713 名前:usual day後編(1/6)[sage] 投稿日:2009/03/22(日) 23:14:01 ID:tImNED12
714 名前:usual day後編(2/6)[sage] 投稿日:2009/03/22(日) 23:16:05 ID:tImNED12
715 名前:usual day後編(3/6)[sage] 投稿日:2009/03/22(日) 23:17:37 ID:tImNED12
717 名前:usual day後編(4/6)[sage] 投稿日:2009/03/22(日) 23:19:15 ID:tImNED12
718 名前:usual day後編(5/6)[sage] 投稿日:2009/03/22(日) 23:20:27 ID:tImNED12
719 名前:usual day後編(6/6)[sage] 投稿日:2009/03/22(日) 23:21:14 ID:tImNED12

召喚師のガキの包囲を突破した俺達だが、後ろから陸士部隊の車が聞きなれたサイレンを鳴らして追いかけてくる。


そしてバックミラーには逃げようとする俺達に向かって空をまっすぐと飛んで俺達の方向へぐんぐん向かってくる影を見えた。
さっきの黒衣の魔導師、金髪のオンナだ。



「(あの野郎、空戦魔導師だったのか!?)」
日ごろダイエット・コーラとダンキンのドーナッツで身体をなまらした警らや陸士の奴らを巻くのはチョロい。
しかし、今回運んだブツに対して追ってきたのはエース級の空戦魔導師。


さすが報酬100万だけある。ハイリスクハイリターン。代償は保険にも入っていない俺の50セント以下の命ってところか?


そして更にもう一人魔導師、いや騎士が後に続く。赤紫の髪をポニーテールにした。これまた金髪の女よりナイスバディなヤツが
おまけにくっついていた。


「(へっ・・・イイ女2人にに迫られたら是非とも誘いに乗りたいところだぜ)」
そんなジョークを、かなりデンジャーな状態の中で考えちまった。


俺はビュイックのアクセルを更に踏み込んでスピードをあげた。そうして無理やり幹線道路の車の流れの中に飛び込む。


この先はリンカーン・トンネル。

昔から港湾区とサードアベニューのオフィス街をつなぐトンネルだ。しかし、地上本部から1ブロックもいけば廃棄都市区画のハーレム。
何もしらない甘ちゃん陸士が歩けば、すぐに2階級特進の名誉と家族へ遺族年金が支給される。


もっともヤツら管理局の魔導師連中には転送ポートやヘリといったものがあるわけで、俺達には眼もくれずに青空ばかり見てやがるが。

そんな廃棄都市区画のスラムにまぎれてしまえば俺達みたいなチンピラはまず見つからない。


それにトンネル内は2車線でしかも車の流れも多い。本局からミッドに来たばかりのクソマジメな管理局員だったら、破壊力のある
射撃魔法を撃つにも躊躇するだろうし、飛行魔法の動きも制限される。


逃げ切れる!!運び屋のカンから俺はそう考えた。
俺はクラクションをならしながら、スピードを上げてどんどん車をすりぬけていく。

「キム!!やつを落とせ!!」
「んなこと、わかってるよアフマド!!」

俺は仲間に叫んだ。仲間はリンカーン・トンネルの中まで追ってくる黒い魔導師に向けて実弾型デバイスのAK47を乱射する。


2人は傷ひとつ負うことなく、かわすかきれいに防御魔法でガードしてはじいていきやがる。
追うスピードを若干ゆるませるくらいだが、それでもスピードは段違いだ。


こっちは狭いトンネルの中で70マイル出すのがやっとだってのによ!!


AKの流れ弾が一般車両やサイレンをならして追跡してくる管理局の車にあたり何台か爆発してトンネル内を派手に回転する。
しかし、飛行魔法で追ってくる2人は違う。

赤紫髪の騎士がポイントマンとなり、トンネル内を派手に転がる車をキレイにぶった切って、さばいていく。


その間に金髪のオンナが二刀流から鎌状に変化させたデバイスを大きく振るい、金色の魔力刃を撃ってきた。
そいつとんでもない早さで回転しながらトンネルにかかっている看板、鉄骨、照明を紙みたいにスパスパ切りながら車に向かってくる。


「ふせろ!キム」
俺がそう叫んだ瞬間、金色の三日月の魔力刃で車の上半分がきれいに吹き飛び、キムは70マイルのビュイックから
ウィング・ロードで突っ走る陸戦魔導師のごとくきれいに吹っ飛び、アスファルトにたたきつけられ白眼を向いた。



「あーあっ・・・バカ野郎・・・」
俺はそうつぶやいた。

三日月の魔力刃はビュイックの後輪も完全にオシャカにしていた。

ホイールからきしんだ音と火花が飛び散り、車は公園で相手を誘うカマ野郎のようにケツを振って蛇行する。


こんなところで捕まるマヌケな姿が頭をよぎったが、タンクローリーが目の前を走っているのが見えた。
俺は目の前のタンクローリーを追い抜くと、ポケットに残していたスモークを全部ぶちまけた。


スモークは爆発してトンネル内は煙でいっぱいになる。
しかし、煙の中を金髪の魔導師と赤紫の騎士はひるむことなく追っかけてきた、これも俺の予想の範囲だった。
そんな煙の中、俺はタンクローリーにむけてパイナップルを投げる。


普通ならたかが手りゅう弾ごときで、バリアジャケット着た魔導師と騎士なんかに効くわけ無いのは十二分にわかりきっていたが
今回は違う。


パイナップルの爆発で引火したタンクローリーは爆発炎上し、トンネル内は炎と爆風の壁で分断された。
2人は即座にプロテクションを展開したようだが、後ろの陸士の車や一般車両はみんな仲良くバーベキューだろう。


そしてその爆風は俺のビュイックをも吹き飛ばし、トンネルの出口にある分離帯のガードレールに激突した。
ビュイックから黒煙があがり、完全におシャカになっちまった。そしてサードアベニュー側からサイレンの音が聞こえてくる。


「うう・・・」

俺はふらつく頭で何とか報酬のつまったリュックをつかむと、追ってくる陸士の車に対して実弾型デバイスを発砲しながら
廃棄都市区画へと走った。

「はあはあ・・・」
廃棄都市区画までもう少しというところまで逃げてきた。9mmのマガジンももう空っケツだ。
それでも今のところうまく陸士や警らをまけているようだ。


安心すると急に自分の右胸に違和感を覚えた。するとジャンパーの裏地がベットリ黒い血でぬれていた。
いつの間にか射撃魔法の流れ球が中の防弾チョッキをつきやぶり俺の右胸にデカイ穴をこさえていた。


バリアジャケットなんて代物があったら、かすり傷くらいですんだかもな。


「がはっ!」
とたんに息が苦しくなる。落ち着いて呼吸をしようと努力するが、息をすればするほどヒューヒューうめいて息ができない。
そうして落書きだらけのレンガ塀によりかかり、崩れるように俺は倒れた。


そんな俺を追っていた連中が発見したらしい。さっきの女の隊に発見されたら、バインドと回復魔法で逮捕されたんだろうが
追ってきたのは警らであった。


警らの一人が俺からリュックを取り上げて中を確認する。


「返せ・・・くそ野郎・・・」
俺は苦しくうめいた。


警ら部隊一人が札束をライターで燃やして舌打ちする。
「スーパーノートか・・・報酬にパチモンつかまされるとはね。ミッドの住民にしては間が抜けてるぜ。まっ、技術部に提出して
証拠品としてホコリかぶらせとくより俺達がもっと有効に使ってやるよ」


「おい、サム。機動6課の連中が来る前にそいつバラそうぜ」
「そういうことだ。あばよ」


そう言うと男は腰のホルスターから実弾型デバイスのベレッタM92をぬいて俺の頭に当てた。


陸士や本局直属の部隊に発見されたら、バインドで逮捕ってところなんだろうが、ここじゃそんな幸運にはめったにめぐり合わない。
それに実弾型デバイスに非殺傷なんて器用な設定は無い。


『レリック』とかいう赤いイシコロを運んだおかげでこんな事になっちまうとはな・・・
でも、これでこの街で生きなくてもすむんだ・・・
やっとミッドチルダから出られるんだ・・・


『パンッ!』
一発乾いた音が鳴った。俺は一瞬びくっと動いて、糸の切れた人形みたいにダランとして動かなくなった。



表通りを歩く通行人の何人かはそれを見ていたが、今の一連のやりとりを通報しようともしない。

ホットドック・スタンド店員に客が、今の光景を見てこう言った。
「よおマスター、今のあいつ。当分『ケチャップ』いらないみたいだぜ」

そして2人して大笑いしてやがった。

“Crime sceane Cross out”と銘の入った黄色いテープがサードアベニューの路地裏の一角に張り巡らされている。
その道の端に覆面車の茶色いフォードが止まった。


運転席の中年男性と助手席に乗っていた若い女性が降り、中年の男が付近のホームレスのやじ馬をかきわけテープをくぐった。

検視官と奥で話をしていた陸士部隊の魔導師が近づいてきた。


魔導師は女性に敬礼をする。
「陸士143部隊、カーティス・ジェフリー一等陸曹であります!」
若い女性も返礼する。
「陸士108部隊捜査官、フォワードのギンガ・ナカジマ二等陸士です!」


隣にいた中年男性は敬礼を返さず本題に入った。口調も隣の女性と違いかなりくだけている。
表向きの体面は厳格を旨とする陸士仕官にしては珍しい。


「久しぶりじゃねえかCJ。地上本部にヤボ用があったら無線でレリック絡みのコード187って聞いてな」


「はっ!ナカジマ三佐。機動6課ライトニング小隊が突入した現場へレリックを運んだと思われる被疑者が逃走。付近をパトロール中
であったサードアベニュー警ら部隊が抵抗する男に対して『やむ負えず』実弾型デバイスを発砲したとのことです」



「『やむ負えず』ね・・・」
ゲンヤは表でやじ馬を取り押さえる警らたちを一瞥する。

「あいつら後で身体検査な。面白いモンが見つかるかもしれねえ。んで、ホトケはハラオウンお嬢とシグナムがまかれたんだってな?
Sランク2人相手して非魔導師のくせにとんでもない野郎だ」


そうしてフェイトたちとの念話を終えたギンガが答える。
「執務官と二等空尉も、トンネル内の負傷者を収容後、こちらに着くそうです。トンネル内の人間は回復魔法で容疑者のキム・リー
以外は全員助かったそうです」

そんな話をしながら、ゲンヤはポケットから白手袋をとりだし、ブルーシートをよけて死体を確認すると顔色を変えた。

隣にいたギンガが声をかける。

「知り合いですか?」
「アフマド・・・アフマド・アル・サラーフ・・・廃棄都市区画に住んでる運び屋だよ」

そうしてゲンヤは説明を続ける。

「こいつとは20年前のヤマ(事件)でちょっとな。両親共に第166準管理指定世界“ネフド”からの密航者でモレーキー出身だ。
家族はなし。8年前にSt・マーチンの聖王教会の児童保護院を脱走、4年前から2年間、自動車重窃盗罪と加重強盗未遂でサリナスバレー
のヤサ(軌道拘置所)に入ってた。収監者データーベースで調べてみろ」


「はい!」
報告を聞いて、ギンガは地上本部に連絡をとろうと駆け出していった。



ゲンヤは死体の顔を見て、こう言った。
「おだやかな顔しやがって・・・そんなに嬉しかったか?やっとミッドチルダ・・・生き地獄からはい出れたことが・・・
なあアフマド・・・」


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著者:44-256

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