[337]何故かデートでプロレス観戦編 1 ◆6BmcNJgox2 <sage>2007/08/07(火) 00:02:47 ID:oMnWciov
[338]何故かデートでプロレス観戦編 2 ◆6BmcNJgox2 <sage>2007/08/07(火) 00:04:33 ID:oMnWciov
[339]何故かデートでプロレス観戦編 3 ◆6BmcNJgox2 <sage>2007/08/07(火) 00:05:58 ID:oMnWciov
[340]何故かデートでプロレス観戦編 4 ◆6BmcNJgox2 <sage>2007/08/07(火) 00:08:09 ID:oMnWciov
[341]何故かデートでプロレス観戦編 完 ◆6BmcNJgox2 <sage>2007/08/07(火) 00:13:17 ID:oMnWciov

ある日、何の前触れも無くなのはがユーノの所にやって来た。
「ねぇユーノ君! 今度の休みは暇?」
「え? まあ…時間は取れるけど…。」
「ならデート行こ! デート!」
「え!?」
なのはの口から出た意外過ぎる言葉に思わずユーノは自分の頬を抓った。
痛い。と言う事は夢では無い。これは現実だ。
「どうしたの? ユーノ君? もしかして…ダメ?」
「そんな事は無い! そんな事は無いよなのは!」
「良かった〜! じゃあ私ね、ユーノ君と二人で行きたい所があったの。」
なのはがユーノとデートで行きたい所とは一体何処なのだろう?
遊園地? それとも映画館? それともそれとも…
ユーノは自分が考え得るデートスポットを頭の中で幾つか挙げていたが、
なのはが指定した場所は余りにも意外過ぎる場所だった。
「え…? プロレス…?」
「そう! 燃える闘魂アントニオ猪樹と極悪狂虎ティーガー・ジェット・シンの
因縁の対決! これをTVじゃなくて直で見たかったの! 勿論ユーノ君と一緒に…。」
何が悲しくてデートでプロレスを見に行かなければならないのか…ユーノは
なのはの選択に疑問を抱いた。しかし、なのはは実に楽しみにしていたし、
ユーノ自身としてもなのはの為を優先したい為に特に何も言わなかった。
「これで決まりね! それじゃあ今度の休日でまた会いましょ!」
「うん。それじゃあまた!」

二人は笑顔でそれぞれの仕事に戻った。その後…二人…と言うか特にユーノに対し
恐るべき惨劇が待っているとも知らずに…

数日後の休日、約束通り二人のデートの日がやって来た。
勿論二人がデートでやる事はミッドチルダ体育館で行われる
燃える闘魂アントニオ猪樹対極悪狂虎ティーガー・ジェット・シンの試合観戦である。
しかもなのはとユーノは一番最前列の席に座っていた。
「行けぇぇぇ!! ぶっ殺せぇぇぇ!!」
リング上ではメインイベントであるアントニオ猪樹対ティーガー・ジェット・シンの
試合に先駆けて若手レスラーによる前座試合が行われていたのだが、
そこで他の観客に混じって熱狂的な声援を送るなのはの姿に
ユーノは少々呆れていた。

「ねぇ…面白い?」
「面白い面白い! ユーノ君だってそう思わないの!?」
「でも…プロレスってショーなんでしょ?」
「ユーノ君! 貴方アレ見てもあんな事が言える!?」
と、その時リング上で試合をしていた若手レスラーAが対戦相手の若手レスラーBの頭を
ブレンバスターで強くリングに叩き付けており、それには思わずユーノも目を背けた。
「うわっ! 痛そう!」
「そうよユーノ君! ショーであんなに派手に流血する!? ショーならあんな事しないって!」
何か何時にもましてなのはが熱い。何故なのはがプロレスでこんなにまで熱狂するのか
ユーノには理解出来無かったが、ユーノだって無限書庫の司書であるし、学者でもある。
故になのはが何故このプロレスに熱狂するのか目の前で展開されている試合を
観戦する事で自分なりに検証しようとしていたが…やっぱり分からなかった。
ユーノにはただムキムキの男がパンツ一丁で殴り合ったり組み合ったりするような
そんな光景にしか見えなかった。
「うおおおおお!! ぶっころせぇぇぇぇ!!」
「なのは…完全にキャラ変わってるよ…。」

そんなこんなやってる内に前座試合も終了し、メインイベントの時間がやって来た。
『本日のメインイベント!! 燃える闘魂アントニオ猪樹対極悪狂虎ティーガー・ジェット・シンの
一戦です!! それでは選手入場です!!』
ミッドチルダ体育館中にアナウンサーの声が響き渡り、まずアントニオ猪樹が
花道を入場して来た。それに合わせて観客達が声援を送る。
「猪樹!! ボンバイエ!! 猪樹!! ボンバイエ!! 猪樹!! ボンバイエ!!」
無論、なのはも他の観客と一緒になって声援を送っていたのだが、やはり
ユーノには何故なのはがここまで熱狂するのは理解出来なかった。
「ねぇなのは…あの顎がペリカンみたいにしゃくれてる人…そんなに良いのかい?」
「何を言うのユーノ君! 猪樹さん格好良いじゃない! 新ミッドチルダプロレスの社長さんで、
それでかつ現役でその上エースなんだよ!!」
「(僕としてはなのは以上のエースなんて有り得ないんだけど…。)」
プロレスラーを所詮はショーマンとしか考えていないユーノは心の中でそう呟いていたが、
なのはの夢を壊さない様にあくまでも自分の心の中に留めておいた。
そして猪樹がリングに上がると同時に今度はティーガー・ジェット・シンが手に
サーベルを持って走りながら入場して来た。
「シュビ・ドゥビ・ダバダー!!(彼の出身世界の言語で殺してやると言う意味)」
花道でサーベルを振り回すと言ういかにも悪役らしい行動を行いながら
入場してくるシンにユーノも少し驚いていた。
「な…何か怖そうな人だね…。」
「怖そうな人じゃなくて本当に怖いの! ティーガー・ジェット・シンは街中で
奥さんと買い物中の猪樹さんを手下のレスラーと共に白昼堂々襲撃した事もあるし、
リング上でも様々な因縁のあるんだよ!」
「そ…そうなんだ…。」
なのはがユーノに力説していたのも束の間、なんとシンはゴングが鳴るのも待たずに
リングに上がるなり猪樹に攻撃を仕掛けてきたでは無いか。
『あーっと! シンの奇襲だー! サーベルで猪樹を滅多打ちだー!』
「ああああ!! この野郎!! 猪樹さんに何しやがるぅぅぅ!!」
「やっぱりなのはのキャラ変わってる…。」
猪樹にサーベルを何度も打ち付けるシンになのはは激怒していたが、
そこでやっとゴングが鳴り、猪樹も攻撃に入った。

「あんだくのやろ!!」
「シュビシュビ!!」
今度は猪樹のパンチがシンに炸裂。その度に観客(なのは含む)が熱狂する。
「やれぇぇぇ!! そこだぁぁぁぁ!! シンをぶっ殺せぇぇ!!」
「なのは…なのは…こんなのなのはじゃないよ…。」
プロレスに熱狂する余り別人の様になってしまったなのはにユーノは涙するしか無かった。
しかし…
「シュビシュビ!!」
「しゃっ!」
『あーっと! 出た! シンの目潰しだー!』
シンは猪樹に目潰しを仕掛け、さらに目を押さえて倒れた猪樹をそのままリング下に
蹴り転がしてしまった。
『シンが猪樹をリング下に落としたー! そしてシンもリング下に降りた! これは場外乱闘です!』
「あああああ!! 猪樹さんしっかりぃぃぃ!!」
なのはは目に涙を浮かばせながら猪樹の安否を気遣っていたが、そこで突然シンが
客席にまで身を乗り出し、なのはの座っていたパイプ椅子を取り上げようとするでは無いか。
シンはパイプ椅子と凶器にして猪樹を殴ろうとしていたのだろうが、なのはとて
イスが無くなったら困る。その為にイスを力一杯掴んで逆に引こうとした。
「アパラパー!!(彼の出身世界の言語で貸せと言う意味)」
「これ私のイスなの!」
「シュビビ〜!!」
シンはイスを取り上げようとするが、なのはもイスを放さない。そして…
「頭冷やそうか!!」
「ウビッ!! ギャァァァァ!!」
『おおおおっとぉ!! 客席にいた女性がシンに目潰しだー!!』
イスを取られたくない一心でなのははシンに目潰しをしてしまった。
流石にこれはユーノもなのはを注意する。
「ちょっとなのは! やりすぎだよ!!」
「ああああ!! ユーノ君危ない!!」
「ラッタッター!!(彼の出身世界の言語で頭来たと言う意味)」
「ギャァァァァァ!!」
『シンの大逆襲だー!!』
目潰しをされた怒りか、シンはパイプイスでなのはに殴りかかろうとしていたのだが、
目潰しされて視界が封じられた事もあって、間違ってユーノの方をぶん殴っていた。
「ユーノ君しっかりして!」
「シュビ!」
『シンのコブラクローが猪樹の首筋に決まったー!』
なのはは頭を押さえて苦しむユーノを心配していたが、シンは猪樹の方に戻って。
猪樹の首にコブラクローを仕掛けていた。

「この馬鹿ぁぁぁ!! ユーノ君に何をするの!!」
ユーノを傷付けられた怒りか、なのははレイジングハートを取り出して
シンの前に飛び出した。流石に周囲の被害を想定して、魔砲はしなかったが、
それでもレイジングハートそのものでシンの頭を思い切りぶん殴る大暴れ!!
『ああああ!! 女性が凶器でシンの顔面を打ち付けたぁぁぁ!!』
「もうこうなったら私がシンを料理してやるの!!」
『山本さん!! 女性がシンを料理してやると言ってますがー!』
『無理ですね!! プロレスは甘くないですからね!!』
実況解説席ではその様なやり取りが行われていたのも束の間、
なのはは軽く飛び上がって倒れているシンの首筋にレイジングハートを叩き込んだ。
『女性が凶器でシンの首筋を攻撃だー!!』
「ユーノ君も直接恨みを晴らしてやるの!」
「う〜…もうヤケクソだ!」
ユーノも頭を押さえながらシンに頭を殴られた怒りを晴らすべく、
なのはの提案に賛同し、観客席とリング場外の境界に位置する金柵を乗り越えようとしたが
そこでユーノは脚を滑らせてしまい、金柵で股間を強く打ってしまった。
「つううううう!!」
『眼鏡をかけた青年が急所をしたたかに打ち付けたー!!』
そして股間を押さえて倒れ込むユーノの首筋に対し、シンのコブラクローが決まるのである。
「シュビ!」
『なんとシンが眼鏡の青年にコブラクローをしかけたー!!』
「ダァァァァッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ!!」
「はっはっはっはっはっはっはっはっは!!」
ユーノの首筋にシンのコブラクローが決まると同時に突如上がる謎の笑い声。
その笑い声を発した張本人はなんとなのはとユーノの後をこっそり付けていた
フェイト&はやてだった。そして二人はユーノにコブラクローをかける
シンの手近にまでやって来て大爆笑をしていた。
「殺せ!! このままフェレット男を殺せ!! ダァァァァッヒャッヒャッヒャッヒャ!!」
「もうどうにでもなれぇぇぇや!! はははははははは!!」
フェイトはユーノが死ねばなのはは自分の物だと考え、シンのコブラクローを受ける
ユーノに爆笑しており、はやては単純に面白いから笑っていた。
「そうだ! 記念写真だ!」
「それじゃあシンちゃん顔あげてな。」
「ハイチーズ!」
ユーノがシンのコブラクローを受けて死にそうになっているのがフェイトとはやてにとって
余程面白いのか、カメラを取り出して記念撮影まで始めてしまった。
『山本さん!! どーしますか!?』
『私はもう知らん!!』
「畜生!! 何時までも好き勝手にさせるか!!』
『おおお!! 猪樹が蘇生したー!!』

やっと復活した猪樹が立ち上がった。しかし、やはりシンの目潰しで見えなくなった目が
まだ回復していないのか、本人はシンを掴んだつもりでも、実際はユーノを掴んで
リング上に引っ張り出していた。
「おらぁ! 立てくのやろう!!」
『おおおっと!! 猪樹が眼鏡の青年をロープに振った!!』
「ダァァァァァ!!」
『眼鏡の青年がロープに跳ね返って来た所を猪樹の延髄切りが後頭部に炸裂だー!!』
「ああああ!! ユーノ君!!」
「ダァァァァッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ!!」
猪樹の延髄切りをモロに食らったユーノにフェイトとはやての笑いは止まらなくなった。
「しゃっくのやろう!!」
『出たぁぁぁぁ!! 猪樹の卍固めが眼鏡の青年を締め上げれるぅぅぅ!!』
「ダァァァァッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ!!」
「おなかが!! おなかが痛くてかなわんわ〜! ハッハッハッハッハッ!!」
猪樹の技の数々を受けるフェイトとはやては腹を押さえて笑うばかり。
しかし、いくら仲の良い友達だと言っても、あんな目にあうユーノを笑う者を
なのはが許すはずが無かった。
「フェイトちゃん!! はやてちゃん!! もう許さないの!!」
『出たぁぁぁ!! 先程シンに目潰しをした女性が爆笑している女性二人を
ドロップキックで蹴り飛ばしたぁぁぁぁ!!』
「ユーノ君を笑う人はフェイトちゃんやはやてちゃんでも許さないの!!」
なのはは泣きながらレイジングハートを振り回してフェイト・はやてを殴り付け、
一方リング上でもユーノに数々の技をかける猪樹に銜えてシンまでリングに戻っていた。
しかし、シンの方もまだ視界が回復しておらず、ユーノの存在に気付いていなかった。
「シュビ・ドゥビ・ダバダー!!(彼の出身世界の言語で殺してやると言う意味)」
『あああっと!! シンの跳び蹴りが眼鏡の青年に炸裂したぁぁ!!』
「シュビシュビィィィ!!」
さらにシンはユーノを掴んで持ち上げ、アルゼンチンバックブリーカーに決めたでは無いか。
しかも本人は猪樹を持ち上げているつもりだからますます性質が悪い。
『シンが眼鏡の青年にしかけたアルゼンチンバックブリーカーで青年の背骨がボキボキ鳴ってるぞー!!』
「も…もう…一思いに…殺して…。」
『あーっと今度は猪樹のアームブリーカーが眼鏡の青年に炸裂だー!!
これはあの腕折り事件の再来かー!?』

それから、猪樹対シンの試合はグダグダの内に引き分けとして終了し、
フェイト&はやての二人もなのはの逆鱗に触れた罰で病院送り。
そしてボロボロの姿でベッドで寝ていたユーノを見つめ、なのはは悲しげな目をしていた。
「ごめんね…ユーノ君…。私がプロレス観戦しに行こうなんて言わなかったらこんな事には…。
ごめんね…ごめんね…。ユーノ君…ごめんね…。とりあえず…あの愚か者二人は
私が地獄に強制送還しといたけど…ごめんね…ごめんね…。」」
なのはは泣いていた。ユーノがこんな目にあったのは自分のせいなんだと…そう落ち目に
感じていたのである。しかし、ユーノはなのはを恨むどころか、微笑を向けていた。
「謝る事は無いよなのは…。僕もなのはと久し振りに二人きりになれて…楽しかったよ。」
「ユーノ君!」
「次また今度の休日…二人でまた何処かへ遊びに行こう? 流石にプロレス観戦は嫌だけど…。」
「うん!」
なのはは目に涙を浮かばせながらも微笑み、二人は手を握り合った。
                   おわり

著者:◆6BmcNJgox2

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