56 名前:スカの野望は永遠なり(笑) 1 ◆6BmcNJgox2 [sage] 投稿日:2008/05/19(月) 22:14:56 ID:v5OOc7Xt
57 名前:スカの野望は永遠なり(笑) 2 ◆6BmcNJgox2 [sage] 投稿日:2008/05/19(月) 22:16:54 ID:v5OOc7Xt
58 名前:スカの野望は永遠なり(笑) 3 ◆6BmcNJgox2 [sage] 投稿日:2008/05/19(月) 22:18:20 ID:v5OOc7Xt
59 名前:スカの野望は永遠なり(笑) 4 ◆6BmcNJgox2 [sage] 投稿日:2008/05/19(月) 22:20:05 ID:v5OOc7Xt
126 名前:スカの野望は永遠なり(笑) 5 ◆6BmcNJgox2 [sage] 投稿日:2008/05/20(火) 21:37:22 ID:etwQE7wq
127 名前:スカの野望は永遠なり(笑) 6 ◆6BmcNJgox2 [sage] 投稿日:2008/05/20(火) 21:38:31 ID:etwQE7wq
128 名前:スカの野望は永遠なり(笑) 7 ◆6BmcNJgox2 [sage] 投稿日:2008/05/20(火) 21:40:01 ID:etwQE7wq
129 名前:スカの野望は永遠なり(笑) 8 ◆6BmcNJgox2 [sage] 投稿日:2008/05/20(火) 21:41:29 ID:etwQE7wq
130 名前:スカの野望は永遠なり(笑) 9 ◆6BmcNJgox2 [sage] 投稿日:2008/05/20(火) 21:42:43 ID:etwQE7wq
131 名前:スカの野望は永遠なり(笑) 10 ◆6BmcNJgox2 [sage] 投稿日:2008/05/20(火) 21:44:14 ID:etwQE7wq
132 名前:スカの野望は永遠なり(笑) 11 ◆6BmcNJgox2 [sage] 投稿日:2008/05/20(火) 21:46:44 ID:etwQE7wq

かつて管理局最高評議会の手によってアルハザード技術を持って作られたジェイル=スカリエッティ。
しかしそれも何十年もの昔の話であり、かつ彼にも老いはある。であるにも関わらず後に
JS事件もしくはレリック事件と呼ばれる事件を起こした彼は何十歳と言う高齢とは思えない程にまで
若々しい姿をしていた。それは何故かと言うと、実は管理局最高評議会の手によって作られた
スカリエッティは既に死亡しており、今のスカリエッティはそのオリジナルのスカリエッティ自身が
作り出したオリジナルの記憶と人格を引き継いだコピー。言うなればスカリエッティ・バージョン2と
言うべき存在であったのだ。だが、確かに人格と記憶といった要素はオリジナルのそれを引き継いで
いるが、身体的には赤ん坊からやり直しになる。それ故にスカリエッティ・バージョン2は
後にレリック事件を起こすまでの潜伏期間の間、赤ん坊から徐々に成長しながら時を待ったのである。

その際に彼は学校にも通った。彼の頭脳からして別に今更学校に通う必要は無いのだが、
いずれ管理局に対し反旗を翻すにはやはり社会に付いて学び直した方が良いと言う事もあったし、
単なる道楽と言った理由もあった。ただ流石に本名では色々と問題がある故、
学校に通う際は『ジェイ=スカル』と言う偽名を名乗った。が、学校での彼は孤独だった。
元々近寄り難い雰囲気を持っていた彼であるし、彼自身もまた友を作りたがる性格では無かった。
それ故に誰もが彼を避け、彼自身もまた一人でいる事が多かった。ただ一人の例外を除いて…。
その例外とはユーノ=スクライアと言う名の少年。最初会った時は
「(ユーノなんて…ウチのウーノと名が似てて紛らわしい)」
と言う認識を持っていたスカリエッティであるが…何故か不思議と彼とだけは気が合った。
一見しただけならば周囲の他の子供と大して変わらないと言うのに…何故かユーノとだけは
気楽に語り合える。そこが彼には分からなかった。だがユーノと話している時は何か楽しい。
そこだけは彼にも理解する事が出来た。それせいか…
「フフ…悪くない物だな…友達と言うのも…。」
「何を言ってるんだい? そんなの当然じゃないか。」
と、思わず呟きユーノに笑われると言った事もあった。普通ならば誰かに笑われた時点で
気を悪くしていた所だが、何故かユーノにだけは怒る気になれず、むしろ気持ち良かった。

スカリエッティとユーノは互いに自分の夢を語り合う事もあった。
「僕は将来考古学者になって、色んな世界に眠ってるロストロギアを発掘して行きたい。
ロストロギアは何も危険な物ばかりじゃない。人々の役に立つ様な太古の英知の結晶だって
沢山眠ってるはずなんだ。」
川原で夕日を眺めながらそう言うユーノに対してスカリエッティもまた自分の夢を語る。
「私は科学者になるよ。ロボット工学や生体工学…やりたい分野は沢山ある。このいずれも
危険と隣り合わせではあるが、上手く使えば人々の役に立つ技術だと私は考えている。
ロボット工学の応用で義手義足…人工臓器があれば、事故や病気等で体の何処かを失った
人でも助かるかもしれない。生体工学も…今はクローン等は人権等の問題で禁止されているが
臓器や手足と言った限定的な部分のみのクローンニングが可能になればそう言った事も
解決されるし、遺伝子操作によって砂漠でも育つような作物を作って食糧問題を解決する事だって
出来る。今は難しいが…いずれ実現させたいと考えている。」
「そうか…ジェイも色々考えてるんだね? お互い夢に向かって頑張ろう?」
スカリエッティは確かに広域時空犯罪者であるが、同時に科学者でもある。
確かに現時点での目的は古代ベルカの復興や管理局の壊滅等であるが、それにより
管理局に禁止された技術を解禁させた後で自らの技術の平和利用の研究をする…
といった事も見越していたのだった。

スカリエッティとユーノの友情はその後も続いた。しかし…ふとした事が原因で…
二人は仲違いしてしまう事になる。それは何故かと言うと…二人が15歳の時にそれは起こった。

とある喫茶店で、スカリエッティとユーノはテーブルを挟んで向かい合って座り、コーヒーを飲んでいた。
「それにしてもジェイ…そのサングラス…似合わないと思うのだけど…。」
「あ…そ…その…気にしないでくれ…。」
「そうかい?」
いい加減この頃になると、スカリエッティの顔は管理局によって指名手配されていた
オリジナル・スカリエッティの顔に似て来る。だがまだ管理局に見付かるワケには行かない故、
こうしてサングラスで変装していたのだが、ユーノに似合わないと言われる始末だった。
「所でユーノ…君は管理局で働いてると言っていたな?」
「うん。無限書庫って所でね。」
ユーノが管理局で働いていると言うのならしめた物。上手く管理局の情報を手に入れてやろう…
と言う発想も出来たのだが…今のスカリエッティにはそれよりまず先に知りたい事があった。
「実はな…最近…好きな人が出来たのだよ…。」
「え?」
彼に似つかわしく無く頬を赤くさせながら言うスカリエッティにユーノの顔に笑みがこぼれた。
「やるじゃないか! いやいや、ジェイは勉強とか研究とかにしか興味が無いと思ったら…
女の子を好きになる事もあるんだね!」
「せかさないでくれ! それに…まだ一方的な片思いだし…直接話した事も無いんだ。
ただ…管理局で働いていると言う事は分かってる。何とか君を通じて知り合えないかな?」
その時のスカリエッティは何時もと違った。ユーノが言った通り、科学者としての彼とは
また違う一面。まあ彼も男だと言えばそれまでなのだが、彼は本気だった。
「そうか。他ならぬ君の頼み。僕も可能な限り協力するよ。でもその子が一体誰なのかな…?」
まずそこが問題。スカリエッティが一体誰を好きになったのか知る必要があった。
「こ…この子なんだ。携帯でこっそり撮った写真ですまないが…。」
「どれどれ…?」
スカリエッティの見せた携帯電話の写真を興味深く見つめるユーノだが……
「うっ!」
それを見た瞬間ユーノの表情は気まずい物に変わった。それにはスカリエッティも一瞬驚くが…
「ど…どうしたのかね?」
「な…なのは…。」
その写真に写っていたのはユーノがかつてジュエルシード事件の際に出会った異世界の
少女・高町なのは。彼女が白いバリアジャケットを着用した姿だったのである。

「その子の名前はなのはって言うのかい? 可愛いよな〜。是非付き合いたい…何とかならないか?」
その時の彼は普段の冷たささえ感じる冷静な表情が別人の様に緩んでいた。
だが、スカリエッティがなのはに対し恋心を抱いていたのは事実だった。
確かに彼には既にナンバーズと言う女性戦闘員を配下にしており、またかつては
プレシア=テスタロッサと親交があったりと女性経験が無いワケでは無い。
しかし…それさえ一切無意味になる程…彼にとってなのはは美しかったのである。が…
「ごめん…ジェイ…これは流石に…無理な相談だよ。」
「え?」
顔を俯けて言うユーノに思わずスカリエッティは訪ねるが…
「何故ならなのはと付き合っているのは僕だからだ!!」
「何――――――――――――!?」
言ってしまった。正直な所、別にユーノとなのははただの友達同士で、別に付き合っているワケでは無い。
だが、他の男になのはを渡したくは無かった。それが例え親友のスカリエッティであろうとも…
故に…ユーノは嘘を付いてしまったのだ。

その時を境にスカリエッティとユーノの仲は険悪になり、合う事さえ無くなった。
そして仲直りしないまま数年が経過し、ついにスカリエッティはレリック事件を引き起こしたのである。

レリック事件も終盤に差し掛かった辺りで、スカリエッティの指揮する戦闘機人ナンバーズ&
各種ガジェット部隊がレリック事件捜査を担当していた機動六課を襲撃し、その施設等を壊滅させると
共に古代ベルカ再興の為に古代ベルカ聖王の遺伝子をクローンニングして作り出しすも
機動六課に保護されていた聖王の器、ヴィヴィオを奪取した。その事態に管理局も騒然とするのだが
スカリエッティは間髪入れず、かつ大胆にも地上本部に対し犯行声明を送ったのである。
その際に古代ベルカ再興や管理局の転覆等の目的を語るのだが………
『あ〜…それと……。』
「ん? 何か様子がおかしいぞ…。」
先程まであんなにも堂々としていたはずのスカリエッティが突然おどおどしくなり
地上本部会議場で犯行声明を見つめていた者達も疑問に思うのだが…スカリエッティは
頬を赤くさせながら言った。
『諸君等の所に確か高町なのはって局員がいただろう?』
「高町なのは教導官の事か? 確かにウチの局員だが……彼女がどうかしたのか?」
スカリエッティの犯行声明に対して応対を行っていた一人の局員が訪ねるが…
スカリエッティの顔はますます赤くなり、やはりおどおどしながら言う。
『か…彼女の引渡しも…よ…要求する…。』
「何故だ!? 何故彼女を名指しで指名する!?」
『良いから引き渡すんだ! 分かったな!!』
そこで通信が切れた。その時には最初の頃の威風堂々とした悪の科学者の姿は無く、
一人の男としてのスカリエッティの姿があった。

ユーノと仲違いした後もスカリエッティはなのはを諦めたワケでは無かった。なおかつ、なのはが
管理局でエース・オブ・エースと称えられていると言う話を耳にした事も相まって、
なのはを想う心はますます膨れ上がり、古代ベルカ再興や管理局壊滅とはまた別に
『高町なのはを自分の妻として迎える』と言う目標を抱く様になったのだ。
その際のシチュエーションを妄想し、彼は何度抜いた事か。
確かに彼はプロジェクトFと言うクローン研究を行ってきた。彼自身もまたクローンである。
そして彼の尖兵であるナンバーズの胎内にもまた、自分に何かが起こった時に備えて
自らの人格と記憶を引き継がせたクローンを仕込ませている。だが…それ故だろうか…
クローン故に…普通の人にとってはどうと言う事の無い自然の摂理によって子孫を
残すと言う行為に憧れていたのである。もっとも…そう考えるようになったのは
なのはに恋をした事がきっかけだが…そんな事はどうでも良い。スカリエッティは
何としてもなのはを妻として迎え、子供も沢山作って古代ベルカが再興され管理局が壊滅した
新しい時代を幸福に生きて行きたいと心から願った。

といっても、管理局は決してなのはをスカリエッティに引き渡すマネはしなかった。
古代ベルカの再興や管理局転覆の方はともかく、なのはの引渡しに関しては
意図が理解出来なかったし、何より時空犯罪者に屈しないと言う意思表示でもあった。

一方本局の無限書庫にて…一人の男が大きなショックを受けていた。
「そんな! あのジェイル=スカリエッティの正体が…ジェ…ジェイなんて!!」
ここで初めてユーノは現在は仲違いしてしまっているが、幼き頃から青年期にかけてを
共に過ごした親友であったジェイ=スカルの正体がジェイル=スカリエッティである事を知るのである。
「そんな…そんな…どうして…………。」
ユーノはかつてジェイ=スカルと名乗っていた頃のスカリエッティとの思い出を思い出す。
それ故に…彼の正体が広域時空犯罪者であった事が信じられなかった。

レリック事件の進展により、聖王の器ヴィヴィオの力によって聖王の揺り篭が浮上し、
それを食い止める為管理局から多くの武装局員が出動し、各地で激戦が繰り広げられた。
無限書庫においても、司書長のユーノに率いられた司書達が古代ベルカ時代の文献を
探し出し、聖王の揺り篭の構造に関しての調査をすると言う形での支援を行った。
そして、何とか聖王の揺り篭の構造に関して前線への報告を済ませ、無限書庫として
やるだけの事をやり後は前線の皆がどれだけ頑張れるか祈るのみだったのだが…
そこでユーノが立ち上がって出口へ走った。
「司書長何処へ行かれますか?」
司書の一人が尋ねるが、ユーノは振り返らぬまま…
「ごめん…行かなければ…どうしても行かなければならないんだ…。」
そう言い残し無限書庫を後にした。ユーノが向かう先はスカリエッティ。
一度仲違いした仲だが、かつては親友でもあった。それ故に一度スカリエッティと話をする。
とにかく今はそうせずにはいられなかった。



聖王の揺り篭攻略戦はさらに進展し、別所で戦っていたナンバーズは
機動六課で鍛えられた若手魔導師の手によって敗れ、さらにはスカリエッティの
秘密研究所にまで管理局に入り込まれ……
「ジェイル=スカリエッティ! 貴方を逮捕します!!」
と、時空管理局機動六課のフェイト=T=ハラオウン執務官の猛攻により
スカリエッティもついに逮捕………と思われた。
「こ…これは…人形!?」
信じがたい事だが、先程までフェイトが追い詰めていたスカリエッティは
スカリエッティそっくりに作られた人形だったのである。
「じゃ…じゃあ…本物の…本物のスカリエッティは一体何処に…。」
フェイトは呆然と天井を眺めるしか無かった。

一方その頃、聖王の揺り篭内部では聖王として覚醒したヴィヴィオとなのはの激闘が
繰り広げられていた。かつてあらゆる世界に敵無しと言われた古代ベルカ聖王の力を持つ
ヴィヴィオの前に流石のなのはも大苦戦。だが自らに多大な負担をかけると言うリスクと
引き換えにした魔力増幅ブラスターによって何とか勝利し、ヴィヴィオを聖王の呪縛から
解き放つ事に成功していた。しかし…………
「素晴らしい! 聖王さえ屠るとは…やはり君こそありとあらゆる世界に並び立つ者の
存在しない究極の女性! ますます君が欲しくなったぞ!」
「す…スカリエッティ!!」
何と言う事か、なのはの目の前にスカリエッティその人が姿を現したのである。
それにはヴィヴィオも思わず泣きそうになりながらなのはの後ろに隠れる始末。
だが、スカリエッティは構う事無くなのはへ近寄るのである。
「フ…フフフ……高町なのは君…これで私の目的が達成される…。」
「な…古代ベルカの再興と管理局壊滅が目的じゃなかったの!?」
思わず訪ねるなのは。が、スカリエッティはやはり構わず答えた。
「確かに科学者としてのジェイル=スカリエッティの目的は古代ベルカ再興と管理局体制の打破だったさ。
しかし、その後も人の世は続いて行くのだ。そう、古代ベルカが再興され、管理局体制が崩壊した
後の世界において生きる一人の男としてのジェイル=スカリエッティの目的は……高町なのは君…
君を我が妻とし、永遠の伴侶として共に生きようではないか!」
「なっ!」
何かいきなりプロポーズされて思わず顔が赤くなるなのは。
「ふっふざけないで! 誰が!」
そりゃなのはだっていきなりこんな時空犯罪者と結婚しろと言われたって嫌な物は嫌だ。
しかし、スカリエッティにはその様な事は通じない。

「フフ…どの道この聖王の揺り篭によって管理局は壊滅するよ。そうすれば君も失業してしまう。
しかし私と結婚すればそこは無問題。老後も安心。どうだ? 悪い話では無いだろう?」
「だから嫌な物は嫌だって…。」
ヴィヴィオを連れ、後ろに下がろうとするなのはの手をスカリエッティは勢い良く捕まえる。
普段のなのはならすぐに避けられたのだが…聖王化したヴィヴィオとの死闘で疲弊し、
かつ元に戻ったヴィヴィオも守らねばならない今のなのはは残念ながら
スカリエッティから逃げる事は出来なかった。
「裏切り者扱いされてしまうのが嫌と言う事か? そこも大丈夫だ。勝てば官軍と言う言葉もある。
つまり勝利者こそ正義なのだ。今の内に私の妻になっていれば、管理局壊滅後の世界で
むしろ正義の勝ち組として君臨する事が出来るのだぞ?」
「だから嫌な物は嫌なの!!」
スカリエッティは嫌がるなのはの唇を無理矢理奪おうとしたのだが…その時だった。
「ちょっと待ったぁぁぁぁぁ!!」
「!?」
突如として何者かが乱入して来たのである。それは何と…ユーノだったのである。
一体どうやって聖王の揺り篭に侵入したのかは分からないが、ユーノがそこにいたのだ。
「ユーノ君!?」
「ジェイ…君はどうしてこんな事を……。」
なのはを心配したいのは山々だが、今はそれ以上にスカリエッティの事を気にかける
ユーノはスカリエッティへ歩み寄るが…スカリエッティは不敵な笑みを浮かばせた。
「そうか…やはり君とは戦わねばならぬ運命だったか…。君は良い友人だったが…
君を倒さない限りはなのは君を手に入れる事は出来ない…。ならば私は戦う!
行くぞユーノ=スクライア!」
「待て! 待つんだジェイ! 僕はただ君と話を…。」
「え!? え!? 友人って!? え!?」
ユーノをまるで親の仇のごとく襲い掛かるスカリエッティに慌てるユーノだが、
なのはもなのはで状況が読めず困惑する。
「行くぞ! ホアタタタタタ!!」
「まっ! 待て! 待つんだジェイ!!」
まるでキャラが変わったかの様に拳法映画みたいな攻撃を仕掛けるスカリエッティと
慌ててそれを逃げながら回避するユーノ。まあ双方とも戦士では無い故、戦いのプロの
なのはからすれば低レベルな争いであったのだが…不思議と二人の戦いに介入出来なかった。
いや、介入してはいけない何かを感じていたのだ。

「なのは君は渡さん! 高町なのは君は私の嫁ぇぇぇ!!」
「ジェイ! もしかして君は…まだ諦めて無かったのかい!?」
ここでやっとユーノもスカリエッティがユーノを攻撃する理由がなのはを手に入れる為と
理解するのだが、やはり逃げ一辺倒なのは変わらなかった。しかしそれでもユーノは
スカリエッティとある事を話したかった。
「ジェイ! これは一体どう言う事なんだい!? 君は以前言っていたじゃないか!
ロボット工学や生体工学を人々の役に立てたいと言っていたのは嘘だったのか!?
それが何故時空犯罪に手を染めるなんて事に…………。」
「今もその夢は持っているさ! しかしそれを成し遂げるには管理局は邪魔なのだよ!
ロボット工学も生体工学も何もかも…魔法第一主義な管理局のせいでどれもまともに
研究さえ出来ないでは無いか! だが今はどうでも良い事。今ここにいるのは古代ベルカ再興と
管理局崩壊を望む科学者では無くお前を倒してなのは君を手に入れようとする一人の男だ!
それに君だって考古学者になって人々の役にも立つロストロギアの調査をやりたいと
言っておきながら無限書庫とやらに引きこもって本ばかり扱っているではないか!」
「くっ! やっぱりやらなければならないのか!?」
今のスカリエッティには何を言っても無駄だった。今の彼はかつてユーノの親友だった
ジェイ=スカルでは無い。管理局に反旗を翻し、さらになのはを自分の物にしようと企む
悪の科学者ジェイル=スカリエッティなのだ。そうと分かればユーノも心を鬼にし…
ついに攻勢に出た。と言ってもなのはからして見れば低レベルな争いなのは変わらないのだが
それでも介入してはいけない雰囲気は依然として変わらず、ただ見守る事しか出来なかった。
「チッ! やるでは無いか!」
ユーノの攻勢にスカリエッティは思わず舌打ちをする。と、その時…彼はある事を耳にした。
「なのはママ〜怖いよ〜。」
「大丈夫。大丈夫だからね…ヴィヴィオ…。」
「!?」
ヴィヴィオがなのはの事をママと呼んでいた。確かにそれ以前にもヴィヴィオはなのはの事を
ママと呼んでいたのを思い出し、スカリエッティの顔に笑みが浮かんだ。
「ハッハッハッ! この勝負私の勝ちだ!」
「何!?」
「考えても見たまえ! ヴィヴィオを作り出したのは私だ! 言うなれば私はヴィヴィオの父だ!
そしてそのヴィヴィオはなのは君の事をママと呼んでいる。それが何を意味するか分かるか!?
そう! つまりなのは君はやはり私の嫁だったんだよ!! (キバ○シ風に)」
「ふざけるな!!」
M○Rっぽく論じていたのも束の間、ユーノのみならずなのはにまで否定されてしまった。
そしてヴィヴィオも…
「あの白衣のおじちゃん…ヴィヴィオにいっぱい酷い事したからきら〜い…。
でも淫獣のお兄ちゃんは大好き! エッチだけど凄く優しいもん! この間も一緒に
お風呂に入ったし……淫獣のお兄ちゃんがパパになってくれたら嬉しいな〜。」
「い…一緒にお風呂……一体どう言う事かな…ユーノ君…。」
「あ…。」
ヴィヴィオにしてみれば悪気の無い言葉だったのだが…なのはとユーノにしてみれば気まずかった。

「ち…違うよ! あれは僕が風呂に入ってた時にヴィヴィオの方が突然入って来て……。」
「ふんふんそれで…?」
ユーノは慌てて状況説明を行うが、なのはにはただの言い訳にしか聞こえていない。とその時…
「隙あり!」
「うわ!」
間髪入れずにスカリエッティが攻撃して来ており、ユーノは思わずかわした。

その後もユーノとスカリエッティの死闘は続いた。だが…
「フフフ…ユーノ…確かに君も良く戦った。しかし私には勝てない。何故なら私は………
かつて最高評議会のメンバー達がアルハザード技術を使って作り出した超天才児だからだぁぁぁ!!」
「んぉ…。」
ついにスカリエッティのクリーンヒットがユーノの腹部へ決まり、ユーノは思わず腹を押さえて倒れ込んだ。
「どうだね? 君の様な凡人が私に勝つ事もなのは君を物にする事も不可能なのだよ…。」
腹を押さえて蹲るユーノを見下ろしながらそう言うスカリエッティ。
確かに彼は最高評議会がアルハザード技術と使って天才児として作り上げた存在であるが、
あくまでも科学者と言う分野での天才児であって、決して喧嘩が強いワケでは無い。
それでも天才児と言う肩書きが彼を支えているのは間違い無いのだが…そこで…ユーノが立ち上がった。
「ふふふ…その言葉…一体誰に向かって言っているのかな?」
「何!?」
「君がアルハザード技術とやらによって誕生した人工の天才児ならば……僕は放浪の
名門一族スクライア一族……の中において千年に一度生まれると言われる伝説の司書長!
スーパースクライア人だ!!」
「意味わかんねーよ!! ってんご!」
今度はユーノの拳がスカリエッティの腹部に命中し、スカリエッティが腹を押さえ倒れる番だった。
スーパースクライア人…そんな伝説は聞いた事無いし、そもそも伝説の司書長と言うのも意味不明だ。
しかし、自身をそう思い込ませる事によって『天才児』にも負けない力を発揮させている事は間違い無かった。
「どうだい? これで勝負は五分五分だよ。」
「ふ…フフ…面白い…。」
この後も激闘は続いた。双方共に天才だとかスーパースクライア人とか偉そうな事を言っておいて
中々低レベルな戦いだったのだが…それ故に実力は拮抗しており、中々決着は付かない。
既に二人は傷だらけ。顔なんかもボコボコの状態だった。なのに二人は戦いをやめないのだ。

「な…なのは君は私の物だ! 聖王の揺り篭で管理局を崩壊させた後の世界で………
何処でも良い…何処か小さな教会で…………私達は結婚式をあげるのだ…………。
そしてその晩の初夜……夜のベッドで……私となのは君は身を交わらせる……。
獣の様に激しく愛し合い………やがてなのは君は私の子をその身に宿し……産む。
その後も沢山子供を作って…皆で幸せに暮らして行くのだ………………。」
「そ…そんなの嫌だよ! 誰が時空犯罪者の子供なんか!!」
スカリエッティはユーノと激しい殴り合いを繰り広げながらも必死にこれからの
人生計画を語っていた。まあ速攻なのはに拒否されていたが。さらに…
「ふざけるなぁぁぁぁ!! なのはは僕の嫁なんだよぉぉぉぉ!!
魔法の無い管理外世界で平和に暮らし…そこで天寿を全うするはずだった
なのはを魔法の世界に引き込んだのはこの僕だ! だからこそ僕には責任がある!
確かに僕の力は今のなのはにして見れば高が知れるかもしれない……。しかしそれでも…
それでも守って行きたいんだよ! 確かにジェイ…君と違って僕は明確に愛するだとか
そう言う感情を持っているかは分からない…でも…なのはは渡せない! 渡せないんだよぉぉ!!」 
「ユ…ユーノ君…?」
なのはの頬は思わず赤くなった。だがユーノもまた必死だった。確かに自分にとってなのはは
ただの友達に過ぎない。しかし…だからと言って他の男になのはを渡したくは無かった。
確かに最初はジュエルシード事件の際にたまたま出会っただけの関係だったのかもしれない。
だがその後で一緒に生活したり…共に戦ったり…もはや掛け替えの無い人になっていた。
故に他の男に取られるならいっそ自分がなのはを手に入れる…そう考えるようになっていたのだ。
その直後だった。二人の拳が同時に互いの頬へ叩き込まれた。つまりクロスカウンターの形となり、
二人は同時に倒れ込んでいたのであった。
「……………………。」
「……………………。」
二人は動かない。もはや二人の体力も気力も限界…と思われていたのだが…
そこでスカリエッティが立ち上がったでは無いか。これにはなのはも絶望する。
「ふ…ふふ………こ…これでなのは君は……私のよ………。」
彼の言葉はそこまでだった。そして再び倒れ込み…すれ違う様にユーノが立ち上がった。
「なのはは…高町なのはは僕の嫁ぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
ユーノの勝ち誇る様な叫び声は聖王の揺り篭全体に響き渡ったと言う。

その後、まあ色々あってユーノ達は全員脱出。スカリエッティ一派は全員逮捕。
そして聖王の揺り篭も管理局艦隊によって轟沈された。レリック事件はこれにて終了。
事後処理等も終わった後で…なのはとユーノは一つの小さな部屋の中にてテーブルを
挟む形で向かい合って座っていた。
「ユーノ君が私に内緒でヴィヴィオとお風呂に入ってた事だけど〜……。」
「そ…それはあの時言った通りヴィヴィオの方が一方的に…。」
気まずい顔で言い訳するユーノだが、なのはの顔は厳しい。
「確かにヴィヴィオに問いただした所…ユーノ君の言った通りだったけど…酷いよね…。
別に家族でも何でもない小さい女の子と一緒に入浴する男の人なんて……最低だよ…。」
「はい…。」
ユーノは気まずい顔で頷くしか無かった。これでもう二人の仲も終わりか………
恋仲に発展する事はおろか友達でさえなくなるのだろうと…ユーノは考えていた。
「ご…ごめん…なのは…。」
「うるさい! もうユーノ君なんか友達でも何でも無いよ!!」
「うっ!!」
やはりユーノの思った通りだ。これで完全に絶交。もう終わった…。
しかしそこでなのはは一枚の紙を差し出す。それは何と婚姻届………
「でも……責任は取ってね……。」
「え……。ちょっと待って…絶交じゃないの?」
ユーノは状況が理解出来なかった。絶交を言い渡されたのに何故婚姻届が出てくるのか…。しかし…
「何言ってるの? ユーノ君…。私絶交なんて一言も言ってないじゃない。」
「でもさっき友達でも何でも無いって………。」
「うん。確かにそうだよ。もうこれから私とユーノ君は友達じゃない。だってこれから結婚するんだよ。
夫婦になってまで友達だなんてどう考えても変でしょ?」
「え……………。」
ユーノは絶句した。確かになのはの言っている事も間違いでは無いが…やはり実際言われると
ショックは大きい。しかしなのはは構わずに婚姻届をユーノの顔に近付け…
「責任………取ってね………あ…な…た…。」
「はい………。」
ユーノは気まずい顔で頷くしか無かった。

間も無くしてなのはとユーノは結婚した。が、ほぼ時を同じくして獄中でスカリエッティが
謎の死を遂げると言った事件も発生した。しかし、その事件も前述したなのはとユーノの
結婚のめでたさの影に隠れ、直ぐに人々の記憶から消えて行った。

だがこれでスカリエッティの野望が完全に潰えたワケでは無かった。
何故ならば…こう言う事態に備え、スカリエッティは管理局さえ感知しない別所に
秘密研究所を作り、そこで自身の人格と記憶を引き継いだコピーを一つセットしていたのだ。
そう。それこそ獄中のスカリエッティが謎の死を遂げた原因。後の事をそのコピーに任せ
一からやり直す気でいたのだった。

それからさらに数年後の春。その日はミッドのとある小学校で入学式が行われていた。
そこでこれからの自分達の運命さえ知らぬ二人の男女が邂逅を果たす事になる。
「私、ゆのは=スクライアって言うの。よろしくね?」
「名はジェイ=スカル………。」
ゆのは=スクライアとはなのはとユーノの間に生まれた子供であり、そしてジェイ=スカルとは
スカリエッティの記憶と人格を引き継いだコピー。言うなればスカリエッティ・バージョン3の
世を欺く為の偽名であり、二人はこの出会いをきっかけとしてとても仲の良い友達になる事となる。
「友達とはやはり良い物だな…。」
「何言ってるの? そんなの当然じゃない。」

歴史は繰り返す? それとも………

                   おしまい


著者:◆6BmcNJgox2

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