484 恋煩い sage 2008/05/09(金) 04:14:00 ID:mM5W/YEB

 数時間前まで頭上で輝き異様な程の熱気を放っていた太陽は今、正に水平線に吸い込まれようとしていた。
 辺りが茜色に染まり始め、海水浴を楽しんでいた人々もパラソルをたたみ帰り支度を始めている。
 そんな様子を漠然と見ながら、少女は浜辺で膝を抱えていた。

「はぁ…」

 少女の漏らした溜息は辺りの喧騒にかき消されてしまう。
 やがて太陽も完全に消えてしまい、波が打ち寄せる僅かな音だけが木霊していた。
 少女は砂浜に何かを描くが、すぐさま押し寄せてきた波によって消されてしまった。

(……)

 改めて少女は同じモノを描こうとするが、今度は描ききる前に波が押し寄せ、折角の彼女の努力を文字通り
水の泡と帰してしまう。
 波の悪戯にめげる事無く再び少女が描こうとした瞬間、遠くから彼女を呼ぶ声が聞こえてきた。

――タイムリミット

 彼女の脳裏に過ぎった言葉に逆らうように、少女は砂浜に描き続ける。
 やがて彼女を呼ぶ仲間の一人が少女の下に駆け寄り、彼女に手を差し出した。
 少女はそれに気付かない様子でじっと砂浜に描いたソレを眺めていたが、仲間に強引に引っ張られて立ち上
がると引きずられるようにしてその場を後にした。

 波が押し寄せ、また彼女の描いたモノを消し去って行く。
 ただし、今度は波の高さが低かったのか、ソレは半分は消されずに残っていた。



 そこに描かれていたのは――

 相合傘の半分と、『なのは』と書かれた文字だった



著者:ツンデレ王子

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