[218] 4の422 ◆h7y.ES/oZI sage 2007/11/09(金) 21:13:13 ID:GVLW+rsh
[219] 4の422 ◆h7y.ES/oZI sage 2007/11/09(金) 21:13:52 ID:GVLW+rsh
[220] 4の422 ◆h7y.ES/oZI sage 2007/11/09(金) 21:14:32 ID:GVLW+rsh
[221] 4の422 ◆h7y.ES/oZI sage 2007/11/09(金) 21:15:57 ID:GVLW+rsh
[222] 4の422 ◆h7y.ES/oZI sage 2007/11/09(金) 21:17:55 ID:GVLW+rsh
[223] 4の422 ◆h7y.ES/oZI sage 2007/11/09(金) 21:18:28 ID:GVLW+rsh
[224] 4の422 ◆h7y.ES/oZI sage 2007/11/09(金) 21:19:28 ID:GVLW+rsh
[225] 4の422 ◆h7y.ES/oZI sage 2007/11/09(金) 21:20:32 ID:GVLW+rsh
[226] 4の422 ◆h7y.ES/oZI sage 2007/11/09(金) 21:21:05 ID:GVLW+rsh
[227] 4の422 ◆h7y.ES/oZI sage 2007/11/09(金) 21:21:38 ID:GVLW+rsh
[228] 4の422 ◆h7y.ES/oZI sage 2007/11/09(金) 21:22:15 ID:GVLW+rsh
[229] 4の422 ◆h7y.ES/oZI sage 2007/11/09(金) 21:22:46 ID:GVLW+rsh
[230] 4の422 ◆h7y.ES/oZI sage 2007/11/09(金) 21:24:00 ID:GVLW+rsh

 ざあぁ……と。
 他と比べればやや広いが、そもそもの定義であまり大きくないその部屋 −浴室− に、
シャワーが降り注ぐ音が響く。
 浴槽に湯が張ってあるにもかかわらず、湯船に人の姿はなく。1組の男女がシャワー
の水で身体を打たれている。
「んぁっ……ふっ、ぅんっ……はぁっ……」
 舌を互いの舌に、性器を互いの性器に。立ったまま抱き合い、繋がり、睦み合う男女。
 まだ昼にもなっていないというのに、その様相は夜に行われるであろう本格的な情事
と比べて些かも遜色ない。

「はぁんっ! クロノっ!くんっ! わたっ、わたしぃぃぃっ! もっ、あぁっ!」
 女は男の口で推し留められていた声を抑えることが出来なくなったのか、男から顔を
離し、頭を振り乱して叫ぶ。長く美しい亜麻色の髪がシャワーの水を浴び、頭を振る度
に少しづつ、うなじから背中に張り付いていく。それでも男の背中に回した手は解こう
とせず、むしろより強くと、その手に力を込める。
 2人の性器同士が繋がっている箇所からは、激しい出入りの合間に時折白く泡立った
液体がにじみ出、そしてすぐにシャワーの水に洗い流される。
 女の愛液と、そして、男の精液。2人がこの浴室で行っている行為が既に1回目では
ないことの証拠であった。

 クロノと呼ばれた男は、女の声に抱えていた女の片足をさらにぐいと引き上げ、より
深く繋がり合おうとする。
「ああああああああっ! やっ、おっ、おくっ! 奥にいいいいいいいぃぃぃっ!」
「気持ちいいよ、なのは。こんなに大きく拡げてるのにものすごくキツい。すごいよ、
なのはの中……熱くて、キツくて……もう、出そうだ……」
 なのはと呼ばれた女は男の言葉に羞恥の涙を浮かべ、イヤイヤと激しくかぶりを振る。
 無論、否定しているのはその涙だけ。女の性器は男を放すまいと、よりその締め付け
を増し。口は喘ぎ声を絶え間なく発し。乳房の先端の突起はそうすることで触れてもら
えない自分を誇示し、興味をこちらに引こうと高く硬くいきり立ち。身体全体は男をよ
り深く飲み込もうと、男の動きに合わせて揺れる。

 男は、身体のあらゆる箇所で示される女の歓喜に、女の背に回していた手を解き、そ
の尻のふくらみに手を沿え、なおも一層激しくピストン運動を続ける。
「ひぁあぁんっ! やっ!やだぁ! だめぇ! お尻見えちゃうぅぅぅっ!」
 男が尻の肉を掴んだことで尻のの肉が大きく左右に割り咲かれ、2人の結合部のすぐ
後ろ、きゅっと窄まった後ろの穴に、直接シャワーの水流が浴びせかけられ、女はまる
でその箇所を誰かに見られているかのような錯覚を受け、叫ぶ。
 ここに居るのは自分と愛すべき男の2人だけであること、さらに立って抱き合ってい
る状態では、男からすらそんな所が見えるはずのないことも忘れて。

「ん? お尻? もしかしてここのこと?」
 そんな女にちょっとした悪戯心で。
 男は尻の掴んでいた右手を動かし、その人差し指の腹で女の菊門をくりくりと弄る。
「ひぃっっ! だめぇええええええええぇえええええええええぇぇぇぇっ!」
「うっ、がぁっ!」
 優しく触れてこそいるものの、思ってもみなかった刺激に、女の絶叫がほとばしり、
その身が激しく震え、昇りつめる。思いがけぬ膣の圧迫に、男も耐え切れず女の内に、
−朝から数えてはや片手で数え切れない回数に達した− 欲望のたけを解き放った。


  魔法少女リリカルなのは  〜 CherryLight・NEXT 〜

         〜 Scenery of the certain daylight(ある昼の風景) 〜


 〜 〜 〜 〜

 ざあぁ、と、先ほどと同じく、シャワーの音が浴室に響く。
 数分前と違うのは、クロノとなのはの艶声ではなく、苦笑交じりのクロノの謝罪の声
が響く浴室内にこだましていること。
「だから悪かったって言ってるだろ、なのは」
「知らない知らない知らない知らない!」
 自分に背を向け、手に持ったシャワーのノズルからの湯で身体を洗っているなのはに、
いくぶん笑いを堪えつつ、クロノはその背中に向けて謝りを入れる。
 もう10回以上は謝罪の言葉を投げかけているも、未だになのはの怒りは収まらない
様子。ちょっと調子に乗りすぎたか、はたしてどうするか、とクロノはなのはの背中を
眺めながら、それとは別の思考を働かせる。

(……しかし……僕が言うのもなんだが、見事な体つきだよな……)
 肩から滑らかな曲線が腰まで伸び、そこできゅっと見事に窄まる。そして腰からヒッ
プにかけてのふわりと丸いライン。クロノの母性や趣向といったものを引き出す、気持
ち大きめのお尻のふくらみ。シャワーに流され、背に張り付いた髪も、浴室の窓からの
光をきらきらと反射させ、その美しさを引き立てている。
 シャワーの水流を全身に浴びようと時折小さく左右に身体をくねらせるその度、わず
かに一瞬クロノの視界に入る胸の膨らみのラインと、つんと上を向いたつつましやかな
大きさの桜色の乳首。
 体型美とはまさにこのような身体を言うのであろう。
 この身体をさんざ自分の好きなようにできるしているかと思うと、またも愚息が自己
主張を始めてしまうクロノであった。

(もう1回くらいなら、大丈夫か? うまくいけば機嫌も直ってくれるだろうし……)
 下半身の感覚に、クロノはずいぶんと身勝手な思考で、そっと手を伸ばし、後ろから
なのはを抱きしめる。
「きゃっ! な、何っ!? クロノくんっ!」
 怒りが収まっていたわけではないが、別に心の底から怒っていたわけではなし、流石
にもう1回2回誤ってきたら許してあげようかな、ついでにキスの1回くらい…などと
考えていた矢先、その身を抱きすくめられ、なのはの口から小さな悲鳴が上がる。

「なのはが悪いんだぞ、怒ってるフリしてそんな魅力的なお尻を見せ付けるから」
 言いながら、シャワーの飛沫が頭に降りかかるのに構わず、クロノはまだかすかに固
さの残る乳首を親指と人差し指でこねあげる。無論、両方を。

「ふっ! ふりじゃなくて本当に怒ってっ! やっ!あっ!だめっ! んんっっ!」
 びりびりとした電流が胸の先から駆け抜け、なのはの腰が砕け、クロノに押し付けら
れる。その柔らかな感触がさらにクロノとその愚息を調子付かせる。
「気持ちいいかい? なのはは乳首攻められるのが好きだものな」
 からん、と、なのはの手からシャワーのノズルが落ち、浴室の床で音を立てる。
「だめぇっ! やぁっ! さ、さっき、んっ! した、ばっかっ、あぐぅっっ!」
「ほら、もう身体が震えてきた。また乳首だけでイクのかい?」
 脚に受けるシャワーの刺激に、ちょっとばかり水道代がもったいないかな…、などと
所帯じみたことを考えつつも、クロノの手は止まらない。
「やぁあぁぁっっっ! あああっ! 胸ぇぇっ! おっ、お願い、もう止めてぇぇ!」
 なのはの背中がびくびくと震えだし、体重を支える力を失いつつある足ががくがくと
揺れる。
 なのはが震える度、クロノとなのはに挟まれたクロノのペニスが圧迫され、その先端
からじわ、と透明な液がにじみ出る。そしてなのはの股間からもまた、それ以上の量の
愛液がにじみ出、内股を伝い始める。
 なのはは頭を大きく仰け反らせ、閉じれないほど絶え間なく喘ぎ声を漏らす口に左手
を当てる。指を噛んで喘ぎを止めようするも、乳首と、そして触れられていないと激し
く主張する股間からの両方の疼きにそれも叶わない。
 右手は、自分を責めるクロノの右手の上腕を掴むも −振りほどこうと思えば振りほ
どけるはずであるにもかかわらず− 掴んで震えるだけに留まる。
 あれだけしてもらったにもかかわらず、まだもっと、とクロノをせがもうとしている
自分の身体に心が屈服し、更なる涙を流してなのはは声を上げ続ける。

「おねがっ! あぐっ! やっ! やあっ! ち、ちゃんとっ! ちゃんとクロノくん
のでイキたいっ! ああああっ! もうっ、胸っ! やめてぇぇっ!」

 発狂したかのようななのはの叫びに、クロノはニッと笑みを浮かべると、満を持して
「その言葉」を口にする。

「じゃぁ、さっきのこと許してくれるか? もう怒ってない?」
「怒ってないっ! 怒ってないからあっっ! お願い、ちゃんと入れてえっっ!」
 なのはの返事に満足げな顔で、クロノはなのはの胸から手を離す。

「ひぁっ!」
 急に刺激が途絶えた驚きで、なのはは足から崩れ落ちる。
 が、予期していたクロノはさほども驚かず、崩れるなのはのお腹に手を回し、その身
を受け止める。
「あっ、はっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
 自力で立つこと叶わず、自分の腕にぶら下がる格好で荒い息を吐くなのはを休ませま
いとするかのごとく、クロノはえいとばかりに引き上げる。
「立てる? なのは」
 息も絶え絶えといったなのはを、クロノはお腹に回した手はそのままに、浴室の壁の
前に立たせる。
 二度三度と、深呼吸するかのように喘いだなのはは、それでも必死に頷く。
「じゃ、壁に手付いて」
 言葉のまま、なのはは壁に手をつき、クロノに背を向ける。
「足、開いて」
 またも、疑う事すらせず、肩幅より少し広く、なのはは足を開き、言われるまでもな
くお尻をクロノに向けて突き出す。
 こういう状況でならこうすると、もはや言葉すら要らぬほど繰り返した情事に、本能
に従い、なのはは身体を動かす。お尻をゆらゆらと左右に振り、「早く」とクロノを無
言で急かすその動きによって。
 すぐにでもそこに突き入れたい衝動を押さえ、クロノは静かになのはの後ろにしゃが
み込み、ヒップのふくらみに手を添える。

 目の前で揺れるなのはのヒップ。そしてその間で愛液を垂れ流しながら、ひくひくと
自分を誘う秘唇。きゅっと窄まりながらも、かすかに前の穴と同期するようにひくつく
菊門。クロノの下半身に、今でも十分なほどなのに、さらに大量の血液が流れ込む。
 目を閉じていたなのははまさかクロノがしゃがみ込んで自分の大事な部分を覗き込ん
でいるとは夢にも思わない。お尻に手を添えられた時も、これから入れてもらえると、
歓喜に身体を震わせたほどである。

 が、そんななのはの秘部から伝わってきたのは、熱く大きく固い感触ではなく、それ
よりも遥かに柔らかい感触。
「ひぅっ!?」
 まさか、と思い慌てて目を開け、なのはが下を覗き込むと。視界に入ったのはやはり
音を立てて自分の秘唇をすする恋人の姿。
「うあぁぁっっ! いっ、いやぁっ! 舐めないでぇっ! あぐっ! やめっ、あぁっ、
そんなっ! 止めてぇ! ちゃんと入れっ、入れてよぉぉっ!」

 無論、なのはが快感を感じていないわけではない、が、弱点の一つたる胸を攻められ、
焦らされた今のなのはに、舌による刺激は想定していた荒々しい刺激にはなり得ない。
 喉が渇いて水を欲しているのに、与えられたのは熱いスープであったかのように、要
らないのか、と言われれば無論否定するが、求めているものの本質が異なる。
 頭を振り乱し、クロノの舌をなのはは否定するが、腰はクロノの舌に合わせ、艶かし
く動き、後から後から湧き出る愛液がクロノの口の周りにまとわり付く。
 真綿で首を絞められるような快感に、なのはに出来る事は狂ったように「入れて」と
連呼し、クロノに哀願することだけだった。

 流石に少々意地悪が過ぎたか、とクロノは、ちゅぱ、と舌をなのはの膣から引き抜き、
立ち上がって自分のモノを握り、なのはの秘唇にあてがう。
「ふぅぅんっっ!」
 あてがっただけで甘い息を漏らすなのはに加虐心をそそられたクロノは、すぐにそれ
を突き入れることをせず、自らの怒張を握り、その先端でなのはのスリットをゆっくり
となぞり始める。
「やぁあっっ! 入れっ、てぇ! んあぁっ! いっ、いやあぁっ!」
 涙を流し、懇願するなのはの声に更に黒い心を増したクロノは、包皮から半分顔を覗
かせたなのはのクリトリスに自分の亀頭を擦り付ける。
「ああああんっ! やっ! やぁっ! やめっ! ひぃんっ! おねっ! がいっっ!
意地悪しないでぇぇぇっ! 入れてえええっ!」
「何を入れて欲しい? ちゃんとわかるように言ってごらん?」
 クロノの言葉にはっと目を見開き、快楽とは別の、羞恥による頬の熱さを感じながら、
なのははクロノを振り返る。
 いつもと変わらぬクロノの顔。自分にのみ向けられる彼のその笑顔。そしてその口か
ら発せられる悪魔の声。
「何を、入れて欲しいんだ? なのはは」
「っ!? やっ、そっ、そんなのっ! あぐっ! はっ恥ずかあああぁぁぁっ!」
「ちゃんと言わないとずっとこのままだぞ?」
 続く陰核への攻めに、なのはの下半身ががくがくと震えだす。
「やだぁっ! 欲しいのぉっ!クロノくんのぉっ! おっ……クロノくんの……ぉ……
やぁぁっ! 言えないっ! そんなの言えないよぉっ!」
 消え行く理性が最後の抵抗を示し、なのはの口から言葉を消し去る。
 快楽以外の感覚を受け取ることを拒否した下半身をそれでも必死に動かし、なのはは
自らクロノの猛りを取り込もうと尻を上下左右に揺り動かす。
 そうはさせるかとクロノは肉芽から怒張を離すと、なのはの腰を両手でがっしりと掴
み、わずかな動きさえをも制する。
「ほら、言って、なのは。僕の何を、なのはの大事なところに入れて欲しい? 指かい?
それとも舌かい?」
 高ぶるだけ高ぶらされ、ふつ、と刺激を止められた秘唇は、飢えた獣が垂らす涎のよ
うにだらだらと愛液を垂れ流し、主人たるなのはの脳へ逆命令を送る。

 言ってしまえ、
 楽になれ、
 内なる襞の全てを熱く堅い剛直で一斉に削り上げてもらえ、と。

「違うっ! 違うっ! クロノくんのっ! ああぁぁぁっ! クロノくんのぉぉっ!」

 気が狂うかと思うほどの股間からの熱い熱い疼きが、なのはの全身に鳥肌を浮き立た
せ、ついに理性を決壊させる。

「ちょぉだいっっっっっ! おちんちん頂戴っ! クロノくんのおっきいおちんちんっ!
なのはにいっぱい欲しいのぉぉっっ!」

 絶叫が終わるのを待たず、いや、待てず、なのはに言わしめた歓喜の言葉に後押され、
クロノは先走りを滲ませる自身のデバイスを一気になのはの中に突き入れた。

「はぐっ、んんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんっ!」

 下唇を血が滲むほど噛み締め、仰け反り、きつく目を閉じて涙を流し、なのはは瞬時
に達する。
 焦らされるだけ焦らされた愛の器官は、溜め込んでいた快楽の奔流を、それこそ止ま
ることなくなのはの脳へと送り込む。
 そしてそれはクロノも同じ。
 なのはを言葉で攻めながら、そのなのはの声に、姿に、クロノも既に限界寸前であっ
た。
 突き込んだだけで達したなのはの膣のひだの一つ一つが、握るようにクロノの怒張を
絞り上げる。その強烈な攻めに、クロノは突き込んだだけで果ててしまいかける。
 唇を噛み締めてその締め付けに耐え、意地でもってなのはの中を突き上げるも、わず
か数度のピストンであっさりと果て、なのはの中に熱い精液を爆発させる。
 びくびくと、放出を続けるクロノの肉棒の痙攣より早いペースで、なのはの膣のひだ
は蠢き。まるでベルトコンベアのように、最奥で快楽によりぽこりと口を空けた子宮口
にめがけて、内に溜まった精液を送り込む。

 クロノとなのはが繋がっていた、いわゆる後背位、細かく言えば後櫓(うしろやぐら)
や立ちバックと言われる体位。
 立った状態での女性の後ろからの性交は、厳密な後背位よりは劣るが、それでもその
他の体位よりは遥かに妊娠しやすい体位と言われている。
 人間の身体の構造上、膣の最奥から斜め前方、腹の方に向けて子宮口が位置している
ため、後ろからの行為で女性が前かがみになれば、重力により精液が子宮に入り込み易
いのは至極当然の事実。
 高ぶるだけ高ぶっていた2人。なのはの膣の動きもかつてないほど。またクロノも、
回数を重ねたにもかかわらず、普段以上の量をなのはの内に送り込んでいた。
 つまりなのはの子宮の中には、かつてないほどの量の精液が注ぎ込まれている状態。

「あ……あぁ……ぁ……」
 焦点の合わぬ目つきで、だらしなく口を開き、白痴のような表情で、なのははその内
なる熱さに酔いしれる。
「ひゅごっ、いっ……おく、にっ、きてるぅ……あついの、がぁ……」
 震えながら快楽を受け止めるなのはに、クロノは荒い息をつきながら、なのはの中か
ら己を引き抜く。
 じゅぽ、と小さい音を立てて引き抜かれたそれは、未だにびんとそそり立ち、抜かれ
たはずみでぶるんと震える。
「んうんっ……」
 陰茎が引き抜かれる衝撃に、なのはの膣がきゅうと収縮し、子宮に収まり切らなかっ
た精液がとろりと押し出され、ぽとりと浴室の床に音を立てて落ちた。

 〜 〜 〜 〜

 結局その後、とろーんと目を潤ませ、夢見心地のなのはの背中を抱きながら湯船に浸
かり、

 クロノくーん、身体洗って〜、
 クロノくーん、頭も〜、
 クロノくーん、身体拭いて〜、
 クロノくーん、足がふらふらで歩けないー、お部屋まで抱っこ〜(無論2人共全裸)、

 といったやり取りの後……

「ねぇ、クロノくーん、朝ご飯どうしようかー?」
 リビングで電子新聞を広げようとしていたクロノに、キッチンのなのはから声。
 んー、と生返事をするクロノに、再度あーさーごーはーんーと叫ぶ声。クロノはやれ
やれと電子新聞のモニターを閉じるとキッチンへと足を運ぶ。
 そこには冷蔵庫を開け、中を覗き込んで考え込むなのはの姿。
「もう11時なんだよねー、お昼もうすぐだし、どうしよ。少しだけお腹に入れる?」
 クロノが壁の時計に目をやると確かに時刻は11時になろうとしている。
「お腹が空いてるのは事実だが……とはいえ、作って食べて後片付け、でもう昼か……
そこからまた食べるとなるとな……」
「そうなんだよね……どうする、その気になれば朝兼昼と夜の分の材料はあるみたいなん
だけど……お店行くの止める?」
 困ったなー、となのはは顔だけでクロノを振り返った。

 地球と違い、食材が痛む、ということを気にしなくていい分、ミッドの食材管理は楽
である。冷蔵庫 −実際は魔法で食材を新鮮なまま保っている装置であるため、冷蔵で
はなく保管庫、と呼ぶのが相応しいが、便宜上こう呼ぶ− に入っている物を、気が付
いた時、食べたい時に調理すればよいのだから。

「んー……いや、なのはの手間もあるしな、お昼はやっぱり食べに行こう。今はとりあ
えずコーヒーとカロリークッキーくらいでいいだろ。たしかまだ残ってたよな?」
「え、うん、あるけど、いいのそんなので? 別にそんな手間じゃないし、私作るよ?」
 ぱたんと冷蔵庫を閉め、なのははクロノに向き直る。
「クロノくん、丸1日オフって久しぶりなんだし、家でゆっくりしててもいいんだよ?」
 クロノの休暇は約2週間ぶり、とはいえなのはも10日ぶりの休暇である。
「ん? 今日は例の店でお昼食べるんじゃなかったのか?」
 明日は絶対にあのパスタの店に行くんだー。この前行けなかったし。いい、絶対だよー、
約束だからねー、クロノくん。と、昨晩ベッドの上で幾度か繰り返された言葉をクロノ
は思い出す。
「あ、う、うん……わ、私は……その、クロノくんと一緒に居れれば……別に……出か
けたりとかしなくても、全然……う、嬉しい、っていうか、楽しいっていうか……その……
そ、外で食べるのも、勿論楽しいんだけど、そ、そんなことしなくても……い、一緒に
居られれば……それで……」
 もじもじと手を合わせ、上目遣いでなのは視線はクロノに向けられる。
 赤らんだその顔は、表情は、文字通り幸せのど真ん中。

 そんななのはの言葉にクロノも思わず顔をほころばせ、すっとなのはに歩み寄ると、
そっとその身体を優しく抱きしめる。
「幸せだな、僕は。こんなよくできたお嫁さんをもらえたなんて」
「お、お嫁さんは、その……まだ早いよぉ……こ、婚約中なんだし、私達……」
 言葉では否定を匂わすも、先ほど以上に赤みを増したなのはの顔は全力全開の笑顔。
 そっと、なのはもクロノの背に手を回し、その温かさをもっと感じようと、きゅっと
少し力を込め、しがみ付くようにクロノに抱きつく。


「よし!」
 それもつかの間、気合の言葉と共にクロノはがば、となのはから身を離し、背中に回
されたなのはの手はあっという間に振りほどかれる。
「あっ……」
 もう少し、と言いたげななのはの表情に、クロノは小さく笑いながらも満更ではない。
 判りやすい、と簡単に言ってしまえばそれまでなのだが、それが自分との逢瀬に基づ
く感情や仕草や対応であることが、クロノの胸を熱くさせる。

「そんな顔するな、また夜続きをしてあげるから」
「はぅ!……う、うん……」
 なぜわかった! の表情でなのははそれでも期待を込めて頷く。
「ま、やっぱり出かけることにしよう。いや、ものすごく出かけたい気分になった」
「え? そうなの?」
 自分が気に入ってる店であって、クロノははたしてそこまでお気に入りであったかと、
なのはは首をかしげる。
「うん、というかだな、言うなればなのはを皆に自慢したい気分だ。街のみんなに思いっ
きりなのはを見せびらかしに行くとしよう」
「ふぇっ! ま、待ってよ、わ、わたし見世物じゃないよぉ」
 いきなり何を言い出すか、となのはは一歩後ずさる。
 クロノは想定した反応のなのはを見てにやりと笑うと言葉を続ける。
「そうか、残念だな、今日は特別に外でもおもいっきり甘えていい、と言おうとしたん
だが……そうか、なのはが嫌なら仕方ないな」
「っ!?」

 性格柄、クロノは外であまりべたべたとしたがらない。せいぜい手を繋ぐ、とか腕を
組む、といった程度。なのはとしては外でももっと……なのだが、まぁ、クロノが恥ず
かしがる気持ちもわからないでもなく、それに2人だけの時や家の中では存分に甘えさ
せてくれるし、例外的にアースラの中では周囲に人がいてもそれなりのことはしてくれ
るし……とはいえ、やっぱり自分も恥ずかしさはあるが、それでもなおやはり、

「この人が私の未来の旦那様でーす!」
 と、吹聴して歩くことだって夢と言えばなのはの夢なのだ。

 まぁ、そこまでは流石に今のクロノがその気とはいえさせてはくれないだろうが、腕
を組む、以上のどこまでが今日のクロノの範疇なのかはぜひとも確認したいところ。

「え、えと、そ、それは、ぐ、具体的に言いますと、ど、どの辺りまでが……」
「景色の綺麗な公園なんかでの抱擁はまた格別だろうなぁ、気分が乗れば見せ付ける意
味でキスの1つも、などと思っていたんだが、そうか、まぁ、僕も無理強いしたくはな
いからな。なのはが嫌なら止めておくか」

 クロノの若干の誤算は、戦技教導官、管理局のエースオブエースと称されるなのはと
て、こと自分の前では1人の恋する乙女。先にも述べた道行く赤の他人に自慢の彼氏を
見せ付けるという、ある種背徳感すら漂う行為に憧れを抱かぬわけがないことを失念し
ていたこと。
 ……つまるところ。

「行く! 行くよ行くよ行くよ! 外で食べる! もう決まりっ! やだって行っても
もうだめっ! なのは、クロノくんにお外で抱っこしてもらうのっ! ちゅーもするっ!
絶対絶対するんだからぁっ!」
 幼児化し、ずいずいーっとなのはがクロノに迫りくるのは当然の結果であった。

 うおお、と自ら招いた自体に若干引きつつ、クロノはわかったわかった、となのはを
手で制する。
「お、落ち着けなのは、わかったから。と、とりあえず何でもいいからお腹に入れよう、
流石に空きっ腹で街を歩くのはなんだからな」
 あ、となのはもわれに返り、
「あ、そ、そうだね、えーっと、じゃぁコーヒー入れるね。クロノくんはリビングで待っ
てて」
 と、慌てて食器棚に向かうなのは。
 クロノも何かしようと声をかけるが、
「じゃぁクッキーは僕が……」
「あ、いいの、私がするから、クロノくん休んでて」
 くるりと振り返り、目の前に差し出されたなのはの両手に、その動きを止められる。
「いや、僕も手伝うよ」
「いーの。今はなんでもいいからクロノくんのために何かしたいのっ」
 そのまま手でクロノの肩を掴み、くるっと回れ右させ、なのははクロノをキッチンか
ら追い出す。
「すぐ出来るから、ちょっとだけ待っててねー」
 押されるままずいずいとキッチンから退去させられるクロノ。首だけ振り返り、何か
言おうとするが、なのはの笑顔に何も言えなくなる。
「う……わ、わかった、じゃぁ……待ってるよ」
「うんっ!」
 語尾にハートマークが付きそうなそんな顔を見せられたらクロノとて従うしかない。
大人しく待っていようとクロノはキッチンから出る。
 リビングのソファーに向かい1歩踏み出したところで、
「ま、言い出したら聞かないのは今に始まったことじゃない、か、ははは」
 ふと無意識に小声でそんなことを呟いてしまう。

「んー? 何か言ったー? クロノくん」
「いっ! いや、何もっ! 何も言ってないっ!」
 聞こえたかっ! と、クロノはキッチンから顔だけ覗かせたなのはに、びくりと身を
ちぢこませる。
「そ? ん、すぐ行くからまっててねー……えーとぉ……あなたっ!」
 きゃっ、と自分で言った言葉に顔を赤くしてそのままなのははキッチンへと引っ込む。
 やれやれ、と苦笑してクロノはソファーに腰を降ろし、先ほど見損ねた新聞を中空の
スクリーンに展開させた。
 ほどなくして、キッチンからコーヒーの良い香りが漂い始め、クロノの鼻をくすぐる。
それを嗅いだクロノの腹がぐぅと鳴った。

 〜 〜 〜 〜

「なのはー、もういいかー?」
「んー、も、もうちょっと待ってぇー」
「早くしないと昼も過ぎるぞー」
「わ、わかってるよぉー、ね、ねぇ、クロノくん、これとこれのどっちがいいー?」
 寝室のドアの前で、着替えるからちょっと出てて、と追い出されたクロノが時計を気
にしながら待っていると、下着姿のなのはが助けを求め顔を覗かせる。
「結局下着姿を披露してくれることになるんだから、最初から部屋に居た方がいいじゃ
ないか。いつも言ってるが……」
「も、もう! 意地悪言わないでよぉ。それよりこれとこれどっちがいいか選んでよぉ」
 同棲したカップルや夫婦が必ず1度は繰り返す会話を交わしつつ、クロノは寝室へと
足を踏み入れる。
 なのははベッドの上の服を指差し、再度、どっち? とクロノを急かす。
 ベッドの上には左側に薄緑のワンピース、右側に黄色いミニスカートとブルーのタン
クトップ、そしてピンク色のハーフジャケットが組み上げられて置いてあった。
 クロノは左右の服を一瞥した後、なのはの下着姿に目を移し……

「左」
 即決。

「早いよっ! もう! もっとちゃんと選んでよぉ!」
 怒るなのはに、なぜかクロノはあさっての方向を向いて鼻っ面をかいていたりする。
「え、選んださ、普段なら逆に即答で右だが……その……その下着なら迷わず右だ」
 え? となのはは自分の身体に目をやる。
「……なんで?」
 クロノに向けて、理由を、となのはは問う。
「それは僕と君の思い出の下着だ……こ、こんな短いスカートで万が一でも他人に見ら
れたくない」

 なのはが身に着けているのはピンクと水色のストライプのお揃いのブラとショーツ。
 2人が初めて結ばれた際、なのはが自分とクロノの色と称して身に着けていたもので
あった。

「……覚えてて……くれたんだ?……」
「……わ、忘れるわけ……ないだっ!?」
 抱き付き、寄せられるなのはの唇にクロノの言葉は止まる。
 クロノは恥ずかしさと驚きで、そしてなのはは嬉しさで赤くした頬のまま、2人の口
付けは続く。

「……」
「……嬉しい……ありがと、クロノくん」
「……いや、その……と、当然、というか……その……な、名残惜しいけど、そ、そろ
そろ出かけよう。時間もないし、な」
「……うん……」

 唇を離し、至近距離でのそんなやりとり。
 次の行動を促すクロノに、それを受け入れるなのは。
 それでも……なかなか離れることのできない2人。
 結局2人が玄関を出たのは、それから3回のキスを繰り返した22分後のことであった。

 〜 〜 〜 〜

 目当ての店はそこそこに繁盛していた。中には時空管理局の制服姿もいくつか見受け
られる。

 なのはと付き合うようになり、以前はまったく必要のなかった「女の子の好む店」と
いう知識が必要になったクロノは、早々にさじを投げ、餅は餅屋とばかりに恥を忍んで
親友たるヴェロッサ・アコースに相談した。
「ああ、わかった。クロノ君の頼みだ、めぼしい所をいくつかピックアップしておくよ」
 の返答を受け、助かる、と返事を返したが、後日3桁近い店の名前をリストアップし
てきたヴェロッサにクロノも半ば呆れたものである。
 まぁ、それでも多くて困るわけではなし、とりあえず頭から行ってみようかと適当に
選んだ店がここだったが、なのはがいたくこの店のパスタを気に入り、間隔の空くこと
の多い2人のデートではマンネリという言葉も意味を成さず、ほぼ毎回と言えるほど、
2人はここに足を運んでいる。

 席に着こうとした2人が局員の側を通ると、
「ハ、ハラオウン提督に高町教導官っ!?」
 などと飛び上がって敬礼されたりしたが、プライベートだから、とクロノはそれをた
しなめる。
「お、お二人は本当にお付き合いされていたんですね……」
 と、さらなる追い討ちもあったが、なのははそれに対し、
「いえお付き合いじゃありません」「え?」「もう婚約してますからっ♪」
 右手の指輪を見せ、嬉々として返すそんなやり取りも。
「婚約中はまだ付き合ってる、と言っていいんじゃないか?」
「気持ちの問題だよっ」
 と言いながら去り行く2人。後には敬礼したまま呆然と立ち尽くす局員達が残された。

 〜 〜 〜 〜

「えーと、私……なすとモッツアレラチーズのトマトソースとランチサラダにするっ。
クロノくんは?」
 奥まった席に腰を据えた2人。なのはは早速メニューとにらめっこし、今日の対戦相
手を決めた様子。
「じゃぁ、いつもので」
「もう、またそれなんだからぁ、たまには自分で選んだら?」
 こういう場所で「いつもの」というのは、常連客が固定メニューを頼む場合を指す。
 が、この2人の場合は少々趣が異なる。
「別になのはが選んだやつで今まで外れはなかったしな、僕の好みをよく理解してく
れる。流石は僕の奥さんだ」
「も、もう、クロノくんたらぁ、いっつもそうやっておだてるんだからぁ。まだ奥さん
じゃないって言ってるのにぃ、もう……」
 やんやんと身悶えながら、既になのはの中では「クロノのメニュー」が決定済。
 そう、なのはがクロノのメニューを見繕う。それが2人の中での「いつもの」。

(……あーもー、まったく毎度毎度、たまにしか来ないとはいえこのバカップルは……)
 ちなみにこの2人の御用聞きをするウェイトレスはその場に居たウェイトレスの中で
じゃんけんで負けた者が行くことになっているのをなのはもクロノも知らない。


「えと、そしたら、チキンとほうれん草のチリトマトソースって辛いやつだと思います
けど、普通よりもう少しだけ辛くできますか?」
「はい、大丈夫です」
「じゃぁそれをランチセットで」
「承知しました。メニュー繰り返します。なすとモッツアレラチーズのトマトソースと
ランチサラダがお一つづつ。チキンとほうれん草のチリトマトソースのランチセット、
パスタ辛めがお一つですね、以上でよろしいですか?」
「はい」
「では、しばらくお待ちください」
 一礼し、テーブルを離れるウェイトレス。
 ウェイトレスが厨房に声をかけるのを確認して、クロノはなのはに向き直る。

「辛め、か、甘い物ほどじゃないが、あんまり辛いのもあれなんだがな……」
 珍しく「なのは選定」が外れたか、とクロノは首をかしげる。
 なのははにこりと笑うと、ぴっと人差し指を突きたて、説くように解説をはじめる。
「って言いながらクロノくん意外と辛いの好きなんだもん。普通の辛さだと一気に食
べちゃうから、ちょっとだけ辛くすれば食事のスピードが落ちて逆に胃に優しかった
りするんだよ」
 おお、と、クロノは感心。深々と頭を垂れる。
「流石。お見逸れしました」
「えへへっ、夫の健康管理は妻の大切な役目ですからっ」
「頼りにしてます」
「にゃはは、頼りにされてますっ♪」
 あはは、と笑い合う2人。隣の席で、料理を食べ終え食後のコーヒーを堪能していた
客が額を押さえ、「勘弁してくれ……」と去っていくのにもまったく気づかなかった。

 〜 〜 〜 〜

「この店、何回目くらいだったかな?」
 料理を待つ間の会話の切れ目。
 ふと思い出したかのようにクロノがそんなことを言う。
「ん?んー……どうだろ、10回、くらいだと思うけど……どうかしたの?」
 あごに人差し指を当て、ちょっと考えるポーズのなのは。
「ん、あ、いや、その……毎回に近いくらいデートの時の昼はここだから、ここに来た
回数でデートの回数もそこそこ計れるか、と思ったんだが……よくよく考えたら全部が
全部昼も含めて外出してた、ってわけじゃなんだな、いや、すまない、何でもないんだ、
気にしないで……あ、いや……そうじゃなくて……だな……」
 普段はっきり物を言うクロノにしては珍しく言葉に詰まっている様子。
「珍しいね、クロノくんがそんなうやむやなこと言うなんて、何か言いたいことあるな
ら聞くよ? ちゃんと言って欲しいな……隠し事されるほうが嫌だよ……」
「……そう……だな……すまない」
 なのはの言葉に、それでも少しの間を置いて、何もないテーブルを見つめるクロノ。
 言葉を待つなのはは優しくクロノを見つめ、自分からは言葉を発しない。

 わずかの後、クロノは顔を上げる。
 視線が待ち構えていたなのはの視線と絡まる。

「……なのは……」
「……うん、クロノくん……」
「勿論……君の気持ちが最優先、な話なんだが……」
「……うん……」
「……」
「……」

 とうとう来たのかな……となのはは胸の内で。

 告白し、そしてすぐに婚約し、同棲生活も始めた。後に続くのは1つしかない。
 「結婚」その2文字がなのはの頭の中でじわじわと実体化しつつある。
 クロノが望むなら求婚を断るつもりは毛頭ない。だがしかし、心のどこかであと2年
と少し、つまりなのはが高校を卒業するまでクロノは待ってくれる、と、確認したわけ
でもないのに、そう勝手に解釈していた自分がいたことも事実。
 よくよく考えれば、クロノが高町家でなのはとの結婚の許しを得ようとして、結果、
恭也の口ぞえで、その場では婚約とあいなった時。
 じゃぁ高校を卒業したら結婚。とは確かに誰も、なのはもクロノさえも言っていない。
 つまるところ自分の故郷の概念を自分の都合のいいように考えていただけ、となのは
は今更ながらに気が付いた。
 ミッドチルダの就業年齢は地球よりも低い。成人認識年齢もしかり、である。
 なのはは16歳、地球では保護者の許しを得てようやく結婚が認められる年齢。だが
クロノは現時点で21歳。地球であったとしてももはや1人で婚姻を決められる年齢で
ある。ミッドでなら尚更だろう。
 自分の思わぬ所で、もしかするとクロノを悩ませていたのでは、と、なのはは胸を痛
める。

 だから、
 クロノが望むなら、
 今、それを望んでいるのなら。
 ここで結婚の言葉が出るのなら、私はそれを受け入れよう。ごめんなさい、と謝って、
あなたの気持ちを考えていなかったと謝って、そして彼の愛を受け入れよう。
 多分学校は辞めることになるだろう。いくら聖称が比較的穏やかな校風といえども、
まさか学生結婚した生徒を置いてくれるとは思えない。
 フェイトやアリサやすずかやはやてと会う機会も減るだろう。勿論自分の家族にも。
 それでも自分はクロノの求婚を喜んで受けるだろう。クロノを無くしてこれからの日々
を過ごせるとはとても思えないのだから。

 重度のクロノ依存症になってしまった自分を、それでも誇らしく思い。
 そしてまた、彼もほんの少しでいいからそんな気分であって欲しいとなのはは願い、
口を開きかけては閉じ、また開きかけて閉じ、を繰り返すクロノを潤み始めた瞳で見つ
め続る。

「……なのはっ!」
 そして、決したか、クロノは、先ほどよりやや強い口調でなのはを呼ぶ。
「はいっ……」
 はっきりと、期待を込め、なのはは答える。

 そして……、

「お待たせしましたー。なすとモッツアレラチーズのトマトソースにチキンとほうれん
草のチリトマトソースになりまーす」
 ごとんごとんと、ウェイトレスの手により料理が2人の目の前に並べられる。
「あ……」
「あ、え、えと……どうも……」
「ご注文は以上でよろしかったでしょうかー?」
「えと、は、はい、大丈夫です」
「……」
「ではごゆっくりどうぞー」
 だーっとやって来てだーっと去っていくウェイトレス。

 出鼻を挫かれた2人。なのははちょっと苦笑い。クロノは唖然としたまま。

「……うん。とりあえず食べてからお話しない? クロノくん」
「あ……ああ、そ、そうだな……」
「うんっ、とりあえず食べてからにしようよ、私もうお腹ぺこぺこ」
 はい、となのははクロノに小さなバスケットに入ったフォークを手渡し、自分の分も
手に取る。
「んー、美味しそ。じゃぁ、いただきまーす」
「……いただきます……」
 反射的に手に取ったフォークをそのままに、いただきますと両手を合わせるなのはに
合わせ、クロノもまた合掌。
 早速、となのははパスタ皿の中央付近にフォークを突き立て、くるくるとパスタを絡
め取っていく。
「……」
 小さな玉にしたそれを自分の口元に運ぼうとするなのはを見ながら、クロノはフォー
クを握った姿勢のまま声を出す。
「なのは」
「ん? んぁ……」
 言葉を返すと同時に最初の一口を今まさに口に入れんとするなのはに、クロノは更に
言葉を続ける。

「……執務官に、ならないか?」
「ふぉむっ?(へぇっ?)」

 クロノの問いかけの内容と、自分が出した随分と間の抜けた声になのはは二度驚く。
 思いがけないその言葉が頭の中でこだまし、せっかく口の中に入れた間際のパスタが、
舌を通して脳に美味しさを拡げようとしていたのを阻害する。
 もったいないと思いつつも、早口に二度三度咀嚼し、なのはは無理矢理パスタを飲み
込み、胃の中に収める。
 ちょっと正確に話を聞いたほうがいいかな、となのははフォークをテーブルに置き、
備え付けのナプキンで口元を拭って、改めてクロノに正対し、口を開いた。
「……えと、あの、執務官?」
「ああ」
 おうむ返しの質問に、クロノはあっさりと首を縦に振る。

「……」

 2秒ほどその「執務官」という言葉の意味を頭の中で確認し直し、一応念のため、と
なのはは質問を返す。
「……ええっと……誰が?」
「もちろん、君が」
 ぴ、とクロノが手にしたフォークが自分に向けられる。思わずなのはは誰か居るのか、
と後ろを振り返るが、あいにくとそこにはレンガ風の壁が広がっている。
「僕はなのはに言ってるんだよ」
 ……やはり後ろには誰もいないらしい……が、
「……えと……あの、私が、執務……官……に?」

 目を瞬かせながら同じ言葉を繰り返すなのはに、

 クロノも同じように、今一度、頷いた。


  魔法少女リリカルなのは  〜 CherryLight・NEXT 〜

         〜 Scenery of the certain daylight(ある昼の風景) 〜

                          Sweet END.



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目次:〜 CherryLight・NEXT 〜
著者:4の422 ◆h7y.ES/oZI

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