975 名前:公務員の仕事 [sage] 投稿日:2010/03/11(木) 09:35:16 ID:E5gjceMc
976 名前:公務員の仕事 [sage] 投稿日:2010/03/11(木) 09:36:05 ID:E5gjceMc

私の名前はダルカ・ルーイン。14歳、女性。
つまりは、まだギリギリの範囲で、いわゆる少女。

今日も今日とて、生活相談窓口の仕事は続く。

「なるほど。お隣からの『あの』声が聞こえてきて、日常生活に支障をきたすと」

本日のお仕事は、ミッドチルダ北部地域の中でも高級住宅が立ち並ぶハイソな土地。
そこにある、これまた高級マンションの一室から、生活相談窓口へと控えめな苦情が寄せられていた。

相談者は、ベルカ自治区出身の奥様。最近、このマンションに旦那様の仕事の都合で引っ越してこられたとの話。
旦那様は同じくベルカ自治領の出身で、それなりに名前のある騎士の家系の方だとか。

ベルカ自治区を内包するミッド北部地域は、まったく異なる二つの文化が緩衝地帯なく接している場所でもある。

聖王教を背景とした、貞操観念の高い文化であるベルカ自治領。
就職年齢が極端に低く、娯楽や性分化にも奔放なミッドチルダ文化
それらが隣り合うため、文化の違いによる住民間のトラブルが耐えないのだ。
就職年齢に関しては、私も人のことを言えないけどね。

もちろん、ミッドチルダ行政局は、ベルカ自治領に対して介入する権限は持たない。
今回は、建っているマンションがミッドチルダ行政区にあるために、こちらの生活相談窓口課に相談を寄せた、というわけだ。

貞操観念の高いベルカの深窓の奥様にとっては、ミッドの奔放かつアブノーマルな夜の生活を見せ付けられて大困惑、といったところかなー。
まあ、アブノーマルさにおいては、実はベルカ文化のほうがはるかにヤバくて業が深いんだけどね。
アンダーグラウンドにあって、表には出ないだけで。
この地域でこの仕事してると、たまに行き当たる。
宗教を背景とした強い貞操観念によって発散されることなく押さえつけられている性欲が、捻じ曲がった方向に進むのはよくあることらしい。
ベルカ文化圏の人がミッドのアブノーマルな性癖に驚いたりする話は多いけど、そのおおもとは大抵、ベルカ式だったりするんだよね。

それはともかく。
奥様の話だと、わりと頻繁に隣の住人のプレイの声が聞こえてきたり、一度など廊下でナニしてる所を目撃したらしい。
部屋の中はともかく、さすがに外では自重しろミッド人。

まあ、今回のこれは単なる住民間のトラブルで、まず相談すべきはマンションの管理人だろう、とは思う。
さすがに行政局が介入する検案じゃあない。
でも、今は別に押している仕事もないし。ある程度下調べして、こっちからマンションの管理人に相談するものアリかな、と私は結論付けた。
別に、他人の色事に興味があったからではないよ?

それに、気になることがひとつ。
ここは高級マンションであり、その手の防音設備とかはしっかりしているはずだ。
この部屋で叫んだところで、隣の部屋に聞こえるかどうかあやしい。

私は奥様の許可を得てデバイスを取り出し、部屋の中をサーチする。
壁の防音は完璧。叫んだとしても、たぶん隣に声は届かない。
対魔法設計もしっかりしていて、サーチが隣室に通らない。
このつくりなら、例えば隣室の住人が魔導師でも、あっちから魔法的な手段で声を送っている可能性は否定される。
いや、そういうプレイがあるかはともかく。
逆に、こっちから隣室を魔法的手段で覗くことも難しい。
いや、奥様がピーピングしてたとか疑っているわけではなくて。
この建物の配管配線の図なんて持っていないけど、サーチした限りでは、台所の配管から声が漏れているわけでもなさそうだ。
いや、台所でのプレイの可能性を考えたわけでもなくて。

となれば・・・ベランダ?
可能性はそこくらいだ。
サーチで残響をたどってみると、やはりそこが発生源。
ベランダでプレイしているか、ベランダ側の窓を全開にしてコトに及んでいるのか。
マジで部屋の中でも自重しろ、ミッド人。

とまあ、一通りの調査を終えてその場は退散し、後日、マンション管理人に報告。
これにて、とりあえずのお仕事は終了。

さらに後日、さすがにちょっと行き過ぎはまずいという管理人からの相談でマンション内部の防犯カメラ映像を預かり、くだんの「ベランダ映像」や「野外プレイ」場面を抽出。
行政局のデータベースで人相照合したら、某管理局本局の次元航行艦提督と、その義妹の執務官が一発でヒットしてしまい、この相談自体を全力でなかったことにしたのは、また別の話。


著者:くしき

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