【皆殺し編】 ◆第3話 「運命を変える力」
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rika_furude 2010年07月03日(土) 22:48:26履歴
◆第3話 「運命を変える力」 
『昭和58年6月――』
『古手梨花は何度も何度も殺される』
『次こそはきっと――』
『そう願い羽入の不思議な力で百年以上もの時を繰り返してきたが』
『いくら頑張っても死の運命は変えられなかった』
『そしてついに私に残された時間がわずかひと月足らずとなってしまった今』
『私の心を深い絶望が支配する――』
『…このままでは』
『私はまた殺される――』
「沙都子はえらいのですよ（なでなで）」
「………」
『毎週日曜日 入江診療所に来るのだが…』
『それは沙都子のある病気のためだった』
『沙都子はそのことを知らない』
「入江 どうなのですか？」
「………」
「…L3は永遠に治らないのですか…」
『一生�爐△良袖き瓩麓�らない…』
「…………信じていますですよ」
『入江は――』
『沙都子のために今後も精一杯努力してくれることを私は数多の世界で知っている』
『そして』
『その思いに邪念がないことも…』
『だから沙都子は今 ここにいられるのだ』
「検査お嫌なのですか？」
『――「入江の研究論文への協力」――』
『「その見返りとして生活費が援助される」沙都子にはそう教えられていた』
『…沙都子にこの病気を知られるわけにはいかないから…』
『でも その努力がなんになるんだろう』
『どうせあと2週間で この世界は終わるというのに……』
『…ああ』
『また何度も繰り返してきたこの日が 来た』
『もう――』
『何度目のゲーム大会かしら…』
『そうね 魅音が自腹を切って5万円も出したっけ』
『いけない!!』
「5万円もあれば使えきれないくらいのおしょーゆが買えますです（にぱー）」
『……本当なら「古手梨花」はその大きな額にびっくりする』
『だけど私はすでに知っているから 驚くことが出来ない』
『何度も同じビデオを見せられているのと同じ』
『繰り返すたびに驚きを無くし感動を無くし 感情を失っていく…』
『私はもう あんな風に心から楽しむことは出来ない』
『この大会の流れも当然知っている』
『クジを引きこのメンバーで5つの卓に別れ』
『卓ごとに決めたゲームで勝者を一人選別するのだ』
『魅音は毎回 部活の種目を気まぐれで決定する』
『だからこそ何度も世界をやり直しても同じ種目が重なることは極めて希で 部活に飽きない』
『だけどこの大会は違う』
『魅音はこの大会の進行をじっくり思案して決めているのだろう』
『その分「気まぐれ」という乱数が入り込まなくなり 何度繰り返しても内容は同じになる』
『このように強い意志は運命を作り出すのだ』
『「昭和58年6月に古手梨花を殺す」という何者かの意志が』
『私の死ぬ運命を作り出しているように』
『羽入――…』
「……羽入 もう大丈夫よ わかったから」
「もう期待なんてしないわ」
「……そうね」
『それはこのまま大人しく死ねということだけど…』
「あ…」
『…!!』
『またやってしまった…』
「え…と」
『初めてのことに大はしゃぎする古手梨花を演じるように 気をつけなきゃいけないのに』
『でも』
「前も同じ部活をたったのでまたなのかと思っただけなのですよ」
『つい素で答えてしまう』
「いいえわかっています」
「…部活メンバーは綺麗に5卓に別れますです」
「圭一はあそこで百万長者ゲーム」
「ボクはその隣の卓で魚釣りゲームをすることになりますです」
『予言？そうね』
『ホラ…ね』
『魅音は初戦で部活メンバーがぶつかるのを避けるために 毎回何かのイカサマをしているのだ』
「圭一 ボクの予言は外れないのですよ（にぱっ★）」
『………』
『マスターは売れ残りのゲームを敗者に買い取らせようと持ってくる』
『だからどのゲームが来るかは運命として決まっているのだ』
『何度も 見てきた通りだ』
「決まっている運命を読むだけなのですよ」
『また…繰り返すのか…』
『やっぱり 変わらないんだ いつもと同じ そして』
『いつも通り殺される運命なんだ!!!』
『!?』
「……みー？」
『そんなこと…出来るはずないのに…期待しないと決めたはずなのに』
『胸がドキドキする…!!』
『…そんな…』
『すべて運命だった』
『圭一たちは百万長者ゲームで戦った 前がそうだった なのに』
『易々と運命を打ち破ってみせた!!!』
『特別な力など何も持たない圭一が 5分もかからずに…』
「そうね 今さら隠さない」
『――私は』
『圭一に比べたら何億倍もの奇跡的な力を持っているのに』
『なんでこんなに弱音を吐いていたんだろう』
『そんなの なんて下らない…!!!』
「…私だって戦える…！」
「二人共」
「お魚さんが可哀想なので ボクは別のゲームがしたいのですよ！（にぱー☆）」
『こんなこと言うのは初めて 一体どんな反応が返ってくるの――？』
『あ…』
『――そうだ』
『私だって大昔はもっともっと積極的だったんだ』
『それがいつしか疲れふて腐れ 運命という敵に屈してしまった』
『でも もう私は屈しない!!』
「みんなで考えましょうです」
『――結局 ゲームの途中でいつものように魅音がバイトに行くということで部活はお流れとなった』
「………」
「…ええ」
「もちろんよ」
「ここでデリカシーのない圭一は 人形をレナに渡してしまう」
『男友達のようにつきあってる魅音に 人形をあげるのは恥ずかしかったのだ』
「だけど 本当は女の子として扱って欲しい魅音を 傷つけた」
『それを発端に惨劇の扉がゆっくりと開くのだ』
『なら 今 私がすべきことは…』
『「魅音に人形を渡すべき」だと助言を――…』
『――え？』
『何が？』
『だって私 まだ何も言ってない――』
『!!!』
「…信じられないわ」
「まさか こんなことが起きるなんて…」
「やっぱり以前の記憶を受け継いでいる…？」
「あら じゃあどうしてこうなったと思うの？（フフン）」
『…もしかしたら』
『圭一は以前の記憶を持ってないにしろ』
『知覚出来ないくらいうっすらとしたものを 心の奥に蓄積させているのかもしれない』
『以前の世界で自分のせいで起きた悲劇の連鎖を きっと悔やみ狂おしいほど後悔した』
『だからこそ』
『以前同じことがあった時よりも「魅音に渡すべき」だと強く思ったのだろうか…』
「それにしても魅音が全然素直じゃないのです」
『本当に 信じられない』
『…何度も何度も経験した いくつかの世界をなぞり直しているはずなのに…』
『今回は何かが違う』
『そんな気がする』
「ねぇ羽入」
「やる気があれば ものの5分でも運命を変えられるのね」
「それが2週間もあるなら」
「今度こそきっと運命を変えることが出来るわよね…!!」
