[229] ゲンヤさんの日記 sage 2007/11/19(月) 17:05:18 ID:7ujhgqhp
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[235] ゲンヤさんの日記 sage 2007/11/19(月) 17:10:53 ID:7ujhgqhp

〇月×日

 『JS事件』も一段落着いたので、久しぶりにクイントの墓参りに行ってきた。
 まだまだ事後処理に追われる毎日だが、アイツの墓の前で手を合わせるとやっと『終わったんだ
な』という実感が湧いてくる。
 ここまで来るのにずいぶんかかっちまったし、八神や高町の嬢ちゃん、テスタロッサの嬢ちゃん
達に比べりゃ俺のやった事なんててんでたいしたことじゃねえんだが、それでも――

 仇は取ったぞ、クイント。
 ギンガもスバルもしっかりやってる。もう一人前の立派な魔導師だ。
 だから……安心して眠ってくれ。

 それから八神と再婚するつもりだという事も報告するつもりだったが、その八神んとこのシグナ
ムが一緒に居たので次の機会にする事にした。
 以前八神と付き合っていた男は浮気の『疑惑がある』という理由だけでシグナムに襲撃され、そ
れがきっかけで八神の元を去っちまったって話だ。八神はその経験を踏まえ、彼女には機を見計ら
って自分から伝えると言っていた。
 さすがに生身じゃSランクの相手はできねえ。
 八神に頼らなきゃならねえってのも情けねえ話だが向こうがそっちの方がいいって言うんだから
任せるしかねえんだろうな。



〇月■日

 スカリエッティのところにいた戦闘機人達の更正プログラムにギンガも参加する事になった。
 なんでも自分から立候補したらしい。自分と似た境遇のあいつらを放っておけなかったんだろ
う。まあアイツがやるって決めたんなら俺が口出しする事じゃない。もうそんな年でもないしな。
 本格的にプログラムが始まったら一度覗きに行ってみるとしよう。



△月×日

 更正プログラムが始まった。
 経過は概ね良好。ひとまず順調に進行している事でギンガも安心しているようだ。
 楽しそうにあいつらの事を話すギンガを見ていると、まるで昔のクイントを見ているようだと
思った。
 『母親』になったばかりのアイツもこんな感じだった。俺が仕事から帰るとその日ギンガとス
バルがどんな感じだったかいちいち全部話してくれた。やれスバルが転んで泣いただのギンガが
それを慰めてただの、内容は本当に些細な事だった。
 けど、そんな些細な出来事を俺に話して聞かせる時のアイツの顔は本当に楽しそうで、充実し
てるっつう感じで……俺は思わず「母親ってのはいいもんだな」と呟いていた。するとアイツは
「何言ってんの! アンタだって二人の父親なんだからね!」と言いながら俺にデコピンをかま
して、俺はその勢いでソファから吹っ飛ばされてそれをプロレスごっこと勘違いしたギンガがリ
ボルバーギムレットを撃ち込んで来たり……イカン、背中が疼いてきた。けど今考えりゃ機人で
もねえのにあのパワーは異常だったな。

 けどそんなアイツが逝っちまって、アイツが育てたギンガが今度は人を育てる側に回って……
まあなんと時が経つってのは早えもんだ。

 ……なんか今日の飯は辛えなあ。拭っても拭っても汗が止まらねえぜ。



△月☆日

 八神からタレコミがあった。
 なんでも六課のほうでギンガとカルタスの野郎が最近急接近しているらしい。

 カルタスは不遇な男だ。
 本編では青年男子枠を王道死亡フラグで構成されたヘリパイロットに奪われエロパロ板におい
ての登場率も非戦闘員のグリフィスに劣るっつうアレっぷりだ。
 CVが柿原徹也の時点で旧作からのファンにはたぶんモブキャラだろうなと予想がついていた
が実際空気だった。今これを見てる奴らの中にも「カルタスって誰だっけ?」と悩んでいるのが
一人や二人はいるはずだ。ちなみにもし本編をチェックするなら6話を見りゃ顔を確認できるぜ。

 って何書いてんだ俺は。
 だが奴は同時に優秀な男でもある。人柄もいい(たぶん)。ギンガが奴を選ぶってんなら喜ん
で祝福してやらなきゃならねえ。そう頭ではわかっているんだが……

 よく考えても見ろよ。
 ギンガやスバルはクイントと同じ遺伝資質を持つ、いわばクローンのような存在だ。そしてク
イントは俺の妻。
 という事はギンガとスバルは文字通り『俺の嫁』と呼んでも差し支えない。
 そんなギンガが他の男とニャンニャンしたりズッコンバッコンやってるなんざ考えただけで怒
りがこみ上げて来るぜ。世の父の避けれぬ道の一つだと今の俺には理解出来ない、もし本当にそ
んな事になってるとしたら誰であろうとアンインストールだ。

 八神には引き続き監視を頼む事にした。
 基本的にはこの手のノリが大好きな奴だ。確実にこの任務を遂行してくれるだろう。



△月〇日

 王大人(もといシャマル医務官)現場確認。
 よろしい、ならば戦争だ。



△月□日

 ……チキショウ、カルタスの野郎。
 男同士の決闘にデバイス持ち出してくんじゃねえよ。こっちは魔力資質ゼロだっつーんだ。
 デバイスの方もノるなよ。『ヤポー!』とか『エクスプロージオゥ!!』とかテンション高すぎ
だ。空気読めよ。
 カルタスも調子に乗ってドイツ語喋るな。声同じだろ。ハモるな。


 ギンガはまだ帰ってこない。 
 ……八神に電話でもするか。



△月@日

 朝起きたらエライ事になっちまってた。 
 見覚えのない部屋。
 ダブルベッド。
 隣に寝ているのは八神。その頬には涙の跡。
 そして二人とも裸。


 う…うろたえるんじゃあないッ!ミッド軍人はうろたえないッ!

 とりあえず昨日の記憶を蒐集。
 ちょいと八神と電話で話した後、居酒屋に集合しようという事になった。
 最初はしみじみと父親の悲哀なんぞを語っていたはずが、酒が入った事で日頃の色々なもんが爆
発して愚痴大会になった。
 俺は最近ギンガが俺のと洗濯物を分けて洗っている場面を目撃してしまった事やギンガとカルタ
スを巡る一連の事。
 八神はザフィーラが最近高町の嬢ちゃんが引き取った子供に奪われモフモフができなくなった事
や六課部隊長の立場上避けては通れぬ面倒な人間関係の事。
 二人ともさんざエキサイトしたまま居酒屋を出、そのまま何軒か店を梯子した。そして――

 俺と八神はまあ色々とあったが現在は恋人同士だ。
 俺は言うに及ばず八神ももう成人。セックスの一回や二回やったからといって法的にどうこうな
るわけじゃねえ。だがお互い忙しい事もあって、付き合い始めてからこれまで彼女とセックスした
事は一度もなかった。 

 ここで問題になるのは彼女の頬に刻まれた涙の跡。
 どう考えてもあれは泣いた跡だ。
 自分にSのケはねえはずだ。 
 愛の交歓に歓喜の涙を流したなど、と考えるのは虫がよすぎるってもんだ。
 俺のを入れた時に痛さのあまり流した? 可能性は無い事もねえ。が、こういう時の予想は大抵
一番最悪なものがビンゴと相場が決まってる。これは最悪かと言われるとそうじゃねえ。
 じゃあこの場合最悪なのはどんなケースかって話だが……


 無 理 矢 理 ? 


 ありえねえとも言い切れねえ。酔った勢いで……というのは十分に考えられる。
 これはもうダメかもわからんね。俺は溜息しか出なかった。
 八神と付き合うと決めた時、俺は『結婚するまでそういうのはナシだ』と彼女に言っていた。交
際している事実も周囲には伏せようと言った。
 理由は幾つかある。
 年齢差や立場の問題。それに俺自身未だに八神が俺を好きになる理由がわからなかった。
 八神は幼い頃に両親を亡くし一人きりだったという。ヴォルケンの連中と出会ってからは一人で
 はなくなったがそれでも女所帯、得られなかった父親という存在を俺に求めてるだけなんじゃね
えかという考えが消えなかった。
 八神はいつか自分の想い違いに気づくかもしれねえ。だから今はまだ、もしそうなった時にはス
ッパリと切れられる程度に二人の関係を留めておきたい。そう考えての言葉だった。そして八神は
俺の提案を呑んだ。
 

「どの口がそれを言ってんだ……ザマぁねぇ」
 意識する前に口を突いて言葉が出ていた。
 こんな事は若い頃確保したロストロギアにイソノという名の人物に会う度「野球やろうぜ!」と
言ってしまう呪いをかけられた時以来だった。そして、俺が声を出したせいで隣で寝ていた八神が
目を覚ます気配がした。
 
「……起きたか」
「……まだ寝てます」
「……起きてるじゃねえか」

 あはは、と八神が笑いながら起き上がる。

 ちっせえなあ――と思う。
 勿論胸の事じゃねえ。世に言う爆乳とはいかないがそれなりの物はついてる、ってそんな話じゃ
なく。
 エリート揃いの部隊を束ね、後手に回る対応ばかりが目立つ管理局の体質を変えるという途方も
ない夢を抱くには、その体はあまりにも小さいと思った。
 本局古代遺物管理部・機動六課部隊長という肩書きなんぞ所詮は飾りに過ぎない。生まれたまま
の姿でベッドの上にいる女を見るとそう思わずにはいられなかった。

「あの……」「そのよ」

 声が被った。沈黙。また数秒後口を開くと声が被る。しばらくはそんな感じだった。
 前から来る人間を避けようとすると、向こうも同じ方向に曲がって来た、あれと同じだ。こんな
とこで相性の良さを発揮しなくても良さそうなもんだがな。

「八神!」
「は、はい!」

 だが先に口を開くのは俺の方でなきゃならねえ。
 原因を作ったのが俺なら、相手に謝らせるわけにゃいかねえからな。

「昨日は……悪かった」
 八神の前に向き直り頭を下げた。本当なら土下座でもまだ足りないくらいだってのに、自分のく
だらないプライドが嫌になった。
「そんな謝らんといてください! 悪いのは私のほうやのに……」
 予想通りの反応。
 きっと今その顔を見れば真っ赤になっていたんだろう。コイツはそういう娘だ。人の事より自分
の事。
 研修生時代からそうだった、たぶんもっと前からそうなんだろう。だからここは引けないと思っ
た。
「いや、悪いのは俺だ。娘に男ができたくれえで正体を無くすほど酔っ払って結果はこのザマ……
言い訳する気もねえ」
「だから違うんですって!」
「違わねえって言ってんだ! 俺が嫌がるお前を無理やり……」
「へ!?」

 八神の顔が驚きの表情に染まる。その表情が意外すぎて、俺も思わず言葉を止めた。
 八神の唇が言葉を紡ぎ出す。

「ゲンヤさん……もしかして昨日の事覚えてはらへんのですか?」


 それから八神の話を聞いた時は、この驚きだらけの朝でも一番驚いた。
 結論から言うと、俺は八神をレイプしたりなどしていなかった。
 むしろどちらかと言えば逆のような……いや双方合意の上ではあるんだが。
 
 昨晩へべれけに酔っ払った俺達はそのまま勢いでホテルになだれ込んだ。 
 そして八神が俺に仕掛け、俺は最後まで抵抗したらしいが……結局は彼女を受け入れた。
 全てが終わった後俺はすぐに眠っちまったそうだが(情けねえが、そもそもこの時点で記憶が飛
んでいるのだからどうしようもない)事が済んで冷静になった八神はひどい自己嫌悪に襲われた。
自分の事をこれほど心配してくれる相手を押し切って……無理やりしてしまった。
 ようやく想いが通じて結ばれたのに、その形は最悪に近いものになってしまった。
 八神は泣いた。
 そうして泣いて泣いて泣き疲れて自分も眠りに落ち――

「んで、先に目を覚ましたのが俺ってわけかい」
「ほんまにごめんなさい……ゲンヤさんの行動は私の事を想ってくれての事やったのに」
「気にするこたねえさ」

 俺はわざとぶっきらぼうに答えた。
 真実はどうだかわからん。八神は俺を傷つけないよう嘘をついてるのかもしれねえ。
 だが確かめる方法がない以上これ以上追求したってどうしようもねえ事だと割り切った。付き合っ
てる男と女がホテルで寝た。それだけの事だ。
 それよりも俺は知らず知らずのうちに八神を追い詰めてた自分に腹が立って仕方がなかった。

「とりあえず、こうなっちまったからにはお前の家族にもきっちり説明しなきゃなんねえな。俺の口
から」

 こうやって日記に書いている今だから書ける事だが、俺が八神との一線を越えなかったのも交際を
秘密にするように言ったのも、八神のためじゃなく自分のためだったのかもしれない。
 文字通り親と子ほども離れた年齢。 
 おそらく周りからは色々言われるだろう。娘達や親戚一同にも迷惑をかけるかもしれねえ。
八神が若い出世株という事で勘繰りの目で見てくる連中も出てくるはずだ。
 そういうものを恐れて、いざとなればそれこそスッパリ切れられる関係にしておきたいってんな
らそれは保身と言われたって反論できねえってもんだ。

 だが、これは今だから言える事で実際はそこまでの思考に至る前に八神のもっととんでもねえ告
白が待っていた。
「……えと、ナカジマ三佐。それについて少しご報告したい事が」
「なんだ? 急に改まっちまって」
「三佐は魔導師と使い魔の間に生まれる精神リンクというものをご存知ですか?」
「ああ、確か主と使い魔は潜在的に精神の一部が繋がってて感情やら何やらを共有する事があるっ
ていうやつか」
「その通りです。実はですね……私とヴォルケンリッター、つまりシグナム達にもそれと似たよう
なものがあってですね」
「……ほう」
「……で、昨日は酔っ払ってたせいで、そのリンクをカットするのをうっかり忘れてまして」
「……つまり?」

『おはようございます。ゆうべ は おたのしみ でしたね』

 俺達はモニターの向こうの騎士達に土下座した。 



 とまあ今朝あった出来事はそんな感じだ。
 記憶を辿りながら書いてるもんだから多少台詞や細かい所に違いがあるかもしれねえが、だいた
いは合ってるはずだ。

 その後は……まあヴォルケンの連中とは今度改めて話をする事で合意し、俺と八神はそれぞれの
職場へ向かった。
 ギンガは俺が出て行った後家に帰ってきたらしい。
 家にも部隊にも居なかった事で多少訝しんでいるようだが、その理由を話す前に、まずはカルタ
ス絡みの事をなんとかしなきゃならねえ。なにせ今日一日、ギンガとは部隊でも家でもマトモに会
話できてねえからなあ。



おまけ
△月@日 早朝

「まさかザフィーラが狼の皮を被った狼だなんて思わなかったの。すぐ気づいて止められたのは不
幸中の幸いだったの」
「本当だね。この後はやてにもきちんと叱ってもらうからね」
「ザフィーラなんてだいきらい! ばかー!!」
「よくもボクの娘(予定)を……」
「全く、使い魔の風上にも置けないよ」

「な、何故こんな事に……」

「結界展開完了。思いっきりやっちゃっていいよ」
「逃げられないようにバインドもかけといたからね」
「ありがとう、アルフ、ユーノ。雷光一閃! プラズマザンバー……」
「ブラスター……リミット3!! スターライトオォ……」
「ヴィヴィオもやるー! すたーらいとぉー……」


「ブレイカーー!!」×3
「ておあああああああああぁあぁぁぁ!!!!」


 同日夜
「主、勘弁してください……」
「ごめんなぁザフィーラ、後で誤解は解いとくからな(とはいえゲンヤさんともようやく結ばれた
しモフモフも帰ってきたし……まさに『計画通り』っちゅうやつや)」

「……なあバッテンチビ、今お前のロードがすんげえ凶悪そうな顔になってたんだけど」
「この家で平和に暮らしたいと思ったら気にしたら負けなのですよ、アギト」
「うう、昨日の晩の騒ぎといい、とんでもない家に来ちまったよぉ……助けて旦那ぁ……」




著者:ておあー

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