437 名前:ぷよ ◆aWSXUOcrjU [sage] 投稿日:2010/02/16(火) 18:51:59 ID:DY/PWfIk
438 名前:ぷよ ◆aWSXUOcrjU [sage] 投稿日:2010/02/16(火) 18:53:17 ID:DY/PWfIk
439 名前:ぷよ ◆aWSXUOcrjU [sage] 投稿日:2010/02/16(火) 18:55:10 ID:DY/PWfIk
440 名前:ぷよ ◆aWSXUOcrjU [sage] 投稿日:2010/02/16(火) 18:56:36 ID:DY/PWfIk
441 名前:ぷよ ◆aWSXUOcrjU [sage] 投稿日:2010/02/16(火) 18:57:37 ID:DY/PWfIk
442 名前:ぷよ ◆aWSXUOcrjU [sage] 投稿日:2010/02/16(火) 18:59:28 ID:DY/PWfIk

 ナカジマ家第三女・ディエチと、第四女・スバル。
 この組み合わせで2人きりになるというのは、実はとても珍しい。
 まず、スバルの方に問題がある。彼女は他の姉妹達と違い、職場近くのマンションで独り別居中の身だ。
 レスキューの仕事は滅多に休みが取れないため、ここで他の5人と顔を合わせる機会が激減する。
 もちろんたまの休みの日には、家族と一緒に過ごすことも多いのだが、ディエチは大体、他のN2R姉妹と行動を共にしている。
 おまけにスバルも大体ノーヴェの方にくっついていくため、たまに顔を合わせることはあっても、2人きりになることはないのだ。
 故にこの日のように、ひとつ屋根の下に2人だけがいるというシチュエーションは、極めて稀なことなのである。



ご飯もトンカツも好きなのでカツ丼を作ろうと思ったら、何をどう間違ったのかご飯フライとでも言うべき微妙な料理ができてしまったでござるの巻



 ひた、ひた、ひた。
 軟質な足音がフローリングを叩く。靴下すら履いていない、素足のリズム。
 剥き出しになった太ももが、歩を進めるたびにしなやかに伸びる。
 すっと伸ばした右の指先が、冷蔵庫の扉を開けると同時に、左手が冷気を受けながら中へと入った。
 手探りで取り出したオレンジジュースを、テーブルの上に置いたコップに注いでいく。
 とく、とく、とく、と。
 窓から注ぐ陽光を反射し、きらきらと煌く透明ガラスが、鮮やかな橙色に染まった。
「もうちょっとちゃんとした格好をしなよ」
 そんな休日の光景を、ディエチはソファにうつ伏せで寝そべりながら、憮然とした表情で見つめていた。
「えー? いいじゃん、どうせ部屋着なんだし」
 悪びれた様子もなく、笑みを浮かべてコップを取るスバル。
 にやついた口元にそれを当て、中身をぐいっと飲み干した。
「それはまぁ、そうなんだけどさ」
 すっ、と。
 傍らの雑誌を手に取って、所在なさげに呟く。
 姉妹の誰かが買ったファッション誌のページを開いたが、それでもその黄金の視線は、青色の髪の義妹の方へと向けられていた。
 今日は珍しく、スバルと彼女の2人きりだ。
 彼女やギンガに比べれば、幾分か暇をもてあましているはずの3姉妹も、それぞれに事情があって家にいない。
 チンクは訓練校の特別授業を受けに行き、ノーヴェは急のバイトが入ってお仕事中。
 ウェンディもウェンディで、バイト先でできた友達と一緒に遠出をしていた。
 ギンガとゲンヤは言わずもがなで、どちらも108部隊で勤務中である。
 現在時刻にして午前11時。少なくとも午後にでもならなければ、誰かが帰ってくることはあるまい。
(どう接したらいいものか……)
 ふぅ、と。
 トレンドのワンピースの写真が載せられた、紙面の奥でため息をついた。
 正直な話、少々やりづらい。
 元々面と向かって話をしたことの少ない相手だし、おまけにウェンディ同様、テンションが高い方の人間である。
 根が大人しめなだけあって、このような相手と話すのは、苦手だ。
 いきなり一対一という状況に放り込まれては、何からどう話していいものか分からない。
 情けないことだ。
 自分がまともに人間社会でやっていくには、もう少し時間がかかりそうだな、と実感する。

(……それにしても……)
 そこまで考えたところで、改めてスバルの姿を見据えた。
 数十分前にシャワーを浴びたばかりの彼女は、どうしようもないくらいにラフな格好をしていた。
 布で覆われている部分よりも、肌色が露出している部分の方が多いくらいだ。
 上は黄色いノースリーブ。丈の短い布地からは、お腹どころかへそまで露出している。
 薄い生地を押し上げるのは、たわわに実った2つの果実。ぱっと見た感じからして、下にはブラジャーすら着けていないだろう。
 下も下だ。薄物の黒いハーフパンツは、バリアジャケットのズボンの丈とさほど変わらない。
 そのくせジーンズほど分厚くないので、尻から太もものラインが丸分かりになってしまう。
 扇情的を通り越して、官能的。
 異性どころか同性ですら、思わず顔を背けそうになるような艶かしい姿。
(自分がどう見られてるのか、自覚したことあるのかな?)
 両の頬に熱を感じた。
 鏡を見れば、そこにはほんのりと赤く染まった自分の顔が映るだろう。
 ディエチ自身も、決してスタイルは悪くない。
 だが、それもあくまで1つ下の五女・ノーヴェと同じくらいに過ぎない。どうしても目の前のプロポーションには負けてしまう。
 弾けるようなバストに、瑞々しいヒップ。
 首筋からウエストを経て爪先に至るまでの、さながら芸術品のように滑らかなライン。
 一体何を食べれば、あんなダイナマイトボディが仕上がるというのだろうか。
 肉体年齢は半年しか違わないはずなのに、一体この差は何なのだろうか。
 ああ、困ったなぁ。
 内心で呟く。
 そんなに挑発的な格好をされては、目のやり場に困ってしまう。
 そんなに無防備な格好をされては、耳まで赤くなってしまう。
 本当に。
 そんな格好をされてしまっては。
 

 ムラムラして仕方がないじゃないか――


「えっ……ちょ、ちょっとディエチ……?」
 スバルが異変に気づいたのは、ジュースを飲み終えたコップを食器洗い機に入れた頃のことだった。
 ソファから立ち上がったディエチが、自分の方へと歩み寄ってくる。
 それぐらいならどうということもない。至って普通の行動に過ぎない。
 だがこの気配は何だ。
 この全身からにじみ出る、怖気を誘う雰囲気は何だ。
 瞳は半ば据わっていて、普段以上に感情が読み取れない。意識があるのかどうかさえ、ぱっと見ただけでは判然としない。
 それでもその背後に揺らめく気配が、彼女に危険を訴え続ける。
 異様な気配を醸し出すその様が、スバルの受ける印象を一変させる。
 ただ歩み寄るのではなく、じりじりとにじり寄ってくるようだ。
 戦場ですら感じたことのない、全く未知のプレッシャー。
 殺気ではない。敵意すら感じられない。
 だがこの身に訴えかける違和感は何だ。身震いすら起こさせる凄みの正体は何だ。
 ごとりと音が鳴った時、自分が知らぬうちに後ずさっていたことを理解した。
 テーブルに尻をぶつけた時、瞬間的に追い詰められたと意識した。
 距離がゼロに詰まった瞬間。
 目と鼻の先まで迫ってきた瞬間。
 ディエチの細い指が伸びる。そっとスバルの顎に添えられる。
 少女の顔に影が差し。
 緑と黄金の視線が交錯し。
 次の瞬間。
「んんっ……!?」
 スバルの唇が、ディエチによって乱暴に貪られていた。

 肉と肉が触れ合う。
 赤と赤が重なる。
 強引に奪われたファーストキッス。
 がつがつと食いつくようなその様は、さながら獰猛な肉食獣。
 あまりの唐突さと荒々しさ故に、自分の生涯初の接吻の相手が、
 よりにもよって義理の姉になってしまったことを悟るまでには、それから更に数瞬の間を要した。
「んぷっ……む、うぅ……っ」
 そしてそれと同時に、肉壁をこじ開け侵入するものがある。
 ぴちゃぴちゃと涎の音を立て、絡み付いてくるのは舌。
 あたかも一個の独立した生命体のごとく、赤い軟体が口内を這い回る。
 唾液と唾液をかき混ぜながら。
 舌と舌を絡め合わせながら。
 甘美な飴細工を舐め回すようにして、スバルの口の中を蹂躙していく。
 ぴちゃり、ぴちゃりと。
 他に音を立てるものもない、2人きりの静寂の中。
 ただの水音に過ぎないはずのそれが、ひどく淫靡に艶やかに響いた。
「ぷはっ……」
 唇が解放され、口が空気を取り込むと同時に。
 ソファの柔らかな感触に、ぽふっと身体が包まれるのを感じた。
 テーブルからそこまで移動していたのにも、全く気づく余裕がなかった。
「はぁ……はぁ……」
 羞恥に頬を紅色に染め。
 荒い息を上げながら、眼前に佇むディエチを見上げる。
 さながら蛇に睨まれた蛙。
 否、百獣の王に睨みつけられた小さな鼠か。
 意識があるかどうかすらも怪しかった双眸が、今では獲物を前にした獣のようだ。
 前期型戦闘機人特有の金色の瞳が、その獣的イメージをより助長させている。
 動けない。身体に力が入らない。
 遠距離戦タイプの砲撃型など、その気になれば余裕で組み敷けるというのに、身体が言うことを聞いてくれない。
 その脱力を知ってか知らずか。
 身を屈める色獣の右手が、スバルのノースリーブシャツに伸びた。
 獅子が鋼の爪をもって、獲物の皮を裂くように、荒々しい動作で布地を剥ぎ取る。
 はちきれんばかりの2つの乳房が、ぷるんと外気に晒された。
 ぎょっとして目を丸くする。顔全体が赤熱する。
「ま……待って……駄目だよ、こんなっ……」
 おぼろげには察していた。
 だがこの瞬間をもって、それが確定事項として突きつけられてしまった。
 これから何をされるか悟ったスバルが、動揺も露わな声で制止をかける。
 しかし、それも今更なことだ。
 獣に言葉は通じない。
 実力行使を伴わない言葉で、この茶髪の猛獣は止められはしない。
 ぐに、と。
 ふくよかな乳肉が、歪む。
 ぎらぎらと眼光を輝かせながら、遂にディエチの右手が乳房を捕らえたのだ。
「あっ……」
 思わず、声が漏れる。
 反射的に、背筋が僅かにのけぞった。
 色欲の獣の手つきは繊細。
 獰猛な雰囲気とは裏腹に、極めて細やかな手つきと共に、スバルの胸を蹂躙する。
 ぐにゃりぐにゃりと歪む乳房に、痛みはほとんど感じない。
「くふっ、んん……ぅああ……っ」
 反対に鋭敏に感じられる快楽が、艶っぽい喘ぎとなって口を突いた。
 時に力を込めて勢いよく、時に緩やかだが的確な動作で。時には乳首を摘み上げ、親指と人差し指で扱き上げて。
 瞬間ごとに移り変わるパターンが、飽きさせることなく快感を叩き込んでくる。

 いかに色恋沙汰には疎いといえど、スバルとて自慰くらいは経験したことはあった。
 胸を揉めば性感が刺激される。身をもって効果を知っていたからこそ、ティアナにも執拗にセクハラを仕掛けた。
 しかし、今まさに己が身を襲う悦楽のなんとしたこと。
 自分の手で触れた時には、これほど感じることはなかった。
 否、自分に揉まれたティアナでさえも、これほどの刺激を得ることはなかったに違いない。
 自分自身の手慰みとも、はたまた冗談交じりの戯れとも違う。
 獣の獰猛性をもって襲い掛かりながら、しかし一流の技巧を駆使して責め立てる他者に、自分は犯されているのだ。
 ぴちゃり。
 水音と共に冷たさを感じた。
 感覚を訴える方向へと目を向ければ、そこには放置されていた右胸。
 粘性をもった透明な液体が、つんと隆起した乳首に降り注いでいる。
「ちょ、ちょっと! それは洒落にならな――んああぁっ!」
 制止の声も意味をなさず。
 焦燥の顔は快楽に歪む。
 スバルが言い終えるよりも早く、ディエチの口が乳首をくわえ込んでいた。
 乳飲み子のように、舐める。赤子よりも強く、吸い上げる。
 押し付けられた顔面が、さながら揉まれたような刺激を叩き込む。
 右手によって与えられるものと同等か、あるいはそれ以上の刺激だった。
 身体を陵辱する快感が、一瞬にして倍以上に膨れ上がった。
「ひゃうっ! はぁ、あっ! んううぅぅっ!」
 呼べば返る山彦のように。
 叩けば響く楽器のように。
 責め手が勢いを増せば増すほど、湧き上がる悦の悲鳴もボリュームを増す。
 もはや抵抗など不可能だった。
 ただただソファの布地を握り締め、喘ぎと共に首を振ることしかできなかった。
 一流の格闘戦力を有した陸戦魔導師も、この瞬間はただの小娘に過ぎない。
 茶色の尻尾を振る肉食獣に、むしゃぶりつくようにして捕食されるだけの草食動物だ。
 肉体を食い尽くす痛覚はない。
 精神を覆い尽くす快楽がある。
 暴力的なまでの悦楽の波濤に、弓なりにのけぞり返る肢体を、ただ溺れさせることしかできなかった。
「………」
 程なくして、それも終わる。
 前戯にはもう飽きたということなのだろうか。
 左胸を揉みしだく手のひらも、右胸に吸い付く唇も、ゆっくりとスバルから引き剥がされていく。
 しかし、それは幕引きを意味するものではない。
 これからメインディッシュにありつかんとするサインに他ならない。
 腰に添えられた両手の五指が、黒いハーフパンツを引きずり下ろす。
 視線も思考も蕩けきったスバルには、もはや制止の声すらかけられなかった。
 ただ荒い息を上げながら、下着ごとズボンが下ろされるのを、黙って見ていることしか許されなかった。
 ショーツと一緒に両足から引き抜いてしまえば、それだけでもう生まれたままの姿になってしまう。
 いかに身を覆っていた布が少なかったかを、頭の片隅で再認識させられた。
 裸に剥かれた彼女の前で、かちゃりかちゃりと金属音。
 ディエチの方を見てみれば、ジーンズのベルトを外す姿。
 やがて拘束が解かれた後、これまた内側のショーツごと、ズボンを潔く脱ぎ落とす。
 そして艶やかな湿気を纏った蜜壷を、スバルの股ぐらへと運んだ。
 仰向けの態勢からは、自分の股間を直接見ることはできない。身体を持ち上げるだけの余力も残されてはいない。
 それでも、太ももを伝う冷たさと粘り気が、我が身を這う愛液の存在を認識させる。
 短時間胸のみを責められただけで、これほどまでにしとどに濡れそぼっているという事実に、改めて驚愕させられた。
 ゆっくり、ゆっくりと。
 さながら焦らすかのように。
 粘液と粘液が引き合うように。
 やがて、それも。
 ひとつに、重なる。
「くぅあああああぁぁぁぁっ!」

 怒濤のごとき衝撃が、スバルの下半身を貫いた。
 男性器を突き刺されただけではない。ただ女性器と女性器を接触させ、腰を打ち付けられているに過ぎない。
 たったそれだけのはずなのに、腰が砕けそうになる。
 鍛えに鍛えた肉体が、気を抜いた瞬間に突き崩されそうになる。
 猛烈な勢いの前後運動と共に、擦れ合うのは互いのクレバス。
 これまでなぞるだけどころか、一度たりともろくに触れられていなかった、彼女の急所中の急所。
 それは本能が待ち焦がれていた接触。
 されどこの身を震わすのは、その許容限界を遥かに超えた、想像を絶する悦楽の嵐。
 膣液が腹まで飛び散るのを感じた。口内が涎でべとべとになった。
 痛みとも悲しみとも異なる涙に、視界がじわじわと歪んでいく。
 そして。
 ぼやけかけた視界に、飛び込む影。
「んむぅぅっ!?」
 口が塞がれる。
 嬌声が相手の口の中に閉じ込められる。
 この局面にきて、再び唇を奪われた。
 絶頂寸前のスバルへと、ディエチが再びディープキスを仕掛けたのだ。
 腰をうちつける振動と、粘膜を摺り合せる感触。
 更に口の中をかき混ぜる舌先が、少女の昂ぶりを極限まで加速させる。
「ぷはっ」
 意外なほど、接吻は呆気なく終わりを告げた。
 それだけ相手にも余裕がなかったのかもしれない。
「ハーッ……ハーッ……ハーッ……」
 それは密林に潜む豹か、はたまたサバンナで獲物を貪るハイエナか。
 これが人間の吐息なのかと、一瞬スバルは我が耳を疑った。
 低く唸るようなブレスは、黄金の瞳の獣が放つもの。
 口から漏れる息すらも、まさに餓えた野獣のそれに他ならなかった。
 ぎらぎらとした視線を向けながら、腰の律動が速さを増す。
 男女の絡みの正上位にも似た姿勢で、もたれかかりながら腰を打ち付けてくる。
 長袖のシャツの生地越しに、乳房が乳房に押し付けられた。
「あっ! はぁっ! はんっ!」
 声の間隔が短くなってくる。終わりが近いという何よりの証拠だ。
 玉のような汗を振りまきながら、短い髪を振り回しながら。
 もはや無理やり犯されているという状況すらも忘れ、ただひたすらに乱れ狂う。
 身体と身体が擦れ合いもつれ合い、互いの体液でぐちゃぐちゃに濡れる。
 駆けるは電光。
 舞うは電流火花。
 快感が稲妻となって神経を疾走し、光の速さで全身に伝達。
「ぁ、く……ふぁ、あああああぁぁぁぁぁっ!!」
 ぐわんと背筋が一層しなった。
 ぐっと瞳が硬く閉じられた。
 ディエチの背中にしがみつきながら、布地越しに肌を引っかきながら。
 極大の浮遊感と共に。
 脳を焼ききらんばかりの熱量と共に。
 この日スバル・ナカジマは生涯で初めて、他者との行為による絶頂に達した。


「本っっっ当にごめんなさい……」
「あーいや、その、別にそんな気にしなくてもいいよ。怪我させられたわけでもないんだし……」
 ナカジマ家の一室での痴態から数分後。
 むんむんと女の匂いの立ち込める室内では、すっかり正気を取り戻したディエチが、スバルの目の前でひたすら謝り倒していた。
 下手をすれば土下座までして、おまけに床に額をぶつけまくるんじゃなかろうか?
 犯されてしまったのは確かにショックだが、ここまで謝られるのを見ると、逆に相手のことが心配になってくる。

「えーっと……その、何であんなことになっちゃったの?」
 そこで思い出したように、問いかけた。
 ともかくも、今は彼女の頭の運動を中断させたかった。
 とはいえ、その答えが気になるのも確かである。
 同性相手に性行為に及ぶのも十分普通ではないだが、あの時の雰囲気はそれに輪をかけて異常だ。
 レイプされたことなどこれが生涯初めてだが、そこらの強姦魔ですら、あそこまでおかしな気配を漂わせてはいないだろう。
「実は、その……あたしがまだ、ドクターの所にいた頃の話なんだけど……クアットロっていたじゃない」
「ああ、あの眼鏡の?」
 今は軌道拘置所に収監されている、かつてのナンバーズの作戦参謀の顔を思い出す。
 直接顔を合わせたことはないが、恩師・高町なのはいわく、人を弄ぶことを楽しむ陰険な女なのだそうだ。
 目の前のディエチとは、ポジションの都合でよくセットで運用されていたことも、ディエチ自身から聞いていた。
「出撃がない時とかに……その……彼女にしょっちゅう……調教、されて……」
「それで、えっと……いわゆる、レズビアンになっちゃったってこと?」
「いや……多分、バイなんだと思う」
「んっと……ああ、そういうことか」
 最後の単語は一瞬意味を図りかねたが、程なくして何となく理解できた。
 恐らくバイというのは、レズのように女性のみが好きというわけではなく、男も女も両方好きということなのだろう。
 しかし困った、実に困った。二重の意味で困ってしまった。
 真っ当な人間に更生するためのプログラムを受け、それを修了してきたはずのディエチだったが、よもやこんな爆弾を抱えていようとは。
 そしてもう1つ。クアットロの性格を省みると、生々しく想像できてしまうからたちが悪い。
 比較的常識人に当たる彼女の理性すら超越し、条件反射的に本能が性交に向かう――神業をも超えた魔技の領域だ。
 その手の筋においては大層重宝するだろう。
 もっとも、こんな厄介極まりない特殊能力、神業なんて呼んで崇めていいものでもないのだが。
 ともあれそんな風にして、情交が身体の隅々にまで染み込んでいるほどである。
 夜な夜な繰り広げられていた調教とやらは、現在進行形で想像するものよりも、実際は更に壮絶で凄絶なものだったのだろう。
 こんな自分と同年代の少女に、それこそ15かそこらの頃に、それほどの調教を叩き込んでいたとは。
 むかむかと怒りがこみ上げてくると同時に、ディエチに対して同情した。
 それでもまだ男嫌いになっていなかったのが、せめてもの救いなのだろうか。
「それで、他の姉妹……ノーヴェ達に対しても、こんなことがあったりしたの?」
「いや。さすがに血の繋がった家族には、クアットロみたいに襲われでもしない限り、欲情できないし」
 肉親には、ねぇ。
 ほんの少し、笑顔が引きつる。
 となると欲情された自分は、まだまだ家族として認識されていないということか。
 一緒に暮らすようになって、それなりに壁もなくなってきたと思っていたのだが。
 やはり日頃ノーヴェやウェンディとばかり絡んでいて、ディエチとはあまり面と向かって話さなかったのが悪かったのか。
 もう少し、彼女とも色々と話をすべきだったのかもしれない。そうなればそこはスバルの落ち度だ。
「このことは、他のみんなも?」
「うちにいる分では、チンク姉だけが知ってる」
「じゃあ、他のみんなには黙っておくから、今後は気をつけるように……ね?」
 ギン姉にも薄着は控えるようにと、それとなく忠告しておかないとな。
 こくりと小さく頷くディエチを前に、そんなことを思っていた。


 それから更に5時間後。
「ただいまーッス。……あれ? なんかソファの模様が微妙に違うような?」
「気のせいだよ、きっと」
 汁まみれでぐちゃぐちゃになったものに代わり、大急ぎでホームセンターで購入し引っ張ってきたソファがそこにはあった。
 前のソファは即刻廃棄されたとか。合掌。


著者:ぷよ ◆aWSXUOcrjU

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