[599] 湯煙双景 sage 2008/01/13(日) 22:23:28 ID:PED2Ghzr
[600] 湯煙双景 sage 2008/01/13(日) 22:25:02 ID:PED2Ghzr
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[604] 湯煙双景 sage 2008/01/13(日) 22:31:24 ID:PED2Ghzr
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[609] 湯煙双景 sage 2008/01/13(日) 22:39:07 ID:PED2Ghzr

 JS事件が完全に終息してしばらく後。ようやく社会情勢も落ち着いたところで、事件解決最大の功労者
である機動六課全体に褒賞として三日間の休暇が通達された。
 なら慰安旅行にでも行こうと部隊長が言い出し、さらに偶然休暇の時期が重なった部外関係者や個人的
係わり合いを持つ者まで来ることになり、かくして非常に大所帯の温泉旅行と相成った。



        湯煙双景



 温泉に入るのは久しぶりだった。母の親友が風呂好きなので、お勧めの温泉宿とやらに何度か旅行した
ことはあるが、ここ数年は士官学校やら管理局勤めやらでご無沙汰になっていた。
 グリフィスに長湯の習慣はないが、じっと湯に身体を浸していると乳酸が溶け落ちていくような気分を
覚えるのは心地よい。
 普段は隊内の細々とした所まで目を光らせているグリフィスだが、今は緊張感をすっかり抜いて湯の温
かさを堪能することに専心する。
(しかし改めてみると、壮々たる面子だな)
 湯壷に並んでいる面子を見渡せば、無限書庫司書長、艦隊提督、陸士隊隊長に査察官。
 しかもユーノやクロノは、管理局の出世記録を塗り替えた超のつく優秀な面子である。
 一人年かさのゲンヤも、年季にかけては一番なのでどっしりとした重厚さを感じさせる。
 この中でグリフィスより階級が下なのは、ごきげんに鼻歌を口ずさんでいるヴァイスだけである。もっ
とも、こういう場所で無意味に階級を振りかざす人々でもないが。
 彼らはプライヴェートでどんな話をするのか、少し気になった。一番手近にいるユーノとクロノに注目
してみる。
 この二人の関係について管理局内の噂は混沌としている。顔を遭わせた瞬間にクロスカウンターを打ち
込むほど仲が悪いという説から、恋人を作ったのは偽装であり男同士禁断の関係にあるというものまで実
に色々。ちなみに後者の噂には、必ず教導官と執務官レズ疑惑がくっついてくる。
 グリフィスの周囲にいる二人の関係者からは、ああ見えてちゃんと親友同士だと聞いている。
 持ち込んだ猪口に手酌で酒を注ぎつつ小声で会話している二人の顔はしごく真面目で、なにか仕事絡み
の重要な話題でもしていうのかもしれない。その時はすぐに聞くのをやめようと思いながら、グリフィス
はそっと耳をそばだてた。
「さすがにそれだけ無駄に年を重ねると、フェレットに戻って女湯を覗きにいかない程度の分別はつくよ
うになったらしいな」
「そっちこそ、いつもいつもフェイトと風呂に入っているそうじゃないか。この淫行提督」
「合意の上だ」
「強姦魔はみんなそう言うね。どうせ風呂の中でも口に出せないことをやってるんだろ」
「ふん、自分のことを棚に上げるな。ヴィヴィオが言っていたぞ。パパとママが一緒に入る時は、自分は
お風呂に入れてもらえない、と」
「湯船が狭くて三人入れないからだよ。その程度のことも推理出来ないなんて若年性痴呆症だね。大人し
く引退して、縁側で茶でも啜って余生を暮らせば?」
「どっちにしろ、一緒に入っているのは事実だろう。人間は過去の実績から現在の評価が下されるものだ。
九歳の時から覗きをやっていたフェレットもどきが、おとなしく混浴しただけですませていると誰が思う
ものか」
「だったら義妹に手を出した男は、そのうち義理の娘にも手を出しかねないね。キャロの半径五百メート
ル以内に近づくなよ。念のため、エリオからも隔離しておいた方がいいか」
「……少し二人きりで話し合いたいことがあるから、風呂を出たら裏の林に来い。遺書を書いてからな」
「やだね。すっぽかしてやるから、朝まで馬鹿正直に待って凍死しなよ」
 アダルトな子供の喧嘩をしている二人から、グリフィスはそっと目を逸らした。
 酒だ。きっとユーノもクロノも酒に弱いのだ。でなければ、管理局若手の憧れの星である二人がこんな
低レベルな会話をするはずがない。
 司書長と提督への尊敬度を五ぐらい下げつつ、今度は隊長と査察官に近づいてみるグリフィス。
 こちらも湯に盆を浮かべて酒盛りをしているが、あちらと違って二人とも和やかな雰囲気である。
「さっきからはやてのことばかり訊いてきますけど、どうしてですか?」
「こんだけ年が離れてると、好みとか趣味とかそういうところでのすれ違いがけっこうあるんだよ。だか
ら俺以外の目線で見た八神のことも知って、参考にしたくてな」
「はやてはそういうの気にする女の子じゃありませんよ」
「そりゃ分かってるが、女のこと理解してやるのは男の義務だ。あいつが気にしないからって、合わせな
くていいってもんじゃない」
「だったらいっそのこと、はやてに直接訊いてみたらどうですか?」
「相手に知られないようにするのは、男の見栄ってもんだろ」
「難しい生き方してますね。まあ、僕もはやてには幸せになってもらいたいんで、およばずながらアドバ
イスはさせてもらいますよ」
 こっちはこっちで、軽そうに見えて深刻な話題だった。はやてのことは副官としてそれなりに知ってい
るが、いいなと思っている女性はいれどまだ告白もしていないグリフィスが立ち入れる会話ではない。
 大人しくヴァイスとでも話していようと振り向いたグリフィスは、眉をひそめた。
 六課のヘリパイロットはいつのまにか女湯との境にある壁の前に立ち、両手を挙げて虚空で何かを掴ん
だり離したりという珍妙な仕草を繰り返していた。おまけになにやらぶつぶつ呟いている。
「あそこの石はちょい掴みにくいからこっちに行くとして……足はあそことあそこ」
「ヴァイス陸曹、いったいなにを?」
 問いかけても、ヴァイスは壁を見上げたままである。
「……ロッククライミングの競技っていうのは、パズルと同じなんだってな」
「は?」
「ちゃんと手順を考えてから上らないと、絶対に頂上にたどり着けないように出来てるんだよ。ここの壁
はそんな専門的なものじゃないが、いちおう上り道考えておいて損は無いだろ」
「……まさかここ上るつもりですか!?」
 壁はコンクリートの基盤に石を埋め込んだもので、とっかかりは至る所にあるからその気になれば上れ
そうである。
 上ってなにをする気なのかは、さすがのグリフィスでも分かる。
「覗きは立派な犯罪です!」
「固いこと言いなさんなって。ほんのちらっと見るだけだから。なんなら一緒に上るか? ロングアーチ
連中の裸が拝めるぜ?」
「な、なにを言ってるんですかっ!? ルキノの裸なんて別に……!」
「誰もルキノなんて言ってないけどな」
「ぐっ……」
 初歩の誘導尋問に引っかかるグリフィスだが、いざとなれば実力行使で止めようと決意した時、壁の向
こうが急に賑やかになった。

「うーん、相変わらず立派なおっぱいやなぁ。最近大きさだけやなくてまろやかさも出てきたし」
「ちょっとはやて! 揉んじゃだめ!」
「なのはママもおっぱい大きいんだよ」
「ヴィ、ヴィヴィオ!? そんなところ触らないで!」
「大きさならシグナムも負けてないわよ。ほら、こうやって縛れば特に」
「こんなことにクラールヴィントを使うな! 解け!」
「ティア〜、あたしとなのはさんどっちが大きい〜? 触って比べて〜」
「誰ですかこいつに酒飲ませたの! ってなんであたしの揉んでくるのよ!」
「え〜、毎朝揉んでるからいいじゃない〜」
「……あら、やっぱりそんな仲だったの。ちょっと複雑だけど、スバルをよろしくね」
「巨大な誤解です!! ていうかやっぱりってなんですか!? ギンガさんまでそんな目で私達見てたん
ですか!?」
「私もフェイトさんぐらい大きくなれるかな?」
「わ、分からないよ……」
「いっぱい揉まれたら大きくなるって聞いたけど、誰か揉んでくれる人いないかなぁ」
「そういうこと男の子の前で言わないでよキャロ……」
「よっしゃあ! バッテンチビに勝ったぜ!」
「ふ、ふんっ! 大きくなればリィンの勝ちです!」
「……カップは大きくなっても一緒なんだぜリィン」

 女湯から上がった黄色い声に、各人の反応は様々だった。
 司書長と提督は一瞬虚空を見上げ、なにかを思い出す表情をした。そして我に返ったところで目が合っ
て、犬の糞でも踏んづけたような顔をする。
 陸士隊長は八神のやつしょうがねえなあと嘆息し、査察官は胡散臭さを増した笑顔でハハハと笑った。
 グリフィスはメロン級からマナイタまで各種取り揃えた女性陣の魅力的な裸体を思わず想像しかけ、慌
てて頭をぶんぶん振って妄想を追っ払う。しかし身体は正直なもので、微妙に前屈みになってしまうのは
避けられなかった。
 その僅かな隙に、ヴァイスは楽園へ向けての登攀を開始してしまった。こいつ実はクライマーが本職か
と思うほどの早業で、あっという間に手の届かない位置まで上ってしまう。
「ヴァイス陸曹!!」
 グリフィスは怒鳴るが、そんなもので止まる奴なら最初からしない。
 いよいよその手が壁の上にかかりかけた瞬間だった。
 どこからともなく飛来した緑色の鎖が、ヴァイスの両手両足に絡みついた。
「うぉわっ!?」
 引きずり落とされたヴァイスが地面に激突する寸前、今度は身体中にバインドが巻きついて簀巻きにし
た。最後に一際巨大なバインドが胴にはまり、身動き一つできない状態で空中に固定される。
 バインドミイラになった陸曹を絶対零度の視線で見る者が二人。
「もしも、の話だけど」
 右手の魔力光を消しながら、ユーノがクロノに問いかけた。
「自分の恋人の裸を覗いてる奴を見つけたらどうする?」
「そんなの決まっている」
 カード状のなにかを桶に放り込みながら、クロノは答えた。
「クラウディアの艦首から逆さ吊りにしてやる」
「僕ならこの間見つけた『次元世界残酷死刑百選』の実践かな」
「死なせてやるとは優しいな」
「だったら二ヶ月無限書庫で働かせることにしよう。無給かつ無休で」
「一週間に取れる水分が母さんの茶だけというのはどうだ」
「そうだ。なのはに三日間全力全開で教導してもらおう。これならどれよりもきつい」
「決まりだな」
 うん、と誰にともなく二人は頷き、猪口に残っていた酒を同時に干した。
 まだ喧騒の続く女湯と対照的に静まり返る男湯の中、グリフィスは心の片隅で納得した。
 この人達はやっぱり親友同士なんだ、と。


               ※


 一同が宿泊している温泉宿から直線距離で二キロ離れた山中。そこに、地元でのみ有名な秘湯が存在し
ている。
 広さは件の温泉宿の男湯、女湯を足したよりもまだ広く、湯量も豊富。成分分析によればリウマチに効
き、肌の荒れにも抜群の回復効果をもたらす。
 そこまで素晴らしい温泉ながらガイドブックなどにもいっさい触れられない理由は、ひとえにその立地
条件にあった。
 なにせ道路どころか登山道も無く、獣道に毛の生えたようなところを迂回につぐ迂回で歩き回すこと四
時間以上とくれば、行こうと思うのは筋金入りの山男か酔狂人ぐらいである。
 かくして秘湯から秘の字が抜けたことは発見以来なく、これからもないだろうと言われている。

 ただしあくまで人間が行こうと思えば難儀するというだけで、森をショートカット出来てさらに飛行す
ら可能な狼にとっては、そこまで難所でないのも事実である。


               ※


「いやー、いい温泉だ!」
 広い湯壷を存分に泳ぎ回っているのはアルフ。犬かきなので水飛沫が派手に上がり、音が山中に木霊し
ている。
「おまけに星がきれい。これで肉があったら言う事ないね!」
「……こういう所に来ても、お前は食欲第一か」
 腕を組んで肩まで浸かり、半眼でザフィーラは呆れた。
「温泉の中で泳ぐな。行儀が悪い」
「ケチケチするなよ。貸切状態なんだから」
 来た時には隅っこに猿やら猪やらがいたが、不意の乱入者に驚いてあらかた逃げてしまった。それでも
なお居座ろうとした根性あるやつもいたが、狼状態のアルフに唸られると退散していった。
「そういう問題ではない。慎みを持てということだ」
 水着どころかバスタオルも持ってきていないので、身体を隠すものは湯気しかない。泳げば胸や尻どこ
ろか、秘められた場所まで丸見えになる。
「別にいいだろ〜。あんたと私の仲なんだし」
 今度は背泳ぎを始めるアルフ。今は魔力節約型の子供形態ではなく成人姿なので、水面に二つの立派な
ものがぷかりと浮かぶ。
「……がさつなところはいつまでたっても直らんな」
 アルフに聞こえないよう小さく嘆息し、ザフィーラは眼を閉じて湯に浸かり直した。全身の力を抜いて、
身体の芯まで湯を染み渡らせる。
 湯温は水を混ぜなくても適温。肌にピリピリとくる硫黄系でもないので、長湯にもってこい。遠くに見
える山並は絶景。本当に、申し分ない温泉である。
(主には後でもう一度礼を言わねば)
 宿の従業員からここを聞き、アルフと行ってくればいいと勧めてくれたのははやてである。
『だいぶ長いことアルフと会えてへんやろ? 二人っきりでゆっくり温泉入ってき』
 恋人になってから数年経つザフィーラとアルフだが、逢瀬の回数は極端に少ない。ザフィーラははやて
の護衛にシグナム・ヴィータのサポートもしているのであちこち飛び回らねばならず、アルフが手伝って
いる無限書庫も仕事はハードであり、頻繁に会うのはなかなかに難しかった。
 一年前にクロノとフェイトがミッドチルダに住居を移し、アルフもそれについて来たので海鳴にいたこ
ろより距離は短くなった。しかし今度はザフィーラが六課に張りつきっぱなしとなり、ヴィヴィオの世話
まで始めてからは、さらに回数が減った。
 はやてもフェイトもそのことは気にかけており、自分たちに構わず独立した家庭を持ったらどうかと持
ちかけられている。しかし二人は、ありがたく思いながらも断っていた。
 ザフィーラには主を守る騎士としての誓いがあり、アルフはフェイトの帰る場所を守りたいという想い
があった。そのためには、今の環境がちょうどベストなのだ。
 恋人と主人。どちらが大切というのではなく、どちらも大切な二人が選んだ生活がそれだった。
 かといって、なら現状に満足かと言われたらそんなわけでもない。やはりもう少し逢瀬の回数は欲しい
と、ザフィーラは思っている。
(……もうすぐ六課の試用期間も終わる。そうすれば会える機会も増える。その時は、女らしい服でも買っ
てやるか。主かシャマルにも見立ててもらい……)
「……おいこらザフィーラ」
 ポカリと頭を殴られて、ザフィーラは思考を破られた。目を開ければ、不満顔のアルフが仁王立ちして
いた。
「なんだ」
「温泉入ったまま寝るな」
「きちんと起きている」
「目をつぶったまま黙りこくってたら同じようなもんだろ。ひとのこと放っておくのはひどいよ」
 たしかに恋人を無視して温泉を楽しんでいたのは悪かった。ザフィーラは素直に謝罪する。
「すまん。なにか話でもするか」
「しゃべるのもいいけどさ」
 立っていたアルフが、屈んで目線の高さを揃えてきた。
「男と女が裸でいたら、もっと別のやることがあるだろ」
 覗き込んでくる目には小さな情欲の炎があった。アルフの舌が、ちろりと唇を舐める。
 唐突な誘いに、ザフィーラは少し困惑する。
「……宿に戻ってからでもよかろう。主が気を利かせてくれて、私たちは同じ部屋だ」
 当然な意見のつもりだったのだが、アルフが不機嫌そうに眉をひそめる。
「私は、今すぐ、ここでしたいんだ」
「性急だな」
「誰かさんが誘っても全然乗ってくれないからね」
「……あれは誘っていたのか」
「鈍感もほどほどにしなよ」
 あんな色気の無い誘い方をするのはこの世でお前だけだと思ったが、口にはしなかった。すれば言葉で
はなく鉄拳が飛んでくる。
「外でしたら、きっと燃えるよ。私たち狼だし」
「……そうだな」
 ザフィーラの股間も、至近距離でアルフの裸体を眺め続けて徐々に硬くなりつつある。
 それにここなら、どれだけ声を上げても誰に聞かれるわけでもない。つまりどこまでも激しく出来る。
「するのかしないのか、どっちな……むぐぅ!?」
 言葉を遮り、ザフィーラは激しくアルフを抱き寄せその唇を吸った。
「……まったく、手間がかかるんだから。女に口に出させるのは、恥かかせたことになるんだから」
「重ね重ねすまん」
「謝るぐらいなら、思い切り激しくしてよ」
 蕩けだした声でそう言って、今度はアルフから唇を重ねてきた。



 湯壷の脇。二畳程度の広さがある平たい岩の上。
 そこにザフィーラは仰臥し、身体の上にアルフを乗せてその秘所に舌を這わせていた。
「あぅぅ……そこ、もっと……」
 喘ぎながらアルフもザフィーラの陰茎を握った手を動かしている。湯である程度湿っていた上に大量の
先走りでぬめりは充分であり、手は激しく上下して性欲をかき立ててくる。
 ザフィーラも秘唇を割って舌を侵入させ、アルフを感じさせる。桃色の肉壁を舐めれば、雫が滴り落ち
ザフィーラの顔を濡らす。上の淫核にも舌を伸ばせば、愛液の量が目に見えるほど増えた。
「そろそろ口でも頼む」
「いいけど……どうせなら口よりこっちで」
 ぐにゅりと、ザフィーラの肉棒が舌以外の柔らかいもので包まれた。
「ぐぅっ……!?」
 知らない感覚に呻き何事かと顔を動かしてみれば、アルフがその大きい胸でザフィーラのものを挟んで
いた。手を使い、主人に負けない大きさの乳房でしごきあげている。
「どうだい? フェイトの見よう見まねだけど、気持ちいいだろ」
 確かにアルフの胸は甘美だったが、聞き捨てならない言葉があった。
「待て、お前は主の情事を覗き見しているのか」
「……覗いてるっていうか、見せつけられてるっていうか」
 胸を動かす手を休めず、アルフは答える。
「時々、精神リンクを切り忘れたまますることがあるんだよ。そういう時に入ってくる記憶は、クロノと
ヤッた時の記憶ばっかりだし……。あんたもはやてとゲンヤが同棲したら気をつけた方がいいよ」
 今のはやてとゲンヤは別々の家で暮らしているので、外泊する際にはやてはちゃんと連絡してきてその
時に精神リンクを切る。しかし一つ屋根の下で過ごすことになれば、忘れてしまうことは十分あり得る。
「忠告感謝する。主に言っておこう」
「……まあ、今晩は繋いだままの方が、フェイトも口実が作れていいだろうけど」
「口実?」
「クロノに抱いてもらえる口実」
「……まさか。旅先でまでするはずはなかろう」
「どうだろうね。フェイトはクロノのこと、本当に大好きだから」
 小さく鼻を鳴らし、アルフはしゃべるのをやめ胸の間から出ている亀頭に唇を落とした。垂れ流されて
いる先走りを、ずちゅぅと音を立ててすする。
「まふぁをっきくなっふぁね」
「咥えたまましゃべるな……!」
 喉の奥から来る息が、鈴口どころか尿道口まで刺激する。歯が表面を掠めていくのもきつい。さらに、
幹では柔らかい胸が刺激を与え続けてくる。
 脳で処理しきれない量の快感に、ザフィーラの舌は止まってしまう。代わりに腰が無意識に浮いて、ア
ルフの動きに合わせて律動する。
 ここぞとばかりに、アルフが乳淫の手を強めてきた。挟む力と吸引力を倍以上に上げてくる。
「くぅあ……! 出すぞアルフ!」
 叫ぶような声と、射精までに一秒の差もなかった。
 爆発的な量の白濁液を、アルフの口内に叩きつける。喉や頬の内側に当たった飛沫が、跳ね返ってザフ
ィーラの陰茎にかかるのが自分でも分かるほどである。
 それだけの量を出されたアルフは苦しそうな顔で、放出が終わってからもしばらく時間をかけて飲み下
していた。
「んはぁ……早いと思ったら、やっぱりずいぶん溜めてたね」
 飲みきれなかった分が、胸に零れていた。白い泥のようなそれは、乳房の曲面に張りつくぐらいの粘り
気がある。
「浮気は論外だけど、この分だと自分でもしてないんじゃないかい?」
「六課では常に狼のままだ。やりようがない」
「……そういう時ぐらい戻りなよ」
 しゃべりながら、アルフは体勢を変えていく。ザフィーラの隣に手を突いて四つん這いになり、腰を高
く上げた。
「次は私にしてよ。私だって、溜まってるんだから」
 ザフィーラも頷いて、尻肉を掴み腰を密着させる。
 元が狼なせいか、この体位がザフィーラもアルフも一番感じる。
「行くぞ」
 一拍置いて、濡れそぼった秘所に一気に挿入した。
 槍のごときものに刺し貫かれた秘所からは、血ではなく淫水が吹き出る。
「あはあぁ! 出したばっかりなのに……なんでそんな大きいんだよ……!」
「まだ出し足りないからな」
 ぐりぐりと先端を捻りながら、ザフィーラはアルフの胸にも手を出す。
 肉棒が感じた柔らかさを手でも味わい、充血した乳首の固さを愉しみ引っ張ったり押し潰したりしてみ
る。
「久しぶりだから……すっごいくるっ!……ああああっ!!」
 アルフの爪が、ざりざりと岩を引っかく。悶える肢体がくねり、応じて膣が動きを変えて絡みついてく
る。
 手の平より柔らかいくせに、指の握りよりも強い締めつけにザフィーラは呻く。
「もう少し、力を……抜け」
「出来るわけ、ないだろぅ……! こんなに、硬くて太いんだからっ!」
 緩むどころか、逆に締めつけが強くなる。
 くっついてくる膣壁引き剥がすように、ザフィーラは乱暴に引き抜き、突き込む。
 腰をぶつけあう音と嬌声が湯面に反射して響き、山の奥に吸い込まれていく。
 その音には負けるが、淫水をかき回すぐちゃぐちゃという音は確かにザフィーラの耳に届いて、肉棒の
硬さと腰の速度を高める。
「はあっ! ザフィーラ、もっと、もっと強く……!」
 アルフのうわ言に応えて上半身を反らして斜め上に突き上げるのと、アルフが腰をぶつけてくるタイミ
ングが偶然一致した。
 下半身全体への衝撃に膝が砕けそうになりかけながらもザフィーラはもっと快楽を得て、同時に与えよ
うと腰を動かす。
 しかし久しぶりの性交への飢えは想像以上で、最初の射精などなかったかのように急激に最期が迫って
くる。
「もう一度、出すぞ……!」
 ザフィーラは激しく数度突き入れ、放った。
 狼の時ほど大量の射精ではないが、それでもアルフの子宮を溢れさすほどの白濁液が吐き出される。
「あ、ああああっ!! ザフィーラぁっ!!」
 がくがくと四肢を震わせて、アルフも果てる。半開きになった口から涎が落ちて、体液と汗で濡れた岩
の上に新しい染みを作った。
 射精し終えてもザフィーラはアルフの中から抜かず、再度腰を動かしだす。
「やぁふぁっ! ま、まだするのかい?」
「ああ、お前には悪いが、どうにも止まらん……!」
「いい、よ……私も、もっとしてほしいから!……んんぁ!」
 まさしく獣同士の交わりは、満月が天頂を越えるまで続いた。



 行為の後、再び温泉に入ったザフィーラはアルフに問いかけた。
「何があった」
「ん?」
 今度は泳がず、大人しく隣で湯に浸かっていたアルフが顔を向けてくる。
「今日のお前は、かなりおかしい」
 求め方が露骨すぎる。いつもはもう少し恥じらいを見せるものだ。そして今は妙に黙りこくっている。
 喜怒哀楽の激しいアルフだが、何か心に抱え込むことがあると感情の触れ幅がさらに大きくなる。
「口に出せば多少は胸が晴れる」
「別にそんな何も……」
「テスタロッサとハラオウン提督のことか」
 ザフィーラの言葉に、アルフの犬耳がぴくりと小さく反応する。
 情事の最中にフェイトとクロノのことを口にした時、アルフの口調に苦々しさのようなものが含まれて
いた。フェイトのうっかりに閉口しているというのとは少し色合いが違ったような気がしてかまをかけて
みたのだが、図星だったらしい。
「…………うん。……まあ、ちょっとね」
 ばしゃりと顔を洗ったアルフが、そのまま手で顔を覆う。
「…………三人一緒に暮らしてると、どうしても気づいちゃうんだよ。フェイトが私を見る時間が少し減っ
て、その分クロノを見てるってのが」
「ハラオウン提督がテスタロッサの想い人になったのに不満なのか」
「まさか。クロノは良い奴だし、フェイトが心の底から幸せなのも分かっちゃいるんだけど……。なんか
こう、取られたみたいな気分になってさ」
「……なるほど」
 誰よりも長い時間をフェイトと過ごしてきたアルフである。それだけにそういうちょっとした態度の変
化には敏感で、寂しさを覚えてしまうのだろう。
「あんたも、ゲンヤにそういうこと感じたりしないかい?」
「無い」
 ザフィーラは即答した。
「主が愛する男が現れたことを祝福こそすれ、そのような感情を抱いたことはない。主は主であり、我ら
のものではないからな」
「…………あっそ」
 ぷいっ、とアルフはそっぽを向いてしまった。
「無くて当然だよね。あんたは偉い騎士様だから」
 皮肉気な口調だが、肩が落ちて犬耳も心なしか萎たれている。
 切り捨てるような言葉になってしまったのを、ザフィーラは後悔する。しかし主への忠誠心を一時とは
いえ偽ることは出来ない。
 器用な世辞も、甘ったるい囁きも言ってやれない。自分に出来ることは、心の中にあることを嘘偽りな
く口にすることだけだ。
「……しかしお前の気持ちは分からないでもない。だから」
 背を向けたままのアルフの身体に、ザフィーラは手を回す。一瞬アルフがびくりとするが、構わず強く
抱きしめてやる。
「寂しかったら私を呼べ。必ずというわけにはいかないが、可能な限り側にいよう」
 しん、と辺りが静まり返る。湯面の揺らめきが止まるほどの時間が流れて、アルフの指がザフィーラの
手に絡む。
「……ザフィーラ、ありがとう」
 ゆっくりとザフィーラの腕を解き、アルフが向き直る。
「けどこういう時は嘘でもいいから、いつでもお前が呼んだら駆けつけてやるって言うもんだよ」
「すまんがそういうことは言えない性分だ」
「知ってるよ」
 この朴念仁。
 最後の言葉は触れ合った唇から直接伝えられ、ザフィーラの口の中で静かに響いた。



      終わり





      おまけ


「なんだかこうやって二人で夜景を見てると、新婚旅行みたいだねユーノ君」
「そうだね。結婚したら観光地とかじゃなくて、山奥の小さな温泉宿にでも来ようか」
「……ねえ、本当の新婚旅行と、一緒のことがしたいな」


『ユーノ君の、もうこんながちがちに……』
「は、はやて、なんか隣から変な声が聞こえるんだけど……」
「気のせいや。耳栓して寝てまい」


「どうしたんだフェイト。こんな夜中に」
「……クロノぉ」
「凄い汗じゃないか!? 具合が悪いのか?」
「アルフが、精神リンク繋いだままエッチなことしてて……逆流してきて我慢できないの」


『焦らさないでこれ、早く挿入れてぇ!』
「…………誰や。ユーノ君とクロノ君の部屋を私の左右にしたのは……!」
「部屋割りしたのはやてちゃんですよ」


『はぁん!! イッちゃうよユーノ君!!』
『クロノの熱いの! いっぱい出して!』
「離せシグナムー!! 私もゲンヤさんに夜這いかけるーー!!」
「スバルとギンガが同じ部屋で寝ています!」
「娘に見つかるかもしれへんというドキドキにゲンヤさんも感じてくれるはずやーー!!」
「落ち着けって! バッテンチビも寝てねえで止めるの手伝え!」
『『ああああぁぁぁぁ!!!!』』



 結局、ゲンヤさんは朝まで熟睡できましたとさ。


      今度こそ終わり



著者:サイヒ

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