◆第2話 「山中にて」

『眩しい――…』
『……そうか』
『巻き戻ったのね』
『また私は死んだのか…』
『――あの時』
『狂気に囚われたレナが学校に立て篭もり教室にガソリンを撒き』
『時限爆弾もセットし誰もが絶望していた中で――…』
『圭一が私以外は覚えているはずのない別の世界の記憶を思い出し そして』
『圭一はレナを狂気から 解放したのだ!!』
『…それは』
『私を捕らえて離さない暗く閉ざされた迷宮に差した』
『一縷の光』
『だから 今度こそはと 何かが変わるんじゃないかと思えたのに』
『…なのに レナが警察に投降した後』
『私は診療所で診察してもらい』
『帰宅しようとしたその帰り道で…』
『…ダメだ』
『殺される時の記憶はノイズだらけで全然思い出せない…』
『どうして私は命を失ったの?』
『今度こそそれをつきとめなければ!』
「ねぇ」
「今日は何月何日」
「いるんでしょう?答えなさい」
「羽入――」
『!!?』
「そ…それじゃあ私たちの命は1か月もないの!?」
『そんな――…』
『……………長い』
『長い100年を越えて もはや思い出すことも出来ないくらい長い時間を』
『私はこの羽入と共に人生を繰り返してきた』
『――羽入は私がこの世に生まれ落ちてから 親よりもずっと一緒にいてくれた存在だ』
『その姿は私にしか見えない 人ならざるもの』
『そして――――』
『死ぬたびに私は羽入の不思議な力によって』
『前の人生の記憶を受け継いだまま 何度も新しい人生をやり直してきたのだ』
『…………だけど』
「(……羽入…)」
『長い長い旅の疲れによって その羽入の心の中は諦めが支配しつつある』
『そして――』
『私の心も―――』
『惨劇しか生まれない世界を見てきた結果』
『絶望というヤスリに心を削り取られ 持っていたすべての希望も勇気も粉くずとなって消えた』
『そして 以前なら何年も時間を巻き戻せた羽入の力もすっかり衰えてしまった』
『綿流しの2週間前までしか戻れないくらいに……』
「もう時間を巻き戻せるのも今回が最後かもしれないのね…」
「(………………え?)」
「そう…」
「だからさっきから足が痛むのね」
「みー」
「ちょっと足をくじいてしまっただけなのですよ(にぱー☆)」
『――いつもなら』
『沙都子はとってもいたずら好きで』
『レナは「かぁいい」ものを見ると暴走してしまうし』
『魅音は勝負好きで騒がしいけれども』
『何度も何度もこの夏を彼らと過ごしてきた私だから』
『彼らが私のことを仲間の一人として 想ってくれる心の優しい人たちだとわかる』
『そう――』
『私は生きて この夏の先もずっとずっと大好きなみんなと一緒にいたい!!』
『ただそれだけを願って 私はこの長い旅を羽入と二人で戦ってきた』
『だけど』
『いつも何者かの手によって あるいは狂気に囚われた仲間の手で』
『未来への道はいつも―― 断ち切られてしまう…』
「みぃー この通り大丈夫なのですよ」
「すぐそこだから歩いて帰れますです」
「(え?)」
「(!!?)」
「みー」
『圭一もいつもならデリカシーのない人だけど こういう時は結構紳士だったりする』
「け…圭一は大げさなのです」
「自分で歩けますですよ」
「(……圭一…)』
『彼は――』
『ついさっきまで私が「いた」世界でレナが魅音に暴力を振るった時 毅然と立ち向かった』
『…そして レナを救おうとあらゆる努力をした』
『それは普段の圭一からは想像もつかない たくましさと頼もしさだった』
『随分前に狂った圭一をレナが自分の命をかけて救おうとしたように』
『彼もまた仲間のために命をかけられる人だった…』
『―――!』
『――…そうだ』
『圭一は前の世界で異なる世界の記憶をよみがえらせた!!』
『そして 私たちの旅の中で一度も起こったことのない奇跡を 起こしてみせた!』
『もしこの世界でも記憶を持っていて…』
『真に私のことを理解してくれれば これほど頼もしい見方はいない!!!』
『ううん』
『「もし」じゃない』
『奇跡を起こした圭一なら圭一ならきっと 今回も覚えている!!!』
「…圭一」
「圭一は覚えていますですか?」
「…あ」
「屋根の上にのぼったことですよ!」
「覚えていないですか?」
『覚えている 知っているはず』
『圭一は経験したのだから』
『お願い 覚えていて!』
「ホラ 圭一はあの時みんなのために戦ったじゃないですか」
『……あ』
『覚えていてくれた!!』
「圭一――!」
『………』
『ああ やっぱり』
『ダメなのか……』
「……………みぃ」
「もう大丈夫なのですよ ありがとうなのです圭一(にぱ☆)」
「…そうね」
「もう二度と」
「圭一が別の世界のことを思い出すような奇跡は起こらないのかもしれない」
『だってそれは』
『スゴロクのサイコロの目が 10回続けて6を出すような』
『もう二度とめぐりあえない奇跡のようなもの』
『だとしたら もう羽入では何も出来ないだろう』
『100年を遙かに超える時をかけても打ち破れなかった壁を』
『わずかひと月足らずで何が出来るというの……!?』
『今から2週間のうちに 私はまた 殺される!!!』
『――こうして』
『古手梨花の物語は絶望から始まった―――…』

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