740 名前:エリ×キャロ ショートショート [sage] 投稿日:2010/09/13(月) 23:56:21 ID:1/3o6RG6 [5/6]

彼女の口の中に青臭い臭いが広がった。
思わず吐き出しそうになる。
「ダメだよ、キャロ。そのまま、そのまま」
赤毛の少年騎士、エリオ・モンディアルの声には吐き出すことを許さない強い調子があった。
「ほら、しっかり味わって」
エリオが叱咤する。
アルザスの竜召喚士であるキャロ・ル・ルシエは、その青い目に涙を浮かべて、口の中の物を咀嚼した。
顎を動かす度に唾液と混ざり合い、耐え難い臭いが口の中にさらに広がる。
吐き気に耐えきれずに手で口を覆う。
その姿をエリオは硬い表情で見守っていた。
水蜜桃のような頬を涙が伝ってゆく。
「ううっ……」
必死の思いで口の中の物を飲み下す。
白くて華奢な喉がこくんと鳴り、青臭い臭いが胃の中に落ちてゆく。
「エリオ君、私、飲み込んだ……飲み込んだよ……ほら」
キャロは声を震わせてそれだけ言うと、エリオに向かって舌を突き出して見せた。
ピンク色の愛らしい小さな舌。
「キャロ、よく頑張ったね」
それを見てエリオはにっこりと微笑む。
「ね、もういいでしょう? 私ちゃんと飲み込んだよ……もういいよね、ね?」
そう言い募るキャロの声には媚びるような、怯えるような響きがあった。
エリオは何も言わず、首を横に振った。
「お願い、もう許して……こんなの嫌なの」
「さぁ、もう一つだよ」
エリオは無情にも、生煮えのにんじんのグラッセをキャロに差し出した


著者:107スレ729

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