[144]38 ◆KHEtQ2j5Nc <sage>2007/10/17(水) 00:53:32 ID:DxNdgQQE
[145]38 ◆KHEtQ2j5Nc <sage>2007/10/17(水) 00:54:09 ID:DxNdgQQE
[146]38 ◆KHEtQ2j5Nc <sage>2007/10/17(水) 00:54:53 ID:DxNdgQQE
[147]38 ◆KHEtQ2j5Nc <sage>2007/10/17(水) 00:55:25 ID:DxNdgQQE

13th session〜アグスタ、恋人達の集う場所(後編)〜

地下のレリックは奪われ、作戦は失敗に終わったものの、ほぼ全員がまともな怪我もせず。
本当ならば全員が無事と言う事にほっと安堵の溜息を吐くはずの状況。
しかし、

「ティアナさん! 何であんな事したんだ!」
「お、おい……」

怒り狂うフィレスと、フィレスの滅多に見せないその様子にたじろぐヴィータ。
最初はヴィータがティアナに対して怒っていたのだが、遅れて到着したフィレスが話を聞くなり怒り出して。
今では、ティアナに対して完全に切れているフィレスを、何とかヴィータが宥めていた。

「ティアナさんなら、自分に出来る範囲は分かってるはずだよね!?
 それなのに、何でコントロールし切れない量の魔力弾なんか出すんだよ!
 しかも、それがスバルさんに当たりかけたって!?」
「おい、少し落ち付けよフィレス!」

際限無くヒートアップしていくフィレスに、ヴィータはたまりかねて声を荒げる。
と、フィレスの目が怒り狂った状態をキープしたままでヴィータの方を向き、ヴィータは思わずたじろいだ。

「……これで、落ち付いていられる訳がないでしょう!? スバルさんにもう少しで当たる所だったんですよ!?」
「あ、あたしがちゃんと止めたんだから別にいいじゃねーか」
「よくない!」

がーっと怒鳴り続けるフィレスに、ヴィータもティアナも首を傾げた。
フィレスの言動が明らかにおかしく感じられたから。
それはまるで……。

「……ちょっと待ちなさい、フィレス。私も、確かに実力も考えずに馬鹿やったのは悪いと思ってるわ。
 ……でも、あんたの言動、何かおかしくない?」

そうティアナが言うと、フィレスはさらに怒鳴りつける。

「何処がおかしいんだよ!? 僕はスバルさんがもう少しで怪我する所だったから……!」
「……そこよ」

そうティアナが言うと、フィレスの勢いがぴたりと止まる。
完全に怪訝そうな表情をしているフィレスに、ティアナだけではなくヴィータも頷いた。

「そーだな。……話聞いてる限りだと、『スバルが怪我しかけたから怒ってる』って風にしか聞こえねー」
「……でも、スバルじゃなくて他の人がそうなりかけたらフィレスがそこまで怒ってたかどうか、とても怪しいのよ」

そう言われて、フィレスは一瞬だけ俯く。……そしてまた顔を上げた時、フィレスの目は完全に座っていた。

「……そうだよ、スバルさんだから、だよ! だって、僕は……スバルさんの事が好きだから!」

フィレスはそう叫ぶ、全力で、心の底からの本心で。

「……ふえ?」

……すぐ後ろに、スバルがいると言う事を忘れて、フィレスはそう叫んでしまった。

一方。

「……フィレスさん達、大丈夫なのかな……?」

フィレスが切れた後、すぐにスバルに逃がされて、エリオとキャロは2人で散乱するガジェットの残骸の調査に回っていた。
と、

「……あれ?」
「どうしたの? キャロ」
「あそこにいるのフェイトさんなんじゃ?」
「え?」

そう言ってエリオがキャロが指差した方を見ると、そこには確かにフェイトがいて。
そして、その横には、見なれない金髪の青年が、フェイトと談笑していた。

「……誰、なのかな?」

そう呟いて、エリオはキャロと一緒にその2人を見詰めていると、そこに、なのはがやってきた。

「……なのは……さん?」

そして、フェイトが何かをなのはに伝えて、……なのはは真っ赤になって飛び上がった。
両手をぶんぶんと振り回して、フェイトに何か言っているようだが、フェイトは全く意に介さない。
それどころか、そんななのはの耳元に顔を寄せると、何かを囁き……、かちん、となのははフリーズした。
そんななのはを置いてフェイトはさっさと歩き去って行き、そこには固まったなのはと途方に暮れた青年が取り残された。

「……何か……言われたのかな?」
「……わかんない。でも、なのはさんって、本当はあんな性格なんだね……」

いつものなのはは、優しく、そして厳しい人。親しみやすさを感じる事はあっても、それはあくまで上司としてものもの。
……でも、今は違って。
子供っぽいと言うよりも、親しみやすいお姉さんになのはが見えて。

「……でも、あの男の人って誰なんだろう……」
「……ひょっとしたら、なのはさんの恋人なのかも」

そう言ったキャロに、エリオは微笑んだ。

「あはは、そうかもね。……そろそろ行こっか? ちゃんと調べないと怒られちゃうし」
「うん!」

そう言うと、エリオはキャロを連れてその場を立ち去った。
……キャロが言った言葉が、偶然にも真実を言い当てている事に、気付かないまま……。

「……」
「な、なのは?」

真っ赤になったまま硬直し続けるなのはに、青年……ユーノは途方に暮れる。
困り果てた表情で、ユーノはなのはの頬をぺちぺちと叩き、

「……ふぇ……? っ! に、にゃあああ!?」
「うわわっ!?」

その衝撃で我に返ったなのはは飛び上がって……、
……バランスを崩して、ユーノの胸の中に倒れ込んでしまった。

「……あ……」
「……う……」

ぽん、と2人して顔から火を噴くなのはとユーノ。慌ててなのははユーノから離れようとして……、
ぎゅうっとユーノに抱き締められ、身動きが取れなくなった。

「え……あ……?」
「……なのは、1つ……聞いていい……?」

混乱しすぎてかえって落ち着いているなのはに、ユーノが聞く。

「……アルフから聞いたんだけど……、……その……、なのはが僕の事……好きだ……って……」
「ふええええっ!?」

……すると、なのははまた飛び上がった。
慌てて俯いたなのはの首筋にも、髪の間から覗く耳にも、みるみるうちに血の色が昇って行って。
まともに受け答えも出来ないなのはに、ユーノはにっこりと微笑むと、言った。

「……なのは、良く、聞いてね。……僕は……ユーノ・スクライアは、高町なのはの事が大好きです。
 ……高町なのはの事を愛しています。なのはと……、付き合いたいって、思っています」

……その言葉は、ユーノ・スクライアの紛れも無い本心を表して。
心の底からの純粋な気持ち、それがなのはの元へと、なのはの心へと、しっかり届いて。

「あ……あの……その……えっと……」

なのはは何かを言おうと口を盛んにぱくぱくさせるが、何も言う事が出来ないまま。
やがて、なのはは俯くと、きゅっとユーノの背中に手を回した。

「……なのは」
「〜っ……」

ぎゅうっと抱き締めてくるなのはを、ユーノは一瞬呆けたように見下ろす。
しかし、すぎに僅かにくすりと笑うと、口を開いた。

「……なのは、顔上げて」
「……ふぇ……!!?」

ゆっくりとなのはは顔を上げて、……その瞬間、ユーノの口付けを受けた。
なのはは思わず目を開けるが、ユーノの顔が至近距離に見えて、真っ赤になって目を閉じる。
すると、

「……んんっ!?」

その瞬間、口の中に何かぬるっとしたものが入って来て、なのははびくんと身体を跳ねさせる。
そんななのはに、ユーノはにっこりと意地悪く笑うと、なのはの口内で舌を暴れさせた。

「んんっ!? んっふ! ふ、ふぁ、ふんん!」

途端にびくびくと震えだすなのはに、ユーノは笑みを深めて……、唇を離す。
すると、なのはは脱力したようにくたくたとユーノの胸の中に寄りかかった。

「……ユーノ君の……ばかあ……」

顔を真っ赤にして、息も絶え絶えになってそう言ったなのはに、ユーノは苦笑して言った。

「……ごめんね、止められなくなっちゃって……、なのはが僕の恋人になってくれるって事が嬉しくてさ……」
「……ぅぅ……」

反則だよう……と蚊の泣くような声で言ったなのはが本当に可愛くて、愛しくて。
ユーノはにっこりと心の底から微笑みを浮かべると、もう一度なのはに軽く口付けた。

「ふにゃあ!?」

ただでさえ赤かった顔をさらに赤くして飛び上がったなのはに、ユーノはにっこり笑って言う。

「これからよろしくね? なのは。今度からは……恋人同士として」
「……ぁ……、……うんっ!」

そう言って、なのはは真っ赤な顔のまま、にっこりと微笑んだ。

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目次:舞い踊る、恋歌
著者:38 ◆KHEtQ2j5Nc

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