千年の業
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nano69_264 2010年10月10日(日) 11:28:46履歴
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291 名前：千年の業 18 [sage] 投稿日：2010/07/19(月) 20:06:14 ID:1SiKrnX2 [23/24]
ドクターに呼び出された私が応接室の扉を開くと、三対の瞳が私に視線を注いだ。
それはソファに腰を下ろしたドクターとウーノ、そしてその向かいに座る騎士ゼストだった。
「やぁ、チンク済まないねぇ」
気安い様子で私に声を掛けたドクターは、三分の一程に中身の減ったカップを置く。
対して、騎士ゼストのソーサーには、少しも濡れていないスプーンと、なみなみと紅茶をたたえるカップが置かれていた。
ルーテシアお嬢様やアギトさんのいない所では、出される食物に手を付ける事はない。
いつもの事とは言え、少し、心が痛む。
「スカリエッティ、用件というのは何なのだ」
騎士ゼストが、猜疑心を隠すことなく尋ね掛ける。
「騎士ゼスト、せめてチンクが座るのを待つ位してやっても良いじゃないか」
ドクターは、そんな騎士ゼストの様子を気にもとめずに軽口を叩く。
騎士ゼストは、胡乱そうにドクターを睨め付ける。
「空いている椅子など無いぞ」
騎士ゼストの言う通り、普段は八脚あるソファが、ドクターとウーノ、そして騎士ゼストが座っている分しかなくなっていた。
「チンクは小さいからね、騎士ゼストが端に依れば、隣に座る事ぐらい可能なはずさ」
え、ちょ、ドクター！
「騎士ゼストの体格が平均的ミッド人よりも大きいとは言え、二人掛けのソファを独り占めする理はないだろう？」
「どの口が、人の道理を吐くか」
忌々しげに呟きながら、騎士ゼストが体を左に寄せた。
えっと、これはつまり……。
「何をしている、早く座れ」
「は、はヒ！」
騎士ゼストの声に私の返事は裏返る。
「……失礼します」
自分でも分かる位顔を赤くして、消え入りそうな声と共に、騎士ゼストの隣に座る。
ほんのりと、石鹸の香りがする。
久しぶりの基地訪問を機に、ルーテシアお嬢様の温水洗浄を手伝われたのだろう。
「では、本題にはいるとしようか。ウーノ、例の物を」
言われてウーノは、銀色のトランクをテーブルの上に乗せる。
そのトランクの中には、金属製の奇妙なオブジェクトが収まっていた。
南京錠で固定された板鋼の輪と、それに直交する様に二カ所で固定された黒革の帯。
革帯には、直径七〜八センチのぐにゃりと曲がった金属のチューブが固定されている。
そして、異なる形状の鍵が三つある事から、少なくとも南京錠の他に二カ所、
恐らく革帯と板鋼の交点にも鍵穴があるのだろう。
「何のつもりだ、スカリエッティ」
騎士ゼストがいつもに増して強い侮蔑の眼差しを持ってドクターを睨む。
「ドクター、これは一体なんですか？」
ゼストの疑惑、そして私の問いに、ドクターは笑いながら答える。
「古代ベルカ諸王時代に量産されたロストロギアさ。
とは言え、もう何年も前に解析が済んでいて、管区の行政機関に申告さえ出せば、
戦闘用デバイスよりも遙かに簡単に所有が認められる程度の代物だよ」
「ロスト…ロギアだと？」
ロストロギアだから気分を害したわけではないのか？
「ああ、そうだよ、騎士ゼスト。効果としてはまぁ、着用者専用の純然たるブーストデバイスだね」
ブーストデバイス、ルーテシアお嬢様のアスクレピオンとは随分違うが、これはもしかしたら被るのだろうか？
ああ、それだと納得がいく。あの湾曲したチューブは兜状デバイスの角なのだ。
「騎士ゼストは無茶をしすぎるからね、これを付ければ少しは体への負担も減るだろう？」
「必要ない」
騎士ゼストは迷うことなく拒絶する。
どうして、この人はこんなにも頑ななのだろう。
いや、分かっている。
こんなにも頑なにしてしまったのは私が彼を、彼等を殺してしまったからなのだ。
「まぁ、そんな事を言わずに受け取ってくれたまえ。
君が生に執着していない事は理解しているつもりだが、
余り自分の命を軽んじていると優しいルーテシアを泣かせてしまうよ？」
私も、きっと……否、私に泣く資格など無い、か。
「それに、生きる事への執着が無くとも、まだ目的は果たせていないのだろう？
だったら手段を選ぶ必要もないだろうに」
「……貴様の目的は何だ、スカリエッティ」
「高ランク魔導士のブーストデバイス使用に関する運用データさ」
歯軋みし、黙考する騎士ゼスト。
その間にドクターはウーノが注いだ新しい紅茶を飲み、スコーンを口にする。
「良いだろう、使ってやる」
ドクターが三杯目の紅茶を飲み干した後に、騎士ゼストは声を、言葉を絞り出した。
「そう言ってくれると助かるよ。じゃあチンク、装着を手伝ってやりたまえ」
ああ、その為に私は呼ばれたのか。
「待て、スカリエッティ！ 自分で付ける」
騎士ゼストが叫ぶ。
「いや、それではダメなんだよ、騎士ゼスト。
このロストロギアは女性が使用者に装着させなければ機能が発動しないんだ」
「何だと！」
「一度は言を翻してまで使うと決めたんだ、まさか更にもう一度使わないなどと言う無様な真似はしないだろうね？」
「ならばウーノかトーレにでもやらせる」
やはり私はこの誠実な男に嫌われている。
故に、ドクターの言葉には反するが、私自ら騎士ゼストに断ろう。
「そうだった。騎士ゼスト、済まない。私には貴公の手伝いをする資格など無かったな。
貴公の優しさについ忘れてしまっていた」
悲しさを顔に出すまいと思う。
「資格云々という問題ではない」
ああ、それ以前の問題だ。
私は刃舞う爆撃手。
只の屠殺者だ。
己の殺した騎士に一体何を……
「お前は若すぎる」
…
……
………
「それは小さいという事か！ 小さいという事なんだな、ゼスト！」
我慢していた涙が、感情の爆発と共に溢れ出す。
「いや、そう言うわけでは……」
「ではどういう訳なのだ！ どういう理由で私を拒絶する！」
激情に任せ、何度も彼の胸板に拳を打ち据える。
「ハッハッハッハッハッ、騎士ゼスト。チンクにここまで言わせたのだから、相応の責任を取ったらどうかな？
何、さっきもルーテシアに背中を流して貰ったのだろう？ 同じようなものじゃあないか」
テーブルの向こう側でドクターが口添えをする。
「それとこれとでは随分と違う。だいたい、チンクはこれが何なのか理解していない」
「それはドクターが説明してくれた」
私の答えにゼストは首を左右に振る。
「装着方法を理解していまい」
「見れば分かる、頭に被るのだろ？」
「ぷっ」
私の答えにウーノが吹き出した。
むぅ、何がおかしい。
「チンク、それは腰に履くデバイスよ」
笑いを必死に噛み殺しながら、ウーノは私の勘違いを訂正する。
何と、草刷であったか。気恥ずかしさに顔が赤くなる。
「補足するならば、全裸の状態で着用する必要がある。ネクタイも、靴下もダメだ」
ドクターがウーノの説明に……ウーノの説明に……
落ち着け、チンク。
まず深呼吸をして、状況を整理する事から始めるのだ。
ゼストの匂いがする。
それにゼストに子供扱いされた所為で思わず彼を叩いてしまったが、
この姿勢だと凄くゼストが近くて、心臓の音さえ聞こえる。
あ、基地に着いた時には生えていた、柿渋色の無精髭が綺麗に剃られている。
目尻の皺が前にあった時よりも少しだけれど増えている。
それから……。
「無理をするなチンク、誰か別のナンバーズにやらせる」
ついゼストの状態をつぶさに観察することに夢中になった私に、
ゼストは私が臆したものと勘違いしたらしく、私の頭に手を置きながら口を開いた。
だが、見くびられたままでは引き下がれない。
「ミ・ミ・ミ・ミ・ミミミミミッ」
「耳？」
立ち上がり、ゼストの眼前に人差し指を突き付けながら言い放つ。
「…見くびるなゼスト！ 私とて伊達に十年以上も活動しているわけではない！ お前の裸位怖くはない！」
思わず目を瞑り、顔を逸らしてしまったが、ビシッと言い放つ。
「騎士ゼスト、ここまで言われて断っては逆にチンクに失礼だろう、諦めたまえ」
良いながらドクターが立ち上がる。
「では私達は失礼させて貰うとしよう」
「待て、スカリエッティ！」
「断るよ騎士ゼスト。ウーノが他の男の裸を見るだなんて、私が耐えられないからね」
振り向きもせず立ち去るドクターの後を、ウーノはティーセットの載ったお盆を持ちながら追った。
□
ドクターが退出した後しばらく続いた静寂を破ったのはゼストであった。
「仕方あるまい……済まないがチンク、装着を手伝ってくれ」
溜息の後に、ゼストは告げた。
「もちろんだ、大船に乗ったつもりで任せろ！」
自らの胸を叩いて、期待に応えてみせると告げると、ゼストは小さく笑った。
カチャカチャと音を立てて手っ甲を外し、テーブルに置く。
それから、裾のすり切れたコートを脱いでソファに掛けた。
装甲ブーツは膝当てを含めて、片足につき四カ所ずつ、計八カ所の留め金があり、ゼストはそれを下から順に外していく。
靴下は延べ五カ所、繕った跡が見えた。
土色に汚れた帯をほどいてベストを脱ぎ、折り畳む。
それから、長袖のシャツを脱いだ所で私は慌てて背中を向けた。
六つに割れた腹筋と厚い胸板。数多の死線を潜り抜けた証と言わんばかりの古傷が目に入ったからだ。
「やはり、トーレに頼むか？」
「必要ない！」
思わず叫ぶ。
ドクターではないが、その…ゼストの裸を他の姉妹が見るのは、イヤだ。
「そうか」
衣擦れの音が再開する。
それから一分と経たないうちに、私は用意が出来たと告げられた。
「う、うむッ」
大きく深呼吸をして、一気に振り返る。
そこには美の女神すら驚嘆する、鋼の様に鍛え上げられた肉体があった。
デバイスを装着すべき腰部には、髪の毛と同じ柿渋色の縮れた体毛が生え、
その中から十センチ程の太く黒ずんだおち…ペニ……男の人としてのアレが放物線を描いて垂れ下がっている。
「で、ではデバイスを装着するぞ」
私は宣言すると、トランクに収められたロストロギアを持ち上げる。
〈ブーストデバイス・コイシュハイツギュルテル予備起動します。装着チュートリアル使用しますか？〉
「よろしく頼む」
ロストロギアの申し出に私は頷く。これで、百万の味方を手に入れた様なものだ。
〈了解しました、では指示に従って装着させてください。
まず、二番と三番の鍵を使ってベルトとフロントおよびバックを分離してください。
分離作業以降装着完了まで、男性が私に手を触れると、作業を全てやり直していただく必要があります。注意してください。
次に、一番の鍵を使ってベルトを装着者の腰に固定します〉
「ゼスト、万一触れるといけないから、頭の後ろで手を組んでくれ」
「ああ、分かった」
〈ベルトは二番の鍵穴が正面に来る様に装着してください〉
チュートリアルに従って、私はゼストの引き締まった腰に板金製のベルトを巻く。
レリックの埋め込み手術後騎士ゼストの介護を任された私だが、意識が覚醒するまでは再生ポッド内にいたし、
再生ポッドを出た後は介護と言うよりも、自棄同然の鍛錬を止める事や、
ルーテシアお嬢様の分を含めた食事の支度などしかしていない。
だからその、ゼストのアレを間近で見るのは初めてだ。
いや、アレを注視しているわけではないぞ、決して！
〈一番鍵の装着を確認しました。続いて着用者のおチンポがムけていない場合、カワをムいて下さい〉
「な、生皮をはげというのか、このデバイスは！」
驚愕のあまり、私は叫ぶ。
「いやそうではない、チンク。男性器の状態を指すスラングだ。俺は剥けているから、その作業はしなくて良い」
正直、彼に刃を立てるなど、二度としたくない。
だからゼストの言葉に私はホッとして、スラングの意味について尋ねた
「そうか、それは良かった。ところでゼスト、その、剥けている状態とそうじゃない状態の識別はどうやってすれば良いんだ？」
その問いに、ゼストの表情が歪む。
ム？ 何か変な事を言った……言ってしまっている！
「す、済まん！ 今のは無かった事にしてくれ！ 私はゼストの言う事を信じているぞ！」
「ああ、そうして貰えると、こちらも助かる」
ああ、顔が火照る、恥ずかしい！
〈カワがムけている、或いはムき終わったなら、右手でおチンポを掴んで下さい〉
「う、うむ」
ゼストのアレは見た目通り柔らかく、そして温かかった。
〈続いて、ペニスパイプを左手でもって、ペニスパイプにおチンポを挿入してください〉
そう言う事は先に言え！
デバイスはトランクと一緒にテーブルの上にあって、手がちょっと届きにくいのだぞ！
仕方ないので体を伸ばしてトランクに指先を引っかけて引き寄せ……なんか右手の感触が変わってくる。
振り返ってみると、右手に握ったアレの形状大きさが、だいぶ変わっていた。
長さが倍に、太さも親指と人差し指で輪をつくる位に太くなっている。
そして何より、硬く反り返っている。
「ゼスト、これではデバイスを装着できないではないか。早く力を抜け」
「無茶を言うな」
渋い顔でゼストは私の要求に答える。
「む、不随意筋なのか、これは？」
「まぁ、その様なものだ」
と、なると困った。
不随意筋という事は、この、アレが反り返っているのは、私がアレを手で握っている所為で、
手を放さない限り戻らないという事だ。
そしてアレに手を触れずにデバイスを装着するのは、控えめに言ってもかなり難しい行為だと容易に想像が付く。
《ユーガットメール》
悩む私の脳内に、合成音が響く。ウーノからだ。
メールのタイトルは「怒張した男性器の鎮め方」。
このタイミングで届くという事は、モニターされているという事か？
だが、まぁ良い。
手段を知らず無様な姿をさらしているのは事実なのだ、素直にウーノの助言に従おう。
私はメールを開封し、
「………えぇ〜！」
驚きのあまりに声を上げてしまった。
「どうした、チンク。やはり止めないか？」
「いや、なんでもない。大丈夫だ、安心しろゼスト。直ぐ、その、コレの緊張を解いてやる」
「待て、何を……フヌゥ！」
言って私はメールの指示に従って、右手に握ったゼストのアレを頬張った。
珍妙な悲鳴を上げて後退するゼストを逃がすまいと、両手に握ったものを放して、代わりに腰と太股を掴む。
結果的にそれはタックルしているのと同じような状態で、ゼストは大きくバランスを崩して倒れた。
そして、一緒に倒れ込んだ私は、ゼストのアレが喉の奥に突き刺さり、反射的に嗚咽した。
「大丈夫かチンク！」
受け身も禄にとれなかったくせに、真っ先に私の事を心配する。
全くこの男は……。
だから私はゼストのアレから口を離し、ゼストに言い放つ。
「変に抵抗するから、危うく胃の中のものを吐き出すかと思ったぞ、ゼスト！
これ以上抵抗するな！」
卑怯な言い回しだと、自分でも思う。しかし私はゼストの役に立ちたいのだ。
「いや、しかし……」
その想いが伝わらないのか、ゼストは未だに私を拒む。
「この期におよんでもまだ私の手を借りたくないというのは、私をそこまで信用できないという事か」
「そう言うわけではなくてだな」
ではどういう理由なのだ！
「そんなにウーノとかディードとかトーレとかクアッ……は流石にないとして、ディエチとかが良いのか！ オッパイがそんなに大好きなのか！」
視界の先が歪む。クアットロめ、まさかシルバーカーテンを使って紛れ込んでいるわけではないだろうな。
「……お前を傷つけたくはないのだ、チンク」
言葉がダガーとなって私の胸に突き刺さる。
勘違いするな、勘違いするんじゃないぞ、チンク。
この男は好きとか嫌いとかそう言う意味で私を傷つけたくないのではない。
ドクターの手駒以外に選択肢の無かった私達を、保護されるべき善良な市民の一人と捉えているだけに過ぎないのだ。
うん、解っている。
ゼストは誇り高きベルカの騎士で、即ち天然のジゴロなのだから。
「フン、だったらこれ以上抵抗するな。その方が傷つく」
言って私はゼストの胸板に、彼に背を向けながら腰を下ろすと、再び硬直しているアレの緊張をほぐす作業を開始した。
そびえるアレを舐め上げ、急所を握りつぶさない様に優しく手で揉む。
「待て……チンク……この行動……そこは、フヌ・・」
矢に例えるならば鏃の部分まで口に含み、舌でその切っ先をほじる。
ゼストは私を引きはがそうとするが、私とて戦闘機人。
データベースにあるサブミッションの応用でゼストの体を組み敷いたままにする。
メールにあるスペルマ？が早く出てくるようにと、鏃の先を吸うと、唇の隙間から空気が漏れ込んで、はしたない音が響く。
続いて首を大きく上下に動かしてゼストのコレを摺動したりするが、スペルマはなかなか排出されない。
その内、作業の所為で体がだんだん熱くなってきて、
それから、その……股間がむずむずとしてきた。
感覚的に尿意ではないのだけれども、むずがゆくて我慢がならない。
ゼストの急所を揉んでいた左手をはなし、股間の疼きをおさめようと撫でる。
しかし収まらない。
寧ろその感覚は増大する一方だ。
こんな事をしている時ではないのに、
ゼストにブーストデバイスを取り付けねばならないのに、
ゼストが見ているのに、
ゼストと触れているのに、
ゼスト、ゼスト、ゼスト、ゼストゼストゼストッ。
「ファアァアアアアァ！」
背筋を雷の様に何かが駆け上がった。
瞬間、視界が真っ白い光に埋め尽くされ、全身の筋肉が弛緩する。
上下、前後左右が判らなくなる浮遊感。
それは初めて経験した暴力的な感覚によって情報処理がフローした所為ではなく、
実際に弛緩した私をゼストは引きはがし、自らの隣に座らせた為だった。
「大丈夫か？チンク」
混乱する私を落ち着かせようと、ゼストは優しく語りかける。
「ヒャめだぁ、ゼしゅトぉ」
回らない呂律で私はゼストに返す。
股間のうずきが止まらない。
ゼストの優しさが堪らない。
自らの手ではこの切なさに耐えられない。
「ヒャフけてェ、ヒャフけてじぇひゅトぉ」
恥も外聞もかなぐり捨てて、ゼストに縋り付いて泣く。
ゼストの事しか考えられず気が狂ってしまいそうだ。
ゼストの肌を、体温を、匂いを、音を感じ続けなければ壊れてしまう。
だのに、ゼストは再び私を引き離した。
赤子の様に泣きたくなって、そして口吻をされた。
「……フェ？」
私の唇を割って入ってくる熱い肉の塊は、舌を蹂躙する様に絡め取り、咥内を優しく愛撫する。
注ぎ込まれた甘露は、ゼストの唾液だ。
嵐の様なキスを追え、ゼストの瞳が少しずつ離れていく。
「落ち着いたか、チンク」
……え？ アッ、頷く。
「少しだけ」
全身をさいなむ切なさはいまだ猛威をふるっているけれど、ゼストがいる。
「体の方はどうだ？」
「ゼストと居たい」
ウーノやドクターならばこの感覚の処置を知っているのだろうけれど、それは想いまで消えてしまいそうでいやだった。
「そうか……」
ゼストは目を瞑り、私の思いに黙考する。
「お前の男になっても良いか、チンク」
雄弁に語るゼストの瞳によって、彼の問いが私の躯を慮ったが故の、今この場限りのものであると理解してしまう。
それでも、ゼストといる事が出来るなら、体中がバラバラになってしまいそうなこの切なさにも耐えられる。きっと、死んでしまったとしても幸せだと思える。
だから私の答えは決まっていた。
「嬉しいぞ、ゼスト」
ゼストに触れようと両手を差しのべた私を、彼が抱きしめる。
そして、二度目の口づけ。
ゼストの舌はワルツを手ほどく様に、私の舌と絡み、時に引き寄せ時に押し込む。
胸の先の痛痒を誤魔化す為に、ゼストの大きな胸に押しつける。
すると今度は股間のうずきが耐えられなくなってきて、だから両手だけでは足りなくて、両足まで使ってゼストに縋り付く。
あの真っ白い暴力が、私の中を埋め尽くそうと、躯の奥底から隊伍を組んでやってくるのが感じ取れ、
この現実に掴まっている為にゼストの舌をむさぼる。
その時だ、感覚を堰する様に私の脊髄を押さえていたゼストの腕が一つ外れた。
はずれた腕はボディスーツの上から私の股間に触れ、臍へ向かって僅かに進むとうずきの中心を押し潰した。
「ヒゥン！」
脊髄に置かれた堰を突破して、白い感覚が脳まで達する。
でも足りない。
最初の暴虐さに及ばないと言うだけではなくて、股間の更に奥、胃の腑の直ぐ下が酷く熱を求めている。
「チンク、スーツを脱いでくれるか？」
ゼストの頼みに私は、言葉を発するのも煩わしくて首を一度、縦に振る。
ドクター謹製のボディスーツは、携帯型の質量兵器やＢランク相当の魔力攻撃に対してほぼ完璧な防御力を発揮する一方で、
そよ風すらも感じる事が出来る程に感覚を遮蔽しない。
ドクターはこれを二世代以上もダウングレードした手袋を通販で売っているが、
手指の感覚を重視するミッド脳外科医師会の推奨手術機材に指定されていると聞いた事がある。
しかし、この一枚の生地がどれほど粗雑でぶ厚いものであるか、肌と肌とを重ね合わせると思い知らされる。
ソファに浅く座る私はゼストの胸に縋り付き、彼の奏でる心音に酔いしれる。
昔のバイタルデータよりも、先ほど彼の胸板を叩いた時よりも早く、ゼストの心臓が時を刻んでいる。
私は彼の躰が奏でる音楽を聴きながら、彼の手指に弾かれ唱う楽器へと姿を変える。
体に差し込まれた中指が送出を繰り返す度にくちゅくちゅと水音を立て、口からは喘ぎが漏れ続ける。
中指が差し込まれた私のあそこの上を爪弾かれると、脳幹を駆け抜ける悦びに悲鳴が上がる。
「ゼしゅト、ゼしゅトォ……」
頭の中で反響する快楽に呂律が回らない。
だけれども、もっとずっと奥にゼストを感じたいと心が叫ぶ。
「……入れるぞ、チンク」
耳元で囁かれ、言葉と逆に指が引き抜かれる。
「ふぇ？」
焦がれる気持ちのまま一人にされてしまうのか。そんな恐怖が頭を掠め、泣きたくなる。
しかしゼストは、そんな理不尽な男ではなかった。
右手が私の尻を押さえ、股の谷間に私を奏でていた指よりも太く、熱いものがそえられる。
「痛いだろうが、我慢するんだ」
奥で疼く私の躰と、ゼストの熱いものとを遮る一枚の膜、それを破るというゼストの宣告に、私は彼の胸に抱かれたまま頷いた。
「ゆくぞ」
「…ヒュア！」
体の中に異物が差し込まれた瞬間、鋭い痛みとそれすら押し流す快感に視界を星が埋め尽くす。
私はゼストから離れまいと爪を立てる。
ゼストが躰を前後に振り、そのたびに子宮が叩かれる。
「もっヒョ…もっヒョッ……モッヒョォ！」
願うたびにゼストの動きが大きくなり、産道から理性が掻き出される。
身体がぶつかり合う音、汗の匂い、赤く火照る肌の熱。
「う…ム……」
呻き声と共に尻に宛われていたゼストの手が腰へと移動する。
私は、その感触に彼が離れようとしていると気付いたのだろうか、彼の腰に両足を回してしがみついた。
「待て、チンク！」
ゼストの叫びと共に、私の体内に熱い快楽が衝撃となって注ぎ込まれ、私はまたあの白い世界に溺れ、意識を手放した。
目覚めて、まず感じたのは心の安らぐゼストの匂いであった。
そして、端にだけ安堵の表情を浮かべる彼の顔。
「目を覚ましたか、チンク」
一瞬、どうしてこんなにもゼストの事を近くに感じていられるのか判らず、彼の瞳をただ見詰める。
とろり
と、熱く柔らかなものが流れ出る感覚に、私はゼストから視線を外して自らの腰を見下ろす。
一条の血と、白濁した液とがあふれ出ているのを見て何をしていたのか思い出す。
「ゼスト、その！」
「気をやっていたのはほんの一分ほどだ」
それは、体内のログを見れば判る。
だが、私が尋ねたいのは別の事だ。
羞恥で頬が赤くなる事を感じながら、私は覚悟を決めて問うた。
「もう一度してはくれないか？」
□
結局、ゼストを求める心が餓えを感じなくなったのは、ゼストが私にあの熱い快楽を八回も注ぎ込んだ後であったが、
本来の目的である件のブーストデバイスを装着するには、まず二人して温水洗浄をしなければならないほどに汗を掻いてしまっていた。
応接室に隣接する来賓用の洗浄室を使ってゼストの背を流し、ゼストに髪を洗って貰った私は、
いつのまにやらガジェット�儀燭�持ってきてくれた新しいボディスーツに着替え、再びブーストデバイスの装着を再開した。
ゼストのアレは、その、八回も活躍した為か不随意筋であるにもかかわらず、
ちょっと触った位では硬直することなく、今度は無事に装着が完了する。
〈コイシュハイツギュルテルの装着を確認しました。
これより装着者の登録・認証の為、オチンポミルクの採取を開始します〉
「なに？」
ゼストが聞き捨てならない事を聞いたという表情をし、
コイシュハイツギュルテルはアレをおさめたチューブをヴゥウゥウウンという振動音を響かせながら、
湾曲した状態から真っ直ぐに伸びていく。
そして、その様から私もこのデバイスが何をしようとしているのか理解して、慌てて止めに入ったのだった。
「待て、こら、ゼストは私の男なのだぞ！」
おわり
著者：超硬合金
274 名前：千年の業 2 [sage] 投稿日：2010/07/19(月) 19:53:05 ID:1SiKrnX2 [6/24]
275 名前：千年の業 3 [sage] 投稿日：2010/07/19(月) 19:53:56 ID:1SiKrnX2 [7/24]
276 名前：千年の業 4 [sage] 投稿日：2010/07/19(月) 19:55:46 ID:1SiKrnX2 [8/24]
277 名前：千年の業 5 [sage] 投稿日：2010/07/19(月) 19:56:20 ID:1SiKrnX2 [9/24]
278 名前：千年の業 6 [sage] 投稿日：2010/07/19(月) 19:57:11 ID:1SiKrnX2 [10/24]
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280 名前：千年の業 8 [sage] 投稿日：2010/07/19(月) 19:58:47 ID:1SiKrnX2 [12/24]
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289 名前：千年の業 17 [sage] 投稿日：2010/07/19(月) 20:05:00 ID:1SiKrnX2 [21/24]
290 名前：千年の業 18 [sage] 投稿日：2010/07/19(月) 20:05:36 ID:1SiKrnX2 [22/24]
291 名前：千年の業 18 [sage] 投稿日：2010/07/19(月) 20:06:14 ID:1SiKrnX2 [23/24]
ドクターに呼び出された私が応接室の扉を開くと、三対の瞳が私に視線を注いだ。
それはソファに腰を下ろしたドクターとウーノ、そしてその向かいに座る騎士ゼストだった。
「やぁ、チンク済まないねぇ」
気安い様子で私に声を掛けたドクターは、三分の一程に中身の減ったカップを置く。
対して、騎士ゼストのソーサーには、少しも濡れていないスプーンと、なみなみと紅茶をたたえるカップが置かれていた。
ルーテシアお嬢様やアギトさんのいない所では、出される食物に手を付ける事はない。
いつもの事とは言え、少し、心が痛む。
「スカリエッティ、用件というのは何なのだ」
騎士ゼストが、猜疑心を隠すことなく尋ね掛ける。
「騎士ゼスト、せめてチンクが座るのを待つ位してやっても良いじゃないか」
ドクターは、そんな騎士ゼストの様子を気にもとめずに軽口を叩く。
騎士ゼストは、胡乱そうにドクターを睨め付ける。
「空いている椅子など無いぞ」
騎士ゼストの言う通り、普段は八脚あるソファが、ドクターとウーノ、そして騎士ゼストが座っている分しかなくなっていた。
「チンクは小さいからね、騎士ゼストが端に依れば、隣に座る事ぐらい可能なはずさ」
え、ちょ、ドクター！
「騎士ゼストの体格が平均的ミッド人よりも大きいとは言え、二人掛けのソファを独り占めする理はないだろう？」
「どの口が、人の道理を吐くか」
忌々しげに呟きながら、騎士ゼストが体を左に寄せた。
えっと、これはつまり……。
「何をしている、早く座れ」
「は、はヒ！」
騎士ゼストの声に私の返事は裏返る。
「……失礼します」
自分でも分かる位顔を赤くして、消え入りそうな声と共に、騎士ゼストの隣に座る。
ほんのりと、石鹸の香りがする。
久しぶりの基地訪問を機に、ルーテシアお嬢様の温水洗浄を手伝われたのだろう。
「では、本題にはいるとしようか。ウーノ、例の物を」
言われてウーノは、銀色のトランクをテーブルの上に乗せる。
そのトランクの中には、金属製の奇妙なオブジェクトが収まっていた。
南京錠で固定された板鋼の輪と、それに直交する様に二カ所で固定された黒革の帯。
革帯には、直径七〜八センチのぐにゃりと曲がった金属のチューブが固定されている。
そして、異なる形状の鍵が三つある事から、少なくとも南京錠の他に二カ所、
恐らく革帯と板鋼の交点にも鍵穴があるのだろう。
「何のつもりだ、スカリエッティ」
騎士ゼストがいつもに増して強い侮蔑の眼差しを持ってドクターを睨む。
「ドクター、これは一体なんですか？」
ゼストの疑惑、そして私の問いに、ドクターは笑いながら答える。
「古代ベルカ諸王時代に量産されたロストロギアさ。
とは言え、もう何年も前に解析が済んでいて、管区の行政機関に申告さえ出せば、
戦闘用デバイスよりも遙かに簡単に所有が認められる程度の代物だよ」
「ロスト…ロギアだと？」
ロストロギアだから気分を害したわけではないのか？
「ああ、そうだよ、騎士ゼスト。効果としてはまぁ、着用者専用の純然たるブーストデバイスだね」
ブーストデバイス、ルーテシアお嬢様のアスクレピオンとは随分違うが、これはもしかしたら被るのだろうか？
ああ、それだと納得がいく。あの湾曲したチューブは兜状デバイスの角なのだ。
「騎士ゼストは無茶をしすぎるからね、これを付ければ少しは体への負担も減るだろう？」
「必要ない」
騎士ゼストは迷うことなく拒絶する。
どうして、この人はこんなにも頑ななのだろう。
いや、分かっている。
こんなにも頑なにしてしまったのは私が彼を、彼等を殺してしまったからなのだ。
「まぁ、そんな事を言わずに受け取ってくれたまえ。
君が生に執着していない事は理解しているつもりだが、
余り自分の命を軽んじていると優しいルーテシアを泣かせてしまうよ？」
私も、きっと……否、私に泣く資格など無い、か。
「それに、生きる事への執着が無くとも、まだ目的は果たせていないのだろう？
だったら手段を選ぶ必要もないだろうに」
「……貴様の目的は何だ、スカリエッティ」
「高ランク魔導士のブーストデバイス使用に関する運用データさ」
歯軋みし、黙考する騎士ゼスト。
その間にドクターはウーノが注いだ新しい紅茶を飲み、スコーンを口にする。
「良いだろう、使ってやる」
ドクターが三杯目の紅茶を飲み干した後に、騎士ゼストは声を、言葉を絞り出した。
「そう言ってくれると助かるよ。じゃあチンク、装着を手伝ってやりたまえ」
ああ、その為に私は呼ばれたのか。
「待て、スカリエッティ！ 自分で付ける」
騎士ゼストが叫ぶ。
「いや、それではダメなんだよ、騎士ゼスト。
このロストロギアは女性が使用者に装着させなければ機能が発動しないんだ」
「何だと！」
「一度は言を翻してまで使うと決めたんだ、まさか更にもう一度使わないなどと言う無様な真似はしないだろうね？」
「ならばウーノかトーレにでもやらせる」
やはり私はこの誠実な男に嫌われている。
故に、ドクターの言葉には反するが、私自ら騎士ゼストに断ろう。
「そうだった。騎士ゼスト、済まない。私には貴公の手伝いをする資格など無かったな。
貴公の優しさについ忘れてしまっていた」
悲しさを顔に出すまいと思う。
「資格云々という問題ではない」
ああ、それ以前の問題だ。
私は刃舞う爆撃手。
只の屠殺者だ。
己の殺した騎士に一体何を……
「お前は若すぎる」
…
……
………
「それは小さいという事か！ 小さいという事なんだな、ゼスト！」
我慢していた涙が、感情の爆発と共に溢れ出す。
「いや、そう言うわけでは……」
「ではどういう訳なのだ！ どういう理由で私を拒絶する！」
激情に任せ、何度も彼の胸板に拳を打ち据える。
「ハッハッハッハッハッ、騎士ゼスト。チンクにここまで言わせたのだから、相応の責任を取ったらどうかな？
何、さっきもルーテシアに背中を流して貰ったのだろう？ 同じようなものじゃあないか」
テーブルの向こう側でドクターが口添えをする。
「それとこれとでは随分と違う。だいたい、チンクはこれが何なのか理解していない」
「それはドクターが説明してくれた」
私の答えにゼストは首を左右に振る。
「装着方法を理解していまい」
「見れば分かる、頭に被るのだろ？」
「ぷっ」
私の答えにウーノが吹き出した。
むぅ、何がおかしい。
「チンク、それは腰に履くデバイスよ」
笑いを必死に噛み殺しながら、ウーノは私の勘違いを訂正する。
何と、草刷であったか。気恥ずかしさに顔が赤くなる。
「補足するならば、全裸の状態で着用する必要がある。ネクタイも、靴下もダメだ」
ドクターがウーノの説明に……ウーノの説明に……
落ち着け、チンク。
まず深呼吸をして、状況を整理する事から始めるのだ。
ゼストの匂いがする。
それにゼストに子供扱いされた所為で思わず彼を叩いてしまったが、
この姿勢だと凄くゼストが近くて、心臓の音さえ聞こえる。
あ、基地に着いた時には生えていた、柿渋色の無精髭が綺麗に剃られている。
目尻の皺が前にあった時よりも少しだけれど増えている。
それから……。
「無理をするなチンク、誰か別のナンバーズにやらせる」
ついゼストの状態をつぶさに観察することに夢中になった私に、
ゼストは私が臆したものと勘違いしたらしく、私の頭に手を置きながら口を開いた。
だが、見くびられたままでは引き下がれない。
「ミ・ミ・ミ・ミ・ミミミミミッ」
「耳？」
立ち上がり、ゼストの眼前に人差し指を突き付けながら言い放つ。
「…見くびるなゼスト！ 私とて伊達に十年以上も活動しているわけではない！ お前の裸位怖くはない！」
思わず目を瞑り、顔を逸らしてしまったが、ビシッと言い放つ。
「騎士ゼスト、ここまで言われて断っては逆にチンクに失礼だろう、諦めたまえ」
良いながらドクターが立ち上がる。
「では私達は失礼させて貰うとしよう」
「待て、スカリエッティ！」
「断るよ騎士ゼスト。ウーノが他の男の裸を見るだなんて、私が耐えられないからね」
振り向きもせず立ち去るドクターの後を、ウーノはティーセットの載ったお盆を持ちながら追った。
□
ドクターが退出した後しばらく続いた静寂を破ったのはゼストであった。
「仕方あるまい……済まないがチンク、装着を手伝ってくれ」
溜息の後に、ゼストは告げた。
「もちろんだ、大船に乗ったつもりで任せろ！」
自らの胸を叩いて、期待に応えてみせると告げると、ゼストは小さく笑った。
カチャカチャと音を立てて手っ甲を外し、テーブルに置く。
それから、裾のすり切れたコートを脱いでソファに掛けた。
装甲ブーツは膝当てを含めて、片足につき四カ所ずつ、計八カ所の留め金があり、ゼストはそれを下から順に外していく。
靴下は延べ五カ所、繕った跡が見えた。
土色に汚れた帯をほどいてベストを脱ぎ、折り畳む。
それから、長袖のシャツを脱いだ所で私は慌てて背中を向けた。
六つに割れた腹筋と厚い胸板。数多の死線を潜り抜けた証と言わんばかりの古傷が目に入ったからだ。
「やはり、トーレに頼むか？」
「必要ない！」
思わず叫ぶ。
ドクターではないが、その…ゼストの裸を他の姉妹が見るのは、イヤだ。
「そうか」
衣擦れの音が再開する。
それから一分と経たないうちに、私は用意が出来たと告げられた。
「う、うむッ」
大きく深呼吸をして、一気に振り返る。
そこには美の女神すら驚嘆する、鋼の様に鍛え上げられた肉体があった。
デバイスを装着すべき腰部には、髪の毛と同じ柿渋色の縮れた体毛が生え、
その中から十センチ程の太く黒ずんだおち…ペニ……男の人としてのアレが放物線を描いて垂れ下がっている。
「で、ではデバイスを装着するぞ」
私は宣言すると、トランクに収められたロストロギアを持ち上げる。
〈ブーストデバイス・コイシュハイツギュルテル予備起動します。装着チュートリアル使用しますか？〉
「よろしく頼む」
ロストロギアの申し出に私は頷く。これで、百万の味方を手に入れた様なものだ。
〈了解しました、では指示に従って装着させてください。
まず、二番と三番の鍵を使ってベルトとフロントおよびバックを分離してください。
分離作業以降装着完了まで、男性が私に手を触れると、作業を全てやり直していただく必要があります。注意してください。
次に、一番の鍵を使ってベルトを装着者の腰に固定します〉
「ゼスト、万一触れるといけないから、頭の後ろで手を組んでくれ」
「ああ、分かった」
〈ベルトは二番の鍵穴が正面に来る様に装着してください〉
チュートリアルに従って、私はゼストの引き締まった腰に板金製のベルトを巻く。
レリックの埋め込み手術後騎士ゼストの介護を任された私だが、意識が覚醒するまでは再生ポッド内にいたし、
再生ポッドを出た後は介護と言うよりも、自棄同然の鍛錬を止める事や、
ルーテシアお嬢様の分を含めた食事の支度などしかしていない。
だからその、ゼストのアレを間近で見るのは初めてだ。
いや、アレを注視しているわけではないぞ、決して！
〈一番鍵の装着を確認しました。続いて着用者のおチンポがムけていない場合、カワをムいて下さい〉
「な、生皮をはげというのか、このデバイスは！」
驚愕のあまり、私は叫ぶ。
「いやそうではない、チンク。男性器の状態を指すスラングだ。俺は剥けているから、その作業はしなくて良い」
正直、彼に刃を立てるなど、二度としたくない。
だからゼストの言葉に私はホッとして、スラングの意味について尋ねた
「そうか、それは良かった。ところでゼスト、その、剥けている状態とそうじゃない状態の識別はどうやってすれば良いんだ？」
その問いに、ゼストの表情が歪む。
ム？ 何か変な事を言った……言ってしまっている！
「す、済まん！ 今のは無かった事にしてくれ！ 私はゼストの言う事を信じているぞ！」
「ああ、そうして貰えると、こちらも助かる」
ああ、顔が火照る、恥ずかしい！
〈カワがムけている、或いはムき終わったなら、右手でおチンポを掴んで下さい〉
「う、うむ」
ゼストのアレは見た目通り柔らかく、そして温かかった。
〈続いて、ペニスパイプを左手でもって、ペニスパイプにおチンポを挿入してください〉
そう言う事は先に言え！
デバイスはトランクと一緒にテーブルの上にあって、手がちょっと届きにくいのだぞ！
仕方ないので体を伸ばしてトランクに指先を引っかけて引き寄せ……なんか右手の感触が変わってくる。
振り返ってみると、右手に握ったアレの形状大きさが、だいぶ変わっていた。
長さが倍に、太さも親指と人差し指で輪をつくる位に太くなっている。
そして何より、硬く反り返っている。
「ゼスト、これではデバイスを装着できないではないか。早く力を抜け」
「無茶を言うな」
渋い顔でゼストは私の要求に答える。
「む、不随意筋なのか、これは？」
「まぁ、その様なものだ」
と、なると困った。
不随意筋という事は、この、アレが反り返っているのは、私がアレを手で握っている所為で、
手を放さない限り戻らないという事だ。
そしてアレに手を触れずにデバイスを装着するのは、控えめに言ってもかなり難しい行為だと容易に想像が付く。
《ユーガットメール》
悩む私の脳内に、合成音が響く。ウーノからだ。
メールのタイトルは「怒張した男性器の鎮め方」。
このタイミングで届くという事は、モニターされているという事か？
だが、まぁ良い。
手段を知らず無様な姿をさらしているのは事実なのだ、素直にウーノの助言に従おう。
私はメールを開封し、
「………えぇ〜！」
驚きのあまりに声を上げてしまった。
「どうした、チンク。やはり止めないか？」
「いや、なんでもない。大丈夫だ、安心しろゼスト。直ぐ、その、コレの緊張を解いてやる」
「待て、何を……フヌゥ！」
言って私はメールの指示に従って、右手に握ったゼストのアレを頬張った。
珍妙な悲鳴を上げて後退するゼストを逃がすまいと、両手に握ったものを放して、代わりに腰と太股を掴む。
結果的にそれはタックルしているのと同じような状態で、ゼストは大きくバランスを崩して倒れた。
そして、一緒に倒れ込んだ私は、ゼストのアレが喉の奥に突き刺さり、反射的に嗚咽した。
「大丈夫かチンク！」
受け身も禄にとれなかったくせに、真っ先に私の事を心配する。
全くこの男は……。
だから私はゼストのアレから口を離し、ゼストに言い放つ。
「変に抵抗するから、危うく胃の中のものを吐き出すかと思ったぞ、ゼスト！
これ以上抵抗するな！」
卑怯な言い回しだと、自分でも思う。しかし私はゼストの役に立ちたいのだ。
「いや、しかし……」
その想いが伝わらないのか、ゼストは未だに私を拒む。
「この期におよんでもまだ私の手を借りたくないというのは、私をそこまで信用できないという事か」
「そう言うわけではなくてだな」
ではどういう理由なのだ！
「そんなにウーノとかディードとかトーレとかクアッ……は流石にないとして、ディエチとかが良いのか！ オッパイがそんなに大好きなのか！」
視界の先が歪む。クアットロめ、まさかシルバーカーテンを使って紛れ込んでいるわけではないだろうな。
「……お前を傷つけたくはないのだ、チンク」
言葉がダガーとなって私の胸に突き刺さる。
勘違いするな、勘違いするんじゃないぞ、チンク。
この男は好きとか嫌いとかそう言う意味で私を傷つけたくないのではない。
ドクターの手駒以外に選択肢の無かった私達を、保護されるべき善良な市民の一人と捉えているだけに過ぎないのだ。
うん、解っている。
ゼストは誇り高きベルカの騎士で、即ち天然のジゴロなのだから。
「フン、だったらこれ以上抵抗するな。その方が傷つく」
言って私はゼストの胸板に、彼に背を向けながら腰を下ろすと、再び硬直しているアレの緊張をほぐす作業を開始した。
そびえるアレを舐め上げ、急所を握りつぶさない様に優しく手で揉む。
「待て……チンク……この行動……そこは、フヌ・・」
矢に例えるならば鏃の部分まで口に含み、舌でその切っ先をほじる。
ゼストは私を引きはがそうとするが、私とて戦闘機人。
データベースにあるサブミッションの応用でゼストの体を組み敷いたままにする。
メールにあるスペルマ？が早く出てくるようにと、鏃の先を吸うと、唇の隙間から空気が漏れ込んで、はしたない音が響く。
続いて首を大きく上下に動かしてゼストのコレを摺動したりするが、スペルマはなかなか排出されない。
その内、作業の所為で体がだんだん熱くなってきて、
それから、その……股間がむずむずとしてきた。
感覚的に尿意ではないのだけれども、むずがゆくて我慢がならない。
ゼストの急所を揉んでいた左手をはなし、股間の疼きをおさめようと撫でる。
しかし収まらない。
寧ろその感覚は増大する一方だ。
こんな事をしている時ではないのに、
ゼストにブーストデバイスを取り付けねばならないのに、
ゼストが見ているのに、
ゼストと触れているのに、
ゼスト、ゼスト、ゼスト、ゼストゼストゼストッ。
「ファアァアアアアァ！」
背筋を雷の様に何かが駆け上がった。
瞬間、視界が真っ白い光に埋め尽くされ、全身の筋肉が弛緩する。
上下、前後左右が判らなくなる浮遊感。
それは初めて経験した暴力的な感覚によって情報処理がフローした所為ではなく、
実際に弛緩した私をゼストは引きはがし、自らの隣に座らせた為だった。
「大丈夫か？チンク」
混乱する私を落ち着かせようと、ゼストは優しく語りかける。
「ヒャめだぁ、ゼしゅトぉ」
回らない呂律で私はゼストに返す。
股間のうずきが止まらない。
ゼストの優しさが堪らない。
自らの手ではこの切なさに耐えられない。
「ヒャフけてェ、ヒャフけてじぇひゅトぉ」
恥も外聞もかなぐり捨てて、ゼストに縋り付いて泣く。
ゼストの事しか考えられず気が狂ってしまいそうだ。
ゼストの肌を、体温を、匂いを、音を感じ続けなければ壊れてしまう。
だのに、ゼストは再び私を引き離した。
赤子の様に泣きたくなって、そして口吻をされた。
「……フェ？」
私の唇を割って入ってくる熱い肉の塊は、舌を蹂躙する様に絡め取り、咥内を優しく愛撫する。
注ぎ込まれた甘露は、ゼストの唾液だ。
嵐の様なキスを追え、ゼストの瞳が少しずつ離れていく。
「落ち着いたか、チンク」
……え？ アッ、頷く。
「少しだけ」
全身をさいなむ切なさはいまだ猛威をふるっているけれど、ゼストがいる。
「体の方はどうだ？」
「ゼストと居たい」
ウーノやドクターならばこの感覚の処置を知っているのだろうけれど、それは想いまで消えてしまいそうでいやだった。
「そうか……」
ゼストは目を瞑り、私の思いに黙考する。
「お前の男になっても良いか、チンク」
雄弁に語るゼストの瞳によって、彼の問いが私の躯を慮ったが故の、今この場限りのものであると理解してしまう。
それでも、ゼストといる事が出来るなら、体中がバラバラになってしまいそうなこの切なさにも耐えられる。きっと、死んでしまったとしても幸せだと思える。
だから私の答えは決まっていた。
「嬉しいぞ、ゼスト」
ゼストに触れようと両手を差しのべた私を、彼が抱きしめる。
そして、二度目の口づけ。
ゼストの舌はワルツを手ほどく様に、私の舌と絡み、時に引き寄せ時に押し込む。
胸の先の痛痒を誤魔化す為に、ゼストの大きな胸に押しつける。
すると今度は股間のうずきが耐えられなくなってきて、だから両手だけでは足りなくて、両足まで使ってゼストに縋り付く。
あの真っ白い暴力が、私の中を埋め尽くそうと、躯の奥底から隊伍を組んでやってくるのが感じ取れ、
この現実に掴まっている為にゼストの舌をむさぼる。
その時だ、感覚を堰する様に私の脊髄を押さえていたゼストの腕が一つ外れた。
はずれた腕はボディスーツの上から私の股間に触れ、臍へ向かって僅かに進むとうずきの中心を押し潰した。
「ヒゥン！」
脊髄に置かれた堰を突破して、白い感覚が脳まで達する。
でも足りない。
最初の暴虐さに及ばないと言うだけではなくて、股間の更に奥、胃の腑の直ぐ下が酷く熱を求めている。
「チンク、スーツを脱いでくれるか？」
ゼストの頼みに私は、言葉を発するのも煩わしくて首を一度、縦に振る。
ドクター謹製のボディスーツは、携帯型の質量兵器やＢランク相当の魔力攻撃に対してほぼ完璧な防御力を発揮する一方で、
そよ風すらも感じる事が出来る程に感覚を遮蔽しない。
ドクターはこれを二世代以上もダウングレードした手袋を通販で売っているが、
手指の感覚を重視するミッド脳外科医師会の推奨手術機材に指定されていると聞いた事がある。
しかし、この一枚の生地がどれほど粗雑でぶ厚いものであるか、肌と肌とを重ね合わせると思い知らされる。
ソファに浅く座る私はゼストの胸に縋り付き、彼の奏でる心音に酔いしれる。
昔のバイタルデータよりも、先ほど彼の胸板を叩いた時よりも早く、ゼストの心臓が時を刻んでいる。
私は彼の躰が奏でる音楽を聴きながら、彼の手指に弾かれ唱う楽器へと姿を変える。
体に差し込まれた中指が送出を繰り返す度にくちゅくちゅと水音を立て、口からは喘ぎが漏れ続ける。
中指が差し込まれた私のあそこの上を爪弾かれると、脳幹を駆け抜ける悦びに悲鳴が上がる。
「ゼしゅト、ゼしゅトォ……」
頭の中で反響する快楽に呂律が回らない。
だけれども、もっとずっと奥にゼストを感じたいと心が叫ぶ。
「……入れるぞ、チンク」
耳元で囁かれ、言葉と逆に指が引き抜かれる。
「ふぇ？」
焦がれる気持ちのまま一人にされてしまうのか。そんな恐怖が頭を掠め、泣きたくなる。
しかしゼストは、そんな理不尽な男ではなかった。
右手が私の尻を押さえ、股の谷間に私を奏でていた指よりも太く、熱いものがそえられる。
「痛いだろうが、我慢するんだ」
奥で疼く私の躰と、ゼストの熱いものとを遮る一枚の膜、それを破るというゼストの宣告に、私は彼の胸に抱かれたまま頷いた。
「ゆくぞ」
「…ヒュア！」
体の中に異物が差し込まれた瞬間、鋭い痛みとそれすら押し流す快感に視界を星が埋め尽くす。
私はゼストから離れまいと爪を立てる。
ゼストが躰を前後に振り、そのたびに子宮が叩かれる。
「もっヒョ…もっヒョッ……モッヒョォ！」
願うたびにゼストの動きが大きくなり、産道から理性が掻き出される。
身体がぶつかり合う音、汗の匂い、赤く火照る肌の熱。
「う…ム……」
呻き声と共に尻に宛われていたゼストの手が腰へと移動する。
私は、その感触に彼が離れようとしていると気付いたのだろうか、彼の腰に両足を回してしがみついた。
「待て、チンク！」
ゼストの叫びと共に、私の体内に熱い快楽が衝撃となって注ぎ込まれ、私はまたあの白い世界に溺れ、意識を手放した。
目覚めて、まず感じたのは心の安らぐゼストの匂いであった。
そして、端にだけ安堵の表情を浮かべる彼の顔。
「目を覚ましたか、チンク」
一瞬、どうしてこんなにもゼストの事を近くに感じていられるのか判らず、彼の瞳をただ見詰める。
とろり
と、熱く柔らかなものが流れ出る感覚に、私はゼストから視線を外して自らの腰を見下ろす。
一条の血と、白濁した液とがあふれ出ているのを見て何をしていたのか思い出す。
「ゼスト、その！」
「気をやっていたのはほんの一分ほどだ」
それは、体内のログを見れば判る。
だが、私が尋ねたいのは別の事だ。
羞恥で頬が赤くなる事を感じながら、私は覚悟を決めて問うた。
「もう一度してはくれないか？」
□
結局、ゼストを求める心が餓えを感じなくなったのは、ゼストが私にあの熱い快楽を八回も注ぎ込んだ後であったが、
本来の目的である件のブーストデバイスを装着するには、まず二人して温水洗浄をしなければならないほどに汗を掻いてしまっていた。
応接室に隣接する来賓用の洗浄室を使ってゼストの背を流し、ゼストに髪を洗って貰った私は、
いつのまにやらガジェット�儀燭�持ってきてくれた新しいボディスーツに着替え、再びブーストデバイスの装着を再開した。
ゼストのアレは、その、八回も活躍した為か不随意筋であるにもかかわらず、
ちょっと触った位では硬直することなく、今度は無事に装着が完了する。
〈コイシュハイツギュルテルの装着を確認しました。
これより装着者の登録・認証の為、オチンポミルクの採取を開始します〉
「なに？」
ゼストが聞き捨てならない事を聞いたという表情をし、
コイシュハイツギュルテルはアレをおさめたチューブをヴゥウゥウウンという振動音を響かせながら、
湾曲した状態から真っ直ぐに伸びていく。
そして、その様から私もこのデバイスが何をしようとしているのか理解して、慌てて止めに入ったのだった。
「待て、こら、ゼストは私の男なのだぞ！」
おわり
著者：超硬合金
- カテゴリ：
- 漫画/アニメ
- 魔法少女リリカルなのは
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