「Flower」


作品・メディアデータ

彼らのタイアップとして、お馴染「名探偵コナン」のエンディングテーマとなった、GARNET CROWの17thシングル。それまでの装飾化・複雑化していった路線をリセット。すべての要素においてシンプルに見せ、尚且つ奥行きを持たせることに成功している。そういう意味では、1stアルバムの要素を復活させた4thアルバムの先行シングル的意味合いも強い。「少年時代」のようなピアノと淡いストリングスが、あくまで牧歌的な原風景を映し出すかのようだ。

『忘れ咲き [MAXI]』
2004/11/17発売 GIZA - ASIN: B000666T4O

1.忘れ咲き
2.Flower
3.祭りのじかん
4.忘れ咲き(instrumental)

作品レビュー

by saint

この曲は「忘れ咲き」と比較すると、今回のシングルに収録される3曲に共通する孤独感と現実認識が、
かなりストレートに歌詞に現れてきています。

出だしでは映画のマトリックスばりに、自分の存在すると認識する現実世界が本当の現実なのか?
まるでモノクロームの写真か映画のように描写され、歌詞の痛烈さに比べ聞くものに非常にビジュアルに伝えてきます。そのモノクロームの映像の中に唯一の色彩である黄色い花を置くことを唯一の救いと見なして、その世界の中で生きて行くことを「幸せになれる」という言葉で表し、それを認めてしまうことに対する不安や恐れを「おちてゆきそう」という歌詞で表しています。

前記したように今回の作品にはヴィトゲンシュタインの影を感じるのですが、特にこの描写にあたっては彼の言語が像を持っているという考え「言語と世界は切り離すことができない。世界そのものが言語であるとし、私たちが言語化しているもの(命題)はすべて像をもっている。」という言葉を思い起こさせます。

自分たちが存在する世界をまるでヴァーチャル空間のように捉え、その中に生きざるを得ない状況の中ですら得られる安らぎを歪んだものと言い切り、人がそれに気づかない事を「わからないから楽しい?」と疑問を我々に投げかけてきます。そしてはっきりとreality=現実感を求めることの空しさをぶつけてきます。

あなた達は人が何処から生まれ何処へ行くかという、自己への探求の旅を目指すことをうんざり?と追い打ちをかけるように問いかけてきます。
偽りの世界で生まれる偽りの愛情を真実として生きる人達に逃げ場などないと。
一度咲いた花が必ず枯れるように、変わらない愛はないと。

混乱の現実を煩わしいと感じながら同時に、その中に身を置くことによって得られる孤独感や偽りの愛=黄色い花を愛おしく思う自分がいる。

一見難解な歌詞や社会批判と取れるような歌詞により、美しい思い出を喚起させるような日本語で書かれた「忘れ咲き」とまったく正反対の性格を持った歌のようにみせながら、実は底辺に流れるものは同じものに感じられます。
メロディー、歌詞の表現の違いという組み合わせにより、聞くものに対してまったく異なったイメージを与えることを可能にしています。

以前から実は思っていたのですが、ガーネットの楽曲は「歌」とメロディーと同時に認識される歌詞、紙の上に書かれた歌詞でかなりその楽曲の解釈が変わってきます。歌詞を読んで初めてわかる事も多く、このflowerにおいても聞いているだけでは、あるいは目で歌詞カードを漠然と追いながら聞いていたのでは、疑問符として投げかけているかどうかの判断が付きにくい箇所が随所に見られます。
曲と歌詞が一つにまとまった状態で楽しむことと、純粋に文字として詞を楽しむという二つの異なったアポローチによってまったく違った楽しみ方が出来ます。
これらを意図して計算して行っているとしたら、このグループの非凡なる才能に脱帽です。
2005年07月15日(金) 00:55:32 Modified by saint2004




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