[161] 時空”管理”局大運動会 1 ◆6BmcNJgox2 sage 2008/02/02(土) 15:57:21 ID:YzV1/AJv
[162] 時空”管理”局大運動会 2 ◆6BmcNJgox2 sage 2008/02/02(土) 15:58:30 ID:YzV1/AJv
[163] 時空”管理”局大運動会 3 ◆6BmcNJgox2 sage 2008/02/02(土) 16:00:08 ID:YzV1/AJv
[164] 時空”管理”局大運動会 4 ◆6BmcNJgox2 sage 2008/02/02(土) 16:01:41 ID:YzV1/AJv
[165] 時空”管理”局大運動会 5 ◆6BmcNJgox2 sage 2008/02/02(土) 16:04:03 ID:YzV1/AJv
[166] 時空”管理”局大運動会 6 ◆6BmcNJgox2 sage 2008/02/02(土) 16:05:28 ID:YzV1/AJv

その日、時空管理局上層部が集まって頭を抱えていた。
「局全体の士気を維持する為に局員を労うと言うか…何と言うか…とにかく何か
皆を楽しませるイベントと言うのを開きたいのだが……。」
「さて一体どんなイベントにするか………。」
彼等が頭を抱えていた原因は、彼等が言う通り局全体の士気を維持する為のイベントを
開催すると言う事になったのだが、どんな物にすれば良いのかと言うのが
上手く行かない事だった。士気の高揚にもなり、かつ楽しませられるイベント…
一体どうすれば良いのか皆は分からなかった。と、そこでふと一人が窓の外を見る。
外では魔力資質は低くとも運動能力でカバーしようと頑張る名も無い局員が
日々トレーニングに励んでいる微笑ましい光景が繰り広げられていたのだが…
そこで彼は思い付いたのだ。
「そうだ! 運動会だ! 管理局全体で運動会を開こう!」
「そ…その手があったか! それなら局の各課で競い合えるし、互いを称え合える!
士気の高揚にもなる! 皆を楽しませられる! それだ! それで行こう!」
と、誰もが彼の提案に賛同。よって時空管理局大運動会が開かれる事となった。

時空管理局大運動会の開催が決定された事実は管理局全体を駆け巡った。
無論戦技教導隊にもそのお達しは来るワケで………
「今度時空管理局全体を集めた運動会が開かれるそうだ。
無論『運動』会なので魔法の使用は禁止。使ったら減点の対象にされるそうだ。
つまり純粋に運動能力が試されると言う事だ。だがこれはこれで良いじゃないか。
魔法だけじゃなく運動能力に関しても教導隊はその辺の連中とは違うと言う事を見せてやれ!」
戦技教導隊の隊長が他の教導隊員にそう力強く力説していたが…次の瞬間一人が突然ぶっ倒れた。
「わー! 大変だー! 高町一等空尉がいきなりぶっ倒れたぞー!」
「何ー!?」
突然の事態に皆大慌てで倒れた高町なのはの所へ駆け寄るが…その顔はまるで
今にも死んでしまいそうな程ゲッソリしてしまっていた。
「わぁ! 一体何があったんだ!? さっきまであんなに元気だったのに…。」
そしてなのはは苦しそうに小声でこう呟いた。
「う………運動会………休んでも………良いですか…………。」
「あ! そうだった! 高町一等空尉は凄い運動音痴だったのすっかり忘れてた!」
「何――――――――――――!?」
「それで良く教導隊に入れたな!」
「いやでも運動はダメでも魔法戦になると話は別になって、既に9歳の頃から
ジュエルシード事件とか夜天の魔導書事件とかで凄い戦いやってて…
それで問題は無かったんだけど、魔法使わなかったら運動音痴なのは今も昔も変わらなくて…。」
「滅茶苦茶な奴だな………。」
と、隊長も呆れてしまっていたが流石に運動会を休む事は認められなかった。

ついに時空管理局大運動会の当日がやって来たのだが…その日になってもやはり
なのはがゲッソリした面持ちだったのは変わらなかった……。
何故ならば………
「なのはの分は私がカバーするから!」
となのはの為に頑張る気でいたフェイトが赤組になってしまい(ちなみになのはは白組)、
他にも運動会を休む為に故意に怪我をしようとしたり、悪い物を食って腹を壊そうとしたり
したけどどれも他の者に未然に防がれてしまった故に…なのはは落ち込んだままだった。
「ねぇなのはママ〜どうして元気無いの?」
ヴィヴィオは心配そうになのはの手を引っ張りながらそう言う。
そこでなのは同様白組でもあったユーノがその質問に答えた。
「ヴィヴィオには信じられないと思うけど…なのはは実は凄い運動音痴なんだ…。」
「ええ!? そうなの!? 何で!? だってエースなんでしょ!?」
「うん…そこが不思議なんだ。魔法を使わせれば凄い戦いが簡単に出来るのに…
魔法無しだと……凄い運動音痴だったりするんだよ………。」
ヴィヴィオは戸惑い、ユーノも困った顔になっていたが…やはりなのはは
今にも倒れてしまいそうな位ゲッソリした面持ちなままだった。

さてそんなこんなで競技が始まり、100メートル走になのはが出場する事となった。
他の走者は我こそが一位とばかりに準備運動をしていたのだが…やはりなのはは
ゲッソリした面持ちで…むしろ今にも倒れそうな程だった。

一方その頃、二人揃って白組側にいたスバルとティアナがグランドにいるなのはに注目していた。
「なのはさん…きっと凄いんだろうな〜。」
スバルは目を輝かせながらそうなのはの走りを楽しみに待ち望んでいたのだが………
「よーい…スタート!」
スタートの合図が鳴った直後に皆は一斉に走り出したが…なのはだけすっ転んだ。
なのはの運動音痴振りを知る者からすれば珍しい光景では無かったが、
そうでは無い者…特になのはに対し心酔しているスバル等は衝撃的な余り
彼女もまたすっ転んでいたりする。
「なのはさぁぁぁん! しっかりしてくださぁぁぁぁい!!」
やっと起き上がって走り出したなのはだが…これまた脚が泣ける程遅い。
って言うかまた転んだ。無論言うまでも無く結果はダントツでドンケツだ!
そして周囲から飛び交う爆笑の嵐。普段なのはの課す厳しい訓練で地獄を見ている
局員達が笑う時は今しかないとばかりになのはの凄まじい運動音痴っぷりを
笑い飛ばしたのであった。しかも…………
「アハハハハハハ! 何あれ! なのはさんだって偉そうな事言えないじゃない!」
「あ! こらティアナ! 笑うな! なのはさんを笑うな…ププ…。」
かつてなのはに頭冷やされた経験を持つティアナもまたなのはの運動音痴っぷりに大爆笑。
それに対しスバルは怒ってティアナを押さえようとするが、彼女も彼女で
笑いが込み上げて来ていて説得力の欠片も無い。
だが、一番ショックを受けていたのはヴィヴィオなのかもしれない。
「ママ〜…そんな〜。」
競技は終わり…なのははゲッソリした面持ちで退場したが…その後で
スバルとティアナの所へと赴いた。
「スバル…ティアナ…。」
「どうしましたなのはさん?」
笑いも何とか収まり、何時もの様になのはと接していたスバルとティアナであるが…
なのははティアナの耳元に顔を近付けて小声でこう呟いた。
「今度…久し振りに訓練付けてあげようか? マンツーマンで……。」
「!!」
直後ティアナは凍り付いた。なのはには聞こえていたのだ…ティアナの笑い声が……。
そしてなのはが去った後もティアナはしばらく凍り付いたままだった。

その後もなのはの運動音痴っぷりは目に見張る物があった。
ハードル競技ではハードル倒しまくり、普段あんなに正確なシューターが撃てるのに
玉入れ競争では一つも玉が籠に入らず、二人三脚では一緒に組んだ人に申し訳無い程にまで
転びまくり、リレーではバトン落としまくり、特に借り物競争の時等は
フェレットを借りて来なければいけない結果となり、慌ててユーノにフェレットに
変身してもらったのだが、魔法を使ってはいけないルールによって失格。
その上減点までされてしまうと言う凄まじい展開であった。
そしてなのはが運動音痴っぷりを発揮すればする程…周囲から爆笑の渦が巻き起こり、
なのは自身もまた穴があったら入りたい程恥かしかった。
もはは『時空管理局大運動会』では無く『高町なのはの運動音痴っぷりを笑う会』となっていたのだが
だがそれを悔しがっているのはなのはだけでは無い。フェイトもまた……
「何で! 何で私が赤組なの!? 何で……何でぇぇぇぇぇぇ!!
こうなったらもう何を言われても構わない! これから白組に行くぅぅぅぅ!」
「うわぁぁぁぁ! フェイトさんやめてくださいやめてください!」
「落ち着いて下さい! 落ち着いて下さいよぉぉぉ!」
なのはの運動音痴っぷりを良く知るフェイトは、なのはが出来ない分は
自分が頑張って取り返すと考え、その為に色んな競技の練習さえしていた。
しかし結果は見ての通り。なのはは白組となり、フェイトは赤組と分かれてしまった。
それがフェイトには悔しくて悔しくて仕方が無かった。なのはを助けたい…
しかしチームが分かれている以上それは無理な相談。それでもなのはを
助けようと飛び出そうとしていたのだが、同じく赤組のエリオとキャロが必死になって
止めていた為に特に事が起こる事は無かった。

なお、今大会は何故か管理局系列の各刑務所にも中継されていたのだが………
「うおおおおおおお!! 俺達はあんな奴に捕まったのかよぉぉぉぉ!!」
と、過去になのはの手によって逮捕された時空犯罪者であった受刑者達が
なのはの運動音痴っぷりにショックを受け阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。
その中にはあのJS事件で名を馳せたジェイル=スカリエッティの姿もあり…
「あ…あれが…あれが古代ベルカの聖王さえ屠った魔導師の姿だと言うのか…。」
とまあこれはこれで凄いショックを受けていた。

とりあえずは午前の競技は終了し、午後の競技に移行する前の昼食の時間と相成ったが…
「うわぁぁぁぁぁん!! 白組のみんなごめんなさぁぁぁぁぁい!!」
「なのはママ…泣いちゃダメだよ…。」
なのははヴィヴィオに泣き付き、ヴィヴィオもまたなのはを慰めようと頭を優しく撫でていた。
無理も無い。あんだけ恥かしい所を見せた上に…白組全体の脚さえも引っ張ってしまったのだ。
情けない事この上ない。ましてやなのはは教導隊と言う肩書きを持つ。
それ故に本来ならば活躍しなければならないと言うのに……それが情けなくて仕方なかった。

さて、午後の競技が始まった。
「なのはさんの分は私が巻き返して見せます!」
なのはが運動出来ない分は自分がカバーしようとスバルはやる気を見せていた。
運動会故に魔法禁止ルールが適用された今大会であるが……それ故にスバルは強い!
ティアナもまた飛行魔法が使えない分己の脚力を鍛えて来た事もあってこれまた強い!
彼女等を初めとして魔力資質は低くとも運動能力でカバーするタイプの者達の
活躍は目に見張る物があった。そうやってなのはが脚を引っ張った分を
彼等が巻き返して行ったのである。

競技も終盤に差し掛かり、800メートル走と相成ったが…
一体誰が組んだのかは知らないが何とまあなのはが参加選手の中に入れられてるでは無いか。
「誰だよなのはを入れたのは! 幾らなんでもこれ絶対わざとだろ!?」
さり気なく白組にいたヴィータがなのはを不憫に思ってそう叫び、
それに合わせてスバルも……
「そうですよなのはさん! これ以上無理する必要はありません! 辞退しましょうよ。」
「うん。これ以上なのはに恥をかかせるワケには行かない。理由は僕の方から運営委員会に…。」
と、ユーノもなのはをフォローする様に言っていたが、なのはは首を横に振った。
「皆ありがとう…。でも………世の中…嫌だと思ってもやらなきゃならない事もあるから…。」
「なのは………。」
なのはは出場するつもりらしかった。彼女も本当は嫌なのだろう。これ以上自分の
運動音痴っぷりで恥をかきたく無いのであろう。しかし…逃げてはいけないと言う気持ちは
それ以上に強かったに違いない。だからこそ…彼女は皆に見送られながら入場門へ向かった。
「なのはさんご武運を!」
スバルは目から涙を流しながら敬礼していた。
800メートル走がスタートしたが…やはりなのはは遅い。他の走者は800メートルを
走るに相応しいスタミナと脚力を持った者達であるのに対し、不公平な程なのはは遅かった。
他の走者にどんどん離されて行くし、最初の100メートルの時点でもう息が絶え絶えとなっていた。
「ハァ…ハァ…。」
既に皆がゴールした後でも…なのははやっと400メートルに達した所。
「ハハハハハ! あれがエースオブエースの姿かよ!」
余りにも無様すぎる様にそう笑う者も現れるが…それでもなのはは上がった息の状態で黙々と走って行く。
その間にも笑う者の声がますます大きくなって行っていたが…その時…………
「なのはママ頑張ってぇぇぇ!!」
突然その様な声が響き渡った。声の主はヴィヴィオ。そしてヴィヴィオは涙目になりながら
必死に叫ぶのである。
「なのはママ…頑張って! ママを笑う酷い人に負けちゃダメだよぉぉぉ!!」
「ヴィヴィオ……。」
必死に応援するヴィヴィオにユーノ達も驚きを隠せなかったが…直後に……
「なのは頑張れ! 後少しだ!」
「なのはさん頑張ってください!」
「頑張れ! 頑張れ!」
と、ヴィヴィオに続いてユーノ、スバル、ティアナ、ヴィータも応援し始めた。さらに…
「なのは頑張れぇぇぇぇ!!」
「フェイトさん!?」
何と赤組であるフェイトまで応援し始めたでは無いか。
「もう赤とか白とか関係無い! 私は応援する事しか出来ないけど…応援する!
だからなのは頑張って! 負けないでぇぇぇぇぇぇ!!」
「そうですよ! なのはさん頑張って下さい!」
「負けないでぇぇぇ!」
フェイトにつられて今度はエリオとキャロもまた応援を始めたのだ。
確かにそれらも全体のなのはを笑う声に比べれば微々たる物だったのかもしれない。
しかし…なのはを応援する声もまた徐々に増えて行った…………

「なのは頑張れ! 頑張れ!」
「頑張れぇぇぇぇぇ!!」
「負けるなぁぁ! ゴールはあと少しだぞぉぉぉぉ!!」
何時の頃だろうか…競技場はなのはを応援する声一色に染まってしまっていた。
彼等の大半も最初はなのはの運動音痴っぷりを笑っていたのかもしれない。
だが…その恥をかきながらも…必死に頑張るなのはの姿に…彼等は心を打たれたのかもしれない。
そして………やっとなのはが800メートル走り終えた所で……
「やったぁぁぁ! ゴールだぁぁぁ!」
「おめでとう! おめでとう!!」
誰もが一斉になのはの所へ一斉に駆け寄り、何と胴上げを始めてしまったのだ。
「ワーッショイ! ワーッショイ! ワーッショイ!」
こうなってはもう白も赤も無い。誰もがなのはの健闘を称え…祝福した。

運動会はこうして幕を閉じた。結果として赤組の勝利に終わったが…
皆にとってもはやその様な事は関係無かった。彼等の心に勝敗を越えた大きな物が芽生えていたのだから…。

翌日…運動会の余韻を残しながらも皆は元通りそれぞれの仕事に付いていた。
無論なのはも………
「それじゃあこれから抜き打ち模擬戦をしま〜す!」
「ええ!? 抜き打ちですか!?」
「そう言わないの。貴方達が実戦に出た時に戦う時空犯罪者はヨーイドンで相手をしては
くれないんだよ。連中にとって不意打ちなんて当たり前。だから抜き打ち模擬戦くらい
楽にこなしてもらわなきゃ…。」
なのはは笑顔でそう教導相手の若手魔導師に言い…早速模擬戦がスタートしたが…
「ギャァァァァ!」
「ギョエエエエエ!!」
「アヒィィィィィィ!」
練習場は忽ち阿鼻叫喚の地獄と化した。なのはは知っていたのだ。
今自分が教導を行う若手魔導師の誰もが先日の運動会で自分の運動音痴っぷりを笑っていたと…。
「嘘だろぉ!? 運動はてんでダメなのに何で魔法使わせたらこんなに強いんだよぉぉぉぉ!!」
こうして…若手魔導師達の悲痛な叫び声は日が暮れるまで続いた。
                おしまい



著者:◆6BmcNJgox2

このページへのコメント

ある意味こういうドジっ子ななのはさんて、なんだか可愛いく思える。

0
Posted by 名無し 2012年07月19日(木) 23:07:20 返信

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