、もう魔導師では無くなったが故に
なのははユーノとあっさり結婚すると言う事になっていたりして、その後最初の半年は
専業主婦やっていたのだが…それに物足りなさを感じ、クラナガン構内に喫茶店翠屋ミッドチルダ支店を
開業したのであった。残念ながら海鳴の本家翠屋とは逆に野郎ばっか来る店になってしまったが
業務そのものには問題も無く、今のなのはは無限書庫司書長夫人兼喫茶店店長として
忙しくも楽しい毎日を送っている。とは言え、魔法の力は失ってもエースとしての風格までは
失われていない為なのか…『喫茶店界のエース』と言うジョークを言われる事もあった。

まあ何はともあれ…なのははこれはこれで楽しい日々を送っている。
「今思うと…魔法で空を飛んだり色々やってた事全てがまるで夢の様…。もう二度とそう言う事が
出来なくなってしまったのは寂しいけど……本当良い夢見させてもらったよ。これからは喫茶店店長
としての第二の人生…エンジョイさせてもらうからね………。」

                      おしまい


著者:◆6BmcNJgox2

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