758 名前:十一番とツンデレ彼氏IN愛の巣 [] 投稿日:2010/02/28(日) 23:33:52 ID:kZCtIWz6

多くの場合、独身の武装局員は寮住まいだ。
厳しく、そうしろ、と定められている訳ではない。
だが、そうした方が良い、という風潮はある。
緊急時の召集、隊内風紀や隊員同士のコミュニケーション。そして何より、若い隊員にとっては金銭的な面でも寮住まいでいる事が助けになる。
だが、中には例外がおり、彼もまたそうだった。
同年代の同僚と違い、一人局員向けの賃貸マンションに住んでいる。
理由は幾つかある。
一つは音。
彼の部隊の寮は近くに工場があって少々うるさい。
不眠症の気のある彼からすれば、あまり住み心地の良い場所ではない。
二つ目は煙草。
寮はほぼ全ての場所が禁煙であり、愛煙家の気のある彼にとってはかなり辛い。
等々。
これらの事情から彼は、自分の住処を安く済む寮でなく、高く付こうともマンションにしたのだ。
懐に厳しいのがたまに傷ではあるが、一人暮らしというのは中々に悪くない。
時折、悪戯好きの子猫が訪れるという事もあるから。

家に帰った彼が見たのは寝室のベッドを盛り上げる小さな山だった。
シーツの下で山を作っているのが何なのか、すぐに察しはついた。
「何やってんだお前は」
シーツの小山にそう声をかける。
するとそれはモゾモゾと動き、ひょっこりと顔を出した。
後ろで纏められたぴょんぴょんと逆立つ赤毛、悪戯っぽい笑顔。
「えへへ、ばれちゃったッス」
まるで企んでいた悪戯がばれてしまった子供のようにあどけない笑顔をシーツから覗かせて、彼の恋人、ウェンディは言った。
だが彼の返した言葉は冷徹そのもの。
「ったく、お前は……来る時は先に連絡しろって言ったろうが」
「驚かしたかったッス」
「だからってなんでまたベッドに」
言いながら、彼はシーツを剥ぎ、そして絶句した。
なにせシーツをめくった下に隠されていたのは……一糸纏わぬ乙女の裸身だったのだから。
「ちょ、おま……なんつう格好してんだ!?」
「なにって、全裸ッスけど?」
「ッスけど、じゃねえよ! 女ならもうちょい恥じらい持て!」
突然恋人の裸身を目の当たりにし、彼は顔を赤くして叫ぶ。
だがウェンディときたら、そんな彼の慌てようを面白そうに見つめながら、そっと首に手を絡めた。
「だって、最近全然二人っきりになれなかったじゃないッスか」
そして愛くるしさと蠱惑と恥じらいの混在した笑みで、囁く。
「女の子だってエッチな事……したくなるんッスよ?」
ふわりと、花が花弁を開かせるような媚態。
頬を染めた微笑み。
言外に要求された、私を抱いて、というサイン。
彼はゴクリと一度唾を飲み、そっとウェンディに顔を寄せる。
「ったく……今度からは、普通に誘えよな……このバカ」
悪態を吐きながらも決して疎ましさなど感じさせず、むしろ愛に満ちた声でそう告げ……彼はそっとキスをした。
そして優しく彼女と体を重ねながら思う。
なるほど、独り暮らしは悪くない。
こうして誰憚る事なく、愛する少女を抱けるのだから。
と。
終幕。


著者:ザ・シガー

このページへのコメント

続編にも期待してまッス!

0
Posted by                                  2010年04月02日(金) 00:05:45 返信

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

メンバーのみ編集できます