【皆殺し編】 ◆第1話 「フレデリカ」
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rika_furude 2010年07月12日(月) 23:36:05履歴
◆第1話 「フレデリカ」 
『――昭和58年6月某日 雛見沢――』
『誰なの？』
『私を殺すのは 一体…誰――!!?』
『……？』
『ここは どこなの？』
『あれは……私!?』
『でも 私は今こうしてここにいる』
『どういうこと？』
【…結局】
【罪滅し編の世界でも昭和58年6月に殺されてしまった……】
「誰なの？」
「私が殺されたって……何を言ってるのよ!?」
【まぁ落ち着きなさい】
【こうやってあなたに会えたのだから】
『――え？』
「……私？」
【いいえ わたしはフレデリカ＝ベルンカステル】
【古手梨花（あなた）とは別人よ】
「別人？」
『だけど こんなにも似ているのに』
【…そうね……】
【別の人格と言った方がいいかしら】
「………」
【魔女と呼ぶ者もいるわね】
【でもわたしの名前などどうでもいいの それより重要なことは】
【私とあなたがこの繰り返される雛見沢の物語を】
【�牾安Δ�ら見る事ができる存在�瓩箸いΔ海函�
「…………え？」
『何？』
【死にたてだからあまり記憶が戻ってないでしょうけど】
【薄々はわかっているはずよ】
『今さっきから何を……』
【そう――】
【古手梨花の人生とその終焉は 何度も何度も繰り返されているの】
『……そうだ 私は…知っていた』
『私は百年以上もの年月間 数え切れないほど生を繰り返し』
『そしてその度に殺されてきたことを!!』
『その舞台はこの雛見沢――…』
『ここでは毎年6月に村の守り神・オヤシロさまを祀る「綿流し」の晩に』
『必ず誰かが死ぬという連続怪死事件――通称・オヤシロさまの祟りが起きている』
『1年目の昭和58年6月にダムの工事現場監督がバラバラに殺され』
『翌年の2年目にはダム推進派だった沙都子の母と義理の父が旅行先で転落死した』
『3年目はダム抗争に日和見だった古手神社の神主――私の父が奇病で急死』
『母は入水自殺した』
『さらに4年目に沙都子の叔母が撲殺され 兄の悟史が事件の数日後謎の失踪をとげる』
『そして昭和58年6月――…』
『私はこの5年目の晩 もしくは数日後に必ず殺される――…』
『今回もまた 昭和58年6月より先の未来に辿り着けなかったのか…』
【そして このカケラも駄目だった】
「…ええ」
「これは私を中心にした無限の可能性の世界 それが結晶化したカケラ…」
【思い出したようね（クス）】
【そうよ そしてこれはあなたの見てきた世界たち】
【私はこのカケラが本のようなものだと思っているから名前をつけているけどね】
【…例えば】
【これは鬼隠し編】
【あれは綿流し編】
【そしてこれは祟殺し編】
「…やめて」
【え？】
「見せないで！」
「それは二度と見たくないのよ」
【……ああ ごめんなさい】
【あなたは親友の沙都子がボロボロになっていくこのカケラが大嫌いだったわね】
【…とにかく】
【カケラたちは閉じた輪っかのような世界の中で永遠に繰り返される世界を】
【あなたがその目で見てきたモノよね？】
【そして輪っかの中にいる人間には】
【それが繰り返されていることに気付くことは出来ない】
【でも 私とあなたはその外側にいるから それを理解することが出来るの】
【…けど これはただの前提条件（クス）】
【本当に重要なのは――】
【この繰り返しの世界を支配している 3つのルールの存在】
【あなたにはわかるかしら？】
「…そんなの」
「当然でしょ」
「そのルールは私の見てきたこの物語のカケラを重ね合わせたら簡単にわかるわ」
「例えば鬼隠し編」
「この世界では前原圭一が仲間たちへの疑心暗鬼に取り憑かれ」
「竜宮レナと園崎魅音を撲殺してしいまった」
「…ただこれだけを見ると圭一は疑り深くて」
「精神を病みやすい性質の人間と推測できるかもしれない」
「だけど……」
「鬼隠し編以外の世界では圭一はそのような姿をまずみせない」
「むしろ熱くて真っ直ぐで仲間たちのために全力を尽くせる人…」
【そうね】
【鬼隠し編のような暴走の方が珍しいことを 私たちは他のカケラから知ることが出来るわ】
【これはとても大切なこと】
「……つまり」
「複数の世界のカケラを重ね合わせて全てに共通する真実が もっとも真実に近い」
「そういうことでしょ？」
【その考え方なら隠れていたルールを見つけだすことが出来るものね】
「ええ」
「さっきも言ったように鬼隠し編では圭一が疑心暗鬼に囚われたわよね」
「彼を怖がらせないようにと連続怪死事件を隠したレナと魅音の気遣いに気付かず」
「反対に友人たちが事件に関係していると思って…」
「それと同じように綿流し編・目明し編で囚われたのは」
「園崎魅音の双子の妹・詩音」
「昭和57年に想い人 北条悟史が消息を絶ったのは」
「村の仇敵として「北条」を憎む園崎家のせいだと疑い始め」
「その仇討ちを暴走させ大勢の人を殺めてしまう」
「さらに 罪滅し編では竜宮レナが囚われてしまった」
「彼女は家庭の不幸から逃れられず 父を狙ったヤクザを二人も殺した」
「そして あることをきっかけにオヤシロさまの祟りを起こすのは園崎家だと疑い」
「それを警察に訴えるためにクラス中を人質に取り篭城までしてしまった…」
「人物も動機も行動もバラバラだけど 疑心暗鬼から凶行に走ったことは一致している」
「そこから導き出せることこそが一つめのルール……」
「つまり「雛見沢には不特定の誰かが疑心暗鬼に取り憑かれ凶行に誘われる」」
「というルールXがあること！」
「…そして もっとはっきりと全ての世界で繰り返されているイベント――」
『綿流しの晩に富竹ジロウと鷹野三四が殺されることもルールのひとつ……』
「これはすべてのカケラで例外なく起きる 絶対運命」
「ルールXでだれが凶行に走ろうがそれには関係なく」
「絶対的な強い意志によって二人は殺されてしまう」
「それがこのルールY」
【――…だけど…（クス）】
【この二つのルールは独立した別々のルールなのに】
【ルールXによって凶行に走った惨劇の主人公たちは】
【必ず富竹と鷹野の死を自分に迫る危機だと関連づけようとするわよね】
【「富竹と鷹野が殺されたから自分も危ない」そんな風に思い込んで…】
「……あいつらが」
「大石蔵人と鷹野三四がいつも 2つのルールを結びつけようとするから…！」
『大石は事件の犯人が園崎家であると信じ込み』
『鬼隠し編で前原圭一を目明し編で園崎詩音の疑心暗鬼を加速させる！』
『同じように鷹野三四も罪滅し編で竜宮レナを暴走に駆り立てた!!』
「この二人がいなければ」
「私の大切な友人たちはあれほどの凶行に及ばなかったはずなのに……！」
「！」
【私も大石と鷹野の事を好ましいなんて思えない】
【むしろ嫌悪感すら抱いている】
【だけど あの二人だけのせいじゃないことくらい知ってるでしょ？】
「………」
「そんなことわかっているわ」
「……二人の行動の裏には もう１つのルールがあるのよね」
【そうよ それこそが最後のルール】
『この雛見沢で起きる事件はすべて園崎家の仕業…』
『誰もがそう信じているというルールZ!!』
【園崎家はいつもすべての事件の陰で園崎家が暗躍しているように振る舞ってきたわよね】
【そして大石や鷹野はもちろん 村人たちもそう信じ込んできた……】
【でも――】
【目明し編で園崎詩音が暴いたように】
【これは園崎家が仕掛けてきたブラフ はったりにすぎなかった…】
【だから】
【毎年綿流しの晩に起きる雛見沢連即怪死事件も怪しくなるわね】
『……そうだ』
『ルールZの存在によって人々は』
『この事件を園崎家による連続殺人事件だと思い込んでいるけれど』
『これは別々の事件がたまたま綿流しの日に起こっただけの偶然かもしれない』
『だけど みんながそれを1つの事件だと思い込み疑心暗鬼を膨らませ』
『それがまた凶行の引き金になる……!!』
『この3つのルールのせいで 私の友人たちがみんな幸せになれたことは未だに…無い…』
【ねえ これは面白い世界だと思わない？（クス）】
【たった3つしかないルールがシンプルに干渉し合い】
【雛見沢というたった1つの舞台の上で】
【まるで万華鏡のように異なる世界を繰り広げるなんて】
「……面白い？」
「世界のカケラを重ね合わせてわかる最後の真実 それが――」
「毎回必ず古手梨花（わたし）が殺されることだというのに!!?」
【…ごめんなさい】
【許してね】
【私はこうやってカケラを見ることしか出来ないから楽しみがあまりないのよ】
「…富竹と鷹野は絶対確実に綿流しの晩に殺される」
「私も昭和58年6月中に絶対確実に殺される」
「これは殺すという絶対の強い意志が共通しているわ」
「だから古手梨花（わたし）の死もおそらくルールYに則ったもの…」
「このせいで私は昭和58年6月を乗り越えることが出来ず」
「袋小路の世界に永遠に閉じ込められている…」
「なぜ私はこんなに何度も強い意志で殺され 未来を奪われなければいけないの？」
【――もし 殺された後のことがわかるなら】
【その理由を探ることも出来るかもしれないけれど】
【あなたにも私にも「古手梨花」が殺された後のことはわからないものね】
【殺された私たちはまた時間を戻されてしまうから】
【………でも】
【古手梨花は殆どが強い意志（ルールY）で殺されるけれども】
【一部の世界では惨劇の主人公（ルールX）によって殺されているわよね】
【綿流し編・目明し編で凶行に走った園崎詩音によって殺されたように…】
【まあ 死をもたらしたルールの違いによって】
【古手梨花の死語の物語に何か違いがあったとしても】
【どうせ私たちにはわからないことだけどもね】
『そんな――…』
「私に与えられたチャンスは残り少ないのに……っ」
【そうね 長い時間の旅によって古手梨花の心の寿命は尽きかけている】
【そして時間を巻き戻す羽入の力も…】
「だけど…私は真実を知りたいの！」
「昭和58年6月を乗り越えて 仲間たちと幸せな日々を摑みたい!!!」
【………】
【…ああ そろそろ時間ね…】
【ねえ 私たちはルールXYZの3つの錠前を開けることは出来なかった】
【だから次の世界でそれを打ち破る可能性は限りなく低いわ…】
『……っ』
「それでも…！」
「私は今度こそ運命を打ち破って …見つけ出したい……っ」
『私たちを殺すものが一体なんなのか――!!?』
