最終更新: td_minorin 2009年09月11日(金) 00:21:13履歴
『この手、太陽に触れずとも』/R29
竜児視点でとらP!実乃梨70点ENDのAfter.
――誰にも言わない恋がある。
誰にも気づかれなくても誰にも見えなくても、まるで幽霊みたいなもんだとしても、
俺の中にはちゃんとずっと存在しているモノがある。
俺はそれを誰にも言わずに秘密にしてきた。
それは俺の、俺だけのひそやかな片想い。
誰のためでもない。俺なりの恋のかたち。
きっとそれでいいんだ……俺はそう思う。
『この手、太陽に触れずとも』
部屋の中にあるテレビに映る彼女がかつての同級生であっただなんて信じられないけれども、決して変えがたい事実である。
今や日本で知らない人はいないという程の有名人、全日本代表チーム率いる櫛枝実乃梨こそが俺の初恋の相手。
マウンドに立つ彼女は常にまぶしく、まるで輝く太陽のようでその人気は低くない。
投球姿勢に入った彼女をブラウン管越しに食い入るように俺は見つめた。
世界の頂点を掴むとも言われるあの右手を、俺は握ったことがあるんだぜ!
そんな彼女が投げる球を俺は受けたことがあるんだぜ!……即席ガムテープボールだけど。
誰に言うわけでもなく心の中で自慢する。
自分の手はもう決して彼女に届くことはないだろう。
良い意味で遠すぎて、俺にはついていけないから。
でも時々思う。
高2の冬、彼女ともし本気で向き合っていたのなら、中途半端に諦めていなければ、
櫛枝の本心を……幽霊を見たくないと言ったその真意を訊いていたのなら――
俺たちが二人三脚で歩いていく未来があったのだろうか、と。
考えたって無意味で都合の良すぎることを時々考えてしまうのだ。
その思考は年を追うごとに頻度を増していく。
つまり、『後悔』というやつであった。
櫛枝の手から放たれたボールは見事なストレート、相手バッターへと向かう。
誰よりもシンプルで、誰よりも複雑な、太陽の原石から生まれたような彼女。
そんな彼女の視線は今日も真っ直ぐ。
……なぁ櫛枝。
俺のこの手が、指が、例えおまえに触れることがなくたって
俺は今でもおまえのことが、好きだよ。
櫛枝の投げたボールはまるで帰る場所を知っているかのようにキャッチーミットに収まるのだった。
誰にも気づかれなくても誰にも見えなくても、まるで幽霊みたいなもんだとしても、
俺の中にはちゃんとずっと存在しているモノがある。
俺はそれを誰にも言わずに秘密にしてきた。
それは俺の、俺だけのひそやかな片想い。
誰のためでもない。俺なりの恋のかたち。
きっとそれでいいんだ……俺は今でもそう思う。
けれどやっぱり出来ることなら、見えて欲しかった。
10年前と今の、たった一つの相違点。
――誰にも言わない、恋がある。
END
竜児視点でとらP!実乃梨70点ENDのAfter.
――誰にも言わない恋がある。
誰にも気づかれなくても誰にも見えなくても、まるで幽霊みたいなもんだとしても、
俺の中にはちゃんとずっと存在しているモノがある。
俺はそれを誰にも言わずに秘密にしてきた。
それは俺の、俺だけのひそやかな片想い。
誰のためでもない。俺なりの恋のかたち。
きっとそれでいいんだ……俺はそう思う。
『この手、太陽に触れずとも』
部屋の中にあるテレビに映る彼女がかつての同級生であっただなんて信じられないけれども、決して変えがたい事実である。
今や日本で知らない人はいないという程の有名人、全日本代表チーム率いる櫛枝実乃梨こそが俺の初恋の相手。
マウンドに立つ彼女は常にまぶしく、まるで輝く太陽のようでその人気は低くない。
投球姿勢に入った彼女をブラウン管越しに食い入るように俺は見つめた。
世界の頂点を掴むとも言われるあの右手を、俺は握ったことがあるんだぜ!
そんな彼女が投げる球を俺は受けたことがあるんだぜ!……即席ガムテープボールだけど。
誰に言うわけでもなく心の中で自慢する。
自分の手はもう決して彼女に届くことはないだろう。
良い意味で遠すぎて、俺にはついていけないから。
でも時々思う。
高2の冬、彼女ともし本気で向き合っていたのなら、中途半端に諦めていなければ、
櫛枝の本心を……幽霊を見たくないと言ったその真意を訊いていたのなら――
俺たちが二人三脚で歩いていく未来があったのだろうか、と。
考えたって無意味で都合の良すぎることを時々考えてしまうのだ。
その思考は年を追うごとに頻度を増していく。
つまり、『後悔』というやつであった。
櫛枝の手から放たれたボールは見事なストレート、相手バッターへと向かう。
誰よりもシンプルで、誰よりも複雑な、太陽の原石から生まれたような彼女。
そんな彼女の視線は今日も真っ直ぐ。
……なぁ櫛枝。
俺のこの手が、指が、例えおまえに触れることがなくたって
俺は今でもおまえのことが、好きだよ。
櫛枝の投げたボールはまるで帰る場所を知っているかのようにキャッチーミットに収まるのだった。
誰にも気づかれなくても誰にも見えなくても、まるで幽霊みたいなもんだとしても、
俺の中にはちゃんとずっと存在しているモノがある。
俺はそれを誰にも言わずに秘密にしてきた。
それは俺の、俺だけのひそやかな片想い。
誰のためでもない。俺なりの恋のかたち。
きっとそれでいいんだ……俺は今でもそう思う。
けれどやっぱり出来ることなら、見えて欲しかった。
10年前と今の、たった一つの相違点。
――誰にも言わない、恋がある。
END
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