214 名前:ヴァイスは大変な訓練の成果を味わわされました[sage] 投稿日:2008/10/13(月) 18:12:00 ID:2cnDpF1A
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時は新暦72年、12月の事である。平年ならば、厳しい寒波や降雪に見舞われることも珍しくはないクラナガン上空の冬空は、珍しく晴天が続いていた
そんな、真冬にしては暖かな日差しに恵まれた、機動六課訓練場では・・・


「オラ、精度落ちてるぞ!集中しろ!」
「は、はい!」

ヴァイスの怒声に、ティアナはモード3のクロスミラージュを構え直しながらそう応えていた



○ヴァイスは大変な訓練の成果を味わわされました



普段ならば、ティアナ達フォワードチームの訓練教官は高町なのは教導官殿に一任されている筈なのだが、彼女は先日から本局の医療施設に通い精密検査を受けている
本人は慎んで辞退しようとしたのだが、にっこり笑顔に青筋浮かべたシャマル先生に捕まっては観念するほか無い。半ば連行されるように、毎日本局に通っている様だ

そんな事情があるので、今フォワードチームの訓練には隊長陣一同に加え、ヘリパイ兼狙撃手でもあるヴァイス・グランセニック陸曹も駆り出されていた
とある失敗から、一度は銃を手放したスナイパーであるヴァイスだが、今はこうしてティアナの狙撃訓練を見てやれるくらいに、トラウマを乗り越えている
ヴァイスとティアナの二人は、デカイ寝袋の様にも見えるカーキ色をした狙撃マットの中に並んで寝そべって、それぞれ愛用のデバイスを構えてターゲットを射抜いている
今の訓練は高速狙撃訓練・・・次々と現れては消えるターゲットを如何に素早く撃つか、という内容の訓練である
以前ヴァイスが口にした“狙撃手の本質”からは少々外れた訓練だが、腕を磨くにはやはりこうした訓練も必要な様だ

「・・・はぁっ、・・・く、はぁっ・・・」
「ん、まぁまぁの成績が出せるようになってきたな」
「はぁ。ありが、とう、ございます・・・」

すっかり息が上がっているティアナは、何とかそれだけを口にしてマットの上にぐったりと突っ伏した
無理もあるまい。ガンズモードの通常射撃ならば立て続けに数十発の連射をしてもこれほど息は上がらないが、ブレイズモードの大出力射撃は流石に堪える
一発の高速魔力弾に、通常魔力弾20発分近い魔力を凝縮しているのだから、トリガーを引く都度、身体に鉛が流れ込んでくるような錯覚を覚える程消耗してしまう

「キツい、ですね・・・狙撃って・・・はぁ・・・」
「初めて習う技術なんて、何でもそんなもんだ。お前だったらすぐに慣れちまうよ・・・飲むか?」
「あ、いただきます」

ヴァイスがザックの中から引っ張り出したミネラルウォーターのボトルを、ティアナはぐったりした格好のまま受け取った

「でも、ヴァイス陸曹はこれくらい平気にこなせるんですか・・・?」
「へへっ、まぁな。朝飯前、ってわけにはいかねぇだろうけど。その辺は慣れだな。回数をこなせばどうにかなるもんだ」
「そんなもの、ですか・・・?」
「そんなもんだ」

唇を歪めて笑うヴァイスに、ティアナはつられるように苦笑を浮かべてしまうのであった
結局の所、鍛錬とはそんなものである。基礎と基本を繰り返し、その中から応用を見出し、反復練習を何度も繰り返す・・・そこに費やした時間は、決して自分を裏切らない
一足飛びに強くなれる手段があるならみんなそうしている。そんな事はできないから、私達が居るんだよ ――― 高町なのは教導官殿は笑ってそんな風にも言っていたっけ

ボトルに唇を付けて、ぐびりと水を嚥下する
長時間マットの上に寝そべっていた身体は思い掛けず汗ばんでいて、ティアナはそのまま一気に半分くらいを飲み干した

「今が冬で良かったな。夏場は結構地獄なんだぜ?」
「・・・でしょうね」

カーキ色の狙撃マットの布地を摘みながら、ティアナはヴァイスのぼやきに呟き返す・・・確かに、分厚い。マットの中は蒸し風呂になるだろう

「でも、これって必要なんですか?こういうカモフラージュは野戦ならともかく・・・?」
「要るんだよ。俺みたいな三流魔導師には、特にな」

自嘲気味な笑顔で、ヴァイスはそう嘯いた

「これはな、ただのカモフラージュマットじゃねぇんだ。魔力の隠蔽機能に不可視化迷彩。
シェルターっていうには頼り無ぇけど、緊急用にバリア展開機能も備えてる・・・迷彩に関しちゃ、お前得意の幻術には負けるかもしれねぇが、俺にとっちゃ必需品だ」
「そうだったんだですか・・・凄い多機能なんですね」
「あぁ。もう少し居住性が良ければ完璧ってのは認めるがな」

それに関しては全く同感のティアナである
晴天に恵まれているとは言え真冬の外気はひんやりとしていて、汗ばんだ肌の上を心地よく冷ましてくれる

「あぁ、今が夏じゃなくて本当に良かった・・・」


大袈裟に嘆息するヴァイスに、ティアナはクスクス笑いながら尋ねた

「そんなにキツいんですか?」
「あぁ。少なくとも、お前みたいな女の子と同衾するのが憚るくらいには汗臭くなっちまうよ」
「ど、同衾って、セクハラですよ!ヴァイス陸曹!」
「はは、スマンスマン」

頬を赤く染めたティアナは、ヴァイスから離れるようにマットの端に転がっていった
寝袋としては大判な狙撃マットではあるが、ヴァイスとの距離はせいぜい身体一つと半分くらいの距離だ
改めて、マットの中に寝そべっている身体をこっそりと観察して見れば、ずっと伏せていた格好だった為、Tシャツの前は押し潰されていた乳房に張り付いてしまっている
せめて上着を着ていれば良かったと悔やむが、暑さに耐えかねてジャンバーを脱いだのは自分だ
張り付いたシャツ越しに、ブラジャーの色が透けているのを目の当たりにして、何故、スターズの訓練服のシャツは白いのだろう?と恨み節なティアナである
それに、マットの中に満ちた、むわっと籠もる熱気と匂い・・・はっきり言ってしまえば、自分とヴァイスの体臭なのだろう。汗をかいているのは主に自分だが

――― 少なからぬ思いを寄せた人に、自分の汗の匂いを嗅がれている

今更ながら、そんな思考が脳裏に浮かんだティアナは顔を真っ赤に染めて、身を強張らせた
意識すれば意識するほど、身体が熱くなって、自分の匂いがキツくなってゆくような気がする・・・

「オラ、どうしたティアナ。そろそろ訓練再開するぞ」
「ひゃ!?は、はい!」

いきなり声を掛けられて、ティアナは思わず上擦った声を返してしまったが、ヴァイスは怪訝そうな顔を向けるだけだった
どうやら、変なことを考えているのは自分だけらしい・・・平常心、平常心。と胸中で繰り返し、こっそりと深呼吸をするティアナであった



そして、再び訓練再開・・・ティアナは真剣な・・・しかし、どこか紅潮した頬のまま、クロスミラージュを握り締め、ターゲットに鋭い視線を運んでいる
そんな後輩の凛々しい横顔をチラチラと盗み見ながら、ヴァイスはこっそりと唾を飲み下した

(うぅ、畜生・・・俺って奴はどこまで変態なんだ・・・)

頭の中はそんな泣き言で一杯である。ティアナに悟られないようにこっそりと身動ぎをして、マットから腰を浮かせるヴァイスであった
半端に腰を浮かせている格好というのは微妙に腰痛を誘う苦しい体勢だが、股間で屹立した愚息をそのままにしておく方が余程に苦しいのだから仕方が無い

理由は言うまでもなく、隣で真面目に訓練に励んでいる少女の所為である

熱気に満ちたマットの中で、消耗の為か息を切らしながらも鋭い視線をターゲットに向け、唇を噛み締めてトリガーを引き絞る・・・
生真面目なティアナらしい、実に凛々しい姿なのだが、ヴァイスにとっては頬を伝い落ちる汗を拭おうともせず、汗だくのまま息を切らしているティアナの姿は目の毒である
おまけに自分では気付いていないのか、身体に張り付いたシャツからは下着や肌の色が透けていて、年齢不相応に見事な膨らみがぎゅっと潰れている様さえ見て取れる

気付いた瞬間ヤバイと思ったし、目を逸らした瞬間甘やかな香りが鼻腔をくすぐり、視線と意識が放せなくなった
暑さと消耗に小さく喘ぐような息遣いが耳に入ってくると、為す術もなく愚息は屹立し、現在の様な状況となっている

(しかし、このまま訓練を続けるのは良いとしても・・・マットから出た時に、何て言われるか・・・)

ただでさえ、整備部を中心に何やら良からぬ噂が立っている身である
今のところは冗談程度で済んでいる噂ではあるが、「後輩との訓練中に興奮してやがったらしい」なんて噂でも立とうものならどうなることか
特に整備部の連中はアルトの所為で噂話には敏感で、すぐに尾鰭背鰭の付いた噂を何処にでも広める悪癖があるのだ

(変な噂がシグナム姐さんにでも知られたらどうなる事か・・・)

苛烈で一途な烈火の将がにっこり笑ってレヴァンティンを構えている姿を想像してしまい、その恐ろしさに愚息はたちまち萎縮・・・してくれれば良かったのだが、
何気なく視線を巡らせた先で、エリオとシグナムが訓練とは思えない大立ち回りを演じている姿を見つけてしまい、スコープの中で踊る豊かな双丘と白い腿が目に焼き付いてしまった
状況悪化←結論

「・・・ヴァイス陸曹?」
「んがっ!?な、何だ?ティアにゃ、っ痛ぇっ!?」
「・・・少し、ぼーっとしてるみたいだったから声を掛けただけだったんですが・・・?」

予想外すぎる不意打ちに舌まで噛んで口元を押さえるヴァイスに、ティアナは訝しむ様な視線を向ける。何気なく、彼が視線を向けていた方に目をやると・・・

「うわ、シグナム副隊長の“実戦形式”だ・・・」

クロスミラージュが見せる拡大映像・・・疑似スコープの中で、シグナムが唇を動かしていた
声までは届かないが、恐らく相対している小さな槍騎士を一喝したのだろう。コマ落としの様な挙動でシグナムはエリオに肉迫し、ストラーダとレヴァンティンが火花を散らす
鍔迫り合いは長くは続かない。背丈の低いエリオは、上背を活かして押し込んでくるシグナムの力に逆らわず自分から身を後ろに倒し、身体が泳いだシグナムの胸を蹴り上げる
蹴打そのものはシールドに防がれたが、巴投げの様な格好でエリオはシグナムの突撃を凌いで見せた・・・騎士甲冑を土で汚すような無様な姿を晒しはしなかったが

ようやく10歳を越えたばかりの少年騎士の顔に、猛者の笑みが小さく宿る
烈火の将も応えるように、怜悧な白貌に獰猛な笑みを刻むと、仕切り直しとばかりに二人は激しく切り結んだ
高速機動と高速機動のぶつかり合い。目に映るのは互いの得物が打ち合わされる火花と、千々に踏み荒らされる下草と、紫電の煌めきと、疾る火焔と ―――

「・・・」

オーバーSランクの騎士を相手に一歩も退かないエリオの姿に、思わず言葉を失ってしまうティアナである
そんな彼女の呆然とした顔に、言い訳をする好機と踏んだヴァイスは慌てて言い繕い始めた

「わ、悪ぃ悪ぃ。あの訓練見てたら、つい、な。全く、シグナム副隊長はとんでもねぇよな。エリオの立場じゃなくて本当に良かったと思ってた所だっ

ヴァイスの言葉がぷっつりと途絶えた
どうやら決着がついたらしく、エリオはストラーダを叩き落とされ、レヴァンティンを胸元に突き付けられた・・・その彼の身体が、ふらりと倒れ込んだからだ
ただ、倒れ込んだ先が前方と言うのが、突き付けていた愛刀を慌てて引っ込めて、小さな身体を支えようとしたシグナムの胸元だった
不可抗力ではあるのだが、結果として「魔人」呼ばわりされる程のたわわな乳房に顔を埋めるような格好になってしまい、ヴァイスは思わず二の句を失ったのである

「・・・ヴァイス陸曹。ホントは変わりたいんじゃないですか?」
「変わりたい・・・あ、い、いや、違うぞ!誤解だ!!」

思わず漏れ出た本音に、同じ光景を見ていたティアナは冷め切った視線をヴァイスに向けるのであった
慌てた様子で言い訳を述べるヴァイスからは、ぷいと視線を逸らし、ティアナは再びクロスミラージュを握り直す
いかん、このままでは監督不適任ということでなのはさんに頭を冷やされる ――― 冷や汗だらだらなヴァイスは尚を何事かを言い募ろうと唇を開き掛け、

「だ、だからな!その、っと・・・?」

頭上を影が横切っていった事に、ふと空を見上げると・・・どういうわけか鉄球が飛来してくるところだった

恐らくはヴィータが放ったフリーゲンの流れ弾であろう。ただ、それは小型鉄球を複数打ち込むシュワルベフリーゲンではなく、
真紅の魔力光を纏った、バスケットボール大の巨大な鉄球・・・炸裂弾:コメートフリーゲンである
血の気が引く暇も無い。何も気付いていないティアナの頭を抱きかかえるのと、狙撃マットからほんの3m程離れた場所にフリーゲンが着弾したのはほぼ同時だった

「えっ?な、

ティアナの呟きは、次の瞬間には悲鳴に変わった。歯ぁ食い縛れ舌を噛むぞ!とヴァイスは怒鳴ったが舌を噛んだのは彼だけである
二人は抱き合ったまま、爆風に舞い上げられたマットごと吹き飛ばされ・・・

「・・・っつつ・・・おいティアナ。大丈夫か?」
「・・・は、はい、何とか・・・今のは・・・?」
「多分、ヴィータ副隊長のだ・・・マットの所為で気付かなかったのか・・・?迷彩機能も入れてねぇのに。ったく」

ぐらぐらする視界を空に向ければ、巨大な鉄槌を手にした小さな副隊長殿が、青い翼を足元に宿したスバルと殴り合っていた
ギガントフォルムvsギア・エクセリオン。どうやら、シグナムとエリオ同様に、こちらも熱くなっているらしい
苦情を申し立てて、真剣勝負に水を差すのも忍びない・・・と言うか、言うに言えない・・・諦めきった溜息を吐き出すヴァイスであった

「・・・あ、あの・・・ヴァイス陸曹・・・」
「ん、ああ。スマンスマ・・・ン・・・」

頭を庇うように抱え込まれていたティアナに名前を呼ばれて、ヴァイスは彼女の身体を離そうとしたが・・・



ガキリ、と彼の表情は凍り付いた



ズボン越しでもはっきりと分かるくらいに屹立した愚息が、自分の腹の辺りに額を押し付けさせている彼女の眼前に「コンニチワ」していたからだ

「あ、あの、あの・・・ヴァイス、陸曹?・・・何で、“こんな”になってるんですか・・・?」


明らかに異質な膨らみを眼前に突き付けられたティアナが怖々と、そう尋ねてくるが、ヴァイスの頭の中はそれどころではない
言い訳を捻出すべく頭脳はフル回転し、思考回路は僅か5秒で焼き切れ、早々に彼の頭は真っ白になった
だから、つい釣り込まれるように、彼はティアナの問い掛けに答えてしまった

「あの、陸曹は、その・・・男の人が、“こんな風”になるのは、その・・・えっと、興奮、したから、なんですよね?」
「あ、あぁ。お前の横顔見てたら、つい・・・っておおおぉぉぃっ!!!!?」
「。」

己の失言にヴァイスは悲鳴を上げ、ティアナは一瞬驚き、目尻に小さく涙の粒を浮かべると・・・そのままヴァイスの腹に、押し付けるような頭突きをくれた

「げふっ!?ティ、ティアナサン?」

勿論、元武装局員として身体を鍛えていたヴァイスの腹筋にこの程度の頭突きはちっとも堪えない
ちっとも堪えないのだが、腹に額を押し付けたまま自分から離れようともしないティアナに、ヴァイスは引き攣った顔で彼女の名前を呼ぶ
ティアナは何やら、モゴモゴとした口調で、ヴァイスに尋ねてきた

「・・・あ、あの、本当、なんですか・・・?」
「???」
「だ、だからっ!その・・・私を、見てて、興奮したって・・・」

ぐびり、とヴァイスは固唾を飲み下す
何と答えたものか。口を滑らせて地雷でも踏もうものなら教導官と烈火の将と夜天の王に頭を冷やされることになる
単にこの状況が、訓練場の狙撃マットの中ではなく、ホテルのベッドのシーツの中とかだったならば、ヴァイスは多少歯が浮くような台詞でも口にしたかもしれない
だが、ここで下手を打てばマットの中が血の海になった挙げ句、外の隊長陣から集中砲火を受けかねない。最終的には社会的抹殺。というオチまで付きそうだ
顔面蒼白になりながらもヴァイスは懊悩し、そして・・・

「あ、あぁ・・・その・・・本当、だ・・・」

と、その一言だけ、辛うじて呟いた
その言葉を聞いた、聞こえたはずのティアナは特に反応を示さず、5秒が経ち、10秒が経ち、永遠の様な30秒にヴァイスは心の中で絶叫し、
ティアナはヴァイスの腹に額を押し付けたまま、何やらもぞもぞと動き始めた


「お、おぃティアナ?あ、いや、ティアナサン!?」

思わぬ展開にヴァイスはティアナを呼ぶが、彼女は顔を上げることも無くただもぞもぞとしている・・・ヴァイスから見れば、オレンジ頭しか目に入らない・・・
しかし、バックルが外される金属音と、ベルトが緩められた感触と、有無を言わさずズボンのジッパーが引き下ろされた音に、ヴァイスは思わずティアナの頭を掴んで振り仰がせた

「ティアナ!お、お前、何してやがる!?」
「だって・・・私の、所為・・・なんでしょう?」
「だ、誰の所為って、そりゃ・・・いや、俺の所為だよ!」
「でも、男の人は、その、“こう”なったら早めに出さないと身体に悪いって・・・」

ナニを出すというのか。ナニを出させるつもりなのか
というかそもそも、そんなことをどこで知った?誰に教わった?

「その、ヴァイス陸曹が隠してた本に、書いてあったじゃないですか・・・」
「隠してた本?・・・って、お前、まさか・・・」

心当たりは一つしかない。24歳男性が隠しておきたい本など、エロ本か少女漫画くらいだ
そして、ヴァイスには少女漫画を読み耽るような趣味は無い

「・・・ご、ごめんなさい。実は、その・・・先日、ストームレイダーのコクピットをアルトさんと二人で掃除してて・・・見つけてしまって・・・」

ぎゃあああああああ、と心の中でヴァイスは絶叫した。確かに、ストームレイダーのパイロットシートの下には秘蔵のコレクションを隠していたのだ
ノーマルな巨乳アイドルの写真集から、生命工学の粋を集めて生み出された魔法生物による触手陵辱というアブノーマルな物まで取り揃えてあったのである
そう言ったピンクな代物がティアナに見つかっただけでも相当ヤバイが、よりにもよってアルトにまで
既に成人男性であるヴァイスが、手っ取り早く性欲を満たす為に成人指定の付く書籍や映像デバイスを所持していたとしても全く問題は無いのだが、
機動六課の職員は7割近くが女性で、部隊長以下隊長陣も全員女性である。上司の耳に“セクハラ”という単語が届いたとして、訓告程度の処分で済むだろうか?
生真面目なグリフィスの弁護を期待するのは虫が良すぎるし、最悪な方向に話が転がれば、解雇という可能性だって考えられる
仮にお咎め無しで済んだとしても、アルトの口の軽さに掛かれば女性職員から総スカンという目に遭いかねない。というか絶対そうなる

閉ざした瞼の裏の真っ暗闇に引きこもりたい衝動に駆られたヴァイスだったが、彼を現実に引き戻したのはティアナだった
もぞり、と引き下ろしたズボンのジッパーの間に、そっと手を突っ込んで来たのである

「んがっ!?ティ、ティアナ!?」
「あ、な、何?凄く熱い・・・?」

トランクスの布地越しに触れる、屹立したヴァイスの性器の熱さに瞠目しながらも、ティアナは更に指を進ませる
ズボンのジッパーとトランクスの前合わせを一緒に摘み、左右に引っ張ろうとして、

「だぁぁっ!?もうよせ!ティアナ!」
「な、何でですかっ!?」
「何でも、だ!理由なんざ有るかっ!!」

ヴァイスはティアナの手首を掴んで制止し、厳しい口調で一喝した
本音を言えば、こちらを見上げてきたティアナの艶を帯びた眼差しに心が揺れたけれど、ここで即座に前言を撤回しては男が廃るどころの話ではない
それでも、ティアナは頬を赤く染めたままヴァイスに食って掛かろうと口を開くが・・・

「わ、私は!そ・・・その・・・」

口の中で失速した言葉を紡ぎ出せず、ティアナはそのまま黙り込んでしまった
ヴァイスはティアナの身体をもぎ放そうとするが、俯いたまま、彼女はヴァイスのズボンのベルトをがっちり掴んでいる・・・

「コラ、ティアナ。放せよ。離れるんだ」
「・・・嫌です」
「お前なぁ、時と場合と相手を考えろよ。今は訓練時間中で、外にはシグナム姐さん達も居る訓練場で、俺みたいなへっぽこ相手に何ムキになってんだ」
「だから、私はっ!」

ぎゅっ、とヴァイスの身体に身を寄せて、ティアナはとうとうその言葉を口にした

「私が、したいんですっ!陸曹の為にっ!!」
「要らん世話だたわけっ!!」
「嫌です!絶対にしてあげるんです!!させてくれなかったらアルトさんと二人で有ること無いこと言いふらしますから!!」

何を言いふらすつもりなのかは知らないが、少なくともロクな事ではないだろう。ヴァイスにとっては

「・・・あ、悪魔め・・・」

小さい方の副隊長が10年前に呟いた台詞を吐き出しながら、ヴァイスは奥歯を噛み締める

「おぃ、ティアナ。一個だけ聞かせろ」
「何ですか」
「・・・何で、そんなにマジになってんだ?自分の責任とか本気で考えてんのか?だとしたら、お前大馬鹿だぞ。お前こそ変態だぞ?」
「・・・こんな風にしてる人に、言われたくないです」
「男ってのはそんなもんなんだよ。佳い女を見てたらこうなっちまうもんなんだ。誰が相手でもこんな真似しなきゃならないって思うお前に言われたくねー」

ヴァイスの言葉を俯いたまま聞きながら・・・ティアナはヴァイスの股間に手を伸ばすと、屹立している彼の愚息をがっちりと、下着越しに容赦無く掴んだ

「いぎっ!!?」

思わず情けない悲鳴が口元から漏れるヴァイスだが、腰を引こうにも動かせない

「・・・誰が相手でも、なんて、考えてないですよ・・・」

そしてティアナは、問答無用でトランクスの前合わせから硬く勃起しているヴァイスの性器を引き摺り出した
少しだけ、マットの中に漂う二人分の体臭に異質な匂いが混ざる・・・初めて嗅ぐ雄の匂いに小さく震えながらも、熱い吐息を吐き出す唇を寄せてゆく
丸い亀頭の先に熱く湿ったティアナの吐息が掛かるのを感じて、ヴァイスは彼女の頭を掴んで顔を遠ざけようとするが、ティアナはヴァイスの手を振り払った

「さっきも言ったじゃないですか!私が、したいんですっ!陸曹の為にっ!!」
「なっ、お前、何言っ ――― ッッ!?」

問答無用の素早さで、ティアナはヴァイスの性器にしゃぶり付いた
勢い余って喉の奥に亀頭が触れるほど深く咥え込んでしまい、嘔吐きそうになるが、不快感をぐっと堪えて彼女は唇をすぼめて顔を前後に振る
人生初のフェラチオながら、なかなか堂に入っていると言えた・・・ヴァイスが隠していたエロ本を熟読した成果である
彼女は勉強家なのだ

「ふ、んっ、んんっ・・・んはぁっ、ぐっ、ん、ちゅ、ぅんっ・・・」

ティアナに押し切られるような格好で、仰向けにひっくり返されたヴァイスは、腰の上にのし掛かって性器にしゃぶり付いている少女を呆然と眺めていた
訓練服のまま、こんな汗臭い狭い空間の中で、自分は何をしているのか・・・否、何をされているのか
上目遣いにこちらを見上げてくる様などは、行動に反して清楚とさえ言っても良い。眼差しはヴァイスへの気遣いに満ちている

そんな眼差しと目が合い、視線が絡み、ヴァイスは後頭部を地面に叩きつけるように天を仰いだ・・・と言っても、マットの裏地しか見えないが

「?ふぁいふひふほう?」(?ヴァイス陸曹?)
「・・・な、何でもねーよ」

性器を口一杯に頬張ったままのティアナが、何やらもごもごとした口調で問い掛けてくるが、ヴァイスは目元を隠すように片手を顔に乗せたまま気の無い返事を返した

見られない
見ていられない
とてもじゃないが見せられない



(な、何で俺の方が、こんなにも照れてるんだ・・・!?)



実は童貞でした。何て愉快なオチは無い・・・ヴァイスは今、紛れもなく“照れて”いた
浮き名を流した・・・と言われるような事はないが、女性経験はそれなりにある。というつもりだった

つもりだったというのに、

「ん、はむっ・・・ん、んっ、あ、んふぅっ・・・」

ヴァイスは表情隠すように顔に乗せている掌の影から、視界の端でこっそりと覗き見た
自分の腰に、十代半ばにしては豊かな乳房を押し付けるようにしてのし掛かり、屹立した性器を丹念に嘗め回すティアナの姿・・・
頬を真っ赤に染めながらも、ティアナは唇をすぼめて、温かい口内と舌先を押し付けて、唾液で濡れ光る剛直を咥え込む

唇の端から漏れ出るくぐもった吐息が、上気した頬が、時折こちらの様子を心配そうに盗み見る潤んだ視線が、どれをとってもあまりにも初初しくて、
技術の巧みさよりも、むしろその献身振りに、ヴァイスは魂を抜かれるような快感を覚えていた

「ん、ぐくっ・・・!」
「ふあっ!?ん、んんーっ!」

ヴァイスは空いている左手をティアナの後頭部に添えると、ゆっくりと腰を振り始めた
ティアナは急に喉の奥を突き上げられた事に目を白黒させるが、それでも唇を離そうとはしない。苦しさを堪えて、必死でヴァイスの性器を吸い上げる
滑る口内で亀頭を挟み込み、裏筋を舐め上げ、竿全体をしゃぶり尽くす。指先で陰嚢を撫で上げる事など何処で覚えたのやら
腰を蕩かすような極上のフェラチオに、ヴァイスの愚息は痛い程に張り詰め、口内を犯すように腰を突き上げるヴァイスは歯を食い縛りながらティアナに言った

「ぐ、うぅっ・・・ティアナ、そろそろ・・・ッ!」
「んぶっ、ふ、はぁっ・・・」

一瞬だけ、驚いたような視線を向けてきたが、それも本当に一瞬のこと
先走りを舐り取りながら、すぼめた唇で扱きたてるようなディープスロートに、ヴァイスは喘鳴の様な吐息を漏らし、乱れる陽色の髪を押さえ込んで腰を深く突き立てた
口の奥まで異物を押し込まれる苦しさに耐えながら、ティアナも応えるようにぎゅっと性器を吸い上げ、口全体で“締め上げる”
温かく、柔らかく、ぬめるような締め付けに、ヴァイスの我慢は限界を迎え、遂に果てた

「く、ぅあぁぁっ!?」

目が眩むような快感と共に、腰がビクリと震え・・・ティアナの口内に精液が放たれた
生臭いらしい、という知識はあったティアナであるが、味よりもその熱さと、口の中を満たす量に瞠目し、飲み下す事ができず噎せ返った

「ん、んぶぅっ!?く、かふっ、はぁっ、えほ、けほっ・・・!?」

噎せながらも、掌で口元を押さえてヴァイスのズボンをなるべく汚さなかったのは、妙なところで冷静な彼女らしいというべきか

――― しばらく、ぐったりと伏せた二人の荒い息遣いだけがマットの中に響く

「ぜぇっ、はぁっ・・・」

初めて自慰を覚えた時でさえ、これ程の脱力感には襲われなかったと思う・・・そんな事を考えながらも、ヴァイスは脱力した腕をのろのろと動かしてザックを探った
タオルくらいは入れていた筈なのだ。ひとまず後始末をしなくては、外に出ることもままならない
幸い、咄嗟にティアナが口元を塞いだお陰で着衣への跳ねはそれ程でもない・・・少し匂うだろうが、咎められはしないだろう
だが、無事なのは衣服くらいで・・・マットの反対端では、こちらに背を向けたティアナがげほげほと咳き込んでいる・・・そこから先は今ここではあまり描写したくない
ヴァイスもそこを追求して責めるつもりはない

「・・・ティアナ、その、大丈夫か?」
「えほ、けほっ・・・だ、大丈夫です。ちょっと、うがいさせてください」
「あぁ、その前に顔拭けよ」

有無を言わさず、ヴァイスは手にしたタオルをティアナの顔に押し付けた。口元に、濁った精液がべっとりとへばりついていたからだ
丹念に汚れを拭い取って、ミネラルウォーターのボトルを差し出してやる

「ありがとうございます・・・」

短く礼を呟いて、ティアナはマットから上半身を出すと、少しぬるくなったミネラルウォーターで口に残った生臭い残滓を洗い流した
そんな様子を眺めながら、下穿きとズボンを履き直して、ベルトを締めたヴァイスは彼女に尋ねた

「・・・なぁ、ティアナ」
「何です?」
「・・・あの、な・・・その、すげぇ気持ち良かったぜ」

それだけは、認めざるを、言わざるを得ないヴァイスであった
だが、

「だがな・・・えっと」
「大丈夫ですよ。今日のことは秘密にしますから」
「・・・何かその言い方だと、俺が悪者になってねぇか?」

そういう事を言いたかったわけでは無かったのだけれど、悪戯っぽい笑顔を向けてくるティアナにはそんなぼやきしか返せなかった
だが、そんなヴァイスのぼやきを聞いたティアナは、心外だ、とでも言いたげに小さく肩を竦めて、不敵な笑みと共に切り返す

「最初に“原因”を作ったのはヴァイス陸曹だったじゃないですか」

それを言われるとぐぅの音も出ないヴァイスである
妙に強気になっているティアナに何か反論しようとするヴァイスだが、不意に顔の前に投影された通信モニタに背筋を仰け反らせる羽目になった

『あー、こちらヴィータだ。二人ともいいか?」
「う゛ぃ、う゛ぃーたふくたいちょう!?」
『あぁ?何だよ変な顔しやがって・・・?』

赤い騎士服を纏った、おっかない副隊長殿の姿にヴァイスは盛大に顔を引き攣らせ、ヴィータは怪訝そうな顔をしたが、幸いなことにそれ以上の追求は無かった

『二人とも、まだ訓練を続けんのか?』
「あー、いえ、その、どうしようかと考えてるところデス」
『ライトニングの4人はもう先に戻ってる。アタシとスバルももう切り上げるつもりだから、お前等もそろそろ引き上げろよ』
「ウッス、了解です」
『ちゃんとクールダウンしろよ』

そんな一言でヴィータは通信を締め括ったが、二人としてはヴィータの姿にこれ以上無いくらい頭が冷えていた
ヴァイスとティアナは顔を見合わせて、揃って小さく噴き出した

「それじゃあ、今日は上がるか?」
「そうですね、このまま話し込んでると風邪引いちゃいそうですし・・・くしゅっ!」

すっかり陽も落ちた訓練場を吹き抜けてゆく風は冷たい・・・汗ばんだ身体からあっという間に熱が奪われてゆく
年相応に可愛らしいくしゃみを連発するティアナに、ヴァイスは苦笑と共にジャンバーを投げ渡してやり、後片付けを始めた
マットの中は相変わらず汗臭いが、そこにティアナのン残り香がどこか甘く漂い、更に自分の精液の臭いが残っている

「・・・帰ったら、フ○ブっとくか」
「それでどうにかなるんですか?」

呆れたようにティアナが言うが、他に打てる手段は無い。今は、万能消臭剤の効果を信じよう

「まぁ、何もしないよりはマシだろ。狙撃マット、これしか無いから、洗ったりもできないしな・・・さ、戻ろうぜ。本気で風邪ひいちまう」

ザックに一切合切を押し込んで、ヴァイスは背伸びをしながら立ち上がった。おっさん臭い所作で凝り固まった節々をゴキゴキ鳴らす
“教官”のそんな姿に、ティアナはびしっと姿勢を正し、ほやっとした笑顔で敬礼を向けた

「はい!今日もお疲れ様でした!ヴァイス陸曹」
「あぁ、お疲れさん・・・ったく、調子が良いんだからよ」
「何か言いました?」
「いーや、何にも言ってねぇぜ」

そんな風に軽口を叩き合いながら、二人は冬の夕暮れの中を歩いてゆく・・・





後日談となるが、万能消臭剤:ファブ○ーズの力を持ってしても狙撃マットに染み着いた臭いを消し去ってしまう事はできず、
ヴァイスは甘く香るティアナの身体の匂いに、
ティアナはヴァイスの汗と精液の臭いに苛まれながら、残る数日間の訓練をこなす事になる

その結果、二人の中が親密になったり、ティアナの訓練成績があまり上がらず復帰したなのはに少々小言を言われたり、
“何かの匂い”を感じ取ったらしいシャマルの不敵な笑みに二人揃って顔色を失う羽目になったりもするのだけれど、

――― まぁ、今の二人にとっては知る由も無い、しかしてそう遠くない未来の話である





「でも、陸曹にも可愛いところがあったんですね。顔真っ赤にして、んふふ、子供みたいでしたよ?」
「なっ!て、てめぇがソレを言いやがるか!ちょっ、コラ待てティアナ!」


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著者:26-111

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