86 パンニーSS クロフェ族エリオ科 sage 2008/04/19(土) 07:21:55 ID:pj7OfLwv
87 パンニーSS クロフェ族エリオ科 sage 2008/04/19(土) 07:27:03 ID:pj7OfLwv

 機動六課が解散して数年後。
 自然保護部隊が駐留する施設でのことである。


 エリオはぼんやりとベンチに座り、ところどころ染みがついている老朽化した壁を見ていた。
 自然保護隊の駐屯地には風呂が一つしかない。
 キャロと自分たちの様子を身に来たフェイトが先に入っているところだった。
 今何時だろうと時間を確認しようかとしたところで、待っていた二人の声が聞こえた。
「エリオくん、お風呂あがったよ」
「うん、わかった。随分早かったね」
「いいお湯だったよ。エリオも一緒に入ればよかったのに」
 フェイトとキャロに声をかけられ、エリオは雑誌から顔を起こして苦笑した。
「もう子供じゃないですから、それは勘弁してください」
「うん、わかった。また後でね。最近あまり会いにこれなかったから、ゆっくりお話したいな」
「はい、僕も楽しみにしてます」
 湯上りの二人を見送って、エリオは出来るだけ早めにすませようと思いながら風呂場へと向かった。





 脱衣所に入ると熱く湿った空気が充満していて、先に入った人の残り香もその中に溶けていた。
 いつもの匂いとは少し違う。
 フェイトが入ったからだと思うと、こそばゆいものがあった。
 今日一日来ていた服を脱ぎ捨てて脱衣籠に入れようとしたところで、底に黒い布切れが落ちていることに気づいて取り上げる。
 女性用の下着だった。
「うわっ」
 思わず、持っていた手を遠ざけてしまった。
 こんなところを誰かに見られたらと、思わず辺りを見渡した。
 幸いなことに誰もいなかった。ほっと一つ、息を吐く。
 下着は黒いもので、控えめにレースでラインが入ったものだった。
 誰のものであるかは、サイズと色でフェイトのものなんだとなんとなくわかってしまう。
 気づいてしまうと、下着から手を離すことは出来なくなってしまっていた。
「何をやってるんだ、僕はっ」
 自分自身を叱責してみても、どうにも変な気分が収まらない。
 じっくりとフェイトの女を覆っていた下着を見てみたいという気持ちは加速していく。
「何を考えてるんだ……」
 自分がどうしようもない変態にしか思えなかった。
 騎士どころか、ただの変質者に自分は落ちてしまっている。
 保護者の下着に欲情するなんて、尋常じゃない。
「それに……」


 来月、フェイトさんは結婚するのだから。



 エリオはぎゅっと唇を噛みしめた。

 相手は以前会ったことのある、義兄のクロノ・ハラオウン。
 フェイトの恋人のポジションに収まっている彼が羨ましくてしょうがなかった。記憶に
残る、機動六課として海鳴に行ったときに見たフェイトの裸が嫌でも浮かんでくる。
 あの姿のフェイトに彼は堂々と会うことを許されているのだ。
 それに比べて、こっそり置き忘れた下着を握り締めることしか許されていない。
 惨めだった。
 提督として働いている、クロノの精悍でストイックな横顔が思い出される。
 なんで自分の想いは成就しなかったのか。そんなことは決まっている。脱ぎ捨てられて
いる下着から手が離せないような変態だからだ。きっとそんな自分のことをフェイトは知
っていたに違いない。死にたい気分だった。
 自分なんて消えてしまえばいい。騎士を名乗れるような高尚な人間じゃなかったんだ。
 どうせここまで落ちてしまっているのだ。もっと下衆な人間にまで落ちても大差はない
だろう。
 エリオは改めて、フェイトの下着に目を向けた。欲望に素直になることにした。
 匂いを嗅いでみると、汗の匂いと今までかいだことのない匂いがする。
 これが女性の匂いなのだろうか。
 秘密の花園を掻き分けながら進む犬にエリオはなった。貪るように下着の匂いを嗅いだ。
 むくむくと猛烈な勢いでエリオの肉竿が立ち上がる。
 エリオは最近になって精通を経験し、自慰を覚えた。
 視界には下着の黒しか見えない。
「フェイトさん……」
 鼻を擦りつけた下着の感触はシルクで優しかった。
 名を呼びながら、エリオは男性自身をしごいた。
 肉槍は熱を持っていて、手で握っていると熱いくらいだった。
「どうして僕じゃだめなんですか」
 クロノとフェイト。二人は年齢差がある上に、本来ならば兄と妹という結ばれない関係
だった。
 そんなところはフェイトと自分も似ていた。悲しいことに似ていた。
 違うのは、フェイトはクロノと結ばれて、自分は選ばれなかったという事実だけだ。年
齢差とか家族の間柄などは、相手が同じの条件のクロノだと言い訳にはならない。
「フェイトさんを守りながらずっと一緒にいたかった……」
 下着を堪能しながら、機動六課に入隊する前のフェイトと一緒にお風呂に入っていたこ
とを思い出す。フェイトの裸が脳裏に展開される。
 今ではもう、あの体は他人のものなのだ。ずきりとエリオの心に激痛が走るも、体は正
直で成人に近づきつつある陰茎の硬度は増した。
 クロノに惹かれていったフェイトの気持ち自体は理解できる。きっと自分がフェイトに
抱いているような気持ちなのだ。
 親に裏切られた自分たちには家族が必要で、やっと見つけた家族は砂に染みこむ水のよ
うに深く奥底まで入ってきてしまう。
 妹や子というポジションで得られるものでは満足できず、異性というその先まで求めて
しまったのだ。そして実際にフェイトは境界線を越えた。
 そのことこそが自分にも、子供という立ち位置を抜け出してフェイトの恋人になれたの
ではないかという夢を見てしまう。
 フェイトとクロノの結婚は自分にとっては毒でしかない。それも致命にいたりそうな毒
だ。
 だからこれで最後にしよう。もうフェイトのことを諦めよう。


 来月フェイトは結婚する。
 エリオは一筋の涙を溢れさせ、そして果てた。



著者:Mr.P

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