[304]名無しさん@ピンキー<sage> 2006/09/07(木) 23:21:41 ID:F8u2e8P3
[305]名無しさん@ピンキー<sage> 2006/09/08(金) 00:30:36 ID:aR38ReLz
[306]名無しさん@ピンキー<sage> 2006/09/08(金) 01:05:46 ID:aR38ReLz

満天の星空を流れていく星、窓辺からそれを見上げる男の表情は、何処かかなしげだった。

 「すまないが地下に行ってワインを一つ、持ってきてはくれないか?」
男はそう言って、傍らに佇む女性に指示を出した。
 女性は頷き地下のワインセラーへと降りていく。
 「また、儀式が始まるのだ」そう呟く女性
 悠久とも想える時の中で、幾度となく繰り返されてきた儀式
 友を送るための古よりの儀式、これを繰り返す度にあの人は何を想うのだろうか?
女性の顔は」憂いに満ちていた
 やがて女性は目的のワインを見つけ、小さく呪文を呟いた「・・・・・」
詠唱が終わるとワインは鈍く輝きを放つ、時間停止の魔法が解除されたのだ
 悠久の時を越え封印が解かれたそれには、小さな文字で書いてあった
 
 「無限の咎人より、夜天の王に贈る。君が旅より帰るなら、その祝いに共にこれを飲まんとす」

 それを持って女性は、ワインセラーを後にした



 封印を解かれたワインは造られた当時のまま、芳醇な香りと味わいがあった、
男はそれをグラスに注ぎ、一息に飲み干した
 そして家を出て満天の星空へと、ワインを高く放り投げ呪文を詠唱した
詠唱が終わるとワインは、青い光に包まれ星空の中に溶けていった
 儀式が終わると、男は女性にこう告げた
「明日、少しばかりここを離れる、悪いがついてきてはくれないか」
 女性は「はい」と短く返した。
 男は更に、他の女性たちにもこう継げた「お客さんの世話を頼むと」
それを聞いた女性たちの顔に、不満の色が現れる。
男は取り繕うように「お土産を買って帰るから」と
 お土産の声を聞いて、どうやら女性たちもしぶしぶ納得したようだ。
 しぶしぶ納得する女性たちを見て、男の顔は、これだから女は困ると言いたげだった。


ー海鳴市図書館

 夜天の王、八神はやては守護騎士シャマルを連れて、図書館を散策していた。
 あの事件以来、身の回りに起こった事態に大忙しで、ゆっくりと趣味の読書が
出来なかったためである
 「シャマル、うちは本を探してくるさかいに、ゆっくりしといてや」
 シャマルと呼ばれた守護騎士は、主を見送り物思いに耽っていた。
 今の主に、召還され平穏に暮らしてきた日々、主のために戦いそして手にした今に。

 守護騎士が物思いに耽っている頃、主である八神はやては、戦慄に包まれていた。
いつの間にか結界に閉じ込められていたのである。
 守護騎士との念話も通じず、身動きが取れないでいた。
 「まさかなあ、こないな所で襲われるとは、シャマルと連絡取れへんし、しゃあないな、うちが
一著相手するか」自らのデバイスを手にし身構える少女に、男の声が優しく響く
 「怖がることは無い、少し君と話がしたいだけだから」と、その声を聞き安堵する少女
少女の前に男が現れた。
 男は自らをアバントと名乗り、古い友人からはやて宛ての伝言があると言った。
その伝言とは
 「あの子を、闇より救ってくれてありがとう、きっとあの子も幸せだった」
 
 はやては理解した、この伝言は誰からのものかを、そして男は、一冊の本を手渡した。
そして男は少女の前から消えていった、と同時に結界も消えていった。

ー夜、八神家はやての部屋
 少女は、昼間男に渡された本を、手に取っていた。
そしてその本を開こうとした時、少女の脳裏に見慣れない風景が飛び込んできた。
 それは守護騎士たちと男が旅をしている様子だった。明るく笑いながら旅する一行
その男の手には今は無き夜天の書、少女は想ったこれは記憶だと、夜天の書が夜天の書として
使われていた時の、最初の主とのもっとも幸せだった時の、夜天の書の記憶
 すべてを見終えた少女の前に、その本は真っ白なページを見せていた。
 その本を見て少女は、自分も書き連ねていこうと想った。守護騎士」たちとの日々を
いつの日か皆で笑いながらこれを読む時まで。

著者:11スレ304

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