[322] 今はまだ友達だけど 1 ◆6BmcNJgox2 sage 2007/12/10(月) 00:03:10 ID:L8DOlCs0
[323] 今はまだ友達だけど 2 ◆6BmcNJgox2 sage 2007/12/10(月) 00:04:15 ID:L8DOlCs0
[324] 今はまだ友達だけど 3 ◆6BmcNJgox2 sage 2007/12/10(月) 00:05:20 ID:L8DOlCs0
[325] 今はまだ友達だけど 4 ◆6BmcNJgox2 sage 2007/12/10(月) 00:06:02 ID:L8DOlCs0
[326] 今はまだ友達だけど 5 ◆6BmcNJgox2 sage 2007/12/10(月) 00:07:28 ID:L8DOlCs0

「なのは! 正直に言う! 僕は君が好きだ! これからは友達としてじゃなくて…
恋人として付き合って欲しい!」
ユーノは勇気を出してなのはに自分の本心を打ち明けた。しかし……
「ごめんなさい…。」
「あ………。」
結果はこれだった。なのははユーノを友達としてしか見ていなかったのだ。
これに関してユーノはショックを受けていたのだが、それを悟ったなのはは
慌ててフォローを入れていた。
「で…でもユーノ君の事嫌いなワケじゃないよ! 勿論好き…けど…流石に
恋愛的にどうこうって言うのは……ごめんね…………。」
「あ……う……うん…。」
結局、これからも友達と言う関係でいようと言う事になったのだが……
その時のユーノの寂しげな顔が……なのはの頭に強く刻み付けられていた…。

それからだ。なのはが自問自答をする様になったのは…
「私にとってのユーノ君って…何だろう……。勿論大切な友達だよ。
けど………何なのかな…このもどかしい気持ち……。」
ユーノと別れ、自室に帰ったなのはは一人ベッドの上で自分の左胸に手を置き、その事ばかり考えていた。
自分にとってユーノとは何なのかと言う事を…。しかし、どんなに考えても『友達』と言う
認識でしか考えられない。であるにも関わらずこのもどかしい気持ちは何なのだろう…。
なのはがこれからも友達でいようと言った時のユーノの寂しげな顔が今もなのはの頭に
強く刻み付けられている。そして…自分はとんでもない過ちを犯してしまったのでは無いか?
と言う感情…。何故こうなるのか…。ユーノはあくまでも友達なのに…
何故こうまでももどかしい気持ちになるのか…この矛盾めいた事になのはは葛藤するが…
解決の糸口は見出せない。そうして悩んでいる内になのはは眠りに付き、気付くと朝になっていた。

数日後、なのはとユーノは二人きりで街に出かけていた。
状況的にはデートに近いのだが、なのは本人はただ友達と遊びに行く様な
感覚でしか無く、ユーノもなのはと二人きりでいられて嬉しい反面…やはり寂しかった。
「どうしたの? ユーノ君?」
「え…ああ…何でも無いよ…。」
「そう…。」
ユーノの寂しげな表情がやはりなのはには気になっていた。ユーノは自分にとって
『友達』のはずなのに…何故『友達』と考えれば考える程もどかしい気持ちになるのか…
と、その時…それは起こった。

「死ねぇ! ユーノ=スクライア!!」
「え…。」
その様な叫び声と共に突然街のど真ん中で物凄い音が響き渡り、
なのはの目の前でユーノが血を吹いて倒れた。何者かがユーノを撃ったのだ。
しかし魔法の類では無い。ミッドチルダでは使用の禁止されている質量兵器。
それも97管理外世界製の炸薬式拳銃だった。と言っても、これが戦闘態勢に入っていた
ユーノであるならば防御魔法で防ぐ事は容易い事かもしれない。しかし、今の
なのはと二人で街に遊びに行き、かつ精神的に寂しさを感じていた不安定な状況で
その様な警戒が出来るはずも無く…不意打ちに近いこの銃撃を防ぐ事は出来なかった。
「キャー!」
「誰か撃たれたー!」
「誰か救急車を呼べー!」
「他に怪我人は無いかー!?」
ユーノが血を噴出して倒れる様を目の当たりにした他の人々は慌てながら口々にそう叫び、
もはや軽いパニックと化していたのだが、なのははその様な事は気にしていなかった。むしろ…
「ユーノ君! ユーノ君しっかりして!」
「な…のは………がはっ…。」
なのはは涙目になりながらユーノを抱き上げようとするが、ユーノの腹部から流れる血は止まらない。
挙句の果てには口からも血を吐き出す始末。
「な…のは……怪我は……無い…かい…ぐはっ!」
「無いよ! 私は怪我してないから! もう喋らないで! ユーノ君死んじゃダメだよぉ!」
なのははユーノの状況が危ないと言う事は身体で分かっていた。確かに撃たれてここまでの
傷を受ければ誰にでも危ないと分かるのだが…なのはは普通とは異なる意味で捉えていた。
それは数年前になのは自身がアンノウンの奇襲によって撃墜された時の事。
あの時のなのはは大きな傷を負い、ヴィータに抱かれて生死を彷徨った。
そして今度はなのはが撃たれて重症を負ったユーノを抱く立場に立っていたのだ。
しかしその間にもユーノの腹部からは血が流れ、口からは血を吐く。
周囲にいた人が慌てて病院に電話をしてくれていた様子であるが、救急車が来る様子はまだ無い。
「なのは……本当に……怪我は……無いんだね……。」
「無いよ! だからもう喋らないで! 本当に死んじゃうって!」
なのはは必死に叫んだ。ユーノに死んで欲しくは無い。その一心で…
「そっか……良かっ……た………………………。」
「ユー……ノ………く……ん……?」
ユーノは先の一言を最後にガックリと崩れ落ち、動かなくなった。
それにはなのはも思わず沈黙する。
「ねぇ…嘘だよね…喋っちゃダメなんて言ったけど…その通りに喋って無いだけなんだよね………。」
なのははユーノを軽く揺さぶるが…ユーノは動かない。そしてその事を悟った時なのはは…
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
街中になのはの絶叫が響き渡った。大切な人の命を突然、不当に奪われた悲しみ…怒り…
今のなのははそれで一杯だった。周囲に人がいる事等構う事無く…なのはは叫び続けた。

「あああああああああああああああああああ!!」
なのはが叫び続ける十数秒の間…なのははある光景を見ていた。
人は死の間際の一瞬の間に己の人生が走馬灯の様に流れると言うが、それにも何処か似た感覚。
十年前、なのはが森の中に倒れていたユーノと出会って、ジュエルシード事件を共に戦って、
その後も闇の書事件やその他様々なユーノとの思い出が走馬灯の様になのはの中に流れる。
僅か十数秒の間にその全てが振り返られる。その様な感覚だった。そして……

「なのは、なのは、なのは、なのは、なのは」
フェレット形態のユーノが…十年前のまだ九歳だった頃のユーノが…
無限書庫に勤める様になってメガネもかけるようになったユーノが…
今のユーノが…優しい表情でなのはの名前を呼ぶ。勿論それもまた
なのはが見ただたの幻覚。本物のユーノはもう動かないのだから…。
その現実を目の当たりにすればする程…なのはの中で怒りの炎がフツフツと
燃え上がり…ユーノを撃った者への憎しみが増幅されていった。
「うわああああああああああああああああ!!」
なのはは怒って怒って怒り続けた。流石に髪が逆立ち、金髪になる様な事は無かったが、
本当にそうなっても別におかしくは無いと思える程の怒り振りだった。
この余りのなのはの怒りぶりに、周囲にいた者も思わずとばっちりが来るのでは無いかと
恐れて退いていたのであるが…
「………………………………。」
突然なのはは黙り込んだ。先までの怒り叫ぶ様とは打って変わっての静かな様に
皆は呆然とするのだが…なのはの怒りは別に消えてはいなかった。
むしろ叫んでいた時以上に怒っている。それも静かに…。
怒ればそれだけ冷静さが失われるのが普通であるが、今のなのはは逆に
『怒ったが故に逆に冷静になる』と言った風な物だった。
確かに先の激しく叫んでいた時のなのはの怒り振りは、逆上して
他の者へもとばっちりを与えかねない程にまで冷静さを欠いていた。
しかしその怒りが頂点に達し、限界を超えた事によって…なのはは
逆に冷静さを取り戻していたのである。より強い怒りを内包させたまま。
「ユーノ君を撃った奴は許せない…。」
直後になのははバリアジャケットを装着。そして怒りによって冷静になり、
かつ極限にまで研ぎ澄まされた神経を集中させ、静かにある一方を見つめていた。

「やったぜ! これで無限書庫はお終いだ!」
なのはの見つめる方向に、一人の男が狂喜乱舞しながら走っていた。
ユーノを突如銃撃した者。それは無限書庫から手に入れた情報に基いた戦術によって
管理局に壊滅させられたとある時空犯罪組織の残党だった。
ユーノが無限書庫に勤務する以前はまともに機能さえせずに誰にも目も
付けられなかった無限書庫は、それを扱う事の出来るユーノ=スクライアを
得てからは恐るべき情報の宝庫へと姿を変えた。かのJS事件による聖王のゆりかご攻略には
機動六課の活躍や管理局艦隊の総攻撃などの印象が強いが、その成功は
ユーノが無限書庫から手に入れた情報があって初めて可能な物だった事は
知っている人は良く知っているが、知らない人は全く知らない事実だ。
だからこそユーノを憎む者も少なくは無かった。ユーノが無限書庫から
失われたと考えられていた情報をサルベージしさえしなければ
俺達は管理局に敗れる事は無かった…。そう考える者にとって
ユーノの存在は如何なる戦力にも勝る脅威だったのだから…。

「これでもう無限書庫によって情報戦で不利になる様な事は無くなるぜぇ!」
ユーノを撃ち殺した事によってその男は時空犯罪者界の英雄にでもなった
つもりになっていたのだろう。しかし……次の瞬間彼の正面になのはがフッと現れていた。
「え………?」
「少し……頭冷やそうか………。」
冷ややかな目のなのはに見つめられた男はヘビに睨まれたカエルの様になり、
思わず手に持っていた拳銃を地面に落としていた。直後になのはのバインドが男を縛り上げ、
なのはの指先から放たれたクロスファイアシュートが男の全身に強く叩き付けられていた。
「ぐはっ!」
「もう一度…頭冷やそうか……。」
非殺傷設定で撃っているとは言え…周囲を巻き添えにしない様にピンポイントに
撃っているとは言え…それでも直接撃たれた男の身体に凄まじい激痛が走るのは必至。
そしてなのはは何度も何度も男へ向けてクロスファイアシュートを撃ち続けた。
何度も…何度も…何度も…何度も…何度も…何度も…何度も…

「もうやめてなのは! これ以上撃ったら本当に死んじゃう!」
そう言ってなのはの右手を掴み止めたのは騒ぎを聞き付けて来たフェイトだった。
幾ら相手がユーノを撃った男だと言ってもやり過ぎだとフェイトは考えていたのだが…
なのはは冷ややかな目でフェイトの目を見つめた。
「離してよフェイトちゃん…。」
「いいや離さない! この男は生かして逮捕して法の裁きを受けさせるのだから殺すワケにはいかない!」
とても親友に向けている物とは思えぬなのはの冷ややかな目にフェイトも恐れの心を抱かずには
いられなかったが、それでも執務官として男の命を守ろうとしていた。
「殺しちゃえば良いんだよ…。こんな男なんて……ユーノ君を撃ち殺した男なんて…死んじゃえば…。」
「なのは落ち着いて! 本当に落ち着いてよぉ!!」
なのはもユーノを撃った男が憎くて憎くて仕方が無いのだろう。しかしフェイトもまた必死だった。
いくら相手が殺人犯であろうともこちらも殺人を犯すワケにはいかない。生かして法の裁きを
受けさせると言う義務と、なのはに殺人をさせない為に…。
「邪魔するんなら…フェイトちゃんでも…容赦しないよ…。」
「なのは!」
なのははフェイトをも自分の行動を妨害する者として敵視する様になった。
まさに一触即発の事態であったのだが…
「スクライア先生は死んではいません! まだ生きています!」
「ええ!?」
フェイトの付き人として同じく現場に来ていたと思われるティアナが倒れているユーノの
左胸に耳を当てた状態でそう叫び、それを聞いたなのはは先までの冷ややかな目が嘘の様に
本来の優しい瞳を取り戻してユーノの場所へ駆け寄った。
「スクライア先生の心臓はまだ動いています。多分ただ気を失っただけかと…。
ですけど急いで病院に運ばないと大変な事になります。」
「分かったありがとうティアナ!」
すっかりユーノが死んだとばかり思っていたなのはは実は生きていたと知るや否や
目に涙を浮かばせながら笑っていた。そして優しくユーノを抱きかかえるのである。
「フェイトちゃんはその射殺未遂犯の逮捕をお願い! 私はユーノ君を病院に運ぶから!」
そう言ってなのははユーノを抱きかかえながら飛び去って行くのだが、
フェイトは先程の男に手錠をかけながら苦笑いしていた。
「全く…調子が良いんだから……。」

ユーノが病院に運ばれた後、直ぐに緊急手術が行われた。
手術室の外でバリアジャケットを解除して元の私服に戻ったなのはが心配そうに
待っていたのだが、そこでドアが開いて医者が姿を現した。
「先生! 大丈夫なんですか?」
「大丈夫。命に別状は無い。心臓は外れていたし、弾丸の摘出にも何の問題も無い。
後は栄養を取って傷の直りを待てば退院出来るよ。」
「良かった…………。」
命に別状は無いと聞かされたなのはは安心すると同時に緊張の糸が切れたのか
その場で………泣き崩れた………。
手術を終え、病室に運ばれたユーノの寝ているベッドの隣に置かれた椅子になのはが座っていた。
その時にはユーノも目を覚まし、また痛み止めも効いていた事もあって普通に話す事が出来た。
「ユーノ君ごめんね……。」
「なのはが謝る事じゃ無いよ。犯人は僕を狙っていたみたいだし。」
ユーノは何やら罪の意識を感じるなのはに対してフォローを入れるが、なのははやはり言った。
「でもユーノ君を撃った射殺未遂犯が持ってた銃って、私の出身世界の物だったんだって。
そういう事は…私が管理局と接触した事が時空犯罪者達にも私の世界の存在を知らせる事になって…
それで私の世界の武器がミッドチルダに…密輸された原因になるなら…やっぱり私にも
責任はあると思うから………。」
「そんな事は無いよ。武器そのものに罪は無い。何でも使う人間の問題なんだ。
なのはの使う魔法だって…使い方を誤れば立派な殺戮兵器になるからね。
それに…仮に君の世界の銃がミッドに密輸されていなかったとしても…
その時にはまた別の方法で僕の命が狙われていたと思う。だから気を病まないで。」
「う…ありがとう…ユーノ君…。」
なのはの目にまたも涙が浮かんでいたのだが、その後でなのははさらに言った。
「話が全然変わっちゃうけど…ユーノ君はまだ私の事…好き?」
「そうだね。今でも好きだよ。でも……なのはは僕の事を友達としか思って無いんでしょ?」
「うん…そう。ユーノ君の言う通り私はユーノ君の事友達としか考えられないよ。」
「そっか………。」
申し訳無さそうに言うなのはにユーノも寂しげな顔になるが………
「でも……ユーノ君が私の事好きって気持ちは否定したく無いよ。だからこれからも
ユーノ君と一緒にいさせて欲しいの。私も今はまだユーノ君の事友達以上の感情で見られないけど…
何時の日か……ユーノ君の気持ちに応えられる様になりたいから………。」
「なのは………。」
なのはの口から放たれた意外な言葉にユーノも驚きを隠せないが、なのはは優しく微笑んだ。
「だから……ユーノ君…。これからも……よろしくね?」
「う…うん………。」
なのははまだ気付いてはいなかった。その時の自分の気持ちこそが…友達を超えた物だと言う事に…
                   おしまい


著者:◆6BmcNJgox2

このページへのコメント

ユーノ君、無事で良かった、なのはさんは、大切な仲間を傷ついた相手には容赦ないですね。

0
Posted by 名無し 2013年06月14日(金) 02:26:43 返信

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