◆第11話 「3度目の陳情」

「誰にも内緒と約束出来ますですか?」
「………圭一…」
「外でお話したいのです」
「…圭一 沙都子は数年前から病気で ずっと治療を受け続けていますです」
「…その病気は簡単には治りませんが」
「ちゃんとお薬と治療を受ければ普通に生活出来るのです」
「今朝は叔父に意地悪をされて お注射を忘れていたようなのです」
「沙都子は毎日2回 お注射しなくてはならない身体なのです」
「そういう難しい病気なのです」
「注射を忘れた沙都子は」
「校長先生の足音を叔父のものだと誤解してしまったら……」
「校長が何を言っても もう叔父にしか見えないのです」
「…もちろん それは入江が提案しましたが」
「ですが沙都子が断ったのです」
「……圭一」
「沙都子が家に帰らないと にーにーの部屋がなくなってしまうのだそうです」
「沙都子から聞きました」
「北条の家は悟史が帰ってくるまで 沙都子が守らなければならない場所なのです」
「圭一!短気はダメなのですよ!」
「今までやってきたことを棒に振るのですか?」
「……圭一」
「…無力なボクは沙都子を救うためになんの役にも立たない!」
「でも…」
「…でもきっと 圭一なら出来ると信じていますです」
「これまで沙都子を救えず 一度たりとも成功しなかった」
「なのに」
「今回の圭一は今まで見たことのない方法で」
「沙都子を救えるあと一歩まで辿り着いていると思いますです」
「にこ」
「圭一」
「詩ぃ 圭一の言うとおりなのです」
「…みー?」
『…まさか』
『私が代表に選ばれるなんて思わなかった』
『確かに私は沙都子と一番仲が良いかもしれない』
『けど…もっと弁の立つ仲間の方がいいんじゃないの?』
『私はただ…』
『…ただこうして 見ていることしか出来ないのに…』
「羽入…」
『そういえば先日から姿が見えなかった』
『この世界を諦めているからだと思っていたけど』
『沙都子のことは気になるのかしら?』
「そうね…」
「さっきから圭一たちと相談所がやり合ってる最大の争点は」
「沙都子が虐待を認めたかどうか」
「沙都子が認めない限り 児童相談所は沙都子を救うことが出来ない」
「けど圭一たちにしてみれば」
「叔父に脅されている沙都子は助けを求めることが出来ないと…」
「相変わらず話し合いは平行線のままよ…」
「……」
「今日 レナや圭一が沙都子を説得しようとしたわ」
「けど ダメだった」
「きっと…誰が話したって無理なのよ…」
『……ああ』
『……羽入は また私が心に傷を負うことを心配している』
『期待が裏切られ このまま心が傷つき続ければ』
『いつかは私の心まで死んでしまうからだ』
『私が死ぬこと それは即ち完全なる梨花の「死」』
『もう二度と世界を繰り返せなくなる』
『それを羽入は最も恐れる 私という唯一のコミュニケーションの相手を失えば』
『羽入は再びたった一人の世界を生きることになるから―――』
「………」
『沙都子も手を伸ばさず』
『いくら圭一たちが頑張って訴えても結局何も変わっていないから…』
『やっぱり次の世界に望みをかけた方が…』
「え?」
『しまった 聞いてなかったわ――……』
『あ……』
「はい…なのです」
『まだ圭一と入江は諦めていない』
『いや 違う』
『みんな…』
『誰一人弱気になったり諦めたりしてない』
『クラスメートのみんなも…亀田たちも』
『エンジェルモートの客や店員たちも』
『みんな絶対に沙都子を救えるんだと 信じてる………』
『……あ』
『みんな…!?』
『じゃあ』
『私は…?』
『みんなのように信じていた?』
『諦めずに努力をし続けた?』
『ううん』
『私は ただ圭一たちを応援しただけで奇跡を信じてなかった』
『羽入に何をしても無駄なんだと言われてすぐに諦めた』
『沙都子の心を解きほぐす鍵を持っているのは』
『親友である私だというのに……』
『なんて情けない…』
『なんてくやしい…』
『なんて恥ずかしいの』
『…そうだ レナが言ってたじゃないか!』
『一人欠けても 奇跡は 起こらない…』
『私が奇跡を信じてなければ沙都子を救えるわけないじゃないか!!!』
「…………ねぇ羽入」
「この世界でもダメだったら」
「私はもう二度と世界を繰り返さない」
「この世界に」
「私の命をかけるわ!!!」
「ごめん」
「その約束は守れない」
「私にはもう残された時間が少ないのよ」
「たとえ幸運な世界をやり直したとしても またすぐに殺されてしまうのなら」
「その世界に一体なんの意味があるというの―――!?」
「もう決めたの」
「次の世界なんていらない」
「私はこの世界を精一杯生き抜く」
「そして みんなと一緒に」
「昭和58年の夏を迎える…!!」
「だから あなたも信じて頂戴」
『羽入 悲しまないで』
『私は 死ぬための決意をしたわけじゃない』
『人はやり直しのきかない一度の人生しかないから』
『前進前例を込めて奇跡を起こす』
『けど私は駄目だったら すぐ次の世界の幸運に期待して』
『奇跡を起こせなかった』
『だからそのことに気付けた今』
『この世界で頑張るのだ』
『どうかそれをわかってほしい』
「沙都子が助けてと言えばいいのですね?」
「………わかりました」
「では…」
「ボクが沙都子に助けを求めるように 説得しますです!」

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