[191]失った悲しみを埋められる者 1 ◆6BmcNJgox2 <sage>2007/08/05(日) 15:41:08 ID:zFF0nBnf
[192]失った悲しみを埋められる者 2 ◆6BmcNJgox2 <sage>2007/08/05(日) 15:43:30 ID:zFF0nBnf

「ごめんね…ごめんね…なのはままともう一緒にいられなくて…ごめんね…。」
「ヴィヴィオ!! 死んじゃだめぇぇ!!」
「ごめんね…ごめ……………………。」
「ヴィヴィオォォォォォォォォォ!!」

スカルエッティ率いるナンバーズと機動六課の戦いは機動六課の勝利に終わった…。
しかし…なのははヴィヴィオを救う事が出来ず、その勝利も後味の悪い物でしか無かった。
ヴィヴィオを救う事が出来なかった事が余程ショックだったのだろう。
その日を境になのはは火が消えてしまった様に暗くなった。当然訓練にも身が入らなくなり、
模擬戦でもスバルやティアナ相手にさえ遅れを取る毎日…。スカルエッティ軍団との
最終決戦で見せたあの鬼の様な強さからは想像も出来ない程…なのはは弱くなってしまった。
勿論リンカーコアに異常があるワケでは無い。身体的には健康的で何時も通りである。
異常があるとすれば…それはむしろ精神面の方。今のなのはにはやる気と言う者が
まるで感じられない。やはりヴィヴィオを失った事がなのはの心に大きな傷を与えていたのだろう。
それでも何時までもウジウジされたら皆が迷惑する。とにかく皆はなのはを励まそうとしたり、
何か別の事をさせてストレスを発散させようとしたり、魔砲を撃ち込んだり、頬を張るなど
渇を入れたりなど、様々な方法で何とかしようとしたが…それさえダメだった…。
皆はもうほとほと困り果ててしまった。

一方なのはの落ち込みはますますエスカレートし、ついには酒に溺れる様になってしまった。
「ヴィヴィオォォォォォ!! ぬぁんでぇ死んでしむぁったのぉぉぉぉぉ!!?」
「おいおい嬢ちゃん…その辺にしといた方が良いんじゃないか?」
「うるせぇよぉ!! これが飲まずにいられるかっとぇんどぁぁぁぁぁ!!」
まだ19歳だと言うのに大酒を飲み、それはおでん屋台のオヤジにさえ心配される程だった。

だが、本当に問題なのはここからだった。
何しろなのはは管理局内でも堂々と酒を飲むようになってしまったのである。
「なのはもうやめて! ここでお酒を飲むなんてやめて!」
「うるせぇ!! てめぇが私に指図すんなぁ!!」
「!!」
フェイトがなのはを注意した直後、なのはに暴言を吐かれた上に魔砲で吹っ飛ばされてしまった。
いくらなのはが酒に酔っているとは言え、あんなに仲が良かったフェイトに
暴言を吐くなど皆には信じられない事だった。
「あああああムシャクシャするぅぅぅ!! もうみんな死んでしまえぇぇぇぇ!!」
そしてついになのはは暴れだしてしまった。皆は必死になのはを止めようとするが
こういう状況に限ってなのはは滅茶苦茶に強い。スバル・ティアナ達は勿論の事、
はやてさえもまるで赤子扱いされるがごとく一蹴されてしまった。
もう終わりだ。この暴走する破壊神の手によって管理局は全滅…そう思われた時だった。

「なのは…君はそんな事をする人じゃなかったはずだ…やめるんだ…。」
なのはの前に突如姿を現したのは無限書庫司書長を勤めるユーノ=スクライアその人である。
「ユーノ駄目…今のなのはは…。」
フェイトはボロボロの身体を引きずりながらなのはに近付くユーノを止めようとするが
それよりも先になのはの魔砲がユーノへ向けられていた。
「ユーノ君なんかに私の気持ちが分かってたまるかぁぁぁぁ!!」
「なのはダメェェェェェェ!!」
フェイトの叫びも空しく、ユーノはなのはの魔砲に飲み込まれてしまった。
しかし…そこにはまるで何事も無かったかの様に立つユーノの姿があるのみだった。

「う…そ…。」
「なのは…もうやめようよ…。君が一体何故そんな行動を起こしたのかは分からないけど…
だからって全然関係の無い皆を傷付けるなんて間違ってるよ。」
「う…うるさぁぁぁい!!」
なのははユーノに魔砲を連射し、ユーノはそれに耐え続けながらも説得を続けた。
そして皆は呆然とその二人の戦いを見入る事にしか出来なかった。
既になのはの魔砲を何発も受けていると言うのに…ユーノの防御力は何と凄まじいのだろうと…。
しかし、いくら防御力の高いユーノと言えどもダメージを全く受けていないと言うワケでも無く、
少しずつダメージを蓄積させて行く。だが…それでもユーノはなのはへの説得を止めないのである。
そして…ついにユーノはなのはと目と鼻の先にまで肉薄し…なのはの頬を叩いた。
「!!」
それは特に何でもないただの平手打ち。鞭打の様な特殊性も無ければ、ユーノ自信に
そこまで力も無く、大した効き目の無い平手打ち。しかし、その一発は
なのはにどんな魔法攻撃よりも遥かに凄まじいダメージを与え、動きを止めていた。
「なのは…どうしてこんな事をするんだい…?」
ユーノの目からは大粒の涙が流れていた。なのはのこんな姿など見たくなかったから…
「だって…だってヴィヴィオが…ヴィヴィオがぁぁぁぁ!!」
「え…。」
なのはの口から出たヴィヴィオと言う言葉でユーノは以前聞いた事を思い出した。
機動六課が一人の女の子を保護し、なのはが母親代わりになったが…
スカルエッティの軍団との戦いの中で犠牲になってしまったと言う話である。
そしてなのはがここまで荒れてしまった原因はそこにあったのだとユーノは悟った。
「そのヴォヴィオって子はそんなに大切だったのかい?」
「…。」
なのはは目に涙を浮かばせながら軽く頷き、ユーノはなのはの肩に手を乗せた。
「でもさ…なのは…今のなのはの姿を天国のヴィヴィオが見たら…どう思うかな?」
「!」
「きっと悲しむと思うよ…。だからもうこんな事はやめようよ。それでもムシャクシャする
って言うなら…僕が代わりに受けてあげるから…。エクセリオンバスターでも
スターライトブレイカーでも…受けてあげるから…ね…。」
ニッコリとした微笑を向けるユーノになのはの目に大粒の涙が浮かんで来た。
「う…うわぁぁぁぁぁ!! ユーノ君!! ごめん!! ごめんなさぁぁぁぁぁぁい!!」
なのはは大声を出して泣き出し、ユーノに抱き付いた。そしてユーノに抱かれながら
なのはは涙が枯れるまで泣いて泣いて…泣き続けた。

「やっぱり…敵わないのかもね…悔しいけど…。」
ユーノに抱き付いて泣き続けるなのはを見つめてフェイトは悲しげな顔をしながらも
二人の仲を認めた。やっぱり真になのはのパートナーと呼べる存在はユーノなんだと…

それから…色々あってなのはとユーノはゴールインする事を決めた。
ヴィヴィオがいなくなった悲しみを抱えたなのはには支えられる人が必要であるし、
かつ、またなのはが暴走した時に止められる力を持った人も必要。
だからこそ二人のゴールインには誰も文句は無かった。

さらに時は流れ、二人の間に無事第一子誕生。しかし中々名前の方が思い浮かばず、
産婦人科の病室のベッドでなのはは自分の子供を抱きながら名前を考えていたのだが…その時だった。
「なのはままただいま。」
「!!」
突然の聞き覚えのある声になのはは硬直した。病室内にはなのはと自分の子供の二人しかいない。
しかもその声は死んだはずのヴィヴィオの声では無いか…。これは一体どういう事か…
「まさか…。」
なのはは自分の子供を見つめた。そして以前テレビで見たオカルト系の番組にあった
【前世の記憶】を持って生まれて来た人と言うのを思い出した。
「もしかして…。」
なのはは思った。きっとこの子はヴィヴィオの生まれ変わりなんだと。
ヴィヴィオが本当に自分の子供として生まれ変わってきたのだと…。

それから間も無くして夫であるユーノがやって来た時になのはは言った。
「あのね…この子の名前…ヴィヴィオって付けたいの。」
                     おわり

著者:◆6BmcNJgox2

このページへのコメント

ifのお話ですね、最後のなのはの台詞に泣きます。

0
Posted by 卓也 2013年02月14日(木) 23:26:42 返信

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